食事の内容とダイエット(090522)

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食事の内容とダイエット(090522)
「何を食べたらやせますか?」と本気で聞いてくる患者もいる。食べてやせる様な食べ物は「毒」
ではないのか?。学生と一緒に食事とダイエットに関する論文を読んでみた。毒は無理だが、どう
やら病的状態(ケトーシス)にすることで体重減少に効果のある方法はあるようだ。体に良さそうな
気はしないが・・・。
まず、参考文献 1 より読んでみる。
●PECO
P:free-living, overweight/obese (body mass index, 27-40) nondiabetic, premenopausal women
E:the Atkins (n=77), Zone (n=79), LEARN (n=79), or Ornish (n=76) diets and received weekly
instruction for 2
months, then an additional 10-month follow-up.
C:compare 4 weight-loss diets
O:Weight loss at 12 months was the primary outcome.
つまり、閉経前で非糖尿病の過体重女性に対して、Atkins diets、Zone diets、LEARN diets、
Ornish diets のいずれかを行うと、各々と比較して 12 ヵ月後の減量に差があるかどうかを検討した
研究であることがわかる。
真のアウトカムかどうかは微妙なところだが、一般的には体重減少が最大関心であることも多
い・・・・。長期の研究で無いので、臨床的なイベントに関しては不明であることは注意しておく必要
がある。
●妥当か
抄録中に Twelve-month randomized とあり、Statistical Analyses に The primary analysis was
conducted applying intentionto-treat と記載されている。妥当性に関しては大きな問題は無いと思
われる。
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●結果
結果は以下の通り、Atkins diets で他の食事と比較して有意な体重減少を認めた。
Weight loss was greater for women in the Atkins diet group compared with the other diet groups at
12 months, and mean 12-month weight loss was significantly different between the Atkins and
Zone diets (P_.05). Mean 12-month weight loss was as follows: Atkins, −4.7 kg (95% confidence
interval [CI], −6.3 to −3.1 kg), Zone, −1.6 kg (95% CI, −2.8 to −0.4 kg), LEARN, −2.6 kg (−3.8 to
−1.3 kg), and Ornish, −2.2 kg (−3.6 to −0.8 kg). Weight loss was not statistically different among
the Zone, LEARN, and Ornish groups.
(参考文献 1 より引用)
アトキンスダイエットとはどういうものだろうか?本文中には以下のように記載されている。極端
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に炭水化物を制限する食事療法と思われる。
The Atkins group aimed for 20 g/d or less of carbohydrate for “induction”(usually 2-3 months)
and 50 g/d or less of carbohydrate for the subsequent “ongoing weight loss” phase.
詳細は参考文献 3 が参考になる。以下、理論と方法を簡単にまとめてみる。

炭水化物をほとんど摂取しないようにすると、インスリンが作られず、また血糖というエネル
ギーがなくなるので、代わりに体内の脂肪が分解されたケトン体をエネルギーとして使うよう
になる。結果として、体内の脂肪を燃焼しやすい状態となり、脂肪だけを減らす事が出来ると
いう理論である。 たんぱく質・脂質にはあまり制限がないが腹八分がすすめられる。

誘導段階(インダクション)

最初の 2 週間は導入ダイエットとして炭水化物の摂取量を 1 日 20g 以下にする。この状
態でケトーシスが簡単に起こる。

このため、炭水化物が 10%以上含まれるものは食べることができない。 砂糖の入った
甘い飲み物やお菓子やケチャップ、蜂蜜やシロップ、果物、ご飯、パン、麺・パスタ、バナ
ナ、栗、ナッツ、豆の状態を保った豆、芋、芋を使ったフライドポテトやポテトチップスなど
は炭水化物が多い。 野菜に含まれる少量の炭水化物を摂取することになる。

