知の知の知の知 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

い~な
あまみ
中 央
しらさぎ
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 1669 号 2013.12.4 発行
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社説:障害者虐待 開かれた環境の実現を
北海道新聞 2013 年 12 月3日
障害者の人権を守る法整備が進みつつあるのに、なぜ虐待が後を絶たないのか。あまり
に悲惨な現実に言葉を失う。
障害者虐待防止法が施行された昨年10月から半年間に、虐待を受けた障害者が全国で
1505人に上ることが、厚生労働省の調査で分かった。うち3人は亡くなった。
道内には死亡者はいなかったが、被害者は36人に及んだ。
障害者への虐待はとりわけ、外部の目が届きにくい環境で起こりやすい。今回の数字は
氷山の一角ととらえるべきだ。早期発見に力を入れるとともに、防止に全力を挙げたい。
障害者虐待防止法は、知的・精神・身体障害者への暴力や暴言などの発見者に、通報を
義務付けたのが特徴だ。市区町村は窓口を設け、必要に応じて立ち入り調査や被害者の一
時保護などを行う。
調査は、通報や相談をもとに初めてまとめた。加害者の内訳は家族や親族が88%と圧
倒的に多く、福祉施設などの職員が12%だった。
家庭内で虐待が多いのは、障害者への世話や介護に伴うストレスが背景にあると専門家
は指摘する。家族が孤立し、追い詰められないようにすることが大事だ。
行政には相談態勢の充実や、家族の負担を和らげるためヘルパー派遣に柔軟に応じるな
ど、きめ細かな支援が求められる。
数は少ないものの福祉施設での被害も見逃せない。道内では根室管内別海町で職員が知
的障害の女性の顔をたたくなど2件の被害があった。このため、道は他の入所施設につい
ても実態調査を始めた。
入所者の権利を守るべき職員の暴力が許されないのは当然で、高い倫理観が不可欠だ。
しかし、施設内の研修だけでは限界があろう。
専門家は、ボランティアの受け入れや地域住民との交流の活発化など、開かれた施設を
目指すことが防止にもつながると指摘する。こうした試みを導入したい。
調査は行政側の体制の脆弱(ぜいじゃく)さも浮き彫りにした。専門知識や経験を持つ
職員のいる市区町村は28%(道内は21%)にとどまった。通報を受け虐待と認定した
割合や対策も自治体によってばらつきが見られた。
通報にはパニック状態の入所者を押さえる際のけがなど、虐待かどうか判断が難しいケ
ースが多い。専門知識がなければ対応できないのは明らかだ。国も後押しをしながら、職
員研修を充実させる必要がある。
虐待の温床を絶やすには、家庭や施設、行政だけの取り組みでは十分とは言えない。地
域を含め障害者を正しく理解し、社会全体で支える環境を整えるべきだ。
70平方メートルに17人宿泊…介護施設暴行
読売新聞 2013 年 12 月 3 日
広島県福山市の介護福祉会社が運営するデイサービス2施設で起きた利用者に対する暴
行事件で、このうち宿泊サービスを行う1施設では県警の捜索当日、約70平方メートル
のスペースに認知症高齢者ら17人が泊まっていたことが
わかった。
17人が宿泊していた「デイサービスゆかり
の家北本庄」
(11月30日、福山市北本庄
で)
中には長期宿泊者もおり、多人数に
よる劣悪な環境下での宿泊が常態化
していたとみられる。デイ施設での宿
泊サービスはここ数年、全国に広がっているが、介護保険の適用外
のため国の指針はなく、市も運営実態を把握できていなかった。
雑魚寝状態
同社は「デイサービスゆかりの家」
(昼間の利用定員10人)と「デ
イサービスゆかりの家北本庄」
(同10人)を運営しており、宿泊サ
ービスを行っていたのは北本庄の施設。2階建て計143平方メー
トルの民家を改修し、2010年6月に開設した。
市によると、県警が捜索した11月26日、両施設の利用者のうち男女17人(61~
102歳)が前日から宿泊しているのを確認。その半数以上は、認知症や知的障害などを
抱えていた。
寝室は1階4室、2階2室の計約70平方メートル。利用者用のベッドは1、2階の4
