CFA® Newsletter

CFA® Newsletter
金融・投資関連 参考情報ニュースレター
No.015
2011 年 10 月号(隔月刊)
Contents
Topics


アジア太平洋地区キャリアガイドを発行
本年の国内レベル III 合格者数が 85 名に
CFAJ Update
CFA News & Trend
CFA Magazine 9-10 月号より






アフリカ投資の魅力 Into Africa
IT バブル再来か? Dot-com Redux?
国際財務報告基準(IFRS):適用すべきか、せざるべきか IFRS: To be or Not to Be
万能薬はない-アジアの PPP 事業 One Size Doesn’t Fit All
サプライチェーン Chain Reaction
忍び寄る ETFs のリスク Emerging Threat Fund
CFA People


委員会紹介 「広報委員会・翻訳小委員会」
書籍紹介 「チャレンジする年金運用-企業年金の未来に向けて」
本ニュースレターでは、世界の公正な投資市場をリードする専門資格 CFA®(CFA 協会認定証券アナリスト)の認
定・推進機関である CFA 協会の活動から、情報をお届けいたします。取材の参考資料としてご活用いただくことが
できれば幸いです。
CFA協会ならびに日本CFA協会の詳細はホームページをご参照ください。
CFA協会 http://www.cfaj.org/
一般社団法人日本CFA協会 http://www.cfainstitute.org
[CFA 協会会員ならびに一般からのお問い合わせ先]
一般社団法人日本 CFA 協会 広報担当:塩澤由利子
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町 1-3-8 共同ビル(昭和)
Tel 03-3517-5471/Fax 03-3517-5472
[報道関係のお問い合わせ先]
CFA 協会 広報事務局
担当:福嶋貴徳/築比地一晃
Tel 03-5775-2161/Fax 03-5775-2162
[email protected]
1
Topics
アジア太平洋地区キャリアガイドを発行
CFA 協会ではアジア太平洋地区における投資プロフェッショナルと
将来業界で活躍しようとする志望者のための包括的なキャリアガイド
「
「CFA
協会アジア太平洋キャリアガイド」を発行しました。
」を発行しました。本ガイド
は 企業財務分析、リサーチ分析、株式セールス、倫理的投資コンサル
セールス、倫理的投資コンサル
ティング、国家経済のマネジメント、
経済のマネジメント、そして中央銀行の金融政策決定と
いったセクター
いったセクターなど広範囲の専門分野で活躍する
分野で活躍する、日本人資格者を含む
29 人の CFA 資格者を取り上げている他、キャリア形成のために必要な
る他、キャリア形成のために必要な
スキルや心構え、アジア太平洋地区で急成長するデリバティブ市場やイ
スラム金融の現状など、成長するアジア太平洋地区におけるキャリア形
成に役立つ内容を網羅しています
成に役立つ内容を網羅しています。また
CFA 資格がアジア太平洋地区
でどう評価されているか、グローバルなゴールドスタンダードとして国
家機関や規制当局、主要企業に認知されているかなど、投資プロフェッショナルのみ
家機関や規制当局、主要企業に認知されているかなど、投資プロフェッショナルのみならず将来業界に
就職を希望する学生にとっても、有益な情報が掲載されています。
「CFA 協会アジア太平洋キャリアガイド」はオンライン(www.bitly.com/CFA_CareerGuide2011)
協会アジア太平洋キャリアガイド」はオンライン(www.bitly.com/CFA_CareerGuide2011)で提供さ
れています。
本年の国内レベル III 合格者数が 85 名に
本年 6 月に実施された CFA 試験では、日本国内
国内CFA試験レベル
試験レベルⅢ合格者数
在住の受験者から 85 名がレベル III 試験に合格さ
れ、価値ある資格取得への難関を突破されました。
この合格者数は、昨年の 53 名に比べて 60%の増
加であり、近年の合格者数が 50-
-60 名であったこ
とを考えても、顕著な伸びであると言えます。こ
の好結果は各受験者の真剣な努力の賜であること
は勿論ですが、当協会の資格の認知度を高める活
動、そして受験者を支援し合格に導く活動が次第
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
2008
2009
2010
2011
に実を結んできていることも一因だと思われます。
当協会メンバーシップ委員会では、資格を紹介する受験者向けセミナーを開催し、また受験者会員制
度やメンター制度による受験者の支援を行っております。また今年から海外で定評のある CFA 試験準
備コースのプロバイダーと提携し、割引価格による国内受験者へのご紹介を開始しております。
備コースのプロバイダーと提携し、割引価格による国内受験者へのご紹介を開始しております。12 月と
6 月の試験を合わせた受験者数も、今年度は 2,288 名と、前年度比 15%の伸びを示しています。
%の伸びを示しています。
日本国内の CFA 資格者数は 1,100 名程度と我が国経済規模と比べて決して多いとは言えません。英語
のみで試験が行われているため、語学のハードルが高いことはよく言われることです。そうした条件下
でも受験者数、合格者数が高い伸びを示しているのは、国内の金融プロフェッショナルの間でグローバ
ル化への意識が高まりつつあることを反映しているのかもしれません。
2
CFAJ Update
このコーナーでは、メディアおよび会員の皆様に日本 CFA 協会の各分野での活動状況をお知らせして
参ります。
 [メンバーシップ]

