モールの応力円とひずみ円 電卓や計算器がなかった時代にはサイン関数などの関数を計算すること は簡単ではなかったので,様々な分野で作図により数値を求めることが 工夫された.材料力学でも応力を計算するのにモールの応力円と呼ばれ る図的解法が示され,大いに利用されてきた. 2つの主応力 1 , 2 が分かっているとき,主応力面から反時計方向に 0 傾 いた面に働く垂直応力 n とせん断応力 n をモールの応力円を用いて求め る方法を示そう。図 a-1に示したように主応力面に働くせん断応力はゼロ なので、三角関数の係数が正になるように,式 (8.8)にある n ,n を整理す ると 1 1 2 1 1 2 cos 2 0 2 2 1 n 1 2 sin 2 0 2 n (a) の様に示される。cos 2 (-2 0 ) + sin 2 (-2 0 ) = 1を用いると、 2 2 2 n 1 n 1 2 2 2 2 (b) が導かれる.中心(a,b)半径rの円の方程式が (x-a) 2 +(y-b) 2 =r 2 と書けることを思い出してもらうと,(b)式を n , n に関する方程式と考え、 n , n に関するグラフを描くと,図のように点 P( n , n )は、中心 ({ 1 + 2 }/2, 0) で,半径( 1 2 )/2の円周上にあることが分かる.また,主軸 1 と法線n が 0 傾いた面上の応 力が,モールの 応力 円周上で n 軸から 時 計方向に 2 0 とった点になることも理解できよう。P点の水平方向の長さ n と垂直方向 の長さ n を測ることにより任意方向の面に働く応力を導くことができる. (本例もそうであるが)図より負の n が得られた時には,左図で面に働く せ ん断 応 力 の 方 向が 矢 印と 逆 で 微 小 要素 を 時計 回 り に 回 転し よ うと す る 作用になっていることを注意してもらいたい。考案者の名前をとって,こ の円をモール(Mohr)の応力円という。 n 2 n 1 n 1 2 0 1 n O n 2 2 O 1 n 2 0 n 2 1 2 2 図a-1 P n , n モールの応力円 図 a-2に 示 し た 主 軸 と 反 時 計 回 り に 0 傾 い た x-y座 標 系 x-yと x-y座 標 系 か ら 反時計回りに 回転したx'-y'での応力を考えよう.x-y座標系でx軸に垂直な 面での応力は, x軸から 0 回転し た面上の応力なのでモールの応力円では 反時計回りに2 0 回転した点Pの座標となり, y軸に垂直な面の応力は,反 時計回りに2 0 +180回転した点,ちょうど P点の反対位置になる.この図 では x は正, y , xy は負である.x-y座標系から反時計回りに 回転したx'-y' 座標系での応力はさらに2 回転した点P'およびQ'の点に対応し,それぞれ の座標位置から応力成分を導くことができる. y 2 xy x y yx=xy 0 O y y' Q(y,xy) Q'(y',x'y') 1 2 y' n x x'y' y'x'=x'y' O x' x' x 2 2 0 O n 2 0 1 2 1 C P(x, xy) P'(x', x'y') 図a-2 x-y座標系およびx-y座標系から 回転後のx‘-y’座標系の応力の関係と モールの応力円 工学せん断ひずみ xy のかわりに xy = xy /2を用いれば,ひずみの座標変換 式は応力の座標変換式と同じ で 1 1 2 1 1 2 cos 2 0 2 2 1 1 y 1 2 1 2 cos 2 0 2 2 1 1 xy 1 2 sin 2 0 2 2 x となる。したがって、2つの主ひずみ 1 , 2 と主ひずみ方向が分かっている とき、x軸が主ひずみ 1 軸から反時計方向に 0 傾いている座標系でのひずみ 成分 x, y, xy /2が、中心を( 1 + 2 )/2、半径( 1 2 )/2の円周上で垂直ひずみ軸 から時計回りに2 0 回転した直径上の両端 点の座標として導かれる(図参 照)。この円は、モールの応力円と同様な性質があり、モールのひずみ円 と呼ばれる. xy=xy /2 Q y , xy / 2 1 x 2 1 2 2 2 0 O 1 2 2 x xy /2 P x , xy / 2
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