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静止画像データベースの構築とマルチメディア化
西 田 史 朗
(地 学 教 室)
Still VidualInformation Data−base and Multimedia Presentation
Shiro Nishida
要旨 良質の静止画像を記録保存し、検索・編集・提示する方法と機器構成について市販製品で
準備した例を紹介した。
Key words:VidualPresentation,Stillvideo−information,DataMbase.
1.はじめに
映像のもつ情報量は文字情報に比べてひじょうに大きく、視聴者に伝達できる情報の効果は計
り知れない。教育の場においても言葉や文字で伝えることの難しさは日頃よく経験しているとこ
ろである。きれいで鮮明なカラー映像の与える教育効果の著しいことも、当然のことながらしば
しば再認識させられる。このことは最近の教育職員免許法施行規則の改正に当たっても重視され、
教職に関する専門教育科目の中で、「教育の方法及び技術(情報機器及び教材の活用を含む)に
関する科目」の単位修得が義務づけらている。本学でもこれを受けて「教育方法学」、「教育メ
ディア」、「教育情報論」として新しいカリキュラム展開がなされている。
最近のマスメディア、とりわけテレビ放送技術の進歩の著しい様子は、茶の間のテレビでもよ
く感じられる通りである。すなわちハイビジョソ放送を待たないまでも、ノイズの少ない衛星放
送の画像に加え、地上テレビ放送ではクリアビジョンが一般化し、知らずしらずの間に高品質の
映像に慣らされている。
このことは印刷画像にいても同じで、近頃の新聞雑誌をはじめとする印刷写真の鮮明さには目
を見張らされる。これらの画像・映像の鮮明化処理はデジタル化した映像情報を数値処理するも
ので、コソピューター技術の発達による。テレビ画像のような動的画像情報を処理できるように
なったのは、超高速演算と大容量メモリーを備えたコソピューターの普及が寄与している。
ところで我々のもつ映像情報の多くは、ネガあるいはポジフィルム、ペーパープリソト、印刷
画像などで、それらはすべて各種の色素をベースにしている。そのため色素の化学的な分解劣化
によって、時間の経過とともに無惨に姿を代えて行く。知らずに日向においたカラー印刷物やカ
ラープリソトに与える紫外線の効果には、しばしば驚かされる。
従来はこのような映像記録媒体を冷暗所に保存する消極的方法で、かろうじて長命化を図って
きたが、根本的な解決法ではない。個人あるいは研究室レベルにしても収納容積の上からも早晩
限界に達することは目に見えている。そこで映像情報の保存にはデジタル信号化による記録媒体
の物理量の圧縮が必須となってくる。映像情報の劣化防止と情報媒体の小容積化のためには、さ
しあたりデジタル信号化して現在流通している磁気ディスク、磁気テープあるいは光磁気ディス
クに収納する方法が考えられる。そ−して電子技術の進展にしたがって、次の段階ではさらに記録
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媒体の物理量を圧縮することが比較的容易にできるようになろう。
デジタル化した映像情報は解像度・カラーバランスともに固定され、さらにさまざまな信号処
理が可能となるので、目的に合った高品質な静止映像を提供することができるようになったきた。
以下では教育現場のAVセソターを目指して、市販のコソピューターとソフト、ビデオ機器を組
み合わせて利用可能なシステムの構築例を紹介する。教育現場においても静止画像より動的画像
のもつ効果が優れていることは勿論であるが、ここでは機器的な制約から静止画像に限って扱う。
以下に示した機器構成は筆者の研究室でほぼ完成しているものであるが、運用に当たってはまだ
まだ改善の余地をもつパイロット的なシステムで、マルテメディアシテスムの1例でもある。
2.画像デークーベース
2.1.静止映像の記録:静止映像の記録には光学的に撮像したものを、光化学的にフイルム媒体
に記録保存する方法と、撮像管あるいはCCD半導体によって電子情報化して磁気ディスク(ビ
デオフロッピィディスク)あるいは磁気テープ(ビデオテープ)に記録保存する方法がある。し
かし動的映像については電子媒体に記録するのが今日では一般的であるが、静止映像については
さらに解決するべき問題が残っているようで、現時点ではメーカーでもその販売に積極的でない
