第6学年3組 国語科学習指導案

第6学年3組
国語科学習指導案
男子 16 名 女子 14 名 計 30 名
指 導 者
吉 田
陽
1
単元名
教材名
ファンタジーを読もう、書こう
きつねの窓
(学校図書 小学校6年下)
作
安房
直子
2 単元について
(1) ねらい
・ ファンタジーの作品の構成の工夫に気付き、登場人物の心情やその変化を読み取ることがで
きるようにする。
(読むこと)
・ 場面の様子や人物の様子、気持ちについて工夫された表現を捉え、その効果について考える
ことができるようにする。
(読むこと)
・ ファンタジー作品の構成を使って、作品を創作することができるようにする。(書くこと)
(2)
児童の実態について
本学級には、好んで読書をする児童が多く、読書タイムにはさまざまな種類の本を読む姿が
見られる。また、日記を毎日書き、日々の出来事や思ったことを文章にしている。学習には、
意欲的に取り組み、考えなどを進んでノートに書くのだが、話合いになると自分の考えに自信
がもてず、意見を言うことができない児童が多くいる。
児童は、これまで数多くの文学作品に触れている。5学年「注文の多い料理店」では、現実
と非現実の世界という、ファンタジー作品独特のおもしろさを味わった。
「大造じいさんとがん」
では、描かれている景色から人物の感情を読み取ることができることを知り、情景描写に注目
して物語を読み進め、じっくりと細かく作品を読むことの大切さを学んだ。そして、6学年「み
ちくさ」では、主人公の気持ちが徐々に変化していく物語を通して、叙述を基にして変化のき
っかけとなった出来事を探す学習に取り組んだ。
また、書く活動として、3学年「たから物をさがしに」では、冒険の様子や主人公たちが起
こす行動など、想像を膨らませて話の展開を考えながら物語を作った。5学年「これであなた
も作家になれる」では、四コマ漫画を題材にして起承転結のある話の作り方を学習した。創作
意欲のある児童が多く、これらの学習には進んで取り組み、友達とアイディアを出し合う姿が
見られた。
このように、読む学習と書く学習を経験して、場面ごとの登場人物の心情や情景を捉えるこ
とはできるようになったが、物語全体を捉えて人物の心情の変化を読み取るといった深まった
読みをしたり、根拠を明らかにして自分の考えを表現したりすることが難しい児童も見られる。
そこで、心情や情景を読み取るために、作品全体の流れを掴んだうえで、細部を読み、叙述を
基にしてファンタジー作品を読み進める活動を取り入れる。また、ファンタジー作品を読んだ
ことがあまりない児童も自分で作品を書くことができるように、先行読書、並行読書等、ファ
ンタジー作品に触れる機会を設けたり、その構成や表現の工夫を教材から見つけたりして学習
を進めていきたい。
(3)
教材について
この物語は、山で狩りをしている「ぼく」を中心に書かれた一人称視点の作品である。ある
時、青いききょう畑で見つけた白い子ぎつねを追いかけている途中で、小さな染め物屋を見つ
ける。そこで出会った白い子ぎつねが化けた子供の店員に、両手の親指と人差し指を青く染め
てもらう。その指で窓を作ると、その中には、昔大好きだった、そして今では決して会うこと
のできない人が映った。ところが、家に戻ると、いつもの習慣で両手を洗ってしまう。青い色
の落ちてしまった指でいくら窓を作っても、もうその中には何も映ることはなく、ぼくは日常
の生活に戻るという物語である。
この「ぼく」は、初めは独りぽっちで山小屋で暮らし、狩りをして生活をしているが、物語
の最後では、「君は変なくせがあるんだなと、よく人に笑われます。」とあるように、人と関わ
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1-
って生活している。物語の中で、「ぼく」の心情が徐々に変化していき、その変化が「ぼく」の
行動を変え、生き方そのものを変えているのである。
このように「きつねの窓」は現実から非現実への入り口や出口が分かりやすく描かれており、
人物の心情の変容を、叙述の中の言葉や情景、副詞などから読み取ることもできる。また、想
像の余地を残しているところも、児童が自分の想像を広げていくのに適した作品であると言え
る。
この単元では、終末にファンタジー作品を作ることを計画している。ファンタジー作品の一
例である本教材から、作品の構成や心情の変容が読み手に伝わるような表現方法やしかけを学
