No.5(Mar.2006)

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MAR. 2006
赤絵窯での陶磁器焼成の過程
C O N T E N T S
□ 第6回COEセミナーの開催について・COEセミナーの概要について
2
□ 第7回COEセミナーの開催について・COEセミナーの概要について
3
□ 平成17年度 柿右衛門様式陶芸研究センターにおける成果の概要について
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□ 平成17年度 柿右衛門様式陶芸研究センター研究業績一覧(論文、報告書、その他) 5
□ 第2回若手研究者による研究会
6
□ 第3回若手研究者による研究会
7
□ 平成17年度 調査活動等・運営委員会開催・若手研究者による研究会開催
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第6回COEセミナーの開催について
平成17年度第6回COEセミナーが下記のとおり開催
されました。
記
日時/平成18年1月14日
(土)
13:00〜14:30
場所/15号館15101番教室
講師/産業技術総合研究所 中部センター
高嶋 廣夫氏
演題/
「磁器における素地、
釉の組織構造と、
その装飾技法」
焼成された磁器素地の組織
COEセミナーの概要について
磁器における素地、釉の組織構造と、その装飾技法
産業技術総合研究所 中部センター
高嶋 廣夫氏
佐賀藩の藩主、鍋島直成は朝鮮の役で李朝の進んだ陶磁器を知
有田焼きや九谷焼きは、銅や鉄、マンガンなどの遷移元素を融材
り、
自藩で磁器を焼かせることを思いついた。
つまり、
元和2年
(1616
に融け込ませて発色させる透明性の高い上絵付け絵の具が用い
年)有田で李参平によって成功したのが日本で磁器ができた最初
られる。それを和絵の具と呼んでいる。和絵の具は元来、鉛を多量
のことである。鍋島藩の当初の磁器は水色の砧青磁様のものが多
に用いる絵の具であったが、今では食品公害に対処するため無鉛
かったが、後、酒井田柿右衛門の赤絵の発見(1634年)があって、
のフラックスも用いられている。
でも、
有害元素は鉛だけではなく、
和絵の具に一層の絢爛さが醸し出され、九州の磁器が世界を制覇
カドミウム、6価クロ−ム、2価鉄、有機燐、最近では河川法の中に
することになる。そのような伝統ある有田磁器の現代の製造法を
硼酸も規制の対象になっていて、無鉛フラックスで公害問題、総
吟味してみる。素地は天草陶石単味のものと、可塑性を増すため
て解決と言うことにはならない。
に粘土を加えた坏土が用いられ、釉も伝統的な柞灰釉や石灰釉が
硼酸は今や、陶磁器の釉や絵の具の成分として、無くてはならぬ
用いられている。昨今は美術工芸品としての陶磁器は、ともかく、
ものになっているから陶磁器界としては、のっぴきならぬ支障の
生活用品としての食器などは機能的強度、熱衝撃強度、食品公害
起こる危惧さえ考えられる。
そんなことで食品公害に関係ない磁器の下絵付け加飾法を考
的安全性を考慮しなければならない。そこで有田焼きの物性を素
えてみた。磁器の下絵付けは呉須染め付けが、よく似合い、その地
地と釉の組成面から考察してみた。
素地は天草陶石を主原料として、
珪酸リッチであるが、
そのため
位の揺るぎはない。でも、カラフルな磁器下絵付け手法も、これか
熱膨張の大きい柞灰釉や石灰釉との間の適合性は図り易い。それ
ら考えておく必要があるだろう。そこで考えたのが銅を用いた釉
ゆえ有田焼は瀬戸・東濃の磁器より貫入などの欠陥の発生が少な
裏紅、酸化クロ−ムを用いた緑を中心に陶試紅のピンク、ジルコ
く、機械的強度も高いものを作り易いと言える。
ンプラセオジム黄、ジルコントルコ青、ジルコンセレニウム赤な
