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投資信託の販売を取り巻く7つの変化

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平成 28 年 9 月 14 日
三菱アセット・ブレインズ株式会社
勝盛
投資信託の販売を取り巻く7つの変化【要約版】
政治
第一回
今、投資信託の販売を取り巻く環境は大きな変化の波にさらされている。そこで、今回を始め
全四回を通じ、投資信託の販売を取り巻く7つの変化を簡潔に取り上げ、最後に販売会社が目指
すべき方向性について考えてみたい。まず一回目としては「フィデューシャリー・デューティ」、
「金融機関の主要顧客にどのような変化が生じているのか」の2つの波について確認してみよう。
【
全体を通じての要旨 】
●いま、投資信託の販売を取り巻く環境は、大きな変化の波にさらされている。
●その波とは、フィデューシャリー・デューティの要請、顧客層のシフト、市場環境と意識の変
化、販売面におけるIFAとの競合、販売ツールにおけるフィンテックの動き、運用会社によ
るネットを通じたチャネル戦略と費用水準の低下など多面的だ。
●これらの変化は、投資信託を販売する金融機関にとっては課題として立ちはだかるものである
が、いままでの販売戦略を見直す大きな機会でもある。
●顧客層を意識したターゲット戦略、資産形成型の投資商品の提供、提案型のコンサルティング
力を高め、フィデューシャリー・デューティを活かすことで、真に信頼される金融機関への脱
皮が図られるものと期待する。
第一の波:フィデューシャリー・デューティの要請
●フィデューシャリー・デューティとは
フィデューシャリー・デューティとは受託者責任を果たすことであり、金融庁が示した定義に
よれば「他者の信任を得て、一定の任務を遂行すべき者が負っている幅広い様々な役割・責任の
総称」とされている。金融機関はそれぞれの立場において、手数料収益の拡大や系列関係だけに
とらわれず、顧客のニーズや利益にかなう投資商品・サービスの提供が重要とされ、販売会社や
運用会社がそうした役割・責任を果たすことが求められている。
金融庁はこのフィデューシャリー・デューティを2015年9月「金融行政方針 主なポイント」
において金融行政の重点施策として明示した。そこには、コーポレートガバナンス、スチュワー
ドシップ・コードによる企業統治改革とともにフィデューシャリー・デューティの徹底を図るこ
とで、活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現を目指す強い姿勢が伺える。しかしながら、
1
本来求められる姿とは、金融庁が定めたから対応するものではなく、各金融機関が自ら規範を作
り出していく意識改革だろう。
個人の投資商品を取り巻く環境は、いままでは、どちらかといえば販売サイドの事情を反映し
た商品組成や販売方法が優先されたと思われる事例もあった。もちろん、投資者のニーズを度外
視したものを押し付けても受け入れられないが、携帯電話が圧倒的な販売力や設備力を背景に、
機能は良くても高い料金を払わされているように、過度に複雑な仕組みやリスクの高い投資信託
が商品化され提供されてきた。そして知識や経験の浅いシニア層中心に大量の資金を集めてきた。
このことは常に課題とされつつも、なかなか解消されることはなかったが、これからは顧客向け
取り扱い商品の妥当性や費用の問題、顧客に提案・アドバイスする際の適合性など、関わりある
すべての立場や多くのプロセスにおいて、このフィデューシャリー・ディーティの視点が問われ
ている。
●現実には金融機関にとっては難解な課題
世間の論調では、フィデューシャリー・デューティに関して近江商人の精神を用いて、
「売り手
(販売会社)良し」「買い手(投資者)良し」「世間(市場)良し」の三方良しとか、それに「作
り手(運用会社)良し」を加えて四方良しといった表現が用いられているが、少なくとも「買い
手(投資者)良し」は今までは十分に満たされてきたとはいいがたい。
これは逆にいえば、販売会社である金融機関がより信頼できる存在となるための新たな試金石