習し、自分の作品作りに生かすことができると考える。
3
研究主題との関連
主体的に言語活動に取り組み、論理的に思考する能力を身に付けていく子どもの育成を目指して
(視点1)
主体的に言語活動に取り組むための単元構想の在り方
①
単元を貫く言語活動の設定 ~読み取ったことを「書く」ことに生かす単元構想~
本単元では、本教材から学んだことを生かして、終末で「ファンタジー作品を書く」という目
標を掲げる。第一次では、まず初めに、ファンタジー作品の読み聞かせを行う。そうすることで、
児童は、ファンタジー作品のおもしろさを味わい、興味をもつだろう。その後、自分のファンタ
ジー作品の構成を考える学習を行う。構成カードを作成する過程で、「主人公の設定に困っている
ので、設定の仕方を知りたい」「クライマックスの書き方が難しいので、教えてもらいたい」など
の個々の課題が出てくるだろう。そこで、第二次では、本教材「きつねの窓」を扱い、読み取っ
たことを基に、ファンタジーの創作の仕方を学んでいく。児童は、自分の課題を解決しようと必
要感をもちながら学習に取り組むことができると考える。そして、第三次では、構成カードを見
直し、ファンタジー作品を書く活動を行う。創作のポイントをつかんだ児童は、思い思いの作品
を書き上げていくであろう。
このように、「ファンタジー作品作りを目標にして、構成を工夫する」という単元を貫く言語活
動を設定することで、読む学習が必要感のある学習となり、文学的文章を読み取る力を身に付け
る手立てとして、有効に働くと考える。
②
主体的に学習に取り組むための学習課題の設定
第二次では、最終目標である「ファンタジー作品を書く」ことに向かって、本教材の物語の構
成や人物の心情の変化を読み取っていく。第一次で自分のファンタジー作品の構成カードを書く
過程で、自分の作品作りにつまずいた児童は、「場面の構成はどのようにすればいいのか」「クラ
イマックスはどう書けばよいか」など、課題意識をもって教材を読み進めていくであろう。
最初と最後の主人公の変容や人物の心情の変化を捉える学習では、ストーリー展開の工夫やク
ライマックスの効果に気付くと思われる。また、叙述から心情を読み取る学習では、文章表現の
工夫に目が向くだろう。このように、児童の課題意識にあった学習課題を毎時間設定していくこ
とで、児童は主体的に学習に取り組み、学んだことを自分の創作活動に生かしていくことができ
ると考える。
③
ファンタジー作品の特徴を知るための読書の工夫
ファンタジー作品に触れてその世界観を味わうために、本単元に入る前からファンタジー作品
の先行読書を行う。また、導入後も並行読書を設定する。本教材の作者の安房直子さんの作品だ
けでなく、たくさんの作者のファンタジー作品を読むことで、いろいろな世界を味わい、作品作
りに向けた意欲を高められると考える。また、さまざまな表現の工夫や描写の書き方など、読み
手が作品の世界に入り、人物と気持ちを共にできるしかけを知ることができる。現実と非現実の
出入り口や心情が変容する場面の書き方などにあらかじめ触れることで、本教材を読むときに、
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2-
叙述や表現を敏感に感じ取れるようになると考える。また、表現の工夫や世界観など、作品作り
のヒントにもなると考える。
また、児童全員が本教材に浸れるように、読書タイムに全員で本教材を読む期間を設ける。一
人で黙読、音読をしたり、ペアで交代しながら交互に音読をしたりすることで、児童が作品の内
容を掴むことができるようにする。
(視点2)
①
論理的に自分の読みや考えを深めるための学習過程における工夫
作品全体を捉えるための読みの観点の提示
児童の作品に対する理解度は、一人一人違っている。話合いを進めるためには、まず、作品の
大きな流れを全員が理解しておくことが必要である。そこで、六つの観点(参考:「十の観点」筑
波大学附属小学校 白石範孝先生)で本教材を読み、第一次で使った構成カードにまとめること
で作品をまるごと捉えることができるようにする。作品の構成を考えたりその人物に起きた大き
な変化を見つけたりしながら、その変化をもたらした出来事が何であるのか、なぜ起こったのか
などを考えていくことで、物語を論理的に読むことができると考える。次に、自分の作品の基に
なる構成カードの見直しを行う。児童は、本教材で学習したことを自分の作品に生かしながらこ