どが還元焔焼成でも綺麗に発色するので、それらによるカラフル
磁器をカラフルに装飾するには上絵付けが主であって、それに
な磁器下絵付け手法を本講演でも提示した。
はフラックスに顔料を多量に加えた、
いわゆる洋絵の具があるが、
2
5
第7回COEセミナーの開催について
平成17年度第7回COEセミナーが下記のとおり開催
されました。
記
日時/平成18年2月4日
(土)
13:00〜14:30
場所/15号館15103番教室
講師/出光美術館 主任学芸員
荒川 正明氏
演題/
「柿右衛門様式の文様意匠
─ そのデザインの魅力 ─」
セミナーの風景
COEセミナーの概要について
柿右衛門様式磁器の歴史的重要性
出光美術館
荒川 正明氏
日本絵画史を専門とされる辻惟雄氏は、
17世紀後半の日本のや
ざる一過性の造形物)が近世に入ると衰退してしまうが、その「造
きものの造形を以下のように捉えている。
「・・・17世紀後半、最も
り物」
のもっていた旺盛な造形意欲を引き継いだのがやきものであっ
旺盛な創造意欲を示したのは、絵画ではなくむしろ工芸であった
たと私は考えている。
可塑性に富んだ素材であり、
そして桃山時代
といえるかもしれない。絵画を中心に展開した桃山の絢爛たる装
に入り色彩と文様を獲得したやきものは、都市に住む数寄者たち
飾主義が、
遅咲きの桜に似て、
この時期の工芸に復活したともいえ
の意を汲んで、
驚くべき華やかな造形世界を構築していくのである。
るような趣をそこに認めることができる。そうした印象を強く与
さて、
九州の肥前窯、
京都の御室窯ともに17世紀中期に、
色絵装
えるのは、
とりわけ焼物の分野である。
・
・
・」
飾を完成させる。
そこで、
早速色絵付けの技術を駆使してつくられ
(
『17・18世紀の美術』
日本美術の流れ5 岩波書店)
た華やかなやきものが、
肥前窯の古九谷様式と、
御室窯の色絵陶器
であった。
いずれのうつわも、
豪華絢爛を誇った桃山文化の残照と
絵画史ばかりでなく日本美術史全般に造詣が深い辻氏の意見だ
いえよう。
けに、
十分傾聴する内容であると思われる。
16世紀末から17世紀
このような流れを受けて、
肥前窯で17世紀後期に誕生したのが、
前半の狩野派、
長谷川派、
あるいは宗達派などの諸派の隆盛ぶりに
西欧向けの高級磁器であるいわゆる柿右衛門様式の色絵であった。
比較して、
確かに17世紀後半には突出した個性や画風をもつ絵師
日本のうつわとしては初めて、徹底して西欧人の美意識に適う造
は多くないかもしれない。それに比べて、古九谷や柿右衛門、そし
形が求められたのである。
素地は白く薄くシャープなもの、
文様意
て野々村仁清をほぼ同時期に創出した日本のやきもの界が、辻氏
匠は清明な色彩による優美な絵模様が好まれた。柿右衛門様式の
の目には華やかに写ったに違いない。
誕生により、肥前窯は世界最高の品質を誇る景徳鎮窯磁器を視界
辻氏が指摘した通り、
確かに17世紀後半は日本のやきもの界にとっ
に入れるレベルに限りなく近づいたのだった。たかだか十数年の
て「奇跡の時代」と言っても過言ではないほど、実り多き時代であっ
短期間で、
かくも飛躍的な技術革新を成功させたことは、
肥前窯の
た。
日本で色絵付けが完成したのは、
まさにこの時代であった。
歴史において後にも先にもない未曾有の出来事である。その発展
やきものが積極的にその美を表現し出したのは、桃山時代つま
の史的背景を探ることが、日本陶磁史においてきわめて重要な課
り16世紀末からである。中世に盛んであった「造り物」
(宴席をか
題であると考えられる。
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平成17年度 柿右衛門様式陶芸研究センターにおける成果の概要について
意 匠研究部門
名工の技法の記録・解析
平成16年度に文様のデータベースの構築に関しては
