[396]上が男の子の娘は“大女儿”?“二女儿”?

上野先生と歩こう
中国語遊歩道
[396]上が男の子の娘は“大女儿”?“二女儿”?
『中国のことばと文化Ⅱ』
気になる日本語(9)
(33)上に姉がいなくても“二女儿”?
他问三个孩子:“……?”上中学的大儿子说:“……。”上小学的二女儿说:“……。”上幼儿
园的小儿子说:“……。”
この文章,ある作品からの引用ですが,あれっ?と思いませんか。3 人の子供の答えが“……”ば
かりで,何のことか分からないって?そうじゃないんです,“……”の箇所はこれからの本題と関係
がないので省略しただけです。
初めに“他”とあるのは父親です。父親が 3 人の子供に尋ねた。上の息子は……,次の娘は……,
下の息子は……,というだけの話です。この「次の娘」と訳した“二女儿”が気になります。
(34)“大女儿”の誤りでは?
男,女,男と 3 人の子供がいる上の息子が“大儿子”,下の息子が“小儿子”はよいとして,中の
娘をきょうだい順序が 2 番目であるから“二女儿”と呼ぶか,女きょうだいのなかでいちばん上であ
るから“大女儿”と呼ぶかは,難しいところです。
中国では伝統的には男女を分けて,それぞれ別に順番を数えます。日本語の長男,次男,三男……,
長女,次女,三女……もこの式ですね。もっとも,今は役所などへの提出書類も,性別は記さず,た
だ「子」とだけ,或いは第一子,第二子などと書くだけでよいことが多いようですが……。
わたくしがある原稿に先の文章を引用したところ,入力を担当してくれた中国人の友人から“大女
儿”の誤りではないかという指摘を受けました。
(35)そういう数え方が今風?
実は指摘を受ける前から,わたくしもこの箇所は気にかかっていたのです。何人かの友人に確かめ
てみましたが,みなヘンだという答えです。それでも,なんとなくこのままでもよいのではという気
がしたものですから,もう 30 数年前になる北京在住以来教えを請うている老先生に手紙を書いてお尋
ねしたところ,例の,と言っても,もう使ったことはもちろん,見たこともないという人がほとんど
かもしれませんが,わたくしにとっては例の,散髪屋の看板のような赤と青の縁どりをした航空便用
の封筒で長文の返事が届きました。
結論から言いますと,原文のとおりで誤りはないというものです。大都市のインテリの家庭では,
そういう数え方をするのが「ナウイ」のだと,このナウイだけ日本語で記されていました。
(36)昔は女の子は数に入れてもらえなかった
老先生の返信にはそのナウイことを裏づけるためにいくつかの文学作品を,コピーなどではなくこ
まめに手で書き写されていましたが,長くなるので紹介は控えておきます。
先生の手紙にもありましたし,わたくしもそう思いますが,このナウイ現象は徐々に広まっていく
のではないかと思います。
歴史の本などを読んでいますと昔の皇帝には息子が何人いたかは記されていても,娘の数は記され
ていないことがしばしばです。わたくしには息子が 1 人と娘が 1 人いることを知っているはずの中国
の友人から,「お子さんは 1 人だ」と言われた話はいつか披露しましたが,女の子は数にも入れても
らえなかった時代から見れば,ずいぶん遠くまで来たものですね。
2015/4/3
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