の構成カードを練り上げていく。このように、児童は、ストーリーの構成やクライマックスの効
果などを学習し終わると、作品の構成の仕方を理解し、それを作品作りに生かすことができると
考える。
(1)いつ【時】 (2)どこで【場所】 (3)誰が【主人公】 (4)どんなことを体験し【出来事】
(5)どうすることによって【クライマックス】 (6)どうなった【変化・変容】
②
考えを引き出し、読みを深めるための板書の工夫
児童の意見を聞いてそのまま板書するのでは、文字で黒板が埋め尽くされてしまい、何を学習
したのかがはっきりと分からない。そこで、板書にはキーワードとなる言葉を精選して書き、構
造化してまとめていきたい。また、本教材の挿絵を提示することで、文章だけでは物語が想像で
きない児童が、挿絵と叙述をつなげて自分の考えをもったり、そこからさらに想像を広げ考えを
深めたりできるようにする。
③
学びを物語の創作に生かす終末の振り返り
授業の終末の振り返りとして、学習課題についての感想の他に、学んだことを自分の作品にど
のように生かしていくかという観点についてもノートに書くようにする。児童は、「クライマック
スの展開の仕方をもう一度考えよう」「主人公の心情をもっと変化させよう」など、作者の優れた
表現の工夫を自分の作品作りに取り入れたいと考えるだろう。このように、学んだことから自分
の作品作りに生かしたいことを蓄積していくことで、より良い作品にしていけるようにしたい。
(視点3)
①
子どもが学ぶよさを感じる評価の在り方
評価規準の設定と観点を絞った評価
この単元で身に付けたい力や時間ごとに付けたい力や評価の観点を全体計画に位置付けて明確
にし、意図的・計画的に評価できるようにする。また、座席表を用いて継続して記録するなどし、
評価したことを次の学習に反映できるようにする。力の定着が弱い児童には、どのように指導す
るかの手立てを指導案に明記する。
1時間の評価では、評価の観点を絞り、無理なく評価できるようにする。その上で、単元を通
した評価を行えるようにする。
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3-
4
②
創作過程における自己評価と相互評価
単元を貫く言語活動の評価を児童同士で行う。評価の観点を明らかにして、ペアで相互に執筆
者と編集者として、児童自身が適切に自己評価したり、相互評価したりできるようにする。自己
評価をすることで、児童は、自分がどこまでできてどこに困っているかを整理することができ、
それを教師が全体の場で投げかけることで自分の作品を見直すことができる。また、相互評価を
することで、同じ悩みを解決したり、アドバイスをし合い、より良いストーリー展開を作りあげ
たりすることができる。このように、自己評価と相互評価を行うことで、学習の手応えや次の学
習への意欲につながるのではないかと考える。
③
次の授業に生かすための、1時間のゴールの設定と教師の言葉かけや朱書きによる評価
1時間の授業で指導したことを大切に評価する。そのために、話合いの後に子どもが成果を書
きやすいように、具体的に観点を明確にして子どもを捉えていく。また、ねらいに沿った言葉か
け朱書きをしたり、学習の仕組み方を変更したりし、授業に生かせるようにする。
評価規準
国語への関心・意欲・態度
読む能力
書く能力
言語についての知識
・理解・技能
○文章を読んで見つけた心 ○登場人物の相互関係 ○ファンタジー作品の ○情景や人物の心情
情の変容が分かる表現の
や心情、場面につい
構成の効果 を考え て
が分かる描写に目
工夫を進んで発表し、そ
ての描写の工夫を捉
工夫して書いている。 を向けて、作品の
れを作品作りに生かそう
えて想像豊かに読ん
構成を考えている。
としている。
でいる。
5 全体計画(全14時間)
次 時
学習内容
指導上の留意点
1
ファンタジー作品を読み取り、オリジナル作品を作ろう
評価規準
○ファンタジー作品の世界観や表現を味わ
うために、先行読書を行う。
1
○ファンタジー作品には、現実と非現実の 読 作品の構成の
ファンタジー作品の構成を知
入り口と出口があることや人物の心情の
工夫について理
ろう。
変容があることに気付かせることができ
解している。(発言
○ファンタジー作品の構成が
るように、ファンタジー作品とはどうい
・ノート)
分かりやすい物語を読み、
うものか共通理解できるよう、典型的な
構成を知る。
ファンタジー作品を提示し、構成をまと
める。