本年 6 月の CFA 試験では新たに 85 名の方がレベルⅢに合格され、昨年の合格者数の 53 名から
大幅に増加しました。9 月末現在でそのうち半数近くの方々が手続きを終了し、CFA 資格取得者
になられました。

日本 CFA 協会では、CFA 資格取得に必要な 2 名のスポンサーからの推薦状の取得が困難な合格
者に対してスポンサーの紹介等も行っています。既に何人かの合格者の方々から依頼を受けて、
スポンサーの紹介を行いました。

[プログラム]
9 月から 10 月にかけては下記のセミナーを開催いたしました。
「和風資産運用の考え方」
(9 月 7 日)
「Implementation of IFRS13」(21 日予定が台風で 22 日に変更)「英国金融教育」(10 月 11 日)「日本
のソブリンリスク」
(12 日)。 また、海外からの講師を招いて「Exploring the Volatility Anomaly in Financial
Markets」(26 日)日本証券アナリスト協会(SAAJ)との共催で「ヘッジファンド未踏の領域を探る」(31
日午後 4 時~)を開催します。11 月は、11 日にウエブキャストや 15 日には「金融機関が目指す統合的ス
トレステストの方向性」等を予定しています。

[コーポレート・スポンサー]
コーポレート・スポンサー制度は、日本 CFA 協会の活動にご賛同いただける企業に財政的なご支援
をいただきながら、スポンサー企業の役職員の方にセミナーやイベントへのご参加等のメリットを享受
していただく制度です。現在、アセットマネジメント会社を中心に 10 社にコーポレート・スポンサー
になっていただいております。近々当協会のウェブサイトにコーポレート・スポンサー企業のロゴを掲
載させていただく予定です。

[アドボカシー]
先日日本 CFA 協会は日本金融市場の更なる発展に貢献するためにアドボカシー委員会のメンバーを
増やしました。リートガバナンスの大切さを金融市場参加者に理解してもらえるように活動をより活発
にするのが狙いです。また、投資分野における高い倫理水準の必要性を訴えることも以前より可能にな
ります。それに関連して、「CFA 協会
倫理規範および職業行為基準」(http://www.cfasociety.org
/japan/publications/Advocacy_japanese_code.pdf からダウンロード可)の普及にも力を入れる 予定です。

[ユニバーシティ・リエゾン]
引き続き第 4 回 CFA Institute Research Challenge (CFA IRC)の日程が進んでいます。9 月後半には倫理
講習が数回に分けて行われ、参加学生は CFA 協会の倫理規範・職業行為基準に対する理解を深めると
同時に、證券分析の社会的な意義を学びました。また、9 月 22 日には今年度の分析対象企業であるフェ
ローテック社による企業分析会(模擬 IR ミーティング)が開かれ、山村章(やまむら あきら)社長を
はじめとする合計 6 名の上級職員の方々が会社の戦略・将来性について丁寧にご説明下さっただけでは
なく、社長が会社を起業されるに至った経緯を詳しくお話頂き、若い世代の頑張りに強い期待を示され
ました。
現在は 10 月 27 日のレポート提出期限に向けて学生達の分析は最後の追い込みに入っています。
3

