Oligoarthritisの評価

ROCKY NOTE
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Oligoarthritis(100927)
60 歳男性。平成 22 年 6 月、左手の疼痛ありとのことで受診。左手関節を中心とした関節炎症状
(腫脹、圧痛)あり。触診でも明らかに関節液の貯留を認めた。左手第中手指節関節にも腫脹と疼
痛を認めた。朝のこわばりあり。平成 20 年頃にも第 2、3 指 MP 関節の疼痛あり、1 ヵ月ほどで自
然に改善したというエピソードがある。右手や足の関節は侵されない。一度痛風の診断を受けた
ことはある。爪の変化は無し。ソーセージ様変化なし。皮疹/粘膜疹無し。尿道炎なし。
WBC 6200(n %)、RBC 475 万、Hb 14.4、Plt 27.2 万、T-Bil 0.51、AST 30、ALT 31、ALP 295、
LDH 496、γ-GTP 56、CK 195、TP 7.2、BUN 12.8、Cr 0.83、UA 7.3、Na 143、K 4.7、Cl
103、Ca 9.5、T-cho 180、TG 87、HDL-c 75、FBS 103、CRP 0.43、RF 4、抗 CCP 抗体<0.6、
ANA<40
X 線:骨びらん無し、関節内の石灰化所見無し、骨硬化像無し、関節裂隙の狭小化無し。左右差
無し
結局、未分類関節炎として加療中であるが、NSAIDsにはあまり反応せず、少量のステロイドを
使用した時だけは症状が軽快する。あまり改善が見込めない場合には、一度専門医への紹介も
考えているが、現時点では利き手と反対で、それほど困っていないとのことで、患者自身は専門
医受診には消極的・・・。(診断がつかずに困っているのは医者の方だったりする・・・)
時間的な差はあるものの、関節炎を認めたのは左の第 2、3、5MP 関節と手関節。経過から考え
ると、oligoarthritis と分類しても良いと思う。「Oligo」というのは「少ない」という意味で、mono multi
= origo と表現する。(神経領域では、多発性単神経炎みたいな表現があるが、関節炎は多発性単
関節炎とは言わない。) oligoarthritis について勉強してみることにする。よくわからない症例を診
察した時ほど幅広い勉強のチャンスになる。
2005 年に千葉大学総合診療部を見学に行ったときに、ちょうど oligoarthritis の症例について検
討がされていた。このときの資料をひっくり返してみる。このときのポイントは oligoarthritis とソーセ
ージ様指というキーワードを組み合わせて診断を絞るという点であった。
●oligoarthritis

乾癬性関節炎(皮疹、爪の変化:陥凹)

ライター症候群(結膜炎、尿道炎)
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クローン病(消化器症状)
●ソーセージ様指(指一本がソーセージ様に腫脹している。臨牀症状を関節炎と翻訳せずにソー
セージ様と翻訳するところがポイントであった。)

強皮症(繊維化が起こってソーセージ様の腫大)

MCTD

乾癬性関節炎(腱付着部が炎症を起こすのでソーセージ様の腫大)
カンファランス症例の最終診断は乾癬性関節炎だったが、今回の症例は乾癬性関節炎の可能性
は低そうだ。ちなみに、参考文献 2 にこのときのカンファランスのまとめが記載されているので、重
要そうな部分をまとめてみる。

関 節 リ ウマ チ :リ ウ マ チ 因 子の 陽 性率 は 6 割 以下 と い う 報告 も あ る 。 対称 性 の
polyarthritis。単関節や少数の関節炎で始まることはあるが、通常、数週間以内に多関
節炎に移行。1 年にもわたって、非対称でいくつかの関節にとどまっていることは無い。

回帰性リウマチ:初期関節リウマチとの鑑別が難しい。数日で自然寛解し、再燃を繰り
返す。

掌蹠嚢胞症:肋骨、胸骨、胸椎などの体幹部の関節を侵し、手指のようなスモールジョイ
ントを侵すことは稀。

Sjogren 症候群:通常 polyarthritis

ソーセージ様指をみたら関節よりも軟部組織の腫脹を考える。対称性、びまん性であれ
ば強皮症、MCTD を考え、少指、非対称であれば乾癬性関節炎、凍瘡などを鑑別する。

関節炎の鑑別には、侵される関節の数により、多関節(poly)、少関節(oligo)、単関節
(mono)があり、oligo なら、乾癬性関節炎、早期関節リウマチ、ライター症候群などの
HLA-B27 関連関節炎を考える。
診断をつける自信がないので、徹底検討方でじたばたしてみる。参考文献 3 の鑑別疾患を参考
にしながら、今回のケースの可能性を簡単に評価してみることにした。
Monoarticular (Oligoarticular) Arthritis