ともいえる。顧客本位に努めることは、顧客から信頼される行動に徹することになる。これは、
健全な資産形成の環境を育むという全体的な視点のみならず、金融機関自身にとっても顧客との
信頼関係をより強固にするための大いなる機会として捉えることができるだろう。
このように、一般的な総論でいえば誰もが賛同するフィデューシャリー・デューティへの取り
組みであるが、金融機関にとっては難解な課題でもある。営利会社である限り、投資商品を販売
して、そこから収益を得るのは当たり前だ。その販売サイドが顧客の立場を優先することは多く
の点で制約となる。端的な例としては、投資信託の販売手数料は販売する側から見れば高ければ
高いほどよく、一方で購入する側から見れば安いほどよい。投資信託の販売現場における典型的
な利益相反が生じやすい事例だ。
この問題を解決するには、顧客との利益相反が起こりやすい事例の見直しが必要になる。すで
に海外では販売手数料に相当するコミッションをなくす動きがあり、今後の日本に対する示唆で
もある。複雑で期待リターンを高めに設定することで、リスクも費用も高くなる商品は、期待通
りのリターンが実現しなければリスクも大きく費用もかかる。売りたい商品や単に利益のあがる
商品ではなく、顧客の資産形成ニーズにあった商品を提供することが、売り手サイドの金融機関
にとっても長期的な利益に結び付くようでなくてはならない。顧客の資産形成ニーズに則したチ
ャネルに適切な商品を配置することが求められている。
フィデューシャリー・デューティに向けた取り組みは今に始まったことではない。以前から、
こういった課題について指摘する動きはあったが、なかなか変化が生じなかったのも事実だ。こ
れがフィデューシャリー・デューティによって明確になり、大きく動きだそうとしている。
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第二の波:金融機関の主要顧客層の変化
●メイン顧客層であるシニア世代に迫りつつある変化
世の中はインターネットや携帯端末の時代になったにもかかわらず、シニア世代と呼ばれる年
金受給者を中心とした層は、そういった変化から取り残された世代である。そのため、インター
ネットによって商取引の姿は一変したにもかかわらず、投資商品においては従来型の対面販売が
主流の時代が今日まで続いてきた。技術革新はあるときを境に急速に広まるため、インターネッ
トを使うことができる世代とそうでない世代には大きな断層ができた。
ここにきて、これらシニア世代を中心とした高齢者層をメインターゲットとしてきた戦略への
警戒感が高まっている。今まではシニア層の人口が大きく伸びてきたが、今後は以前ほどの伸び
は期待できない。その中でも銀行が対面販売で強みを発揮できた年齢層が一段と高齢化する。そ
して、大相続時代の始まりにより、シニア層の資産が比較的若い世代の資産形成層にシフトする。
日本では、ここ25年間で65歳以上のシニア世代の人口は倍増し、3千万人を上回った。銀
行に投資信託の窓販が解禁された平成10年からみても、当時の2千万人から60%以上も増加
している(図表1参照)
。この世代は、退職金や年金なども手厚く社会保障も充実していたことか
ら、結果的に多くの資産を形成できた世代だ(それだけ財政は悪化した)
。1993年からの20
年間で個人の金融資産は1.5倍に拡大しているが、そのうちの大部分がこの世代によるものだ
ということは容易に想像がつく。金融機関はこの層をターゲットに投資信託や保険による資産運
用をアプローチしてきた。総務省の人口予測によれば、今後の65歳以上の人口は緩やかな伸び
にとどまる見通しだ。また、これから新たに65歳以上に入ってくる世代は、それまでのシニア
層よりも老後資金に余裕はない。そう考えると、今までターゲットとしてきたパイが今後も同じ
状況で増えていくことは考えづらい。
【図表1】65歳以上人口の推移
(総務省・人口統計よりMAB作成)
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●すでに年間40兆円を超える金融資産の大相続が始まっている
今までの主たるターゲット層であった65歳以上が、今後どのように推移するのかを試算した
