91 糖尿病(1):血糖はなぜ大切か?

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糖尿病(1):血糖はなぜ大 切か?
娘: 友達のお父さんが「糖尿病」で、最近目と腎臓が悪くなったみたいで心配しているよ。糖
尿病は怖いね。
父: 多分「糖尿病性網膜症」と「糖尿病性腎炎」だと思うよ。この2つに「末梢神経障害」を
加えて、
「糖尿病の3大合併症」というんだ。
娘:
「糖尿病の定義」を教えて。
父:
これが結構難しいが、
「インスリン作用」の不足によって起こる「高血糖」を主な症状と
し、「種々の代謝異常」をきたす病気だ。糖尿病を理解するためには、血糖について知っておく
必要がある。ところで、「血糖」とは何か知っている?
娘:
血中の「グルコース(ぶどう糖)」でしょう?
父: そのとおり。血糖はきわめて大切で、その濃度、すなわち「血糖値」は厳密に調節されて
いる。
娘:
どうしてそんなに大切なの?
父: われわれのエネルギー源を考えてみよう。食物中の「3大栄養素」の割合は知っている?
娘: 「3大栄養素」は「糖質」と「脂質」と「タンパク質」で、最も多いのは糖質でしょう?
父: そうとおり。国で定められている3大栄養素の割合の目標は、糖質が50∼70%、脂質
が20∼25%、タンパク質が20%未満(男性60g、女性50g)だ。つまり、エネルギー
源の3分の2が糖質ということになる。では、糖質の消化、吸収は知っている?
娘: 米でも麦でもイモ類でも、主な糖質は「でんぷん」で、消化管の消化酵素で消化されてグ
ルコースとなり、小腸から吸収されるんでしょう?
父: よく知っているね。吸収されたグルコースは血液に入り、血糖となる。食後に血糖が上昇
するのはそのためだ。ちなみに、
「血糖値」
は空腹時には70∼90mg/dLに維持されており、
食後は140mg/dLくらいまで上昇し、2∼3時間で元へ戻る。
娘: 血糖はいろいろな臓器に取り込まれて使われるんでしょう?
では空腹時には、血糖はど
こから来るの?
父: 大変よい質問だ。血糖はどんどん使われると同時にどんどん供給され、一定の値に保たれ
る。もし供給が止まると、血糖は数分以内になくなってしまう。では、食物から取り入れたグル
コースは、一部は使われるけど、残りはどうなる?
娘:
あっ
そうだ。肝臓で「グリコーゲン」に変えて蓄えるんだ。
父: そのとおり。空腹時にはこのグリコーゲンを分解して血糖に変える。つまり、肝臓では食
事ごとにグリコーゲンの合成と分解が繰り返されているんだ。
娘:
では、グリコーゲンがなくなったらどうなるの?
父: またまたよい質問だ。肝臓のグリコーゲンは、半日ほど絶食するとほとんどなくなってし
まう。すると、
「体のタンパク質」(主に「筋肉タンパク質」)をアミノ酸に分解し、アミノ酸か
ら肝臓でグルコース、つまり血糖を合成するんだ。専門的には、これを「糖新生」という。
娘:
つまり、絶食時には自分自身の筋肉を食べているという訳ね!
父: そういうことになるな。体タンパク質の大部分は「筋肉タンパク質」だ。筋肉の主な働き
は運動や姿勢保持だが、「エネルギー貯蔵庫」としての働きも大切なんだ。
娘: そういえば、過度のダイエットをすると、脂肪だけでなくタンパク質も減るので、よくな
いと聞いたよ。ところで、「脂肪」からは「グルコース」は出来ないの?
父: 脂肪(正確には脂肪酸)は分解されてエネルギー源になるけど、グルコース(血糖)には
ならないんだ。グルコースは脂肪になるのに、逆は駄目なんだ。
娘:
では、血糖が下がりすぎるとどうなるの?
父:
その話は次回にしよう。