ように思われる。すなわち光学フイルムのもつ記録媒体としての完成度に比べ、電子映像の鮮明
度とカラーバラソス、色彩の再現性に大きく差異があるように思われる。もちろん現在発売中の
光学カメラの市販価格と比較しての話で、経済性と操作性を無視すれば電子媒体に利があること
は論をまたない。将来必要とする電子デバイスが量産・小型化され安価になると事情は全く変わっ
てくることだろう。
2.2.印画映像:紙あるいはプラスチック・フイルムに色素を使って映像を記録する。印画され
た媒体それ自体で静止映像を提示できるが、色素の化学的変質によって経時的に劣化し、複数の
色素の変化速度の違いからカラーバラソスに変調を見せる。さらに映像媒体の物理的収納容積の
増大も無視できない。しかし短期的には特別の装置を必要とせず、手軽な提示媒体として有効で
ある。
2.3.電子映像:先にも書いたが現段階では、電子式記録方式は一部の機器を除いて光学的記録
方式にくらべて経済性と操作性の上ではるかに劣る。静止画像の記録に限れば光学的カメラにま
だまだ利があるようだ。すなわち低コストを実現するため簡易な色分解で撮像する方式を採用す
るため、性能の低下をもたらしている。しかし撮像以外の記録・再生するビデオフロッピィ装置、
あるいは印画を目的とするビデオプリソターでは、高性能で比較的低価格の市販品が兄いだされ
る。電子記録方式の高性能撮像機器の低価格化が期待されるところである。
3.システムの構成
パーソナル・コソピューターとビデオ・プロセッサーを中心に、静止画映像の入力装置と出力
装置からできている。取り扱う映像はカラー映像で、フイルム映像・ビデオ映像・コソピューター
出力・印刷映像を入力対象とし、ペーパー印画・OHPフイルム・ビデオ信号として出力する方
式を考える。ペーパー印画とOHPフイルム出力はAVセソターとしての大型映像提示装置が整
備されていない現状での繋ぎの手段で、最終的にはハードコピーレスを実現したい。以下では一
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椴的な機器名と使用あるいはテストした製品名をあげた。もちろんこの種の情報機器の進歩が著
しく、新製品が次々に現れるので実用に際しては改めて検討してほしい。
3.1.静止映像処理装置
コソピューター(CPU):入力する静止画映像信号の処理、すなわち入力画像の調整加工と
付帯情報の付加、保存と読み出し、転送と出力を扱う。ビデオプロセッサーとはセソトロニクス
イソクーフェイス方式で結び、コソピューターのキイボードから一元的に操作する。静止画像に
してもそれぞれの情報量が大きいため、メモリー容量に充分な余裕を見込み、演算処理速度も速
いものが使い易い。内部メモリーとして1メガバイト以上、32ビット棟が望ましい。
ビデオプロセッサー(VPR):静止画映像のカラー調整と加工、ペーパーあるいはフイルム
への出力を扱う。このプロセッサーにはRGBアナログ・RGB−TTL・NTSC一ビデオ・
SVHSビデオ・セソトロニクス準拠のパラレルイソクーフェースなどの各種入出力信号端子が
用意されている。ビデオプロッセッサーでは上記の各種入力信号について、明るさ、コソトラス
ト、色調整、画像改質、その他の画質調整と文字情報のスーパーイソポーズを行うことができる。
三菱電機のカラービデオプロッセッサーSCT−CP200型など各種のタイプが市販されている。
図1.画像マルチメディア・システム構成
C R T
「OHP
[
C P U : V P R
L C−OHP
MI)−DV
PM−VWR
MO−I)Ⅴ
I M−VWR
C RT−TV
S CAN
F−S C AN
CI)−RO M
CPU:パーソナル・コンピューター
VPR:ビデオプロセッサー
CRT:高精細度ブラウソ管カラーモニター
MD−DV:磁気ディスクドライブ
MO−DV:光磁気ディスクドライブ
SCAN:イメージスキャナー
F−SCAN:フィルムスキャナー
CD−ROM:CD−ROMドライブ
FM−VWR:フイルムピュアー
IM−VWR:ビデオカメラ
VDR:ビデオディスク・プレーヤー
VTR:ビデオテープコーダー
VFDV:ビデオフロッピードライブ
DAT−Rこデジタル・スチルビデオテープレコーダー
OHP:フイルム投影型オーバーヘッド・プロジェクター
LCpOHP:液晶OHP
CRT−TV:プラウソ管方式テレビ
P−TV:背面投影型テレビ
L−PJ:液晶投影型プロジェクター
Ⅴ−PJ:3管方式投影型プロジェクター
実線:各モードの信号ケーブルで接続、点線:オフ・ライソ。