4,177点の有田焼磁器に使用されている9,600の文様
「名工の技法の記録・解析」については来年度から本格的
から357種類の文様を抽出しデータベースの検索項目の
に実施していく予定であるが、本年度はビデオカメラ、編集機器
設計を行った。また、名工の技法の記録・解析、土型のデー
等の機器導入を8月に行い、テストランを実施した。本年度の計
タ収録のための要素の検討を行った。
画としては「土練り」及び「ロクロ等の成形」工程の記録を3月か
ら開始した。
平成17年度では
学生および企業に対するアンケートの分析
文様のデータベースの構築
本年度は学生および企業に対するアンケート調査の分析
本年度から本格的な入力作業を行っている。本年度はすで
を実施した。
に500件の画像を入力し、
収録された画像を検索するためのキー
学生の分析結果については「柿右衛門様式陶磁器に関する芸術
ワードの抽出作業も終了している。今後はキーワードの入力作業
系学生の意識調査分析」、
「柿右衛門様式陶磁器に関する一般学生
のみで2月末に本年度の目標である500件の入力を達成した。今
の意識調査分析―九州産業大学のケース―」、
「柿右衛門様式陶磁
後データの収録を引き続き行うとともにデータベースの改良を行っ
器に関する学生のアンケート調査分析―九州産業大学学生以外
ている。
の学生等の意識調査について―」および「陶磁器需要の統計的分
析―柿右衛門様式陶磁器需要との関連性について―」にまとめ、
土型の3次元形状の測定(土型のデジタル化)
また企業の結果については「陶磁器産業の抱える問題について―
本年度の8月に機器の導入を行い、8月・9月で形状の3次
卸、
販売、
製造業を含めた陶磁器業界に関する問題把握―」
及び
「陶
元測定、計測したデータ修正、NCデータへの変換、NCでの切削
磁器産業の諸問題と展望についてのアンケート分析―研究機関
等に関する一連の作業のテストランを終了している。また、8月
が陶磁器製造業に果たす役割について―」としてまとめた。
からは柿右衛門家に伝わる「土型」の計測調査を行い、現在13点
の
「土型」
の3次元計測を終了し、
それらのデータについては
「土型」
の復元を70%のスケールで行っている。本年度の目標である50
点の「土型」計測について達成した。
技 法研究部門
技法研究部門では素材研究を素地と絵付の二つのパートに分け、蛍光X線分析法、色彩分析等による素材の科学分析を
通してデータを作成し、得られた結果に基づき初期色絵磁器の再現を試みた。素材の選定においては、17世紀の製作環境
に近づけることを前提とし、泉山鉱山から陶石と緑礬(ロウハ)の採取を行い、そしてその素材を用いて色絵磁器の制作を
行った。また、その結果をもとに素地と上絵の具のデータを作成した。
素地では、素材を泉山陶石に限定し(泉山陶石を使用する
絵付では、有田と九谷に伝わっている和絵の具のサンプル
にあたり天草選上陶石との比較のために収縮率や焼曲試
収集及び分析を行い、
両絵の具の特徴や成分等を把握し、
デー
験等、物性試験を行った)、轆轤成形で壷を制作、また土型を復元
タを作成した。また、有田泉山陶石鉱山の現地調査と資料採取を
し型打ち成形を行った。原料は白川山土(水簸物)、対州長石(水簸
行い、廃坑道から赤絵の原料である緑礬(ロウハ)を確保し、ベン
物)、天然イス灰、合成イス灰を使用した。釉薬は杯合わせで1杯、
ガラ製造を試みた。
2杯、3杯、4杯釉を調合し、釉掛けは生掛けと素焼きに分けそれ
初期柿右衛門様式における色絵材料の比較対象として種々の
ぞれガス窯、薪窯による焼成を試みた。その結果、白川山土の1杯
和絵の具、
顔料の化学組成を蛍光X線分析法により明らかにした。
釉の生掛けで薪窯による焼成作品が初期の色絵素地に近似して
また、
その構造解析をX線回折法により調べた。
和絵の具の組成は、
いた。これにより、初期色絵磁器の再現において泉山陶石の使用