○構成カードを準備し、六の観点で作品の
構成を整理し、ファンタジー作品の構成
について理解できるようにする。
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4-
2
○自分の考えたファンタジー
作品の基になる構成カード
を作る。
2 3
・
4
「きつねの窓」の構成を捉え
よう。
作品作りを目標にして、構成を工夫する
ファンタジー作品の構成を考
えよう。
○観点ごとに読んで物語のあ
らすじや構成を捉える。
「読みの手引き(六つの観点)」
5
「ぼく」の心情はどのように
変わったのだろう。
6
・
7
非現実の世界での「ぼく」の
心の変化を読み取ろう。
○「ぼく」の心情を表す叙述
を基に変化を読み取り、非
現実の世界での心情の変化
を捉える。
作 品作 り を 目 標 に し て 、 構 成 を 工 夫 す る ( ス ト ー リー 展 開 )
○物語の初めと終わりの場面
での「ぼく」の変容を読み
取る。
○終末での作品の創作活動を目標にし 関 作品作りにつ
て、時、場所、出来事などの構成を
いての意欲をも
考え、自分の作品の構成カードを作
っている。(発言)
る。
○構成カードを作ったときの困ったこ
とや難しかったことを出し合い、物
語を読む学習の必要感をもたせる。
○ファンタジー作品の構成を意識させ 読 現実と非現実
ながら読み、初発の感想を書かせる。 を分けている部
○読み取りが苦手な児童も物語の構成
分を見つけ、物
を掴めるように、観点ごとに物語を
語のあらすじを
読んで、学級全体で物語のおおまか
つかんでいる。
な流れを読み取らせる。
(発言・ノート)
○現実と非現実の世界があることやそ
の世界への出入り口があることにつ
いて分かりやすくするために、物語
に使われている色に線を引く作業を
行う。
○初めと終わりの現実の世界に注目し 話・聞 考えの根
て、「ぼく」が初めは独りだったこと
拠となる叙述を
と、最後は人とのかかわりがあるこ
示しながら発表
とに気付かせるために、初めと終わ
している。
りの現実の世界の叙述を比べて、違
(発言・ノート)
いをノートにまとめさせる。
○自分の意見に自信をもたせたり、い
ろんな意見を知ったりするために、
気軽に意見交換ができるペア学習な
どの学習形態を工夫を第二次を通し
て行う。
○一つ一つの叙述に着目して、自分の
考えをもてるように、一人読みの活
動を第二次を通して行う。
○「ぼく」の心情がどの場面で変化し 読 叙述に着目し
たのかを共通理解できるように、絵
て、心情が変化
本の挿絵を活用する。
している部分を
○事前にじっくりと一人読みをさせて
見つけている。
おき、叙述から「ぼく」の気持ちを
(発言・ノート)
考えさせておく。
○「ぼく」の心情を考えにくい児童に
は、修飾語に注目させたり、どうし
てその行動をしたのか考えたりする
ように助言する。
-高
5-
(
作者は、なぜ「ぼく」から窓
を取り上げたのか考えよう。
)
本
時 ○クライマックスのはたらき
について考える。
3 9
作品作りを目標にして、構成を工夫する(クライマックス展開
8
○手を洗い、窓を失ってしまった「ぼ
く」の心情の変化を捉えることがで 読 クライマック
きるようにするために、意見を類型
スの効果を読み
化しながら板書に位置付ける。
取っている。
○なぜ作者は、このようなクライマッ
(発言・ノート)
クスにしたのか、考えをもつために、
「もし、指を洗わなかったら『ぼく』
は、どのような人生を歩んでいたの
か」など、補助発問をする。
○心情が大きく動いた出来事やその場
面のことをクライマックスというこ
とを押さえて、それが作品のおもし
ろさの一つであり、そこに向かうた
めにさまざまな表現の工夫がしてあ
ることを板書にまとめる。
~
○第二次で学んだことを基に、自分の作品 関 作品作りに意
の構成カードを加筆修正する時間を設け
欲的に取り組ん
+ 13 ○構成カードを再構成して、
る。
でいる。(ノート)
課
ファンタジー作品を書く。 ○人物の心情やその変化がより伝わるよう 書 人物の心情や
外
に、ペアでお互いの作品を練り上げてい
その変化が分か
けるようにする。
るように、表現
○作業の時間が続き、目的意識が薄れない
を工夫して文章
ように、毎時間の作業のめあてを提示す
を書いている。
る。
(ノート)
14 ○友達の作品を読み合う。
ファンタジー作品を書こう。
-高
6-
-高
7-
-高
8-