長期研修員B 授業研究(実践授業) 1 単元名 今の思いをまとめよう 中学校第3学年国語科学習指導案 指導月日 平成 24 年 12 月 20 日 所属校名 石巻市立河南東中学校 氏 名 相澤 和男 時を超える手紙 (東京書籍 新しい国語3) 2 単元の目標 (1) 社会生活の中から課題を決め,伝えたい内容や相手をはっきりさせ,自分の思いや気持ちを明確 に伝えられるよう主文の構成を工夫した手紙を書こうとしている。 (2) 中学校生活を振り返ったり,将来を展望したりして,自分の思いを手紙にまとめるとともに,手 紙の頭語や結語を添えたり,読み手への思いを込めた前文や末文の表現を工夫したりして読みやす く分かりやすい文章を書くことができる。 (3) 書いた手紙を互いに読み合い,主文の中で書き手の言いたいことが伝わる文章であるか,読みや すく分かりやすい構成であるか,手紙文にふさわしい言い表し方をしているかについて意見を述べ たり,自分の表現の参考にしたりしている。 (4) 適切な語句や既習の漢字を選択するとともに,相手と自分のかかわりを意識して適切に敬語を使 うことができる。 3 単元観 学習指導要領〔第3学年〕において,目標(2)では「目的や意図に応じ,社会生活にかかわること などについて,論理の展開を工夫して書く能力を身に付けさせるとともに,文章を書いて考えを深 めようとする態度を育てる」こと,内容B「書くこと」の指導事項(1)アでは「社会生活の中から課 題を決め,取材を繰り返しながら自分の考えを深めるとともに,文章の形態を選択して適切な構成 を工夫する」こと,ウでは「書いた文章を読み返し,文章全体を整える」ことと示されている。 また,指導計画の作成と内容の取扱い3取り上げる教材についての観点(2)オでは「人生について 考えを深め,豊かな人間性を養い,たくましく生きる意志を育てるのに役立つ」こと,キでは「我 が国の伝統と文化に対する関心や理解を深め,それらを尊重する態度を育てるのに役立つ」ことと 示されており,本単元と関連する内容となっている。 本学習材では,卒業期を迎えたこの時期に,これまでの中学校生活を振り返り,今の自分自身の 心境を手紙に綴るという活動を行う。しかし,実際には投函せず,「仮に手紙を差し出すとすれば」 という設定で活動を行う。手紙の宛先は, 「過去の人物」として,歴史上の偉人や学習で登場した作 家及び物語に登場した人物の他, 「自分に影響を与えた人物」として,現在も実際に自分の身近なと ころに存在する家族や恩師,親友等,将来の生き方を決定づけるような影響を与えてくれた人物に 宛てて手紙を書くという設定にする。手紙の宛先を誰にするのかを考えさせたり,文章を書く過程 において,内容をどうするのか,書き方をどうするのかを考えさせたりすることによって,相手意 識をもたせた文章が書かせられると考える。 中学3年生の「書くこと」における学習の系統及び既習事項との関連として,これまでに以下の ような学習を行った。まず,「編集して伝えよう」という単元では,相手意識をもち,相手にとっ て分かりやすい文章となるように,記事の内容や形式を工夫して,日本文化を紹介するガイドブッ クづくりを行った。次に,「観察・分析して論じよう」という単元では,批評の対象について,観 察・分析したり,比較したりして判断を下すとともに,論理の展開を工夫し,資料を引用したりし て,説得力のある批評文を書く学習を行った。 本単元では,手紙という形式をとり,基本的な手紙の書き方を再確認させる。主観的な自分の思 いを書き表す形式としては,ほかに感想文や日記もあるが,ここではあえて手紙という形式をとる ことで,相手意識をもった文章を書かせられるとともに,言いたいことを伝えやすくするために, 主文の構成を工夫した文章を書かせられると考える。