元になるガラス質
(Pb3O4,SiO2等)
と発色剤
(金属酸化物、
顔料)
の可能性を得た。
であることがわかった。その結果をもとに、絵の具のベースとな
るフリットを試作し、赤色成分(ベンガラ)を添加して赤絵具の試
作を試みた。
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歴
史研究・カリキュラム開発部門
福岡市美術館と佐賀県立九州陶磁文化館で「柿右衛門様式
ドイツとオランダの美術館と城館博物館に所蔵される柿
磁器の普遍性について」をテーマとして国際シンポジウム
右衛門様式磁器を調査し、新出作品の所在を確認した。
を開催した。ドレスデン国立美術館磁器コレクション館を初め国
外から7名の著名な研究者を招聘し、日本から酒井田柿右衛門教
東京文化財研究所と東京国立博物館所蔵の、明治末期から
授をはじめ3名が加わり、最新の研究成果の発表とパネル・ディ
大正期の売立目録を調査し、画像資料を含む柿右衛門様式
スカッションが行われた。その発表で、柿右衛門様式磁器を含む
磁器に関する情報を多量に発見した。上記機関の目録を全冊調査
日本磁器輸出の流通経路についてオランダ東インド会社による
し、結果を報告するための作業を現在行っている。
日蘭貿易以外に、中国商人の深い関与と私貿易(脇荷)の占める割
合の重要さを新発見の文書資料で改めて認識した。また柿右衛門
肥前磁器輸出の日蘭貿易史料研究に際し、東京大学史料編
様式磁器の乳白色白磁についても、その起源は中国の南京赤絵や
纂所所蔵のオランダ東インド会社文書の原文を解読、翻訳
五彩手等の影響によるとするのがこれまでの定説であるが、デル
し、データベース化している。公式貿易に加えて、私貿易や中国商
フト焼の白釉陶器の影響が新しく提起された。
人が関わった英国への輸出の問題も含めて資料を収集した。
平成17年度 柿右衛門様式陶芸研究センター研究業績一覧
(論文、
報告書、
その他)
意匠研究部門
●陶磁器産業の抱える問題について
―卸、販売、製造業を含めた陶磁器業界に関する問題把握―
(釜堀 文孝)
●柿右衛門様式陶磁器に関する一般学生の意識調査分析
―九州産業大学のケース―
(内山 敏典)
●陶磁器産業の諸問題と展望についてのアンケート分析
―研究機関が陶磁器製造業に果たす役割について―
(釜堀 文孝)
●柿右衛門様式陶磁器に関する学生のアンケート調査分析
―九州産業大学学生以外の学生等の意識調査について―
(内山 敏典)
●陶磁器需要の統計的分析
―柿右衛門様式陶磁器需要との関連性について―
(内山 敏典)
技法研究部門
●初期柿右衛門様式磁器における釉および素地の比較研究
(梶原 茂正)
●陶磁器の色合い測定及び乳白釉の調合に関する研究
(松下 広樹)
●初期柿右衛門様式磁器における有田泉山ロウハからの赤絵具
と色絵磁器の試作
(朴 泰成・小林 繁夫・古賀 道生・梶原 茂正・津留 壽昭)
●柿右衛門様式作品に潜む『源氏物語』の意匠に関する研究
(山本 紗英子)
歴史・カリキュラム研究部門
●近世肥前磁器輸出に関する経済史研究の成果と課題
― 邦語文献を中心に ―
(山本 盤男)
●Modern Kakiemon Wares―The 20th and 21st
Century Kakiemon Style
(現代の柿右衛門―20、21世紀の
柿右衛門様式)
(古橋 千明)
●オランダ東インド会社文書におけるオランダ向け肥前磁器の
絵付けの記載について
(櫻庭 美咲)
●ドイツ・オランダにおける柿右衛門様式磁器調査報告
(下村 耕史)
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第2回若手研究者による研究会
山本 紗英子
本研究では、柿右衛門様式磁器の絵付
けの人物文様についての図像上の考察を行っ
た。従来の人物文様の研究においては、中
国の『八種画譜』、
