全地連「技術 e-フォーラム 2004」福岡 【93】 一般廃棄物を利用した埋立て地盤直下に分布する圧密沈下層の挙動 ㈱カミナガ 1. 中尾 利之 ○山田 康裕 はじめに 不燃物,焼却灰などの一般廃棄物を埋立てた土地の 有効利用として野球場・多目的広場などの公園施設を 建設する計画がある。この廃棄物の直下には軟弱な圧 密沈下層が分布しており、公園施設の維持・管理にあ たっては沈下量を把握することは重要な課題である。 本業務は、同様な地盤状況にある隣接施設で圧密沈下 が生じ、地中埋設管に障害が発生したことを受けて実 施されることになった調査であるが、覆土がなされた 後に着手したため、各種定数などを設定するにあたっ ては,試行錯誤を繰り返した。 写真 2-1 ここでは、当該地のゴミ地盤の工学的性質・圧密沈 ゴミ地盤の写真(左:西側,右:東側) 下層の圧密特性・圧密沈下対策ならびに沈下管理(動 態観測)結果について取りまとめ報告するものである。 2.2 ゴミ地盤の工学的性質 ゴミ地盤の工学的性質を求めるため,平板載荷試験, 2. 現場密度試験を実施した。その結果,西側ゴミ(破砕) 現地調査および現況地盤の評価 2.1 は 極 限 支 持 力 = 280kN/m2 , 湿 潤 密 度 ρ t=1.09 ~ 地質構成 当該地は、マサ土による覆土(Bs)とゴミ(Bw)からな 2.04g/cm3 が得られ、東側ゴミ(原型)では極限支持力= る人工埋積層,軟弱な粘性土を主体とする完新世堆積 210kN/m2,湿潤密度ρt=0.84~1.18g/cm3 が得られた。 物(Ac),粘性土(Dc)・砂質土(Ds)・礫質土(Dg)からな このことより,ゴミ地盤は小規模建築物に対しては十 る更新世堆積物および基盤岩から構成される。人工埋 分な地耐力を有するといえる。 積層を構成するゴミは計画地の東西で違いがみられ, ゴミ地盤の単位体積重量(γt)は、下位の Ac 層の圧 東部ではゴミ自体が原型を留め、西部では破砕されて 密度やボーリング結果を含め検討を行い、西側ではγ 細粒で密な状態にある。その直下に分布する Ac 層は, t=15.9kN/m3,東側ではγt=11.8kN/m3 と設定した。 N 値が N=1 程度を示す高含水比で軟弱な粘性土で,層厚 は北側で 4m 程度,南側で 8m 程度ある。当層は今回の 圧密沈下の検討の対象となる地盤である。 Ac 層の圧密特性 Ac 層で実施した圧密試験結果より,①各供試体の Pc 南側 北側 標 高(m) 2.3 は現況土被り圧より小さく,未圧密エリアが生じてお 標 高( m) 13B-2 H12 №4 り,圧密進行中の軟弱地盤であるといえる。②沈下特 H12 №2 5.00 5.00 性は,初期間隙比 e0=1.4~1.7 で,圧密降伏応力 Pc=70 Bs Bw 0.00 0.00 ~100kN/m2 付近より間隙比の急な減少を示す。③圧密 時間 Cv は、圧密降伏応力 Pc 付近までは,概ね Cv=30 Ac -5.00 -5.00 Dc ~600cm2/day を示すが,それ以降は Cv=60~150cm2/day 程度まで減少する,といった結果が得られた。 Ds -10.00 -10.00 標 高(m) 標 高 (m) H12 №3 H12 №1 13B-1 2.4 圧密沈下の検討と対策 5.00 5.00 圧密沈下の検討を行うにあたり,野球場の南北方向 Bs Bw 0.00 0.00 の断面をとった。排水勾配が、既設水路の配置状況か ら,沈下量が少ない(Ac 層の層厚が薄い)北側へ流下 Ac -5.00 Dc -10.00 -10.00 Ds 図 2-1 -5.00 南北方向の地質断面図 (上:多目的広場,下:野球場) させる計画であるため,許容沈下量は 0cm を目標とし た。また、圧密沈下量の計算式は,現在までの盛土経 緯が明確でないことを考慮し,圧密過程の影響が小さ い e-logP 曲線を用いた式を採用した。 また,圧密降伏応力 Pc および間隙水圧 Pu を用いて 全地連「技術 e-フォーラム 2004」福岡 得られた圧密度(U=約 80%)から,残りの沈下量を算出 また,t=∞のとき,すなわち最終沈下量 Sf は次式で求 したところ 0.3~0.8m 程度との値が得られ,この沈下 められる。 Sf= S0+ 量は公園施設に有害な影響をもたらすことが判明した。 