なお,手紙の学習としては,小学校1・2学 年で「伝えたいことを簡単な手紙に書くこと」 ,3・4年生で「目的に合わせて礼状を書くこと」, 中学2年生で「社会生活に必要な手紙を書くこと」を行ってきた。したがって,ここでの学習は, 小・中学校9年間の「書くこと」の学習及び「手紙を書くこと」の学習の集大成として位置付ける。 以上のことにより,本単元を設定した。 KA1 4 生徒観 手紙に関する学習は,小学校低学年において簡単に学校の出来事を手紙に書いたり,小学4年生 では礼状を書いたりする学習をしてきている。小学校段階で,手紙の基本的な形式(前文,主文, 末文,後付け)について学習し,どういう順序でどういう事柄をどこに書くのかということまでは 学習している。さらに,中学校では,1年生で手紙の形式の再確認と封筒やはがきの表書について, 書写の指導事項として学習した。2年生では,職場訪問や福祉体験,高校訪問の礼状を前文と末文, 後付けの部分はすべて統一し,主文はそれぞれに考えさせて書かせた。 また,手紙に関する既習事項のアンケート結果を行った。その結果,まず,手紙の書き方につい ては,半数以上の生徒が概ね理解しているとの回答であった。前文における「拝啓」の使い方,文 章中における敬語表現についても,多くの生徒が理解していた。しかし,後付を正しい位置に書け た生徒は少なく,生徒の意識と知識の定着のずれを感じた。次に,手紙を書く時にどういうことを 意識しているかについて,多くの生徒が,相手のことを考えて書くということを挙げていた。 なお,アンケート結果の詳細は以下の通りである。 (対象:3年2組,実施日:11 月 27 日,回答数:33 人) 質問1 あなたは,最近,手紙を書いたり,もらったりしたことはあるか。 はい 0人 いいえ 33 人 質問2 あなたは,最近,Eメールを送ったり,もらったりしたことはあるか。 はい 21 人 いいえ 12 人 質問3 あなたは手紙文の書き方を理解しているか。 ア 大変当てはまる 1人 イ ややあてはまる 21 人 ウ あまりあてはまらない 10 人 エ ぜんぜん当てはまらない 1人 質問4 手紙文を書く時には,どんなことに気を付けて書けばいいと思うか。 (記述) 相手が理解できるように 言葉づかい 手紙文の書き方 相手と自分の立場をわきま えて 文字を丁寧に 読む人に分かりやすく 時候の挨拶 敬語の使い方 手紙の目 的をはっきりさせる すぐには主文に入らずに前文を書く 相手の気持ちを考えて 相手に失礼のないように 前文として時候の挨拶や相手の安否を気遣う内容 表記 質問5 手紙の頭語・結語について,「敬具」で結ぶ時の頭語は何になるか。(記述) 拝啓 23 人 草々 2人 その他 2人 無回答 6人 質問6 敬語の使い方について,職場体験のお礼状で「報告書を同封いたしましたので,どうぞ 所内の皆様で( ) 。」の( )にふさわしい言葉を書きなさい。 (記述) ご覧ください 23 人 お読みください 2人 その他 5人 無回答 3人 質問7 手紙の後付けについて,「日付」「差出人」 「宛先」を正しい位置に書きなさい。 (記述) 正解 8人 誤答 24 人 無回答 1人 以上のことから,本単元における生徒の課題を次のように考えた。 一つ目は,手紙の書き方について形式を正しく理解し,書けるようになること。二つ目は,敬語 表現を含めて,手紙の読み手にふさわしい文章表現を考えて書かせること。三つ目は,手紙に対す る関心を高めるとともに,意欲的に手紙を書こうとする心情を育ませること。 5 指導観 (1) 手紙に対する関心・意欲を高めることについて 生徒の日常として,自分の思いを書いて伝え合う手段は,手紙ではなくEメールが主流になって いる現状がある。よって,日本古来からある手紙について改めて考える場を設定するとともに,意 欲的に手紙を書こうとする心情を育みたいと考える。 手紙は,単に自分の心情を一方的に綴るものではない。