序章経済学とわたしたち

この章で学ぶこと
1. 経済学とはどういう学問か
序章 経済学とわたしたち
2. 経済学をどう学ぶのか
3. 経済学の基本的な考え方
4. 本書の構成
1.はじめに (1)
1.はじめに (2)
毎日さまざまな経済ニュースが報道
されている
• 経済問題はだれもが経験する、
避けては通れない問題である。
• 円高が進んでいる・・・
• 新規学卒の就職活動が始まった・・・
• 自動車のエコポイントが廃止される・・・
2.経済学とはなにか (1)
例えば
円高ってなんだろう?
そもそも為替レートってなに?
• 経済学とは何かを、初めて経済学を
学ぶ人を対象に、基礎から考えてい
こう。
2.経済学とはなにか (2)
たくさんの専門用語
為替レートのほかに、所得? 雇用?
失業? デフレ?
言葉がよくわからない
1
2.経済学とはなにか (3)
たとえば、為替(かわせ)レート
Step1:データを通して理解する!
1ドル=90円
「ある国の通貨と別の国の通貨の交換比率
のことを為替レートという。」
言葉だけでは、なんとなく分かりにくい。
うまい方法がある
どこでデータを得るのか?
インターネットで簡単にデータを
得ることが出来る
例えば
http://www.stat.go.jp/
をクリックしてみよう。
観察する
生産や雇用、物価や貨幣量など、
我々が説明したいと思う経済量を経済変数と
いうが、実際のデータを観察することで経済変
数の間の相互関係が明らかになってくる。
コラム1:経済データの見方
内閣府 http://www.esri.cao.go.jp/
財務省 http://www.mof.go.jp/
総務省統計局 http://www.stat.go.jp/
経済産業省 http://www.meti.go.jp/
国土交通省 http://www.mlit.go.jp/
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
日本銀行 http://www.boj.or.jp/
WTO http://www.wto.org/
OECD http://www.oecd.org/
IMF http://www.imf.org/
Step2:その現象がなぜ起こったかを考える!
そのために必要になるのが
経済モデル(経済理論)を使うこと
経済学はそうやって発展してきた
2
経済モデルを考える
たとえば
• 経済モデルというのは複雑な現実を
簡単に理解するための工夫
魚の値段はどう決まるのか?
• 良く使うのが、市場モデル
実際はたくさんの売り手とたくさんの買い手、
種類のちがうたくさんの魚が様々な場所で
売られている。
現実そのままではあまりに複雑!
魚の値段はどうなるか?
良く使うのが、市場モデル
たとえば、海が荒れて漁が少なかった。
魚の値段はどうなるか?
売り手
魚の供給
魚の市場
魚の価格
売り手
魚の需要
海が荒れると、漁師はどうするか?
漁師が少なくなると、魚の供給は?
魚の供給が減ると、魚の値段は?
魚の値段が上がると、主婦はどうするか?
主婦が買わないと、魚の値段は?
・ ・ ・
最終的に??
コラム2:偉大な経済学者たち
市場の重要性を強調した経済学者
アダム・スミス
有効需要の重要性と国の役割を重視した経済学者
J.M.ケインズ
資本主義経済の欠陥と新しい社会への変化を
示そうとした経済学者
出所:神戸観光壁紙写真集
http://kobe-mari.maxs.jp/akashi/より
K.マルクス
3
Step3:問題を明らかにし、政策(対策)を考える!
たとえば、タクシーの値段が安すぎて
運転手が困っている。
どうすればよいか
タクシー料金が安い原因を考える
A:タクシー業者が多すぎるからか
B:タクシー利用者が少なすぎるからか
A・Bのどちらが原因かで、
対策は違ってくる。
原因によって対応が異なる
大切なことは
A:タクシーが多すぎる
• 原因を正しく判断すること
タクシー業への参入を規制して、過剰な
競争を抑える。
B:利用者が少ない
タクシー業界への支援、
マイカーや公共交通への補助金の削減で、
タクシー利用者を増やす
人間を診るのに必要なのが医学なら、
社会を診るのに必要なのが経済学
• さまざまな人や地域にどのような影響が
生じるかを客観的に明らかにする
どういう政策を採れば、どういう影響が出る
かを明らかにする。
政策のトレードオフを考える
3.経済学の考え方
ある政策を採用すると、それで得をする人と、
損をする人が出てくる。
• 人々の合理的な選択行動という視点
からみる。
• タクシー料金の引き上げは、タクシー業界は喜ぶが、
利用者は困る。
• 世の中の出来事を相互依存の関係
からみる。
• 市バス運賃の引き上げで、タクシー乗客を増やそう
とすると、市バスばかり利用する人は困る。
4
その1:合理的な選択行動
人々はどのような経済行動を行なっているか可能
な様々な選択肢の中から、最も目的に合致するも
のを選ぶ。
無意識のうちに何かの目的を最大限に実現
する行動を取っていると考える。
• トヨタがプリウスを250万円でもなく、170万円で
もなく、220万円で販売するのは、何故か?
