舌の痛みの鑑別疾患

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舌の痛み(090327)
舌の痛みを訴える患者は多いが、原因がはっきりしない事も多い(明らかに潰瘍などがあれば
簡単なのだが・・・)。系統的に問診や診察、検査が出来るように鑑別疾患を中心に調べてみた。
参考文献 1 には鑑別疾患と共に診察のポイントがまとめられている。
(参考文献 1 より引用)
舌の痛みと言っても鑑別疾患が数多くあり、いろいろな切り口で分類されている。
参考文献 3 では痛みの原因を 5 つの分類にしている。
1.
局所の炎症:再発性アフタ、扁平苔癬、外傷による口内炎、化膿菌感染、カンジダ症
2.
萎縮性変化:ビタミン B12 欠乏、鉄欠乏性貧血、ニコチン酸欠乏、ビタミン B12 欠乏
3.
口腔乾燥:唾液腺の異常、脱水症状、感染症、甲状腺機能亢進症、糖尿病、悪性貧血、鉄欠
乏性貧血、シェーグレン症候群、薬剤の副作用
4.
血管病変:動脈硬化や静脈瘤
5.
神経病変:三叉神経痛、舌咽神経痛、腫瘍性病変による神経圧迫
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参考文献 2 には VINDICATE で鑑別疾患がまとめられている。
V
Vascular suggests pernicious and iron deficiency anemia.
I
Inflammation recalls Vincent stomatitis, herpes simplex, tuberculosis, and syphilis. The
referred pain from gingivitis and abscessed teeth should also be considered here.
N
Neoplasms remind one that carcinoma of the tongue often presents with pain.
D
Degenerative and deficiency diseases remind one of pellagra and other avitaminoses.
I
Intoxication and idiopathic call to mind tobacco, plumbism, mercurialism, and
glossopharyngeal or trigeminal neuralgia.
C
Congenital anomalies of the tongue are rare.
A
Allergic and autoimmune diseases, on the other hand, suggest dermatomyositis and
angioneurotic edema.
T
Trauma suggests the numerous times we bite our tongues and may prompt a search for
epilepsy when a patient presents with syncope.
E
Endocrine reminds one of hypothyroidism.
●疾患のまとめ
□ 重症貧血、鉄欠乏性貧血(プランマー・ビンソン症候群):舌乳頭は萎縮して、赤い平らな舌に
なる
□ 口内炎(再発性アフタ):類円形の潰瘍、表面が白い偽膜に覆われた浅い潰瘍、境界は不明
瞭で周囲粘膜に発赤が見られるのが特徴
□ ウイルス感染(単純ヘルペス:アフタより小さく、数 mm 大の白い潰瘍が出現、癒合する。口内
炎出現前の水疱)
□ 細菌感染(結核:多くは肺結核が先行、梅毒、レンサ球菌:苺舌)
□ 真菌感染(カンジダ:AIDS などにも注意。白色の偽膜とびらん。高齢者では口腔カンジダ症の
頻度も高いという。ガーゼで擦ってみて剥離できればカンジダ症、剥離できなければ白板症と
疑える。慢性萎縮性カンジダ症:口腔粘膜や口角に発赤が見られ、疼痛を伴う。)
□ クラミジア感染:
□ 歯肉炎、齲歯の関連痛
□ 舌癌:舌縁部が好発部位。潰瘍を形成するものが多い。
□ 葉酸欠乏(ペラグラ)、他のビタミン欠乏症(Vit B12:メラー・ハンター舌炎):舌乳頭は萎縮して、
赤い平らな舌になる
□ 亜鉛欠乏症
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□ 喫煙
□ 鉛中毒、水銀中毒
□ 亜鉛欠乏症
□ 舌咽神経痛、三叉神経痛
□ 皮膚筋炎
□ 類天疱瘡、天疱瘡:水疱形成
□ 扁平苔癬:白線、発赤、びらんとして現れる慢性角化性病変。歯科治療剤に対するアレルギ
ーの場合もある。
□ 血管神経性浮腫
□ 咬んだことによる外傷(自己咬傷):習慣性の場合には慢性の肉芽腫となる。
□ 外傷性炎症:義歯や齲歯
□ 甲状腺機能低下症
□ 薬剤の副作用
□ 舌痛症:器質的変化が無い(以下参照)
●考慮する検査
CBC、CRP、ESR、Vit B12、葉酸、フェリチン、亜鉛、甲状腺機能、ツベルクリン検査、梅毒検査
(TPHA、STS)、クラミジア抗原、生検、自己抗体(SjS などの膠原病を疑うとき)
舌痛症に関しては、参考文献 3 にその特徴がまとめられている。
(参考文献 3 より引用)
不安を取り除くことが重要。鎮痛剤にはあまり効果は無く、治療薬はマイナートランキライザー
や SSRI などが用いられることあるという。
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参考文献
1.
藤吉達也.舌の痛み・しびれ.治療, 86(2) : 279-282, 2004.
2.
R. Douglas Collins. Differential Diagnosis in Primary Care. Philadelphia, LIPPENCOTT
WILLIAMS & WILKINS, 2003.
3.
森良之.舌痛症.綜合臨牀, 53(12) : 3141-3142, 2004.
4.
口を診る Nikkei Medical 2008. 6
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