圧密沈下対策としては,地層状況を考慮しプレロー 4.3 1 β 観測結果の解析・検討 ドによる圧密促進工法を採用した。プレロード工法の 動態観測の結果に基づき,図 4-1 の双曲線による逆 計画にあたっては,敷地内に一度にプレロードを施す 解析により最終沈下量を推定した。なお,ここでは野 のではなく,計画敷地内の覆土(Bs)を移動させ,推定 球場北側のデータを示す。 沈下量に応じて盛土厚を調整しながら施工を行い,最 終的に排出土量が最小となるよう設定した。 双曲線図 3000.000 B α2 2500.000 3. 観測機器の設置 盛土に際し,圧密沈下が予想される Ac 層および Dc 層を対象に層別沈下計を設置した。その概要は図 3.1-1 に示すとおりである。 S-1 S-2 2000.000 t/(St-S0) 1500.000 1000.000 β1=8.5731 保護管 現況地盤面 β2=4.4777 A α1 (日/m) 500.000 α0 Bs:覆土層 沈下板 0.000 0 支持ロッド 50 図 4-1 フリクション カッターパイプ 150 t1 200 250 300 350 経過時間 t (day) 400 t2 450 推定最終沈下量算出図 Ac層 グラフより,150 日程度経過した段階での最終沈下量 Dc層 Sf は Sf=0.034+1/8.571=0.151 で,15cm 程度の沈下し (VP50) Ds層 Dg層 スクリューアンカー 図 3-1 100 Bw:ゴミ層 層別沈下計設置概要 また、地表面沈下板を現況地表面より 0.5m 程度掘削 して設置した。 か発生しないとの結果となり,当初の想定と大きく異 なる結果となった。しかし,その後の観測では,150 日経過以降に沈下が促進し,A 点までの沈下量 St1 と A 点以降の発生沈下量の合計,すなわち最終沈下量は Sf=35cm と算出され,現在も直線的に沈下は進行してい る。同様に多目的広場の最終沈下量を算出すると 4. 観測結果および解析 4.1 Sf=40cm 程度となった。 沈下管理 粘性土層に土砂で覆土した場合のような一般的盛土 地盤安定化工事(プレロード工法)の沈下管理は, 施工を行った場合の双曲線のモデルは,直線部が複数 地表面沈下板および層別沈下計の動態観測を行った。 ではなく 1 本で表されるが,これまでの観測結果では 2 沈下管理の検討項目は下記の 3 点が挙げられる。 本の直線が得られている。このことは,覆土による応 ① ② ③ 地盤の各層の沈下量を求め,圧密の進行状況 力伝達が一般的な土砂を用いた場合と比べて遅く,今 を把握 回の結果からいえば,応力が 150 日経過後にようやく 将来沈下量を予測して,土量や盛土出来形の Ac 層に到達し現在に至っていると考えられる。応力の 修正および土工仕上がり高の上越し量の決定 伝達が遅くなる原因としては、ゴミ層にはよく締まっ プレロードの除荷時期の決定 た状態にある焼却灰層が存在するなど不均質な状態に あることや,空隙が大きく,例えるならば「スポンジ」 4.2 沈下量の検討 のような状態の地盤であると評価できることなどが考 沈下量の経時的な測定結果から,施工後に続く沈下 えられる。また,今回の観測結果より,いずれの箇所 量を推定する手法は種々提案されているが、それらの においても実測による最終沈下量が想定沈下量を下回 うち今回は下記に示す双曲線法を採用した。 る結果が得られた。これらのことから,ゴミ地盤は一 双曲線法は、沈下の平均速度が双曲線的に減少する 般の土砂に比べ,応力の伝達が遅く,かつ応力を大き という仮定にたって経験的に導かれたものであり、盛 く分散させる性状を持つことが推察される。今後は他 土立上がりから任意時間 t における沈下量 St は次のよ の手法による検討も模索するとともに,プレロードの うになる。 除荷時期の検討を行っていく予定である。 St= S0+ ここに、 St: S0: t: α,β: t α+βt 任意時間tにおける沈下量 初期沈下量(t=0) 経過時間 観測値から求められる係数 《参考・引用文献》 土木・建築技術者のための ック:建設産業調査会 最新軟弱地盤ハンドブ p339~340
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