時候の挨拶を通して,自然の移り変わり に関する自分の思いや相手の安否を気遣う書き手の気持ちを伝えることができる。また, 「拝啓」と いう頭語からも想像できるように,手紙は相手のことを敬い,敬意の念が込められたものであるこ とを理解させたいと考える。 (2) 思いを伝える相手の設定について(課題設定に関すること) 実際に差し出すことはしないが,手紙の宛先は, 「過去の人物」または「自分に影響を与えた人物」 とする。これまでの生活を振り返らせ,自分の生き方やこれからの将来に多大なる影響を与えた人 と捉えさせる。 (3) 伝えたい内容について(記述に関すること) KA2 「中学校生活を振り返って」と「将来を展望して」という観点から手紙に書く内容を考えさせる。 具体的には,あることがきっかけとなり,将来の方向性が見つかり,今後こういう努力をしたいと いうような内容を書かせる。たくさんの考えを書き出させるために,イメージマップを活用させる。 その後,中心となる内容を絞り込ませ,それを付箋紙に書かせる。なお,自分の思いを書く活動で はあるが,手紙の形式で書くということは,差し出す相手によって書き方や敬語等の表現も変わっ てくるため,読み手を意識し,読み手にとって分かりやすい文章になるように書かせる。 (4) 手紙の形式及び下書きについて(構成に関すること) 手紙の基本的な書き方として,どこにどんな事柄を書くのかを確認する。また,季節に合った時 候の挨拶や相手の安否を気遣うような表現を考えさせたり,主文の中身についてどんな内容をどん な順番で並べればより分かりやすくなるか,構成を考えさせたりして自分の思いを伝えさせる。 (5) 推敲から清書について(推敲・交流に関すること) 下書きを書き終えたら交流活動を設定し,互いの文章を読み合い,感想や助言等の意見交換をさ せる。他者の文章を読み合うことを通して,自分の表現に役立てたり,さらに自分の考えを深めた りするようになると考える。また,推敲・交流の視点として,以下のように考える。まずは,手紙 文の形式に則って書かれているか。次に,主文の構成について,自分が言いたいことが相手に分か りやすく伝わるような工夫がされているか。最後に,読み手にとって分かりやすい内容,表現にな っているか。さらに,誤字脱字や表記に間違いはないかという点に留意させたいと考える。 6 自己の研修課題との関連 (1) 研修テーマ 目的や意図に応じ,自分の考えを明確に伝えることができる文章を書くための授業を目指して ― ねらいや題材に即した文章の構成や記述の在り方の指導を通して ― (2) 目指す授業像 ① 文章を書き進めていく過程で,相手意識や目的意識をもたせ,書くための材料や書こうとする 内容に対して自分の考えを明確にさせるような授業。 ② 目的や意図を理解させるとともに,課題について集めた材料を分かりやすく伝えるために,構 成や記述の仕方を工夫して書かせるような授業。 ③ 生徒同士が課題構想や課題解決の過程において互いの考えを伝え合ったり,書いた文章を読み 合ったりする場を設定し,ねらいに即した文章であるか,工夫点はどこかなど,評価の視点を明 確にしてお互いに確認し合うことで,さらに考えを広げ,深めさせるような授業。 (3) Ⅲ期の課題 ① 書く事柄のねらいや題材に即した「構成」と「記述」,「推敲」の部分に焦点を絞り,指導す べき内容を明確にし,具体的な学習事項等を生徒に提示できるようにしたいと考える。 ② 交流場面における効果的な教師のはたらきかけを工夫し,話合いや意見交換を通して生徒の考 えを広げたり,より深めさせたりしたいと考える。 (4) Ⅲ期の具体的な取組 ① 「書くこと」の活動を「課題設定」「構成」「記述」「推敲」「交流」の5段階に分け,それ ぞれの過程における目標と指導内容を整理し,再確認する。 ② 手紙を書く相手や目的,伝えたい内容の中心をはっきりさせ,自分の思いや気持ちを明確に伝 えることができるように,主文の構成を工夫して書かせる。