「結核菌を取り巻く顕微鏡所見に関する検討と今後の展望」 財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌レファレンスセンター 細菌検査科 山田 博之 結核は病原性抗酸菌を代表する結核菌による感染症で、WHO によれば世界人 口の約 1/3 が感染し、年間約 800 万人の新たな感染者を生み、200 万人が死亡して いる。超多剤耐性菌の出現や長期にわたり体内で生存する菌の存在などが明らかに なり、様々な研究が行われているが、抗酸菌と関連した基本的な現象には未だ機序が 明らかでないものもあり、顕微鏡を用いた検討が今後も重要な役割を果たすと考えら れる。 その一つは抗酸菌が示す抗酸性であり、喀痰中の結核菌の検出には簡便で安価 で迅速な抗酸菌染色が有用である。しかし、長期にわたり体内に休眠状態で存在する 菌では抗酸性が消失することが知られているが、抗酸性(抗酸菌染色)そのものの機 序は未だ明らかにされておらず、その解明には顕微鏡観察が必須であり、これまでに 行った準備段階の検討を紹介する。 また強毒結核菌は弱毒菌と比較して、貪食細胞内での phagosome-lysosome (P-L) fusion の阻害能が高いとされている。この点について我々の施設で行った動物 実験で得られた肺組織の透過電顕観察結果 1 -3)を紹介し、文献的な検討を行う。
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