[倫理教育]
9 月にロスアンゼルスで CFA 協会の Society Leadership Conference が開催されました。世界各国、地
域のソサエティーの代表者が参加して CFA 協会のグローバルな活動、施策、戦略等についてプレゼン
テーション、ディスカッションを通じて認識、理解の共有化が図られました。その中で一貫したトーン
は、CFA 有資格者が高い職業倫理を持った投資専門家としてリーダーシップを発揮すべきということで
す。その背景には、投資家の信頼回復が至上命題という問題意識があります。CFA 協会のブランド戦略
でもそのことは強く意識されています。本 Conference の開会にあたり、CFA 協会の会長兼 CEO のジョ
ン・ロジャーズは「CFA 資格者がエシカル・インベストメント・プロフェッショナルとして積極的な発
言をしていく事が重要」と述べました。そして、同 Conference では CFA 協会の倫理・アドボカシー担
当の責任者から CFAJ の倫理トレーニング活動について賞賛の言葉を頂きました。CFAJ では新年度以降
も色々な機会を捉えて、倫理教育を積極的に提供していく予定です

[広報・翻訳]
引き続きプレスリリースの発信、当ニュースレターの編集に取り組みました。
翻訳小委員会では、
「世界における株主権の現状」マニュアル日本語版の改訂作業を継続しています。
それから当ニュースレター掲載の CFA Magazine9 月 10 月号から選んだ記事 6 本の要約翻訳を完了させ
ています

[ウェルス・マネジメント・フォーラム]
10 月 11 日、「英国における金融教育への取り組み」をテーマに、(財)日本証券経済研究所専門調
査員大橋善晃氏を講師にお招きし、以下の概要につき、お話いただきました。今後の日本での投資教育
への示唆に富む内容で、15 名の会員が出席し、活発な議論がなされました