また,記述においては説得力のある 表現になるよう工夫させるとともに,推敲では,頭語や結語を添えて手紙の形式を整えさせる。 ③ 交流活動では,他者の書いた手紙の下書きを読み合い,意見交換をさせる。その際,言いたい ことが読み手に伝わるかどうかという点について,内容や構成,表現の点から感想や助言を述べ させるようにする。これらの活動を通して,自分の表現に役立てたり,さらに自分の考えを深め たりさせる。 7 単元の評価規準 (1) 伝えたい内容や相手をはっきりさせ,自分の思いや気持ちを明確に伝えられるように手紙の主文 の構成を工夫して文章を書こうとしている。 (2) 中学校生活を振り返ったり,将来を展望したりして,自分の思いを手紙にまとめるとともに,下 書きを読み返して,手紙の形式を整えたり,手紙の頭語や結語を添えたり,読み手への思いを込め た前文や末文の表現を工夫したりして, 読みやすく分かりやすい文章で清書することができる。 KA3 (3) 書いた手紙を互いに読み合い,主文の中で書き手の言いたいことが伝わる文章であるか,読みや すく分かりやすい構成であるか,手紙文にふさわしい書き表し方をしているかについて意見を述べ たり,自分の表現の参考にしたりしている。 (4) 適切な語句や既習の漢字を選択するとともに,相手と自分のかかわりを意識して適切に敬語を使 った文章を書くことができる。 8 単元指導計画(評価計画も含む) 評価規準 時 単元の目標 学習活動 1 これまでの 生 活を振り返るとと もに ,将 来 に つ いて考 え なが ら 手紙の宛先を選 択し,手 紙の内 容を考えること ができる。 2 過去とのかか わりから自分を 見つめ直し,主 文の構成を工夫 して今の思いを 手紙に書くこと ができる。 本 時 3 手紙の書き方 について理解す るとともに,主文 以外の文章を書 くことができる。 下書きしたも のを,交流活動 を通して推敲し た後,清書する ことができる。 言語についての 知識・理解・技能 関心・意欲・態度 書く能力 学習目標及び学習活 動に対して見通しをも つ。 ○ 過去とのかかわりから 自分に向き合う時間の中 で,手紙の宛先を考え る。 ○ 「中学校生活を振り返 って」「将来を展望して」と 題して自分の思いをイメ ージマップに書き出す。 ○ イメージマップに書き出 したことを基に,手紙の主 文の内容を考えて,見出 しや項目を付箋紙に書 く。 ○ 絞り込んだ内容を基 に,構成を工夫して手紙 の主文の下書きをする。 今の思いを手紙 の形 式で 書く 学 習 に意 欲的に 取り 組 もうとする。 過去とのかかわ りの中から手紙の 宛先となる相手を, 自 分 との 関 係 性 を 考えながら選択しよ うとしている。 今の思いを手紙の 形式で書くのにふさわ しい宛先を選ぶととも に,その理由を書き表 すことができる。 イメージマップに中 学校生活や将来に ついて,自分なりに 思い浮かべたことを 書き出すとともに,付 箋紙に見出しや項目 を書くことができる。 過去とのかかわ りから自分を見つ め直し,主文の構 成を 工 夫し て将 来 への意気込みを綴 った文章を書こうと している。 「中学校生活を振 り返って」「将来を展 望して」について,自 分の思いが伝わるよ うに構成を考え,付 箋紙に書き出した今 の思いを 並べ 替え, 内容を 膨らませた文 章を書くことができ る。 主文の下書き において,適切 な語句や既習の 漢字を選択する とともに,相手 と自分のかかわ りを意識して適 切に敬語を使っ た文章を書くこ とができる。 ○ 手紙の書き方に ついて関心をもち, 意欲的に主文以外 の下書きを書こうと している。 意欲的に交流活 動を行い,推敲や 清書の活動に役立 てようとしてい る。 手紙の形式につい て理解し,前文や末 文,後付の書き方に 注意して文章を書くこ とができる。 