年男・年女――縁起がいい?悪い? 成語・ことわざ雑記(34)

上野先生と歩こう
中国語遊歩道
『中国のことばと文化Ⅱ』
[436]年男・年女――縁起がいい?悪い? 成語・ことわざ雑記(34)
(133)「猿」と「猴」は異なる
わたくしたち日本人はね,うし,とら,う……を子,丑,寅,卯……と書きますが,中国人はこの
ように書く人もいますが,たいていは鼠,牛,虎,兎とそのまま動物名を当てています。ですから今
年サル年は申年ではなく猴年ということになります。
サル年のサルは「猿」ではなく「猴」を使います。これはいつか書きましたが,中国語では「猿」
と「猴」に使い分けがあります。“猿”(yuán)はしっぽが無いか,有っても短い大型のサル。一方
の“猴”(hóu)は長いしっぽをもつ小型のサル。英語の ape と monkey の使い分けに対応している
かと思います。ゴリラやオランウータンが前者で,ニホンザルは後者の代表的なものです。
(134)「巳年」は「ヘビ年」
今年中国の友人からもらった賀状に“猴年大吉”とか“祝猴年幸福”とか記されたものが何枚かあ
りました。“猿年”はありません。
今年の“猴年”はともかく,数年前の“蛇年”はあまり気持ちのよいものではありませんでした。
ヘビに対する感覚がわたくしたち日本人と中国人とでは異なるのでしょうか。
“蛇年”の“蛇”は縁起をかついででしょうか,よく“小龙”と言い換えて使われます。この年生
まれの人で「小龍」と名乗っている人を何人か知っています。
「成龍」さんもいます。ホンモノの「龍」
は辰年ですね。日本でも「辰」に「竜」を当てていますが,実際にはタツノオトシゴを指しているこ
とが多いようです。中国では絶対に神獣の龍です。
(135)“本命年”には赤いパンツ
そう言えば十二支のおしまいの「亥」も日本と中国で少々違っていますね。「猪」の字を当てると
ころは共通していますが,この字は日本語ではイノシシ,中国語ではブタ。
としおとこ
としおんな
違うと言えば, 年 男 , 年 女 に対する考え方も日本と中国ではずいぶん違いますね。日本ではその
年のえとの生まれの男が(近頃は女も?)選ばれて節分の豆まきをしたりすることからわかるように,
生年のえとが巡ってくるのは縁起のよいことと見なされていますが,中国は異なります。
自分の生年のえとの年のことを中国語では“本命年”と言います。迷信では縁起の悪い年とされて
いて,厄除けに赤いものを身に付けます。下着に赤いシャツや赤いパンツを着用するという人を何人
も知っています。初詣に出かけた巣鴨の「老人街」で真っ赤なパンツを買っている若い女性を見かけ
ました。さすがに「爆買い」とやらはしていませんでしたが……。
(136)サル・猴――かんばしくないのは日中共通?
こちらは日本人の話のようですが,年末でしたか年始でしたか,どこやらのデパートで赤い下着の
売れ行きがよいという新聞記事を目にしました。縁起がよいからとか。中国とは正反対ですね。
えてこう(猿公)などと蔑まれ,やれ猿芝居だの,猿知恵だの,猿まねだの,猿の尻笑いだの,は
ては人間より毛が 3 本足りないだのと,なんともかんばしくないサルだが,中国ではどうなっている
のでしょうか。
もっこう
かん
え
ぼ
し
ただちに思い浮かぶのは「沐猴而冠」(沐猴にして冠す),わが「猿に烏帽子」でしょうか。詳し
くは次回に。
2016/1/22
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