情報グラフィック論Ⅰ 2014/7/17 3.色彩をつかう ― (4) 色彩の伝達/色名とカラーシステム 01.色名 a.基本色名 参考 :『色彩』p8 ~ 13 基本的な色彩語(色彩の種類そのものを指す言葉) ……「白」「黒」「赤」「青」など ※ベーシックカラーターム basic color team(基本色彩範疇) 「赤」 赤 red・橙 orange・黄 yellow・緑 green・青 blue・紫 purple 「朱色」 茶 brown・ピンク pink・白 white・灰 gray・黒 black 紫 バーリンとケイによる 基本色彩語の発生過程 「あざやかな黄みの赤」 白 緑 黄 赤 黒 ピンク 青 黄 茶 緑 橙 灰 b.慣用色名 日常的に使い慣わされている色名。 私たちの生活や文化の中から生まれ、その色から連想される具体的な事象の名称が 色の名前として使われているもの。[固有色名] ■植物に由来する慣用色名 花の色……桜色、桃色、山吹色、ローズレッド、ラベンダー etc. 実の色……蜜柑色、栗色、オリーブ、ピーチ etc. 葉の色……松葉色、柳葉色、若葉色、萌葱色 etc. 染料のとれる植物……紅、藍、茜、刈安 etc. ■動物に由来する色名 哺乳動物……キャメル(らくだ)、鼠色、トープ(もぐら)、きつね色 etc. 鳥 ……カナリア、パロットグリーン(おうむ)、鳶色、鴇色 etc. ■鉱物に由来する色名 エメラルドグリーン、ガーネット、ルビー、ターコイズブルー(トルコ石) マラカイトグリーン(クジャク石)、ラピスラズリ etc. ■自然の事象に由来する色名 水色、空色、マリンブルー、スカイブルー、スノーホワイト、 フォレストグリーン(森の緑)、ドーンピンク(曙)、東雲色 etc. ■地名、人名などに由来する色名 地名……ボルドー、バーガンディ、プルシャンブルー、新橋色 etc. 人名……ポンパドゥールピンク、利休色、団十郎茶 etc. c.系統色名 色の持つ三属性やトーンなどにより、体系的に作られた色名。 ◇有彩色の系統色名は、「トーン」「色相の傾向」「基本色名」の三つの語彙から構成される。 ex. 暗い 青みの 紫 ( dark blueish purple ) ◇無彩色の系統色名は原則として、「明度の形容」「無彩色の基本色名」のふたつの語彙による。 ex. 明るい 灰 ( light gray ) ◇ISCC-NBS 色名法(米)、JIS 系統色名(日)、PCCS 系統色名(日)などがある。 (※それぞれ語彙が異なる) - 1 - 情報グラフィック論Ⅰ 2014/7/17 【参考:日本の伝統色名/主に染色における色名】 ■上代~奈良時代 □奈良時代以後よく使われている色名 赤系:紅(べに)、緋(ひ)、茜(あかね)、蘇芳(すおう) 青系:藍、縹(はなだ) 橙系:黄丹(おうに) 紫系:紫、葡萄(えび) 黄系:刈安(かりやす)、梔子(くちなし)、黄蘗(きはだ) 黒系:橡(つるばみ)、皂(くり) ■平安時代 …… 染色技術の発達による色の多様化 □平安時代の色名の命名方法 1.色彩の基本名称:赤、緋、丹、黄、緑、青、紫、白、黒 etc. 2.体となる色名に形容語となる色名を被せた中間色:青緑、赤紫、黄橡、黄朽葉、黄支子、青鈍 etc. 3.基準となる色名に調子を表現する形容詞を被せた色名:深紫、濃き紫、浅緋(うすあけ)、浅き紅梅 etc. 4.その色を染める染料の名をそのまま使った色名:紅、紫、藍、蘇芳、橡、丁子、胡桃染、鬱金 etc. 5.染色の手法から派生した色名: ○一斤染(いっこんぞめ)……紅花1斤(≒600g)で絹一匹(20m 前後?)を染めた薄紅色 ○藍染め……染めの深さで名称が変化 (薄/緑み)白殺し→瓶覗き→浅葱(あさぎ)→縹(はなだ)→藍→紺→紫紺(濃/紫み) ○二藍(ふたあい)……紅と藍によって染めた紫 6.植物の花や葉の色にちなんだ色名:紅梅、萱草、女郎花、紫苑、朽葉 etc. ■江戸時代 …… 奢侈禁止令の影響下で地味な色の多様化(江戸中期・町人文化) □四十八茶百鼠 鼠系:利休鼠、鳩羽鼠、藤鼠、柳鼠、藍鼠、銀鼠 etc. 茶系:利休茶、鶸茶、鶯茶、藍海松茶(あいみるちゃ)、御納戸茶、丁子茶(ちょうじちゃ)、媚茶(こびちゃ)etc. □役者色……当時人気のあった歌舞伎役者に因んだ色(茶が多い) ○路考茶(ろこうちゃ:瀬川路考)……赤黒みをおびた黄茶 ○梅幸茶(ばいこうちゃ:尾上梅幸)……茶味を含んだ淡萌黄色 ○団十郎茶(だんじゅうろうちゃ:市川団十郎)……柿色(柿渋色) ○璃寛茶(りかんちゃ:嵐璃寛)……媚茶に藍味を加えた色 ○芝翫茶(しかんちゃ:中村芝翫)……赤みの茶 ○岩井茶(いわいちゃ:岩井半四郎)……葡萄鼠の茶がかった色 【参考:JIS 系統色名の語彙】 - 2 - 情報グラフィック論Ⅰ 2014/7/17 02.カラーシステム(色彩体系/表色系) a.修正マンセルカラーシステム 参考 :『色彩』p14 ~ 27 参考 :『色彩』p14 20 世紀初頭、アルバート・マンセル(米)が考案。 「 7.5R 4.5 / 14 」 1944 年、アメリカ光学会測色委員会により修正。 現在、JIS(日本工業規格)に採用。 