「 ニューヨーク痛みの研究留学」 柴﨑 雅志 (京都府立医科大学麻酔科学 学内講師) 先程の話を聞きまして、金子先生は2児の母、牛込先生は3児の母、僕は4児の父になります。 ご覧頂いている画面は世 界地図ですが、ぜひ皆さ んにも世界を体験してい ただこうと思って今日 はお話させていただきます。 私 は 牛 込 先 生 と 同 期 です が、京 都 府 立 医 大 を 平 成 15 年 に卒 業 し 、そ の ま ま 麻 酔 科 に入 局 しま した。入局半年後に一時出張しまして、大阪の大手前病院で研修医を終えました。 その後、1年間与謝の海病院に行きました。4年目に大学院に帰ってきて、痛みの研究、顕微 鏡 で写 真 を撮 っ た り、タン パ ク濃 度 を 測 っ た りしま した 。卒 業 後 、大 学 の 手 術室 で勤 務 を していま し たが、佐和教授の下で第 1号として、2012年にアメ リカに留学させて頂きました。京都から、はるば るニューヨークに行ってきました。 普 通 は 、留 学 先 を 必 死 に 探 さ な い と い けな い の で す が、 私 は 非 常 に幸 運 で 、ア メ リ カ の ラ ボ で決 ま っ て い た 人 が 急 にキ ャ ン セ ル し 、 次 に手 を 挙 げた 私 に 決 ま りま し た 。 一 度 、 留 学 の 話 を 家 に持 っ て帰りました。奥さんの「 今行かないで、いつ行くの」という一言で、留学のお 話を頂いた翌日、大学 に返事をさせて頂きました。ですので留学先を決めるのに、そんなに苦労はしませんでした。 普 通 は 留 学先 の ラ ボま で行 っ て、ボ ス と 面談 をす るよ うです が、留 学 先 の ボス と の 面 談も 、時 間 -1- が無かった ため 、Skypeで行いました。ですの で、私 が飛行機 でアメリ カに到着 した のが、最初 の訪 米 に な りま す 。ジ ョ ン ・ F ・ ケ ネ デ ィ 空 港 に 着 い た 後 、 空 港 か ら ど の よ う に 出 るの か わ か ら な い の で 、 周囲に聞いてシャトルバスに乗りました。ここからが、サバイバルの始まりです。 シャトル バス に乗 る時 、「おま えはラッキーだ 」 と助手 席に乗せてもら いま した 。景色 がよか った で す。ドライバーに降りる場所を聞き、知らない巨大な駅で降りました。自分の一時滞在先がわからな い の で 、自 分 の 拙 い 英 語 で 周 囲 に聞 き な がら 地 下 鉄 に乗 り 、ジ プ シー バ ス と い う 乗 り 合 い の バ ス に 乗り、なんとか一時滞在先に、着きました。 一時滞在先は日本からインターネットで探しました。見ず知らずのおばさ んの 家に部屋を間借り し、家賃のコストを削減して本格的に借りる家を探 すことができました 。この 時は、単身で行 ってまし た。 この写真が、私の留学していたコロンビア大学です。ほんとうにきれいな大学です。 ここからは、研究の難しいことではなく、僕の楽しい留学生活をアルバムをめくるように、聞いて頂 こ うと 思 い ま す 。渡 米 して 、次 の 日 にラ ボ の ボ ス に 会 い に行 き ま し た 。大 学 の I D カ ー ド を 作 成 す ると 、 シャトルバスに乗って橋を渡ることができます。コロンビア大学では、日本からの留学生も多く、歓迎 会も開いて頂きました。 ラボに着くといきなり動物 実験ができるわけではありません。動物の扱い方や薬品の扱い方のトレ ーニングコースを受けました。このコースに合格しないと実験できない仕組みになっています。知識 の整理に非常に役立ちました。 麻酔科だけで研究発表するのですが、小さな地方会くらいの数の演題が出ます。それだけでアメ リカの大きさを実感しました。 携 帯 の 契 約 や 水 道 ・ ガスの 契 約 に 、ソ ー シャ ル ・ セキ ュ リ テ ィー ナ ン バー の 取得 が必 要 です の で、 そ れ を 取 得 しに 行 き ま した 。 休 日 は タイ ム ズ ・ ス クウ ェ ア や セ ン ト ラ ル パ ー クに 行 き ま し た 。ま た 、 ボ スの家で研究室のメンバーとともにバーベキューをしました。 ボ ス か ら は 1 週 間 ボ ス ト ン に 行 っ て 、技 術 を 学 ん で くる よ う に 言 わ れ ま し た 。そ こ で 、 神 経 細 胞 の 培 養 の 技 術 を 学 び 、現 在 、 大 学 院 生 と 行 っ てい る研 究 に繋 が っ て い ま す 。ボ ス ト ン で は ク ラ ム チ ャ ウダーやロブスターなど美味しいものも楽しみました。エーテルドームも見学しました。ボストンでの1 週間の経験を、現在の大学での研究に活かせております。 日本に一時帰国した際、佐和先生に声をかけて頂き、京都府立医科大学麻酔科学教室でお話 をさせて頂きました。 英 語 が、元 々 堪 能 では ない の で、コ ロン ビア大 学 で、有 料 な の です が、英 語の コー スを 受 けて勉 -2- 強もしました。英語の能力をブラッシュアップすることができました。 研究をしながら、日本では経験できない、楽しい思い出をつくることができました。 私の研究テーマは、ニューロパシックペインです。日本語では、神経障害性疼痛です。全人口の 5 % ~ 10 % が 罹 っ て い る持 続 す る痛 み や 感 覚 の 錯 覚 の 症 状 が あ り ま す 。そ の 原 因も ト ラ ウ マ や 神 経圧迫、糖尿病など多岐に渡っています。 私 の 研究 テーマ が、脊 髄の マイ クログ リア とい う細胞 が痛 みにど の くら い関わ っ てい るかを 調べ て い ます 。赤 く染まっ た細 胞が本 当 に全部 マイ クログリアな のかも 研究 しています 。これ らの 正体を 今 も探っています。 アメリカの実験室は新しく、まだ実験系が立ち上がっていなかったので、アメリカいる間に7つの実 験 系 を 立 ち上 げ てき ま した 。ま た 、ア メ リ カ では 50 人 くら い の 大 人 数 でバ ー ベ キ ュ ー を し た り 、日 本 人のコミュニティをつくって楽しむことができました。 こちらは、大学院生と実験系を立ち上げたり、凍結ブロックをしている写真です。 皆さんも「留学」は、構えてしまうかもしれませんが、私のように何も考えず、とりあえず、行ってみ て考えるのもよいのではないでしょうか。 -3-
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