のが図表2である。死亡率が高くなる世代のため人口減少率は極めて高い。5年後には2割近く
減少し、10年後には4割減、15年後には6割減となる見込みだ。現在の主たる顧客基盤がこ
れほど減るとなれば深刻だ。
【図表2】現在65歳以上の人口の今後
(総務省・人口統計と厚生労働省・死亡率よりMAB作成)
メインターゲットである顧客基盤が大きく変化・縮小する。65歳以上の人口が今後10年間
で4割減少するということは、その世代が保有するといわれる1000兆円を上回る金融資産の
うちの4割に相当する400兆円以上が相続の対象となる。これは1年あたり40兆円だ。今後
はこの大相続が毎年続くことになる。
また、相続を受ける人は同じ地域に住んでいるとは限らず、都会に移り住んでいるケースも多
い。その場合にはお金が地元から都会へと移転してしまう。金融資産は土地や家屋と違い、換金
性も高ければ移転も容易に行うことができる。地方金融機関にとってはこういった事業基盤の変
化も突きつけられている。相続は世代と地域をまたがって資産が異動するため、対応が難しいこ
とが大きな課題だ。
4
【図表3】日本の貯蓄率の推移
(内閣府・国民所得統計よりMAB作成)
さらにいえば、日本の貯蓄率は趨勢的に低下しており、直近では0%近辺だ(図表3参照)
。先
進国でみても極めて低い水準にある。貯蓄率が低下した要因として専門家が挙げていることは、
高齢化、社会保障の充実、消費性向や景気要因などであるが、普通に考えてみても、貯蓄大好き
の日本人がほとんど貯蓄できていないような事態はやはりおかしい。この推移をみる限り、大き
な変化が起こっていることは否定できない。これからは簡単には貯蓄が増えないことも、金融機
関の置かれた環境としてはマイナス要因だろう。
●シニア層とは異なる判断基準をもつ資産形成層
新たにシニア層に加わってくる人たちは、今までとは異なる判断基準を持ち合わせていること
にも注意が必要だ。これまでのシニア層は、インターネットなどを用いることが苦手な世代とい
える。投資に限らず、家電や自動車の購入も、自分で情報を集め自分で判断するよりも、専門家
に相談して任せることに馴染んでいる。それは金融機関にとって、自分たちの販売戦略を対面営
業で反映させやすい相手でもあった。
一方で、大相続時代の受け皿となり、将来的な顧客層として注目され、シニア層に対して資産
形成層と呼ばれる現役世代は行動基準が明らかに異なる。小さい頃から身近にゲーム機があった
世代は、ゲームに始まりパソコンや携帯端末に慣れ親しんできた。そういった環境が当たり前の
彼らは、スマートフォンやインターネットなどとの親和性がものすごく高い。人との直接的なコ
ミュニケーションよりも、ネットを通じた付き合いに馴染んでいる。普段のやりとりはメールや
ラインなどによる、言葉でなく文字でのやりとりが中心であり、若者に至っては付き合うための
告白や別れ話もメールやラインで行う世代だ。こういった世代は直接的な対人によるセールスを
敬遠する傾向が強い。現役世代は、シニア世代と比べて、お金に対する価値基準も異なる。自分
で情報を取得し、自分で比較し、理解できる範囲内で合理的な判断に努めようとする。コストに
は極めて敏感だ。すでに、こういった新たな層をターゲットにセールスを展開しているネット専
業の金融機関も存在する。このようななかで、既存顧客の高齢化に対応しつつも、新たな顧客層
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を獲得していかなければならない。こういった傾向は、既存の金融機関にとって、従来と同じ戦
略では顧客を十分に取り込めない可能性が高いことを意味する。
次回は、
「投資信託を取り巻く市場環境と顧客の意識」にどのような変化が生じているのか、ま
た、競合として存在感を増しつつある「既存の販売ルートに変化をもたらすIFA」、そして、巷
でも話題となっている「投資信託販売におけるフィンテック」の影響について確認してみたい。
 本レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘のために作成されたものではあり
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