『 二十四孝図』などの唐
様人物を中心とする内容が主流で、中国
の意匠の影響を受けたことばかりが論じ
られてきた。しかし論者は、日本陶磁器独
自の文様の個性は本来、日本的風趣に富
むものの中に存するものと考える。その
観点から、柿右衛門様式磁器のなかでも
とりわけ純日本的な文様である
「姫御殿文」
に着目し、
柿右衛門様式磁器の絵文様が
『源
氏物語』
の一説話から影響を受けたとする、
従来の人物文様研究にはない新たな可能
性を展開すべく論証を試みた。
柿右衛門様式磁器の製作が盛んであっ
た江戸時代では、公家や武家に関わらず
左記の考察の結果、
柿右衛門様式磁器の
「姫御殿文」
が
『源
庶民においても、文学の教養が浸透していた。
『源氏物語』
は読書を通じ生活のなかで親しまれ楽しまれ、その意匠は
氏物語』
の<若紫>を見立てて描かれた独自の和様意匠であ
平安時代から日本の絵画、工芸の中に大きい役割を果たし
る可能性が十分考えられるという結論に至った。
ていたのである。そのことをふまえて、柿右衛門様式磁器
発表後のアドバイス
の「姫御殿文」の主題について、
『源氏物語』や江戸時代まで
の絵画や工芸作品、そして歴史的・生活的背景と関連付け
(事業推進担当者 菊竹教授)
柿右衛門様式磁器の「姫御殿文」に描かれた婦人を『源氏
ながら考察し、それを『源氏物語』の登場人物である<若紫
物語』
の<若紫>とするならば、
源氏絵作品の<若紫>の着衣
>であると特定し、
以下の諸点を確認した。
の色と共通しているのではないかという指摘があった。柿
●『源氏物語』の<若紫>の段と、源氏絵の<若紫>の中心的
右衛門様式磁器の
「姫御殿文」
にみる着衣の色をみると、
「源
場面にみる一説話内容の共通点
氏物語絵巻」では、<浮舟>の着衣の色が共通する。それは、
●御所解模様、
蒔絵などの工芸品にみる<若紫>の意匠との
柿右衛門様式磁器では5色
(赤・黄・緑・青・紫)
を基本にした
共通点
色合わせになること、
「源氏物語絵巻」
の<浮舟>であるとい
●「源氏物語絵巻」にみる吹抜屋台構図や引目鉤鼻技法など
う理由からである。
しかしながら、
各画派により描かれる<
の描写法の共通点
若紫>の着衣の色は必ずしも一致していない。
つまり、
場面
●柿右衛門様式磁器の絵文様に影響を与えた可能性のあ
にみる配色の共通性に関しては重要視されていなかった
る狩野派、
土佐派の粉本の中に源氏絵がみられる
のではないかと考えられる。また、絵巻物において多くみ
●同時期の京焼にも、
『源氏物語』
の意匠がみられる
られた着衣の配色は緑と赤であった。着衣の色の共通性は
●柿右衛門様式磁器だけでなく、江戸時代の工芸に、多く
さほど重要ではなく、それ以上に、<若紫>の場面を描くこ
の
『源氏物語』
の意匠がみられる
とに意義があったと思われた。
●江戸時代では、
『源氏物語』は一般教養書であり、広く普
及していた
6
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第3回若手研究者による研究会
松下 広樹
釉薬のテスト焼成を行うにあたり、
透明釉と藁灰釉に関する参考文献の基
本的組成に基づき、釉薬の性質と色調
を探究する。ここで用いる透明釉とは、
釉薬自体には着色する効果はなく、素
地の持つ色を引き立たせるものである。
また、
藁灰釉とは、
素地の持つ色ではなく、
着色剤として白さを引き出すものである。
さらに透明釉と藁灰釉の色彩分析を行い、
色相・明度を科学的に明らかにするこ
とにより、素地と釉薬の持つ色調の位
置付けを行う。また、三角座標を用いて
釉薬の調合パターンと釉薬の特性の変
化も考察する。
本研究は、一般に市販されている原
料の対州長石、天然柞灰と天草陶石を
用い試験を行った。テスト焼成後にみ
改善点
る色調を色相・明度に分類し比較することで、素地と釉薬