「 3:yR - 4.5 - 9s 」 ―― 「 v3 」 色の三属性(色相、明度、彩度)により体系化 色 相(Hue):R, YR, Y, GY, G, BG, B, PB, P, RP の 10 色相。各色相は、数値によって細分化 「 7pa 」 ※「5」によって示される色相が代表色相 c.オストワルトカラーシステム 参考 :『色彩』p20 20 世 紀 初 頭、ヴィ ル ム ヘ ル ム・ オストワルト(独)が考案。 理論的に調和する配色を得るた 明度(Value):理想的黒「0」、理想的白「10」 彩度(Chroma):無彩色「0」、数値大 = 高彩度 ―― 有彩色の表記:Hue Value / Chroma(ex. 5 BG 8 / 2 ) 無彩色の表記:N Value(ex. N5) めのカラーシステム。現スウェー デン規格のNCSなどの表色系 に影響を与える ―― 色相、白色量、黒色量の三属性 により体系化。 ―― 表記:色相 白色量 黒色量 アルバート・マンセル (ex. 20ea) b.PCCS(日本色研配色体系) 参考 :『色彩』p16 1964 年、日本色彩研究所が発表。色相とトーンの二属性 による表記が可能(ヒュー&トーン・システム)。 ―― 色の三属性(色相、明度、飽和度[彩度])により体系化 色相(Hue):心理四原色を基本とした 24 色相 明度(Lightness):マンセル明度を採用 W.オストワルト 飽和度(彩度、Saturation):無彩色「0」/純色「9」 「 X=27.24 Y=15.77 「 Y=15.77 x=0.5909 Z=3.09 」 トーン:有彩色 12 区分、無彩色 5 区分により表現 y=0.342」 ―― 三属性の表記:H - L - S(ex. 14BG ‐ 8.0 - 2s) d.XYZ表色(CIE表色系) 参考 :『色彩』p24 ヒュー&トーンの表記:Tone 記号色相番号(ex. p14) 1931 年、CIE(国際光学会)が発表。 光の三原色(赤、緑、青)と人の視覚特性から色を数値化。 ごく詳細な記述が可能で工業分野での色彩管理の基礎。 ―― 三刺激値による表記:X(赤)、Y(緑)、Z(青)の数値を併記。 Y値と色度座標による表記:Y(明るさ - 三刺激値のYと同じ)、x(赤みを示す)、y(緑みを示す)の数値を併記。 - 3 - 情報グラフィック論Ⅰ 2014/7/17 5R (R) 5R (pR) 10RP 8/ 3 4 5 6 7 8 9 10 1 2 9 10 1 2 3 8 4 7 5 6 R 7 7/ 明度 Value(V) 5 4 8 6/ 5/ (rY) 4/ 10 1 YR 3 4 (YR) 5YR (RP) 5RP (rP) 10P Munsell R 6 5 8 P Y Munsell Hue Circle GY 4 PB (gY) 10Y 1 2 3 4 5 6 7 3 2 /6 /4 /2 /1 /0 /1 /2 /4 /6 /8 /10 /12 /14 彩度 Chroma(C) 5GY 9 2 9 10 4 5 6 7 8 9 10 6 7 8 0 9 1 1 2 3 4 1 5 6 7 8 色相 Hue(H) 5 5G (G) 10G (bG) 4 3 4 5 6 7 8 9 10 1 2 5BG (BG) 3 10BG (gB) 10GY G (yG) 2 BG 5B (R) (GY) 【修正マンセルカラーシステム】 1 10B (pB) BG 3 B /8 (gY) 10Y 1 10 1 10 G /14 /12 /10 8 9 B GY 5GY (GY) 8 5PB (PB) (Y) 5Y 8 9 10 6 7 4 5 10 7 8 9 1 2 3 4 5 6 5 6 7 8 Hue Circle 3 10PB (bP) 7 YR 5Y 1.5/ 1 2 3 4 5 6 7 9 10 1 RP 2 PB 6 Y (rY) 10YR 10 1 (P) 5P 5 9 2 3 4 3 4 5 6 7 8 9 10 1 2 9 10 1 2 3 8 4 7 10 7 8 9 5 6 (yR) 10R (Y) 2/ 2 (R) 5R (pR) 10RP 10YR 3/ 9 RP 5BG 9/ (yR) 10R (YR) 5YR 6 N 10GY (yG) 【オストワルトカラーシステム】 1 2 3 4 5 6 7 10 a c e g i l n p 白の割合 89 56 35 22 14 8.9 5.6 3.5 黒の割合 11 44 65 78 86 91.1 64.4 96.5 ca ea ga ia la na pa pc ne e ig lg ng pe li ni pg nl pi pl ea ec ec ie le ca c ge ic lc nc gc a pn g i l n p gc ge ga ic lc ie ig lg ne ni nl la nc le ng li pn ia pe na pa pc pg pi pl 【XYZ 表色系/色度図】 X: 赤の刺激値 Y: 緑の刺激値/明るさ Z: 青の刺激値 赤の割合 x=X/(X+Y+Z) 緑の割合 y=Y/(X+Y+Z) 明るさ Y - 4 -
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