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2016 年 3 ⽉
イールドを求めて:豪州商業⽤不動産の⾒通し
低⾦利・低成⻑という環境下におけるイールド追求の動きから、豪州の商業⽤不動産セクターでは取引が活発化しています。JLL リ
サーチによると、過去 12 ヶ⽉における取引規模は 270 億豪ドルに達しています。キャップレートは低下しており、この流れを先導する産
業⽤不動産セクターの中には、既に 2007 年のピークを越えたサブセクターもあります。このレポートでは、不動産市場の現状と今後 2
年の⾒通しを⾒ていきます。
低成⻑環境下において、イールド追求の動きはもう少し継続
MICHAEL KINGCOTT
図 1:イールド⽐較(プライム・グレード物件の平均)
不動産運⽤戦略&リサーチ、ヘッド
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資源ブームの終焉や、シドニーとメルボルンにおける住宅市場の
過熱にも関わらず、⾼⽔準にある豪州の直接利回りが海外投
資家の関⼼を集めています。また、豪ドル安を受けて豪州不動
産は 2~3 年前より割安になっており、海外投資家にとって、その
魅⼒は⼀層⾼まっています。
出所: AMP キャピタル
イールド追求の動き(そして、キャップレートの低下)は今後 12〜18
か⽉間程度継続すると予想しています。この理由は次の通りです:
•
豪州経済の成⻑⾒通しは、短期では⼒強さに⽋けるものとなり、
イールド選好の動きを引き続きサポートすると⾒込まれます。GDP
成⻑は年率 2.0~2.5%、2010 年代終わりにかけて徐々に加速
すると予想しています。世界経済に関しては、⽶国が改善に向
かっているものの、中国経済の軟化を受けて、国際通貨基⾦
(IMF)が経済⾒通しを引き下げています。
•
他資産クラスと⽐較して、不動産は割安とみられます。最近の
キャップレート低下を踏まえても、債券イールドとのスプレッドは、
過去最⾼に近い開きが維持されています。
•
豪州経済、または中国経済の成⻑が後退する場合においては、
•
不動産融資の伸びは、レバレッジを活⽤する不動産投資の回帰
を促し、新たな価格⽔準を形成する可能性があります。
キャップレートの⾒通し
図 1 が⽰す通り、キャップレートは今年更に低下、全体のセクター平均
は 2007 年ピーク時の⽔準近辺になると予想しています。しかし、トロ
フィー資産のような⼈気の物件や市場、賃料上昇⾒通しが改善してい
る市場、そして(レバレッジが最も有効である)安定的に⾼利回りを
提供する物件に関しては、海外市場でも確認されているように、2007
年ピーク⽔準を下回る可能性が⾼いと考えます。最も⼤きな動きが⾒
込まれるのは、キャップレートの縮⼩サイクルで出遅れ、ファンダメンタル
ズが改善基調にある郊外型ショッピング・センター、そしてシドニー/メル
ボルンのオフィス(プライム及び B グレード物件)セクターです。
経済成⻑⾒通しとインフレが改善に向かえば、キャップレートは安定化
すると⾒込まれ、イールド選好のセンチメントが緩和されるでしょう。これ
更なる利下げの可能性があります。コアインフレ率は豪州準備銀
は、現在の所 2017 年辺りとなりそうです。キャップレートの縮⼩が進⾏
⾏(RBA)の⽬標である 2〜3%レンジの下近辺で推移してお
する中で、不動産価格は現在、サイクルの頂上⼿前(価格上昇の減
り、経済刺激策としての利下げの余地が残されています。
速ステージの後半)近辺にあります。⼒強い賃料の伸びが⾒込まれる
か、他⽤途への再ポジショニングが可能な物件でない限り、魅⼒的なエ
障害物となり得るシナリオ
ントリー・ポイントであるとは⾔えません。
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リセッション:ニュー・サウス・ウェールズ州とビクトリア州では景気
キャップレートの低下は、豪州商業⽤不動産のトータル・リターンを 2 桁
回復のモメンタムが⾼まっており、資源セクターのファンダメンタルズ
台へと押し上げており、この流れはキャップレートが底を打つまで継続す
後退を相殺すると⾒られることから、この可能性は低いと考えます。
る⾒通しです。今後 3 年間、各セクターにおけるプライム・グレード物件
利下げや豪ドル安といった景気⾃動安定化装置は、⾮資源経
の平均リターンは、年率 9.5〜10.0%程度になると予想しています。よ
済のサポート役となるでしょう。
り⾼いリターンが期待されるのは、上記の通り、キャップレートの縮⼩サイ
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⽶国における極度な利上げ:債券市場にボラティリティを引き
クルで出遅れ、賃料成⻑⾒通しが改善しているセクターで、⾮資源州
起こし、投資家信頼感が損なわれた結果、ボラティリティが株式
のオフィス市場や郊外型のショッピング・センターなどです。
市場へと波及し、オルタナティブ資産やコモディティ、新興国市場
から資⾦が流出します。中国が市場安定化を⽬的に⽶国債を
売却している点はリスクであり、注視が必要です。
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グローバル不動産価格の⼤幅下落:安定したキャッシュ・フロー
とイールドを求める投資家の動きから、グローバル商業⽤不動産
市場におけるキャップレートは、主要都市を中⼼に、2009 年以
降低下しています。キャップレートは現在、2007 年のピークを下
回る⽔準まで低下して来ています。グローバルでのこうしたイール
ド低下局⾯に出遅れた(現在キャッチアップ中の)豪州では、
⽶国の利上げに対する軽率な対応と債券市場における過剰反
応から、債券利回りが予想以上に上昇しており、不動産のプライ
シング(そして、不動産に対する投資家⼼理)を不安定にさせ
る可能性があります。
•
イールド追求の動きの早期減速:中国経済とコモディティ価格
が安定化し、⽶国の利上げが投資市場に過度なボラティリティを
引き起こさなければ、イールド追求の動きは早ければ 2016 年中
旬頃にも後退し始めると⾒込まれます。
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