下書きを読み返して 間違いがないかを確 認して書き直したり, 分かりやすい表現に 直したりした上で,清 書を書くことができ る。 推敲や清書に おいて,適切な 語句や既習の漢 字を選択すると ともに,相手と 自分のかかわり を意識して適切 に敬語を使った 文章を書くこと ができる。 間 ○ 手紙の書き方として, 形式(前文・主文・末文・ 後付け),時候のあいさ つ,頭語・結語について 確認する。 ○ 下書 き し た も の を互 いに読み合い,推敲し合 う。 ○ 推敲後,書き間違いや 分かりにくいところを 直したりしながら,下書 きしたものを清書する。 KA4 指導支援の留意点 これまでの生 活を振り返って, 将来の生き方に 影響を与えるきっ かけになった人 物に宛て,影響 をもたらしたよう な事柄を書き出 させる。 手紙の意義 や 手紙を書く時の 心境などに触 れ,情意面から 自ら手紙を書き たいという思い にさせる。 過去の事柄が 一つのきっかけと なり,将来の自分 像につながって きているということ が分かるような文 章を書かせる。 デリケートな内 容が含まれること も予想されるので 事前に,書き終 えたものは推敲 する場面で互い に読み合うとい うことを伝え る 。( 構 成 や 記 述,推敲の力を 身に付けるため の言語活動とし て手紙を書く。) 時候のあいさ つは決まった言 い方のものがある が,自分の思い や相手を気遣う 内容が含まれる ような文章を考え させる。 手紙の特質と して敬語の言い 回しなどの表現 に気を付けさせ る。 9 本時の指導 (1) 学習テーマ 「主文の構成を工夫して,自分の思いが伝わるような文章を書こう」 (2) 本時のねらい ① 過去とのかかわりから自分を見つめ直し,主文の構成を工夫して将来への意気込みを綴った文 章を書こうとしている。 ② 「中学校生活を振り返って」 「将来を展望して」について,自分の思いが伝わるように構成を考 え,付箋紙に書き出した今の思いを並び替え,内容を膨らませた文章を書くことができる。 (3) 本時の指導にあたって ① 目指す生徒像 手紙の特性を理解するとともに,過去とのかかわりから自分自身を見つめ直し,将来を展望す るような内容の手紙文の構成を工夫して書くことができる。 ② 具体の手だて ○ 構成の工夫について 相手に対して言いたいことが伝わるようにするための構成の工夫として,まず,前時に,イ メージマップを用いて付箋紙に書き出させた今の思いに関する事柄を並べ替えさせる。次に, 付箋紙の順番に沿って,文章の内容を膨らませ下書きを書かせる。 ○ 記述について 手紙の形式の文章であるが,実際には投函しないものである。しかし,自分が選択した相手 に書くと想定して,相手とのかかわりを意識して自分の思いを書かせる。敬語表現などの表記 にも留意させる。また,説得力のある記述になるよう,具体的な事例を挙げて,宛先にした理 由や手紙を宛てる相手とのかかわりや出来事,自分の将来展望について書かせる。 (4) 指導過程 段階 導入 7分 学習活動 1 学習テーマについて知る。 形態 (1分) 指導・支援上の留意点 ○ 学習テーマは黒板に掲示する。 本時の学習テーマ 一斉 「主文の構成を工夫して,自分の思いが伝わるような文章を書こう」 2 手紙の主文を書くに当たっての気持ちを高める。 (6分) (1)アンジェラ・アキの「手紙」という曲を聴き,手紙に 対するイメージを膨らませるとともに,自分が書こうと している手紙の主文や宛先について思いや考えを 深める。 (2)手紙の主文を書くにあたっての留意点を確認す る。 展開 36分 一斉 3 相手の心に届くような構成を工夫する。 (6分) 一斉 個人 個人 自分の思いが伝わるような主文の構成を,付 箋を用いて考えましょう。 (例:生徒の記述・並び替えた内容) 宛先:過去の人物=松尾芭蕉 理由:奥の細道を読んで感銘を受けた 構成:① 中学校生活を振り返って ② 将来への展望について 内容:① について ○ 目的意識もなくなんとなく生活していた。 ○ 授業で奥の細道を学習した。 ○ 松尾芭蕉という人物や生き方に共感し た。 ② について ○ 自分は世界中を旅してまわり,新たな発 KA5 ○ 曲を聴かせることで,手紙への関心を 高めるとともに,共感的に聴かせることで 自分の思いや考えを深めさせる。 ○ 実際に投函する手紙ではないけれど も,中学校生活を振り返り,将来展望に ついて今の思いを伝えると仮定して,宛 先を選び,手紙文として書くことを再度確 認する。 ○ 宛先が違えば,伝えたい内容は同じだ としても書きぶりが変わってくることも説明 する。 ○ この段階までに書きたい内容・項目に ついては5~8つ程度に絞り込むことがで きていて,それらが付箋紙に書かれてある ようにする。 ○ 左記の内容を生徒に提示し,構成の工 夫の仕方についての参考とさせるととも に,教師がやり方の範を示す。 ○ 生徒各自で,分かりやすく伝えるため にはどのような順番で述べるのがいいの かを考えさせ,付箋紙を並び替えさせる。 ○ 付箋紙は,ワークシートに並べて貼り付 けさせる。 評価 見をみんなに伝えたい ○ 旅をするので英語の力を身に付けたい。 ○ 本を書くので本をたくさん読みたい。 4 3の付箋紙の項目ついて,さらに自分の思いが 込められた文章に膨らませて書く。 (30分) 個人 ○ 付箋紙に書いた項目について,さらに 詳しく具体的に自分の思いや考えを書か せる。 ○ 書けない生徒については,付箋の項目 から思い浮かぶ事例や気持ち等を導き出 して,言葉をつなぎ合せてやる。 ○ 過去とのかかわりから自分自身を見つ めさせ,今の思いを書かせるようにする。 ○ 説得力のある表現になるよう,具体的な 根拠や事例を取り上げて書くようにさせ る。 ○ 書いている途中や書き終えたとき,付箋 にない事柄を書いても構わないし,順番 が替わっても構わない。 個人 ○ ワークシートに本時の学びや気付き等を 簡単に記入させる。 ○ 机間指導をして,生徒の記述内容を把 握して,発表者を吟味する。 一斉 ○ 次の学習活動に対するイメージをもたせ ることで,興味・関心を高め,学習への意 欲を継続させる。 付箋紙の項目について文章を膨らませ,主 文の下書きを書いてみよう。 ※字数:300 字~400 字程度(10 行~13 行) (生徒の記述例) ○ 中学3年生の国語の授業で初めて「奥の細道」 に出会った。何度も繰り返し読んでいくにつれて, 芭蕉の「旅を人生と捉え」,旅に人生を捧げて生き ている姿にひかれてしまった。 ○ 30年後,自分はきっと毎日忙しく,世界を駆け まわっていることだろう。しかし,体も心も疲れ果て て,挫折して,夢をあきらめているかもしれません。 そんな時は,芭蕉の旅を思い出すとともに,中学 生の時に立てた「将来の目標」をもう一度思い起こ したいと思います。少年時代の純粋な気持ちを取 り戻すために。 終結 7分 5 本時の活動のまとめ・振り返り (5分) 今日の授業を通して新たに気づいたことや学 んだことを簡単にまとめましょう。 【関心・意欲・態度】 過去とのかかわりか ら自分を見つめ直し, 主文の構成を工夫し て将来への意気込み を綴った文章を書こう としている。( 観 察・ 発 表) 【書く能力】 「中学校生活を振り 返 っ て」「 将 来 を 展 望 し て」 につ いて, 自 分 の思いが伝わるように 構成を考え,付箋紙 に書き出した今の思 いを並び替え,内容を 膨らませた文章を書く ことができる。 (観察・ワークシート) 【言語についての知 識・理解・技能】 適切な語句や既習 の漢字を選択するとと もに,相手と自分のか かわりを意識して適切 に敬語を使った文章 を書くことができる。 (観察・ワークシート・発表) ○ 記述後,全体で発表をする。 6 次時の学習について知る。 (2分) 次の時間は,手紙の書き方を確認したあと, 主文以外の下書きをします。 10 本時の評価 評価規準 満足できる(A) おおむね満足できる(B) 努力を要する生徒への 手立て(C) 【関心・意欲・態度】 過去とのかかわりから自分を見つ め直し,主文の構成を工夫して将 来への意気込みを綴った文章を書 こうとしている。(観察・発表) 【書く能力】 「中学校生活を振り返って」「将 来を展望して」について,自分の思 いが伝わるように構成を考え,付箋 紙に書き出した今の思いを並び替 え,内容を膨らませた文章を書くこ とができる。(観察・ワークシート) 過去のかかわりと,将来への意 気込みなどの自分の思いが伝わ るように,主体的に主文の組み立 てを考えて下書きを書いている。 構成を工夫するために付箋紙 を並べ替えて,自分の思いが伝 わるような下書きを書いている。 宛先と なる人 物とその生徒と のかかわりや出会ったきっかけな どを考えさせ,その人に対する今 の自分の思いを考えさせる。 それぞれの事柄に対して,相手 のことを意識しながら,自分の思 いが伝わるような主文の組み立て を行うとともに,宛先にした理由や 相手との出会いのきっかけや思い 出が具体的に書かれている。 付箋紙に書き出した事柄に関 連のある内容を膨らませて書いて いるとともに,宛先にした理由や 相手との出会いのきっかけや思 い出が具体的に書かれている。 最も書きたい内容を 1 つに決 められるよう,問いかけをしながら 絞らせる。また,それと関連する 内容を短い言葉や表現で繋げさ せていく。 【言語についての知識・理解・技能】 表記に誤字脱字がなく,言葉の 意味を理解して,相手のこと思い やったり,自分の思いを伝えたり するのに,よりふさわしい言葉を選 び,正しく用いられている。 文章表現に誤りがなく,表記に 誤字脱字がない。また,漢字で書 けるところは正しく書き表されてい る。尊敬語,謙譲語,丁寧語を使 って文章が書かれている。 漢字は,辞書で調べさせて書 かせるようにする。敬語は,文末 は「です」「ます」,相手の動作は 「お~なる」「~される」の形で書 かせるようにする。 評価の観点 適切な語句や既 習の漢字を 選 択するとともに,相手と自分のかか わりを意識して適切に敬語を使っ た文章を書くことができる。(観察・ワ ークシート・発表) KA6 11 実践を終えて 過去とのかかわりから自分を見つめ直し,主文の構成を工夫して将来への意気込みを綴った文 章を,自分の思いが伝わるように構成を考え,付箋紙に書き出した内容を並べ替えさせてから書 かせることをねらいとした授業を行った。 まず,導入において,書こうとしている手紙の内容や宛先について,実際に投函する手紙では ないが,中学校生活を振り返り,将来展望について今の思いを伝えると仮定して,宛先を選び, 手紙文として書くことを再度確認した。この段階までに,書きたい事柄が付箋紙にしっかりと書 き出されていないと,これ以降の活動に支障をきたしてしまう。実際は,前時の授業内でまとめ 終わらなかった生徒に対しては,休み時間や放課後の時間を使って書きたい内容を付箋紙に書か せるとともに,事前に生徒の付箋紙の内容について教師が点検した。 展開において,付箋紙の並べ替えについて黒板を使って説明をしたが,若干予定よりも時間が かかってしまい,下書きを書かせる時間が 25 分程度になってしまった。しかし,ほとんどの生徒 が時間内に下書きを書き終えることができた。やはり,事前に書く内容をイメージマップや付箋 紙を使って整理させ,個別にチェックしておいたことでスムーズな活動につながったと考える。 終結において,3分程度しか時間が取れなかったのだが,本時の振り返りを行わせたところ, 「スムーズに書くことができた」 「付箋を使ったのがよかった」というような前向きな意見も聞か れた。