高齢者高血圧における 各種降圧薬の動脈壁への影響

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原著論文紹介③
高齢者高血圧における
各種降圧薬の動脈壁への影響
Takami T, Shigemasa M. Efficacy of various antihypertensive agents as evaluated
by indices of vascular stiffness in elderly hypertensive patients. Hypertens Res
2003; 26: 609-14.
高見武志 クリニック神宮前
4mg/日,シルニジピン10mg/日,ニフェジピンCR
背 景
20mg/日で治療期間は3ヵ月とした。
高齢者高血圧ではarterial stiffnessの上昇と,そ
れに伴う脈圧の増大が心血管疾患発症の重要な危
結 果
険因子である。近年,arterial stiffnessの指標とし
各群の症例数はバルサルタン群20例,テモカプ
てbaPWVを非侵襲的かつ簡便に測定することが可
リル群20例,シルニジピン群20例,ニフェジピン
能となった。各種降圧薬のPWVに及ぼす影響につ
群16例であり,エントリー時背景因子はすべて群
いては従来ACE-Iでの報告はなされているがARBや
間差を認めなかった。
Ca拮抗薬では十分な検討がなされておらず,降圧
薬間での差異を検討した報告も少ない。
脈圧およびbaPWVの減少効果は,ARB>ACE-I=
L&N型Caチャネル拮抗薬>L型Caチャネル拮抗薬の
順であり,L型Caチャネル拮抗薬では改善を認めな
目 的
かった(図1)。
高齢者高血圧における脈圧およびbaPWVへの影
一方,Δ脈圧(PP)とΔbaPWVの相関は全症例で
響を,ARB(バルサルタン)
,ACE-I(テモカプリル)
,
有 意 な 相 関 を 示 し( p < 0 . 0 0 1 ), 脈 圧 の 下 降 が
L&N型Caチャネル拮抗薬(シルニジピン)およびL型
arterial stiffnessの改善に寄与することを認めた。
Caチャネル拮抗薬(ニフェジピンCR)を用い比較検
しかし群別に検討した結果バルサルタン群のみに
討した。
おいてΔbaPWVとΔPP,Δ収縮期血圧(SBP),Δ
拡張期血圧(DBP),Δ平均血圧(MBP)のいずれに
方 法
ついてもその相関は認められなかった(表1)
。
高齢者高血圧患者(65歳以上)76名を対象とした。
治療薬はバルサルタン80mg/日,テモカプリル2∼
表1
PWVの変化(ΔPWV)と各種血圧指標の相関
ΔSBP=Δ収縮期血圧,ΔDBP=Δ拡張期血圧,ΔMBP=Δ平均血圧,ΔPP=Δ脈圧。
ΔPWV
バルサルタン
テモカプリル
*
シルニジピン
計
0.236
0.517
ΔDBP
−0.092
0.052
0.458*
−0.809**
−0.616**
ΔMBP
−0.011
0.305
0.362
−0.622**
−0.528**
−0.252
0.821**
0.620**
0.252
0.509*
*:p<0.05,**:p<0.01。
Arterial Stiffness動脈壁の硬化と老化 No.6 2004 1346-8375/04/¥400/論文/JCLS
0.608
**
ΔSBP
ΔPP
−0.017
ニフェジピンCR
0.084
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図1 高齢者高血圧における
baPWVの変化
(ΔbaPWV)
テモカプリル
シルニジピン
ニフェジピンCR
−100
ΔbaPWV(cm/sec)
ARB(バルサルタン),ACEI(テ
モカプリル),L&N型Caチャネ
ル拮抗薬
(シルニジピン)
および
L型Caチャネル拮抗薬
(ニフェジ
ピ ン C R )を 3 ヵ 月 間 投 与 し ,
baPWVの変化(ΔbaPWV)を比
較検討した。統計的に有意な
baPWVの減少は,バルサルタン,
テモカプリル,シルニジピン群
でみられた。ΔbaPWVが最も小
さかったのは,ニフェジピン
CR群で,ΔbaPWVが特に大き
かったのはバルサルタン群であ
った。
バルサルタン
0
mean±SD
:p<0.01
One-way ANOVA
with Scheffe’s test
−200
**
−300
**
−400
−500
**
**
**
−600
考察と結論
**
関がみられることに対し,ARBではいずれの血圧
の指標ともbaPWVの変化には相関が認められなか
今回の成績ではARBにおいて最も大きなbaPWV
った。このことは降圧効果以外のarterial stiffness
の減少効果が示されたが,興味深いことに他の3群
改善作用としてアンジオテンシン受容体をブロッ
ではbaPWVの改善と血圧の変化の間に何らかの相
クすることの重要性を裏づけるものである。
高齢者高血圧における各種降圧薬の動脈壁への影響