「統合コミュニケーション」と - AM Associates Website

第87回DMA大会に見る
米国・ダイレクトマーケティング最新事情②
キーワードは、
「統合コミュニケーション」と「ブランディング」
AM Associates 代表
森本篤子氏
現在、マス媒体と双方向媒体を統合した顧客獲得/ロイヤルティ醸成/ブランド構築のコンサルティング
を実施。広告代理店(電通ワンダーマン企画推進部長/Ogilvy & Matherバイスプレジデント/Grey
Advertisingバイスプレジデント)にて、Amex/IBM/日本リーバ/Dellなどのブランド構築/広告/ダイ
レクトマーケテイング/Webサイトの戦略・制作を担当。DELL-ONLINEで日経マルチメデイアのe-コマー
スグランプリ受賞。Tupperwareの広告・DM・D/B連動キャンペーンは、米国DMAのエコー賞ファイナリ
ストとなる。在日アメリカ商工会議所(ACCJ)でダイレクトマーケティング委員会副会長を2年務める。
今回のDMA大会では、広告業界
ンメントのコンテンツを充実させ、
とメディアを代表する2人が基調講
購入の利便性からクレジットカード
演を行った。ブランディングに卓越
を発行し、3,000万人の利用者を誇る。
し て い る と 言 わ れ る Ogilvy &
常に顧客を中心に考え、柔軟な発
Mather社の前会長シャーロット・
想を持って新たなビジネスモデルを
ビアーズ氏(前ブッシュ政権 広報
追求することが成功の秘訣である。
中東担当)と、ダイレクトマーケタ
ーの雄でありAOL・ケーブル・雑誌
などマルチメディアを持つTime
ブランディングの重要性
情報過多の中で、このブランドの
商品は自分にとって必要と思わせる
には、ブランド構築が必須となる。
ブランディングとは、感情的にそ
のブランドと自分を結び付けるもの
マルチメディアを駆使した
統合コミュニケーション
Warner社ドン・ローガン氏(メデ
(Emotional Bond)であり、ブランドと
のかかわりの中での好ましい経験や
思い出がもととなって育まれていく。
ィア&コミュニケーショングループ
インターネットという双方向メデ
代表)である。基調講演とセミナー
ィアの出現により、情報収集・競合
で多く触れられていた「統合コミュ
商品の比較がより簡単になり、消費
ブランディングはGeneral Ad(イメ
ニケーション(IMC)
」と「ブラン
者の購買形態の選択肢も広がってい
ージ広告/ブランド認知広告)で、
ディング」について、私の経験を交
る。販売チャネルは、店舗/カタロ
販売やプロモーションはダイレクト
えてまとめてみた。
グ/DM/ネット/TVと多岐にわた
マーケティングで、というかつての
り、情報発信の手段もTV/雑誌/新
役割分担の時代は終焉した。One to
聞/DM/カタログ/電話/インタ
Oneのダイレクト・コミュニケーシ
ーネット/双方向TVとマルチメディ
ョンを通じて、ブランディングを深
ア化してきている。
め、最も利益を生むLife Time Valueの
発想の転換による
新ビジネスモデル:
原点は顧客の利便性
情報過多の中で顧客を獲得し、ロ
成功企業から学べるのは、顧客が
イヤル化していくには、
「ターゲッ
何を求めているかを熟知してサービ
トが求める情報」を「最適メディア
スを提供していることである。
を相互補完的」にうまく組み合わせ
Amazonは、ネット販売とともに
「One Click Order」という便利な注文
て「欲しいと思うタイミング」で提
ブランドへの愛着が強ければ、他ブ
ランドへの乗り換えも減少する。
高いロイヤル顧客を醸成することが
できるのだ。
オプトイン・マーケティング
から一歩進んで
供していくことが必要となる。
方法を採用。eBayは、規模のビジネ
情報発信手段がインターネットに
統合マーケティング関連では、ア
スしか成立しないという常識を覆
とって代わっていくのかという議論
ーナン・ローマン・ダイレクトマー
し、ユニークなものを少量持ってい
があるが、単独メディアよりも、各
ケティング社の提唱する「調査合意
る人を多数集めて規模を大きくする
特性に応じて複数メディアを駆使し
型オプトイン・マーケティング
という発想の転換で、在庫を持たな
て、顧客と継続的に会話(Dialog)
(Consensual Marketing Opt-in=CMO)
」
いビジネスを展開。AOLは、単なる
をしていくことがCustomer Relationship
が興味深かった。一般にオプトイン
プロバイダーではなく、エンタテイ
には、相乗効果を発揮するのだ。
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(パミッション・マーケティング)
はe媒体が主体で、企業側から接触し
ても良いかを承諾してもらう手法で
あり、消費者は受身的である。一方、
CMOはもう一歩踏み込んだ顧客のニ
ーズやライフスタイルから接触媒体
の好みに至るまでの情報を収集し、
「厳選情報のみを、複数メディアを
使って発信し、対話」していく。従
来のRelationship Marketingの精度をよ
り高くした積極的な手法である。
IBMのROI改善事例では、開封
率・レスポンス率(18∼30%)・リ
ピート購入・顧客満足度の向上によ
り調査やデータ構築費をはるかに上
回る効果が上がり、マーケティング
費の無駄を50%削減したという実績
が紹介されていた。
ダイレクトマーケティングへの貢献者を表彰するHall of Fame
統合コミュニケーションの
実施を阻むもの
私の経験では、IMCの重要性は、
概念として理解できても、いざ実施
しようとすると、総予算をどのメデ
ィアに最適配分するかで壁にぶつか
りがちである。各部署が、予算を侵
食されたくないと内部闘争が起こる
からである。日本では、まだすべて
の関連部門を統括するマーケティン
グ・コミュニケーション(マーコム)
部長を置いている企業が少ないので、
「ダイレクトマーケティングの父」
レスター・ワンダーマン氏の新刊サイン会
大会中、レスター・ワンダーマン氏(Wunderman社名誉会長)の新刊
『Being Direct, Making Advertising Pay』第2版の出版を記念したサイン会があり、
多くの人が集まった。彼が、1967年「ダイレクトマーケティング−販売の新
革命」と題するMIT(マサチューセッツ工科大学)の講演の中で、体系化し
た“新たな広告コミュニケーション手法”を世に紹介したのが、ダイレクト
マーケティングの始まりである。新刊巻頭では「インターネットが誕生する
25年以上前に、販売はinteractive(双方向)であるべき」と明言している氏の
先見性を賞賛している。
すでに10万部以上発行されている第1版は、半生を回顧しながら事例を解き、
「成功をめざす会社が知らねばならない19のルール」などが書かれている(邦
題『
「売る広告」への
実施を成功させるには、トップのリ
挑戦』
、電通出版)
。新
ーダシップと横断的に統括できる管
刊では、業界が抱える
理職が必須となる。マーケティング
プライバシー問題など
的発想ができるD/B担当者と、長期
に対応し、
「コミュニ
的視野に立ってコミュニケーション
ケーションに関する消
戦略を立案できる人材が不可欠であ
費者の権利宣言」や
る。セミナー終了後、アーナン氏と
「新たな市場としての
意見交換したが、米国でも同様の問
インターネット」の章
題があり、トップとマーコム部長の
が加えられた。
関与が第一歩と述べていた。
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