これを選択行動という
• 貴方が高校を出てすぐに働かずに、授業料を払っ
て大学に進学したのは何故か?
• 選択行動は希少性から生じる。
• 世の中に希少でないものはない。
その2:社会の相互作用
一人ひとりの行動が合理的でも、
社会的な結果が合理的であるとは限らない。
各人が自分の目的に照らして合理的に行動して
も、その意図に反する結果が生じるのが世の中
たとえば、
不況で売れないから、企業は新しい投資を減ら
す・・・企業の合理的な行動
世の中は思ったようには行かない!!!
その結果、経済全体で需要が減り、
不況がさらに深刻になる。
A:社会への理解が十分でなかったか
B:多数の人々の行動の合成結果だから
合成の誤謬(ごびゅう)
市場のカニズムを考える
Aの例
地球温暖化の影響に無知なため、必要な対策を取
らずに生産を増やし、環境を悪化させた。
その結果、気候が変わり、農作物の生産や自然災害
に悪影響をもたらした。
Bの例
財政赤字を減らすために増税した。
その結果、人々が節約してモノが売れなくなり、国の
税収が減り、さらに国の赤字が増えた。
• 一人ひとりの合理的な選択を社会的に表現
する場が市場
社会的な評価が市場に現れる。
それが市場メカニズム
• たとえば労働市場
自分の能力を生かして、出来るだけ高い賃金
で働きたい。(求職者にとって合理的)
• 優秀な人材を、出来るだけ安く雇用したい。
(雇用者にとって合理的)
5
市場は社会的な調整の場
労働の供給と労働の需要がぶつかる場が労働市場
市場は経済学が勝手に作り出した工夫ではな
く、人間社会が昔から経済生活を営む中で自
然発生的に生み出してきた仕組みである。
市場の例
米の市場、車の市場、食肉の市場・・・
市場は万能ではない
• 市場はどのような欠陥を持つのか
• それを解決するために、国には何が
出来るのか
4.おわりに
本書の構成
第Ⅰ部 ミクロ経済学
第Ⅱ部 マクロ経済学
• ミクロ経済学では、企業や人々の行動、市場の役割、
市場の問題点などを学ぶ
• マクロ経済学では、国全体の経済の振舞い、国の政
策、国際貿易、経済成長などを学ぶ
この章で学んだこと
参考文献
1. 経済学はわれわれの生活に直接に係わる
身近な学問だ。
「マンキュー入門経済学」
2. データを観察して、経済モデルを学んで考
える。
3. 地域や国、国際的な視点から考える。
4. どうしたら問題点が改善されるかという政
策的な視点で考える。
第1章、第2章
N.グレゴリー・マンキュー(足立他訳)
東洋経済新報社、2008年
「スティグリッツ入門経済学(第4版)」
第1章、第2章
J.E.スティグリッツ(藪下他訳)
東洋経済新報社、2007年
6
次に読んで欲しい本
考えてみよう 1
『経済データの読み方(新版)』
鈴木正俊
岩波新書、2006年
『日本の経済—歴史・現状・論点』
伊藤修
中公新書、2007年
考えてみよう 2
そこに出てくる経済用語を三つ選んで、
コラム1のアドレスを使ってインターネット
からデータを集めよう。
そして、それをExcelを使って図や表にし
てみよう。
今日の新聞を開いて、
どのような経済記事が報道されているか
リストアップしてみよう。
考えてみよう 3
ある人がある目的を持って行動しても、
他の人が同じように行動すると、思った通
りの結果が現れないという例として、漁師
の行動ともうけの例を挙げた。
他にそのような例はないか考えてみよう。
7