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3.2.映像入力機器
画像入力としては、可視的媒体から電子情報化する場合と、既に電子情報化された媒体から各
種のビデオ信号再生機器を使って再生・編集する場合がある。前者の場合、映像を色分解して走
査入力する方式と撮像管あるいとCCD半導体を使って電子情報化する方式がある。すなわちイ
メージスキャナーによるのが先の方法で、ビデオカメラを使って記録するのが後の方法である。
原理的には当然色分解・走査入力方式が高品質な映像が得られるが、1画像の入力にかかる時間
と機器の価格が問題となる。
イメージスキャナー(SCAN):印刷映像あるいはペーパープリソトをカラーあるいはモノ
クロで面順次あるいは線順次に走査して入力する。ふつうA−4版面積を2552*3508画素、1イ
ソチあたり300画素(300DPI)の解像度で、カラー面順次読み取りで90秒を要する。1画面の情
報量は400キロバイト近くなる。コソピューターメーカー各社から様々なタイプの銀器が発売さ
れている。
フィルムスキャナー(F−SCAN):カラーあるいはモノクロフイルムを走査してデジタル
信号として入力する。イメージスキャナーのフイルム版と考えてよく、ビデオカメラ入力方式に
比べて、解像度と色再現性が格段によい。1画面の情報量はイメージスキャナーと同程度である。
ビデオカメラ(IMAVWR):撮像管あるいはCCD半導体をつかって光学像を入力する。
多くはNTSC方式のビデオ信号として扱われる。静止画像入力ではフィルターで3原色に色分
解して入力する方式のものがあり、解像度と色再現性に多少の改善が感じられる。SVHS方式
が実用化されているが、周辺機器の整備が充分でなく、従来方式と重複することも多い。ハイビ
ジョソ方式も技術的には完成を見ているが、普及には今しばらく時間がかかる。
CDMROMドライブ(CDrROM):CD−ROMソフトの普及を待たなければならない
が、一枚のCD−ROMおよそ80メガバイトの記録容量をもち、静止画像にして1350枚を収容す
ることができる。良質の画像を半永久的に、繰り返し再生できる記録媒体として注目したい。
ビデオ信号再生機器:ビデオテープ・レーザーディスク・ビデオフロッピィ等に電子的に記録
された媒体を読み出す。多くはNTSC方式のビデオ信号で、解像度に今一段の向上が望まれる
が、大型CRTディスプレーで、少し離れて見るとそれほどの不自然さを感じさせない。
3.3.映像情報記録機器
磁気ディスクドライブ(MD−DV):スキャナーで入力した場合、1画像の映像信号がおよ
そ400キロバイトになる。したがって2HDフロッピィディスクに3画像しか記録できないこと
になり、多くの場面で実用性を欠く、固定ディスクや磁気テープドライブが販売されているが、
記憶容量が前者の最大で100メガバイト、後者では20メガバイト程度で光磁気ディスクドライブ
の利点には及ばない。しかし教材として提示する場合、編集と持ち運びに小回りの利くことも一
時的な媒体として利点であろう。
光磁気ディスクドライブ(MD−DV):磁気ディスクドライブによる画像記録にくらべて、
記録容量が両面で590メガバイトと大きく、1枚のディスクだ1400枚の画像が記録が可能である。
したがって目的によってディスクを区別してあれば、ディスクの交換なしで検索できることにな
る。コソピューター外部記憶装置として、情報機器関連会社から各種のもが発売されている。
DAT画像レコーダー(DATAR):デジタル・オーディオ・カセットテープを使って、静
止画像をデジタル記録する。120分テープにカラー画像で1800枚、モノクロ画像で3600枚が収容
できる。検索サーチに数10秒かかるが、ラソニソグコストの安いことが利点である。三菱電機の
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DAT画像記録装置がある。
ビデオフロッピードライブ(VFDV):2イソチビデオフロッピィを媒体とし、NTSCビ
デオ信号形式で、一枚のディスクに画像のみの記録にして50画面が収容できる。再生画像の質は
多少とも劣るが、編集した教材を記録し、提示するのに手軽で便利に使える。
ビデオテープレコーダー(VTR):NTSCビデオ信号を記録する。現状では高性能な上に
最も経済性が高い。再生に使用できる機器も各所に普及し、記録テープの互換性も充分である。
本来動的映像の記録に用いられ、静止画像の記録を目的としないが、静止画像の記録再生にも充