本研究結果に対して、数値比較するサンプルがなかった
の関係を考察する。色彩分析では分光測式計を用い、SCI
ため、実際のサンプルを対象とした釉薬の再現にまでは至
方式で色の見え方を数値に置き換え具体的にみていく。
研究の成果としては、目視では白色と位置付けることが
らず、数値として白色の位置付けが可能であるという結論
できるが、一口に白色といっても色調にはかなり多様性が
にとどまった。今後は、1590〜1680年代の陶片(古唐
あることが解った。色彩分析を行うことにより、数値とし
津〜藁灰、初期伊万里など)の色彩分析を行い、本研究結果
て様々な白色を位置付け、目視では明らかにされない部分
と比較し、色彩分析したサンプルのデータに一致するよう
を解明していくことができた。色彩分析を行うことで、人
に釉調合を繰り返し行ってゆく。また、白色の位置付けを
間の持つ視覚の曖昧さが明らかになるとともに、目視では
各年代ごとに分類してゆく。
不可能な白色の位置付けを数値として表すことができる。
また、色相・明度を数値として色度図に位置付けることが
可能であることも認識できた。さらに、三角座標を用いる
ことにより、原料毎に釉薬の性質・釉調・色調が理解され、
使用した原料を基準に目視で原料の持つ性質や釉薬とし
て釉の持つ性質が比較しやすく、釉調差や色調差も相対的
にみて簡単に理解することができた。
7
平成17年度 調査活動等
期
間
場
所
担当者
備
考
佐賀県立九州陶磁文化館
山本紗英子
展覧会見学及び資料収集
平成18年1月11日[水]
佐賀県立九州陶磁文化館・柿右衛門窯
朴
研究打ち合わせ及び資料収集
平成18年1月14日
[土]〜1月15日
[日]
西宮市(大手前大学)
山本紗英子
関西陶磁史研究会第5回研究集会出席
平成18年1月15日
[日]
佐賀県立九州陶磁文化館
櫻庭
美咲
研究打ち合わせ
平成18年1月16日
[月]
〜1月17日[火]
佐賀県立九州陶磁文化館
朴
泰成
視察及び資料収集
平成18年2月 5 日
[日]
〜2月 6 日
[月]
長崎県教育委員会
櫻庭
美咲
柿右衛門様式磁器発掘出土資料調査
平成18年2月18日
[土]
〜2月19日
[日]
佐賀県立九州陶磁文化館
朴
泰成 ・ 古橋
千明
第16回九州近世陶磁学会参加
平成18年2月16日
[木]
柿右衛門窯
濱川
和洋 ・ 古賀
裕子
3次元測定による土型実測調査
平成18年3月 3 日
[金]〜3月 7 日[火]
茨城県陶芸美術館他
平成18年3月15日
[水]
柿右衛門窯
濱川
和洋 ・ 古賀
裕子
3次元測定による土型実測調査
平成18年3月17日
[金]
柿右衛門窯
濱川
和洋 ・ 古賀
裕子
3次元測定による土型実測調査
黄
泰成
展覧会見学及び資料収集
承基
運営委員会開催
開催日
主な内容
第21回
平成18年1月14日
[土]
センター論集投稿規程等について
第22回
平成18年2月 4 日
[土]
平成18年度柿右衛門様式陶芸研究センター予算について
第23回
平成18年3月18日
[土]
平成18年度柿右衛門様式陶芸研究センター事業計画について
若手研究者による研究会開催
開催日
主な内容
発表者名
第1回
平成17年12月17日
[土]
若手研究者研究会の内容・方向性についてのディスカッション
━
第2回
平成18年1月16日
[月]
柿右衛門様式にみる『源氏物語』
山本紗英子
第3回
平成18年2月 4 日
[土]
陶磁器の色合い測定及び乳白釉の調合に関する研究
松下
広樹
第4回
平成18年3月24日
[金]
柿右衛門様式磁器の人形・置物とその影響
古賀
裕子
九州産業大学
柿右衛門様式陶芸研究センター
http://www.kyusan-u.ac.jp
〒813- 8503 福岡市東区松香台2-3-1
TEL 092-673-5489 E-mail [email protected]
8
5
平成18年1月 7 日[土]