Juvenile rheumatoid arthritis (若年性関節リウマチ)→×まず年齢が合わない

Ankylosing spondylitis (強直性脊椎炎)→×腰背部痛無し

Rheumatoid arthritis (rare) (関節リウマチ)→△早期リウマチの可能性はある?
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Systemic diseases (全身性疾患)

Psoriasis (乾癬)→△皮疹も無く可能性は低い

Behçet's syndrome (ベーチェット病)→×皮膚/粘膜/陰部症状無し

Inflammatory bowel disease (ulcerative colitis, regional enteritis) (炎症性腸疾患)→×
消化器症状なし

Pancreatic disease (carcinoma, pancreatitis) (膵疾患)→△少なくとも膵炎は無さそう

Whipple's disease (Whipple 病)→×消化器症状無し

Familial Mediterranean fever (家族性地中海熱)→×発熱無し。全身症状無し。家族歴
無し。

Hematologic disorders (血液疾患)→×採血での検査値の異常無し。出血傾向無し。
増悪傾向無し。

Leukemia (白血病)

Lymphoma (リンパ腫)

Bleeding-clotting disorders (hemophilia, von Willebrand's disease, anticoagulant
use) (出血凝固疾患:血友病、von Willebrand 病、抗凝固薬の使用)

Hemoglobinopathies (especially sickle cell anemia, thalassemia) (ヘモグロビン異常
症:鎌状赤血球貧血、サラセミア)

Storage diseases (e.g., Gaucher's, Fabry's) (ゴーシェ病、ファブリー病など)→×発症年
齢が異なる。

Acromegaly 末端肥大症→×典型的症状/所見無し

Amyloidosis アミロイドーシス→×関節以外の症状に乏しい

Degenerative joint disease (変形性関節症)→×DIP は侵されていない。X 線は陰性。

Trauma (外傷)→×既往無し。

Neuropathic arthropathy (e.g., tabes dorsalis, diabetes mellitus, syringomyelia) (神経性関節
症:脊髄癆、糖尿病、脊髄空洞症)→×神経症状無し。

Joint tumors (e.g., pigmented villonodular synovitis, hemangioma, sarcoma) (関節部腫瘍:色
素性絨毛性滑膜炎、血管腫、肉腫)→×X 線写真陰性。

Infection (感染症)

Bacterial (especially gonococcus, staphylococcus, pneumococcus) (細菌性:淋菌、ブド
ウ球菌、肺炎球菌など)→×採血で炎症所見低値。白血球正常。ステロイドで一時寛解
する部分も異なる。

Viral (especially hepatitis B, rubella, mumps) (ウイルス性:B 型肝炎、風疹、麻疹)→△
多関節炎でない。再発性であるところもやや異なる。接触歴もない。

Tuberculous (結核)→×結核の一症状である可能性は相当低い。

Fungal (真菌)→×免疫機能は正常

Rickettsial (リケッチア)→×全身症状無し。皮疹無し。
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

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Parasitic (寄生虫)→×寄生虫の症状である可能性は相当低いと思う。
Others (他)

Gout (痛風)→△尿酸値は高くないが可能性はある。

Pseudogout (偽痛風)→△X 線所見はないものの可能性はある。

Intermittent hydrarthrosis (間欠性関節水腫)→×水腫がメインでない。

Loose joint body (関節内遊離体)→×再発性や同時に発症する関節がある部分が異
なる。

Foreign body (異物)→×理由が無い

Palindromic rheumatism (回帰性リウマチ)→△経過がやや異なるが可能性はあるか
も。


Radiation (放射線)→×被ばく無し

Relapsing polychondritis (再発性多発軟骨炎)→×軟骨がメインでない。
Nonarticular rheumatism

Bursitis (滑液包炎)→△原因がはっきりしないが・・・

Periarthritis (関節周囲炎)→×原因がはっきりしない

Tendinitis (腱炎)→×腱とは異なる

Tenosynovitis (腱滑膜炎)→△滑膜の炎症はあるかもしれないがその原因ははっきり
しない。

Epicondylitis (上顆炎)→×部位が異なる

Myositis (筋炎)→×明らかに筋の部位と異なる

Fibrositis (結合組織炎)→×?

Fasciitis (筋膜炎)→×筋、筋付着部の分布から逸脱。
早期関節リウマチや痛風、偽痛風、回帰性リウマチ(機会を改めて勉強してみることにする)、乾
癬、ウイルス感染、生活習慣などに起因した腱滑膜炎/滑液包炎などを想定しながら、注意深く経
過観察していきたいと思う。(やっぱり、紹介して専門医の意見も聞きたいなぁ・・・。)
参考文献
1.
2005 年 12 月 15 日 千葉大学総合診療部カンファランス資料
2.
大平善之,生坂政臣.初めての問診「指が腫れてきて痛い」.junior,453:17-21,2006.
3.
Stephen N Adler et al. A Pocket Manual of Differential Diagnosis. Philadelphia, LIPPENCOTT.
WILLIAMS & WILKINS, 2000.
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