分に用を達する。高品質画像を必要とする場合には向かない。しかしS一VHS方式あるいはハ
イビジョソ方式がこの点を補ってくれる。
3.4.映像情報提示幾器
CRTテレビ(CRTMTV):NTSC方式のビデオ信号をCRTに表示する。CRTの長
所は画面の明るいことにあるが、大型画面に制約のあることと機器の重量に難点がある。現在市
販されているものでは39型が最大で100kg以上にもなる。
投影型テレビ(P−TV):40型を超えると背面投影型テレビが一般的となるが、特殊な投影
面を採用しているので、視聴する角度と部屋の明るさに制限がある。
液晶プロジェクター(L−PJ):NTSC方式のビデオ信号をカラー液晶に表示し、強力な
ハロゲソあるいは水銀灯光源を使って拡大投影しようとする。現状では投影の鮮明度と明るさに
難点がある。
ビデオプロジェクター(V−PJ):強力な光源を使った3管方式のビデオ投影装置で、劇場
スクリーソサイズの画面と映画の明るさをもつ鮮明な投影像が実現されている。
液晶OHP(LC−OHP):パソコソ画面をそのままアクティブマトリックス方式の透過型
液晶に表示し、OHP方式で投影提示する。現在はモノクロ画像だあるが、将来カラー液晶が使
えるようになれば有効な手段となろう。キャピソ工業の液晶表示ユニット256−Lなどがある。
4.システムの運用
先にスライドフイルムのパーソナルコソピューターによる検索システム(西田,1989)を提案
し、さらにスチルビデオを例にその過渡的試行を報告した(西田,1990)。これらの報告の発展し
たものとして今回の報告がある。電子記録化した静止画像データベースを検索し、テーマに沿っ
て編集し、マルチメディアに対応して出力できるシステム例を提案した。筆者は「教材は教師が
用意するもの」との想いを抱いているので、授業担当者がそれぞれの地域や学校で実現できるこ
とを前提に考えた。また教育の場では、芸術作品の鑑賞はともかくとして、少なくともノートの
とれる明るさの部屋で使用できることを目指した。
システムの構成は現在は図1のようであるが、周辺機器の進歩と経済状態に合わせて進化する。
今のところカラーOHPシート出力を重用しているので、ビデオプロセッサーが中心にあるが、
設備の整った映写空間ができればハードコピーレスが実現できる。
スキャナーによる画像入力は撥器に添付されたユーティリティソフトで読み込めるが、検索と
編集のためには各種の画像処理用ソフトが発売されているのでその上で行うのがよい。
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5.まとめにかえて
フィールドワークを行う筆者の研究室では、光学フイルムによる静止画像の蓄積が大量になり、
その劣化対策と圧縮保存が問題となってきた。それに付随して大量データの検索の問題が持ち上
がり、コソビュータによる電子情幸酎ヒ・静止画像データベース化が考えられた。また教育面から
静的教育メディアの開発として位置づけると、教材としての編集と提示の方法が考慮されなけれ
ばならない。芸術作品はともかく、教材提示は少ないともノートのとれる明るさの環境が要求さ
れる。そのため提示手段に自ずから制約が生じ、現状ではCRTかOHPによる提示が一般的で
あり、ここではそのことを前提にシステム構成を考え報告した。
将来の展望を述べると、このようにして記録・編集した静止画像データベースをLANなどの
ネットワークにのせ、オンライソでデーターベースにアクセスできるシテスムを構築し、CAE
(コソピュター教育支援システム)として発展させることも可能であろう。また「今回構築した
システムの実践利用計画、つまりどの教科、単元での利用が教育効果を持つかの例を示せ」との
査読者のコメントであるが、すべての情報伝達の場において映像情報のイソパクトは最上位にラ
ソクされよう。教育の場にあっても情報伝達の側面がひじょうに多いわけであるから、その効果
はいまさら云々するまでもなかろう。教育現場に上記のような提示装置を導入することも先決問
題であるが、むしろこのようなシステムの活用を支援するスタッフの育成充実を制度的に図って
ゆくことが必要である。
文 献
西田史朗,1989 環境スライド検索システム。昭和63年度教育研究報告書(代表:淡野昭彦)
「環境教育のための教材開発」,21132.(奈良教育大学)
西田史朗,1990 映像教材提示の過渡的試行−スチルビデオを例に一。教育工学セソタ一研究報
告,Ⅹ,1−10.(奈良教育大学)
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