[テクノロジー]
CFAJ ホームページの改良に着手しました。フロントページに掲示している情報を整理し、メンバー
のみならず、受験者、ノンメンバーの方にも見やすくすることを目指します。
久しぶりの Happy Hour を開催しました。20 名程のメンバーにご参加いただき、楽しい交流の場とな
りました。
4
CFA News & Trend
このコーナーでは、CFA Institute 会員に配布される隔月刊の会員誌 CFA Institute Magazine の最新号か
ら 6 本の記事を日本語で要約しています。原文は以下の URL をご参照ください。
http://www.cfapubs.org/toc/cfm/2011/22/5
アフリカ投資の魅力
Into Africa
パトリック・ムティバ、CFA
アフリカは人口動態や天然資源などの面で BRIC 諸国との共通点が多く、今後の有望な投資先と考え
られます。多くの分野で製品の市場浸透や技術の遅れも見られますが、これは逆にビジネスチャンスと
いえます。また各国政府は投資誘致に意欲的で、手厚い優遇税制や利益還流などを推進しています。
アフリカ大陸には多様な国家が存在し、高成長を遂げている国も多くあります。注目ポイントは、時
価総額の対国内総生産(GDP)比と経済規模です。GDP が 500 億ドルを超えるのは 8 カ国ですが、この
うちリビアとスーダンは主要産油国で、現在内戦に見舞われています。個人的見解として、アンゴラ、
アルジェリア、エジプト、モロッコ、ナイジェリア、南アフリカが有力な投資候補と考えます。この 6
カ国は経済規模が比較的大きく、株式時価総額の GDP 比が高いため、一定の流動性があります。この
ため世界の投資資金が集まる可能性があります。また規模がもっと小さい他の高成長国にも大規模な投
資資金流入の可能性があり、投資機会は大きいでしょう。
多国籍企業の出現により、アフリカでは諸国間の金融統合が進んでいます。資本勘定の自由化を背景
に、市場への参入、経営目標の遂行、自由な本国への資金還流に対する投資家の信頼が高まりました。
しかし同時に為替レートと株価の変動も高まっており、2008-09 年の金融危機時には、国際市場と統合
の進んでいない国の方が資金の安全逃避による市場の損失も比較的軽微でした。
様々な進歩が見られるものの、アフリカ諸国が BRIC 諸国に追いつき(あるいは追い越す)のは、か
なり先のことでしょう。アフリカには乗り越えるべき障害(国際資本の獲得競争、国内研究開発の促進、
政治問題の解決、国内債務と対外債務のバランス、農業部門の生産性向上、教育水準を高め意欲ある若
年層への配慮など)が数々あります。こうした問題を解決すれば、最終的にアフリカは BRIC 諸国に次
ぐ代替投資先となるでしょう。
(要約翻訳:浜岡
IT バブル再来か?
佳美、CFA)
Dot-com Redux?
カート・シャクト、CFA
2011 年 5 月に実施された交流サイト(SNS)リンクトインの新規株式公開(IPO)で、同一投資銀行
内の投資銀行部門と株式リサーチ部門が協働していたことが問題視されています。IT バブル期に株式ア
ナリストが利益の上がる引受業務として IPO の売り込みを行った反省から、投資銀行と政府当局とが
2003 年に合意した包括的和解(グローバル・セトルメント)で義務付けられた両部門の分離が、崩壊し
つつあるとの懸念が拡大しています。職業倫理を掲げる金融業界の第一人者として、CFA 協会は IT バ
ブル期と類似した状況の再来を警戒しています。
5
IT バブル期には、収益性よりも成長性を求める市場の熱狂と、アナリストの推奨が、実際には利益を
上げておらず将来の見通しもほとんどないようなネット企業の IPO を後押ししました。そのうち、今日
まで生き残った企業は片手で数えるほどです。
IT バブルから 10 年経った現在、金融業が IT バブルの激動時代と同じような落とし穴に再び落ちない
と思うのは甘い考えでしょう。歴史は繰り返す傾向があります。CFA 協会では様々な義務や利益保護を
定める倫理規範および職業行為基準に加えて、セルサイドの投資銀行とプロフェッショナルがリサーチ
レポート作成の客観性および中立性を確保するために、その障害となる利益相反を開示し管理するため
の基準として、リサーチ・オブジェクティビティ・スタンダード(ROS)という規範を作成してきまし
た。
アナリストの中立性の問題は、米国会計検査院に証券会社の投資銀行部門とリサーチ部門の間に生じ
得る利益相反の検証を義務付けるドッド・フランク法によっても監視が厳しくなっています。そうした
検査の結果として利益相反に対する新規制が導入されることになったとしても、利益相反や競争圧力が
内在する環境下で、単なる市場の熱狂と公正で中立性のあるリサーチとを判別するのは難しいでしょう。
アナリストはリサーチレポートを軽率に扱うべきではないし、投資家は収入の大きい IPO 投資のような