カフェイン中毒も断ち切るため、カフェインの入ったものを摂取することはできない。 コ
ーヒー、チョコレート、コーラ、紅茶に多い。

アルコールも摂取できない。

たくさん食べるものである肉や魚、卵、貝、卵、チーズでエネルギーを摂取する必要があ
る。 また栄養のバランスをとるためにサプリメントの摂取がすすめられる。


この期間にインスリン抵抗性と低血糖症が改善され、異常な食欲と気分が改善される。
減量段階

炭水化物は、1 日 40g 前後が一つの目安だが、実際にはインスリン抵抗性の強さによっ
て個人差が大きい。 体重が増加するまでゆっくり 5g ずつ炭水化物の量を増やしていく。
そして、体重が減る量に炭水化物の摂取量を戻し維持する。 炭水化物を少量摂りはじ
めることもあるが、玄米などの精白されていないものにする。

前体重維持段階


目標体重に近くなったら、炭水化物を少し増やしペースダウンさせる。
体重維持段階

目標体重になればもうケトーシスの状態は必要ないが、炭水化物は体重が増加しない
量に保つ。

炭水化物中毒の状態に戻らないためにも砂糖を使ったもの、お菓子は厳禁となる。ただ
し、砂糖の代わりにステビアを使ったものはいい。ジャンクフードは健康を害するし、炭
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水化物中毒に戻すので、代償を払ってまで食べるものではない。

シロップ、蜂蜜、白米など精白されたもの、果糖や乳糖は禁物となる。 炭水化物は果物
や、玄米や蕎麦、オートミールなどを少し取り入れる。魚、豆腐、野菜、豆から組み立て
たメニューは健康的だとしている。
私にはラーメン、ご飯、パン、パスタが食べられない生活は考えられない・・・。同じやせる方法で
も別の方法を考えたい。
栄養性分がこれほど極端でない場合はどうだろうか?参考文献 2 は脂肪、蛋白、炭水化物の割
合を変化させた食事による介入である。
●PECO
P:overweight adults
E:four diets; the targeted percentages of energy derived from fat, protein, and carbohydrates in
the four diets were 20, 15, and 65%; 20, 25, and 55%; 40, 15, and 45%; and 40, 25, and 35%(The
participants were offered group and individual instructional sessions for 2 years.)
C:
O:The primary outcome was the change in body weight after 2 years
つまり、肥満患者に対して、食事の成分を変化させると、2 年後の体重減少に変化があるかどう
かを各々比較して検討した研究であることがわかる。
食事の成分バランスは以下のとおり。
fat 脂肪(%)
protein 蛋白(%) carbohydrates 炭水化物(%)
A
20
15
65
B
20
25
55
C
40
15
45
D
40
25
35
●妥当か
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抄録中に randomly assignedStatistical Analysis に intention-to-treat analysis との記載がある。
試験期間は 2 年間とかなり長い。妥当性に関しては大きな問題はないと思われる。
●結果
結果は以下のとおり各介入群で大きな変化は無かった。炭水化物が少ない方がいいというトレ
ンドも無いようだ。
Reduced-calorie diets result in clinically meaningful weight loss regardless of which
macronutrients they emphasize.
(参考文献 2 より引用)
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アトキンスダイエットのように、病的状態にするほどの極端な配分でないので、どれも似たり寄
ったりなのではないだろうか?通常考えられる無理の無さそうなバランスであればどのようなバラ
ンスであっても体重減少には有効と思う。何れの論文でも体重減少の講習も受けているようなの
で、基本的には無理の無い体重減少の計画を立て、バランスの取れた食事と運動を行うことが最
も無理が無いいい方法のように思える。
それでも、あえてチャレンジするなら・・・・・やっぱりアトキンス?
参考文献
1.
Gardner CD, Kiazand A, Alhassan S, Kim S, Stafford RS, Balise RR, Kraemer HC, King AC.
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN diets for change in weight and related
risk factors among overweight premenopausal women: the A TO Z Weight Loss Study: a
randomized trial. JAMA. 2007 Mar 7;297(9):969-77.
2.
Sacks FM, Bray GA, Carey VJ, Smith SR, Ryan DH, Anton SD, McManus K, Champagne CM,
Bishop LM, Laranjo N, Leboff MS, Rood JC, de Jonge L, Greenway FL, Loria CM, Obarzanek E,
Williamson DA. Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein,
and carbohydrates. N Engl J Med. 2009 Feb 26;360(9):859-73.
3.
アトキンスダイエット Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%88%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83
%80%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88
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