アイデア教材教具 タイトル 説明書 課題設定の手掛かりをつかむワークシートとゲーム ( 総 合 的 な 学 習 の 時 間 ・ ・ ・「 群 馬 県 の 古 墳 時 代 」に お い て ) 制作者(所属) 作 品 靑木 さおり (高崎市立上郊小学校) 商品 商品 紙幣 解 説 1 ねらい 総合的な学習の時間に「群馬県の古墳時代」を大きなテーマに取り上げてい る学校は多いだろう。群馬県の古墳時代を調べようとなると、考古学者が一目 を置くくらい奥が深い。それは、古墳時代に榛名山が2度噴火を起こし、イタ リアのポンペイのごとく、火山灰や軽石や土石流が噴火当時の村々を瞬時にパ ックしてしまい、現在の高度な発掘調査により、当時の生活をありありと確認 できるようになってきたからである。また、群馬県の古墳時代は大和政権や渡 来人との関係も注視しなければならない。 本 校 で は 、6 年 生 が 総 合 的 な 学 習 の 時 間 に 地 元 の 古 墳 を 中 心 に 学 習 し て い る 。 本校の校区には3世代に渡る豪族の大きな前方後円墳があり、しかも、全国で 初めて確認された豪族の館(三ツ寺Ⅰ遺跡)もある。このように、本校では身 近にある遺跡を通して、古墳時代について興味深く学習することができる。 しかし、情報が多すぎる地域の古墳時代の何を調べれば良いのか、テーマを絞 るのに困る場合がある。その学習を成立させるためには、6年生では、レディ ネスが足りないからである。 6年生は社会で古墳時代について学ぶが、その学習時間は非常に短く、群馬 県における古墳時代を理解するには至らない。 そこで、私は、ワークショップ型学習をすることで、自発的な課題解決的学 習が成り立つと考えた。ワークショップ型学習とは、児童が積極的に参加でき る授業である。たとえば、ゲームであるとか、ものを一緒に作るとか、自分自 身の意見を誰かに話すことができる活動等である。どの児童にも活動する時間 があり、少ない経験や体験を生かして学習できる。児童にとって難しいと思わ れる課題の場合、ワークショップ型学習が有効であり、ワークショップを経験 することにより、児童は、次の学習の手掛かりを得ることができるのではない かと考えた。つまり、情報が多すぎる地域の古墳時代の課題解決学習における テーマの設定に有効であるのではないかと考えた。 2 材料 紙に印刷する。商品及び紙幣は切り分ける。 3 作成方法 『 よ み が え る 五 世 紀 の 世 界 』( か み つ け の 里 博 物 館 常設展示解説書)を参 考に、商品カタログや古墳シートを制作した。 4 工夫した点 古墳時代の王も、色々な制約の中で、古墳造りをしたはずである。大和政権 の圧力、地方豪族との争い、埴輪や石等の調達などである。また、それぞれの 王によって、古墳造りにおいて何を重視するのか違ったはずである。 そ こ で 、 今 回 は 、「 ○ ○ 万 は に わ 」 と い う 模 造 貨 幣 を 使 っ て 、 限 り あ る お 金 の中で、古墳を造っていくことにした。児童は、制約のある金額の中で、王と しての威厳を見せることのできる古墳は、どのようにしたら造ることができる のか考えることができるのではないかと考えた。 要するに、このワークショップは、グループで取り組む「古墳造り買い物ゲ ーム」である。買う品は、古墳を造るうえで必要な要素を入れ込んだ。古墳を 造 る た め に 土 盛 り を し た 「 土 」、 そ の 周 り を 囲 ん だ 「 葺 き 石 」、 遺 体 を 収 め る 石 棺 の 「 墓 石 」、 石 棺 の 近 く に 収 め ら れ た 「 副 葬 品 」、 古 墳 の 周 り を 飾 っ た 「 埴 輪」である。これらを商品として扱い、カタログの中から選ぶようにした。 5 授業での活用方法・使い方のポイント やり方の手順 ① クラスを8∼10班に分ける。一班3∼5人ほどのグループである。 ② 児童一人ひとりに「古墳シート」と「商品カタログ」を配布する。各班 には、模造紙幣の「2000万はにわ」分を配布する。 ③ 各班で、5つの商品をカタログから選ばせる。 ④ 紙幣で商品を買わせて、それを所定シートにのりで貼り付けさせる。 ⑤ 各班が選んだ商品を板書する。 ⑥ 全班が終了したところで、なぜ、その商品を選んだのかを発表させる。 (その際、王である自分の威厳を表すために、何を重視したのかを理由の中 に 入 れ さ せ る 。) ⑦ 最 後 に 、 実 際 に 八 幡 塚 古 墳 を 造 る た め に 土 盛 り を し た 「 土 」、 そ の 周 り を 囲 ん だ 「 葺 き 石 」、 遺 体 を 収 め る 石 棺 の 「 墓 石 」、 石 棺 の 近 く に 収 め ら れ た 「 副 葬 品 」、 古 墳 の 周 り を 飾 っ た 「 埴 輪 」 の 答 え を 伝 え る 。 (答えは、土B・葺き石A・墓石C・副葬品D・埴輪E) ⑧ そして、自分が王としての威厳を見せようとしたもの、及び答えを聞い て疑問に思ったことに関して、今後さらに調べる見通しをもたせる。 6 成果と課題 (1)成果 この学習後、児童に感想及び今後何を調べたいかを書かせた。 そ こ に は 、「 今 ま で の 総 合 で こ の 授 業 が 一 番 面 白 か っ た と 思 い ま す 」「 み ん な の 考 え る こ と が 、 ち が う ん だ な と 思 い ま し た 」「 グ ル ー プ で 力 を 合 わ せ て ゲ ームをして良かったと思いました。ゲームをしながら、古墳のことが色々分か って楽しかったです」 「 自 分 た ち で 考 え る こ と は 、自 分 た ち の た め に も な る し 、 楽 し か っ た の で よ か っ た で す 」「 古 墳 時 代 の 人 々 は 、 す ご く か し こ い ん だ な あ と思いました。計画的に古墳を造る古墳時代の人はすごいと思います」と言っ た感想であった。ゲームをする『楽しさ』とともにゲームをグループでする意 図 も 感 じ 取 っ て く れ て い た 。 ま た 、『 古 墳 時 代 の 人 へ の 想 い 』 ま で 深 く 感 じ 取 れた児童がいたことに驚いた。 今 後 の 調 べ た い こ と に つ い て は 、 次 の よ う な こ と が 書 か れ て い た 。「 古 墳 の こ と を も っ と く わ し く 知 り た い と 思 い ま し た 」「 ほ か の 古 墳 は ど こ に ど ん な 力 を 入 れ た り 、副 葬 品 は ど の よ う な 物 が 入 っ て い た の か 調 べ て み た く な り ま し た 」 「ガラスの勾玉の大きさ・ねだん・数が気になったり、どこで作って、どうや っ て 運 ん だ の か 気 に な り ま し た 」「 王 の 住 ん で い た 場 所 に つ い て も っ と 調 べ た い と 思 い ま し た 」「 二 子 山 や 薬 師 塚 ( 八 幡 塚 の 隣 に あ る 古 墳 ) の 古 墳 の 材 料 も 知りたいです」 「当時の人々のくらしはどうだったのかくわしく知りたいです」 「前まで興味をあまりもっていなかった歴史や古墳が少しずつ興味をもって調 べられるようになりました」などである。何を調べたいのか具体的になってい るし、古墳ゲームに無かった内容まで調べたいと広がりをみせた。 児童の反応から、知識量の少ない児童にとって、ワークショップ型のゲーム 形式の学習は、参加しやすいことが分かった。そして、漠然としていた調べた いことを、より具体的にできた。 (2)課題 このワークショップ型のゲームは、本校の近くにある保渡田古墳群のうち八 幡塚古墳を中心に制作した。他の古墳でも作ることは可能であるが、古墳それ ぞれで大きさも副葬品も異なる。盛り上がるこのゲームを、他の場所でもでき るようになるよう考えていきたい。 また、児童のさらなる意欲を掻き立てるためにも商品の充実を図っていきた い。
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