場合は特に利益相反が存在することを認識しよく理解すべきです。
(要約翻訳:井上
佐知子)
国際財務報告基準(IFRS):適用すべきか、せざるべきか
International Financial Reporting Standards: To Be or Not to Be
サンドラ・ジェイ・ピーターズ、CFA
米国証券取引委員会(SEC)が最近発表したスタッフ・ペーパーや会議は、一組で高品質の国際会計
基準の設定が達成されるかどうかについて疑問を提起しました。SEC による 2010 年 2 月のワークプラ
ン公表に先立ち、CFA 協会は、SEC が(1)IFRS の質、(2)IFRS の発達を支援するための体制及び
独立性、(3)基準の承認過程、および(4)基準の執行方法という 4 つの問題を検討して決定すべき
であるとのコメントを出しました。
スタッフ・ペーパーの中心概念である「コンドースメント」とは、IFRS 基準を個々に評価し国内での
適用を承認(エンドースメント)することによって、米国会計基準(U.S. GAAP)を IFRS に段階的に収
斂(コンバージェンス)していく移行戦略をいいます。私たちの見解では、このアプローチは米国会計
基準と IASB が発行した IFRS を同等にするものではないと考えます。「一組の高品質で国際的な会計基
準」の究極的な目的は、財務成果の国際的な比較可能性をより高めることです。ここでの比較可能性は、
画一的であることを意味しません。これらを受けて、投資家が必要とするのは、認識、測定および開示
のための一貫した基礎概念、基準を構築するための信頼性のあるフレームワーク、そして地域差の明確
化です。さらに、(1)経済的意義のある違いを認識し価値評価できる透明性、(2)基準の強力な執
行体制の存在です。
SEC が提示するアプローチを評価する際には、このアプローチが透明性の高い国際会計基準を設定す
るものでないとしたら、代わるアプローチは何か、今でないとすれば、いつになるのかを考えなければ
なりません。投資家は最高水準の透明性とともに、最高の比較可能性を確保するアプローチを決定しな
ければなりません。また、その目的を達成するために当局へ働きかけ、建設的な意見を提示しなければ
なりません。
(要約翻訳:吉野
6
雅法)
万能薬はない-アジアの PPP 事業
One Size Doesn’t Fit All
ピーター・シャドボルト
官民連携(パブリックプライベートパートナーシップ:PPP)方式によるインフラ事業の資金調達は、
世界金融危機が発生した 2008 年に急速に減少しましたが、その後は特にアジアで堅調に回復していま
す。新規インフラ事業の数も急増しており、機関投資家にとっては投資機会になり得るといえます。
しかし、PPP インフラ事業においては、これまでも先進国でさえさまざまな問題にぶつかってきまし
た。2005 年に開通したオーストラリアのクロスシティトンネルのように、実際の交通量が当初の見積も
りを遥かに下回った結果、プロジェクトが管財人の管理下に入る事態に陥った例もあります。
アジアにおいては、インフラ資金調達に民間セクターの参加を促すような金融制度(債券・デリバティ
ブ市場や年金システムなど)を構築することが当面の課題となっています。しかし、例えばモンゴルや
パプアニューギニアなど、それ以前に健全な投資環境を確立しなければならないという課題を抱えた国
もあります。また、民間セクター参入の障壁となっているリスクを緩和する対策も必要で、PPP 事業に
おける政府保証を担う機関を設立するなどの工夫も必要です。
新興国においては、法的・財政的枠組みが確立していないことなど数値化できないリスクがあります。
投資家は、例え先進国で有効な金融の枠組みであっても、それをまだ基盤作りの段階にある国々に適用
する際には慎重になる必要があります。
(要約翻訳:森長
サプライチェーン
美穂)
Chain Reaction
シェリー・デコヴニー
サプライチェーン(SC)・マネジメント(SCM)とは、適切な商品を適切な時間に適切な場所に運ぶ
ようにすることです。業績の良い企業では SC を上手く管理できており、SC はますます重要になってい
ます。IT 調査会社のガートナー社は SCM のトップ企業を毎年ランキングしていますが、SC のスピード
や効率などの他に、回復力も重要視しています。トップ企業は、回復力を積極的に強化しています。
SC の途絶は、株価や収益性に大きく影響します。重要なのは、いったん途絶すると早急に回復しな
いことです。SC のリスク管理が優れている企業は、途絶が少なく、途絶した時の対応が早い企業です。
アナリストは、通常多くの企業をトラックできないので、サプライヤーや顧客までは調査していません。
キャッシュ・コンバージョン・サイクルや在庫回転率のような指標は調べられますが、他にも有用な指
標は様々あり、公表されていないため企業に訊くべき事柄や戦略も多くあります。