一方で,「書いている途中で書きたいことが変わってしまった」 「300 字書くのは大変だ」 というような意見も出されていた。今回は付箋紙やワークブックを活用して書かせてみた。これ らを活用して書かせたことは,目指す授業像の「書くための材料や書こうとする内容に対して自 分の考えを明確にさせる」「集めた材料を分かりやすく伝えるために構成や記述の仕方を工夫し て書かせる」に迫る手だてとして有効であったと思われる。 最後に,手紙文を書かせることについてであるが,本来,手紙は書きたい対象がいて,書きた い用件があり,書き手と読み手にしか分からないようなものを伝え合うものであり,読み手への 敬意が込められたものであると考える。そうしたときに,教科の課題として,宛先や内容を限定 したものを書かせたり,読み手以外の他人がその手紙を読むという活動を行わせたりすることに 対する配慮等,難しい側面があると感じた。手紙のよさを伝えつつ,書くことの力を伸ばす教材 として取り扱うためにはどうすべきかが課題であると考える。 KA7 3年国語 学習テーマ 組 今の思いをまとめよう 時を超える手紙 3年 ② 番 氏名 主文の構成を工夫して、自分の思いが伝わるような文章を書こう 学習目標 ○ 過去とのかかわりから自分を見つめ直し、主文の構成を工夫して将来への意気込みをつづった文章を書こう としている。 (関心・意欲・態度) ○ 「中学校生活を振り返って」 「将来を展望して」について、自分の思いが伝わるように構成を考え、付箋紙 に書き出した今の思いを並び替え、内容を膨らませた文章を書くことができる。 (書くこと) ②「将来を展望して」 1 手紙文の主文の構成を考えよう (付箋に書いたものを、書く順番に貼り付ける) ①「中学校生活を振り返って」 夢は世界中を旅してまわること (例) 目的意識もな くなんとな く生活していた 世界中を旅してまわり新たな発見をみんなに伝 世界を旅するので英語の力を身に付けたい えたい 授業で奥の細道を学習し た 松尾芭蕉という 人物や生き 方に共感し た KA8 2 自分の思いが伝わるような文章を書いてみよう。 (手紙文の主文の下書きを書く) ) ( 例 松尾芭蕉 ① 手紙の宛先 10 13 ) 30 ② 宛先に選んだ理由( 例 芭蕉の生き方に感銘を受けたから 20 平成二十四年十二月一日 松尾芭蕉 様 KA9 3 今日の授業を通して分かったことやできるようになったことを書きましょう。 石巻市立河南東中学校三年一組 河南 太郎 (例)拝啓 寒さが身にしみる季節になりました。芭蕉様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。私 は、三月に行われる高校入試に向けて、受験勉強に励む毎日を過ごしています。 さて、私は、これまで、日々の生活や将来に対して意識することなく、なんとなく毎日を過ごしていま した。そんな時、私は中学三年生の国語の授業で、初めて「奥の細道」に出会いました。何度も繰り返し 読んでいくにつれて、芭蕉様の「旅を人生と捉え」 、旅に人生を捧げて生きている姿に強く心をひかれてし まいました。特に、紀行文「奥の細道」では、地元石巻での出来事が書かれていて、とても興味をもって 読むことができました。 もうすぐ卒業するわけですが、私は、芭蕉様との出会いをきっかけとして、将来、自分も様々な土地を 旅してまわりたいと思いました。きっと三十年後には、毎日忙しく、世界を駆け周っていることだろうと 思います。そして、芭蕉様と同じように、旅を通して発見したことを多くの人に伝えたいと思います。そ のためにも、英語を勉強し、世界中の人と話ができるようにしたいと思います。 敬具 10
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