今日では、顧客の求める商品は多岐にわたり、企業側には在庫リスクがありますが、需要供給予測や
在庫最適化などのツール、リスク管理システムなどが利用可能です。日本の震災の影響もあり、サプラ
イヤーを分散させることの大切さ、バックアップの必要性はますます認識されつつあります。
アナリストにとって、SC の力学を収益モデルに取り込むのは困難ですが、SC の強さや途絶の可能性
を評価するのは可能と思われます。少なくとも SC の構造をより理解することには意味があり、経営陣
に厳しい質問ができるようになれば、企業側の関心も自ずと高まっていくでしょう。
(要約翻訳:今井
7
義行、CFA)
忍び寄る ETFs のリスク
Emerging Threat Fund
ジョン・ルビーノ
1993 年誕生以来、Exchange-traded funds(ETFs)は、分散効果と流動性を廉価で提供する商品として幅広
い投資家層を魅了し、今や全世界で約 1.3 兆㌦の規模に達するほどです。さらに、その対象も世界中の
株式はじめ、工業用金属、エネルギーや食物、固定利付債にまで広がり、種類もレバレッジド・ファン
ドやシンセティック ETFs など多様化しています。
一方、その成長に伴い商品価格の変動性上昇とシンセティック ETFs がもたらすリスクが指摘されて
います。前者は実需に加え投資目的での保有増加が価格変動性の上昇を招くという点です。特に、銅、
アルミニウム、鉄など生産財を対象とした ETFs は経済活動への影響も無視できません。シンセティッ
ク ETFs はトータルリターンスワップを活用してより廉価で的確なレバレッジ効果を得ようとするもの
で、欧州では市場の 45%を占めるほどですが、想定外のシステミックリスクを引起こす懸念が金融当局
の間で高まっています。
問題はシンセティック ETFs の一部に担保提供者がスワップカウンターパーティーも兼ねるという利
益相反が見られることです。その結果、投資家は担保価値低下とスワップデフォルトの2つのリスクを
同時に負います。この不透明性、レバレッジ、リスク集中が蔓延するにつれ、金融システム全体が脆弱
化し想定外のリスクを引起こすというのです。
ただ、欧州では、UCITS 規制の下、ファンド資産の分別管理のほか、独立預託機関による運用会社の
業務監督、担保の流動性確保、適切な信用力が要請されるなど厳格化されており、ETFs 発の金融メルト
ダウンが発生する可能性は現状大きくありません。
それでも、UCITS 規制を遵守していない商品も多く、上場後に遵守の有無を見分けることは困難です。
また、通常 ETFs の資産は信託勘定保有で運用会社から隔離されていますが、資産を社内で保有してい
る事例も見られます。しかも販売会社が提供する情報は少ないため、ETFs を簡単な商品と見がちな個人
投資家がそのようなリスクを十分認識しているとは限りません。従って、投資家が ETFs を見直す可能
性はあり、一部の問題商品が低コストでの分散効果・高流動性という高いブランドを損なうリスクは否
定できません。
(要約翻訳:大浜
8
匠一、CFA)
CFA People
委員会紹介 「広報委員会・翻訳小委員会」
広報委員会は、英語では Public Awareness Committee と称し、CFA 資格と CFA 協会、そして日本 CFA
協会の意義や活動のことを、外部に広く知らしめ、認知度を高めることを目的として活動しています。
ここでいう外部とは、金融業界で働くプロフェッショナルと経営者、関連する業界団体と組織、政府規
制当局、大学など教育機関、広くは一般の方々も含み、またこれらの情報を伝達するマスメディアの方々
となります。当委員会は、これまでボランティアを募らず、担当理事と、CFA 協会が契約している PR
エージェントとで基本的に運営して参りました。
活動の柱は、 (1) プレスリリースの発信、(2)ニュースレターの発行、(3) 広告宣伝、(4)メディアを
対象とする記者懇談会の開催、の 4 点となります。
プレスリリースは、CFA 協会が発信するリリースの日本語訳を中心に、一部国内独自も含め、年間十
数本を発信しております。
ニュースレターは、CFA 協会と日本 CFA 協会に関するニュースをメディアにお届けする目的で編集
し、メディアとともに会員向けにも配布されています。当初四半期毎の発行でしたが、本年より CFA
Magazine 記事の要約翻訳の掲載を開始したことを機に、隔月刊で発行を開始いたしました。
広告宣伝は、予算の制約から極めて限定的ではありますが、会員を中心とした当協会のチャネル以外
の方にメッセージを伝達すべく、現状は週刊エコノミスト誌に年に 2 回掲載しています。
記者懇談会は、ランチタイムにメディアの方々を当協会会議室にお招きし、直接懇談する機会とさせ
ていただいております。今年開催した 2 回では、CFA 協会が発行し、当協会翻訳小委員会が翻訳した、
アジア太平洋地域における取締役研修の現状と、REIT のガバナンスに関するレポートの内容をご紹介
し、一部のメディアに取り上げていただくなど一定の反響をいただきました。
過去 3 年間、PR エージェントの担当者の熱心なサポートをいただき、徐々にメディアの方々との接
点が増え、情報発信の手段、頻度を拡充できたかと考えております。今後は、最近利用が拡大している
SNS の活用なども視野に入れながら、情報発信手段の拡充を図って参ります。
翻訳小委員会は、当初、2009 年に CFA 協会が発行した Shareowners Rights Manual の翻訳を目的とし
て会員からボランティアを募ったことに始まり、2010 年初めに発足いたしました。当初十数名であった
メンバーは徐々に増え、現在は 25 名ほどの方が登録されています。これまで日本語訳を手がけた CFA
協会発行の資料は、アドボカシー関連の調査レポートを中心に 10 編に上り、いずれも当協会のホーム
ページ上で公開されております。今年全訳が完成したものでは、『アジア太平洋地域の REIT
ガバナ
ンスの改善を通じて信頼を築く』が、このトピックでの記者懇談会やセミナーを通じて広く配布され、
専門誌からのアドボカシー委員長への寄稿依頼数本、
日経 CNBC による CFA 協会のリー氏インタビュー
放映、大手証券会社のセミナー報告などにつながり、目に見える反響を呼んだことは記憶に新しいとこ
ろです。その他、当ニュースレターに、CFA Magazine の最新号から、興味深い記事 6 本を選び、要約翻
訳という形でご紹介をしております。CFA 協会の刊行物は、CFA Magazine や Financial Analysts Journal
などの定期刊行物、アドボカシー関連など調査レポート、Research Foundation の研究資料など多岐に亘
ります。今後も、CFA 協会の価値ある英文資料の中から厳選して翻訳に取り組み、読みやすい形でご紹
介して参ります。
広報委員長
翻訳小委員会委員長
9
中瀬康彦、CFA
獅々見和秀、CFA
書籍紹介 「チャレンジする年金運用-企業年金の未来に向けて」
企業年金連絡協議会資産運用研究会編
「チャレンジする年金運用-企業年金の未来に向けて」
日本経済新聞社
2011 年 7 月
2,730 円
本書は、現在の日本の年金運用が直面する問題を正面からほぼ網羅的に
取り上げ、その解決の方向性を示そうとする意欲的な実務書である。全体
で 10 章構成になっている。まず過去 20 年間の日本の年金運用の苦難の歴
史を振り返り、その後、動態的資産配分によるダウンサイド・プロテクショ
ンの試み、株式に投資する本質的な意味、投資理論の新しい展開、ベンチ
マークは必要か、為替ヘッジをどう考えるべきかといった主要な論点につ
いて次々と議論が展開される。章によって議論が整理されて読みやすい章
とやや煩雑な章があるが、もともと 13 回に及ぶ検討会の内容を纏めて構
成されているため、若干読みにくい部分も含めて、年金運用の最前線で活躍する著者達の問題意識と解
決への取り組みを知ることができる貴重な内容となっている。
全体を通じて流れている問題意識は、伝統的な投資理論の限界である。今から 10 年前には、静態的
資産配分が主流であり、ほぼ固定された戦略的配分のなかで資産クラスごとに時価総額加重のベンチ
マークを設けてそれに対するトラッキング・エラーを管理して行くという運用手法が最も正しいと考え
られていた。ところが、その後ITバブルの崩壊やリーマン・ショックを経て、そのような運用手法で
は安定した運用成果が得られないことが分かり、伝統的な投資理論の問題点が明らかになってきた。例
えば、証券のリターンは正規分布していないこと、資産クラスのリスクや資産間の相関係数は時間の経
過とともに大きく変化すること、市場におけるミクロの効率性とマクロの非効率性、ビルディング・ブ
ロック方式による期待リターンの非現実性等である。伝統的な投資理論は、証券市場の仕組みを理解し
て考えを整理するためには有効なのだが、単純化と統計的処理を容易にするために、必ずしも現実には
即しない仮定を置いていた。その結果、現実の資産運用にそのまま当てはめることは難しい。そのこと
を実務に携わる著者達が説得力を持って説明している。
ただ、伝統的な投資理論を否定しても、すぐにその代わりとなる新しい解決策が控えているわけでは
ない。もともと伝統的な投資理論は、年金基金の受託者がポートフォリオ運用を説明するための整合性
ある体系を提供していた。そこから踏み出して、動態的資産配分やベンチマークから離れたポートフォ
リオ運用を志向した場合、受託者の説明責任の面で問題が生じる可能性もあるかもしれない。こうした
問題も含めて、本書が取り組んでいる問題は範囲が広く、奥が深い。まさにタイトル通り、その大きな
問題にチャレンジし、今後の議論の先鞭を付けたという意味で非常に価値ある著作と言えよう。
瀬尾周一、CFA
10