室に計9台あり、他の8人は1階で布団で寝ていたとみられる。1人あたりのスペースは
4平方メートル程度で、部屋の中にプライバシーを確保するパーテーションなどの仕切り
はなく、いわゆる雑魚寝状態だった。宿直の職員は1人だけだった。
ただ、宿泊サービスは介護保険適用外のため、市は各デイサービス施設での実施状況な
どを調べておらず、同社の運営実態も把握していなかったという。
市内のある事業者は「うちは3部屋に1人ずつしか泊めない。一度に17人なんて考え
られない」と言う。
通報生かせず
「職員が利用者に罵声を浴びせている声が聞こえ、市に通報した。なぜ、暴行を防げな
かったのか」
。施設近くに住む住民は取材に対し、悔しげに語った。
市によると、通報は今年4月23日で、「『死ね』
『バカ』とどなる声が頻繁に聞こえる」
との内容。しかし、介護保険課の担当者が経営者の孫衛容疑者(42)に電話をし、事実
確認もしないまま、
「注意するように」と求めただけだった。
5月下旬、2施設に定期の立ち入り検査をしたが、市の内規では、検査項目は職員数や
配置などで、それ以外の記録は不要。このため、虐待の有無を調べたかどうかの記録は残
らず、宿泊サービスについても継続的なチェックには至らなかった。県警によると、利用
者2人が暴行されたのはその後、6月と9月だった。
市は11月29日付で2施設の事業者指定を取り消し、市内約180の全デイサービス
施設に宿泊の有無などを聞き取る初の調査を進めている。市は「通報を受けてどう対応し
てきたかは、今となっては曖昧で、結果的に暴行を防げなかった。今後、記録や情報共有
を徹底する」としている。
デイサービス施設での暴行事件 介護福祉会社社長の孫衛容疑者(42)と介護士2人の
計3人が11月26日、暴行容疑で逮捕された。今年6月、孫容疑者ら2人が共謀のうえ
認知症男性(84)の顔や胸などを数回殴り、9月には別の1人が認知症が疑われる女性
(61)の後頭部を蹴った疑い。3人は当初否認していたが、一部の容疑者は暴行を認め
る供述を始めたという。
悪質業者淘汰へ15年度からデイサービス届け出制導入
宿泊サービスを行うデイ施設は「お泊まりデイ」とも呼ばれる。利用者家族の急用時な
どに一時的に預かるのが建前だが、慢性的に不足している特別養護老人ホームなどの代替
用としても使われ、全国に3000か所前後あるとみられる。
利用者の安全や人権上の観点から、東京と大阪、千葉の3都府県は2011年度から順
次、独自の運営基準を導入。いずれも〈1〉宿泊スペースは1人につき7・43平方メー
トル(4畳半に相当)以上〈2〉部屋を仕切るなどプライバシーを確保〈3〉宿泊者数は
昼間の利用定員の半分以下――などとする。デイサービスゆかりの家北本庄に〈3〉を当て
はめると、宿泊者数は5人以下でなければならず、
〈1〉と〈2〉についても満たしていな
かった。
厚生労働省は15年度から宿泊サービスの実施を届け出制とし、各施設の情報公開を進
める方針。担当者は「悪質な事業者を淘汰していく」と狙いを明かす。
総務省消防庁も15年度以降に新設されるデイ施設に対し、自力移動が困難な高齢者を
宿泊させる場合は火災報知機などの設置を義務付ける。既存施設には17年度末までの設
置を求める。
結婚や出産で退職、19% 介護福祉士の資格保持者
共同通信 2013 年 12 月 2 日
介護福祉士の国家資格を持ちながら介護の仕事を辞め、他の仕事に転職するなどした人
のうち、19・5%が「結婚、出産・育児」を理由に挙げたことが、資格試験を実施する
公益財団法人社会福祉振興・試験センターの調査で分かった。
介護職員の離職率の高さは業界全体の人材不足の一因で、高齢化が進む中で人材確保は
大きな課題。国や事業者は定着に向け取り組みが求められそうだ。
調査は介護福祉士資格を持つ約98万人が対象で、昨年11月時点の状況を尋ねた。う
ち約10万人から有効回答を得た。
「発達支援児認定受るか転園を」
保育園が要請、保護者反発 宇都宮
下野新聞 2013 年 12 月 3 日
2歳児クラス 13 人中9人に発達障害の疑いがあるとして、宇都宮市の認可私立保育所が
保護者に対し「
(保育士増員の補助要件の)発達支援児の認定を受けるつもりがないなら転
園を」と求めていたことが、2日までに分かった。この保育園は「学級崩壊状態で通常の
保育ができない」と説明。障害を否定する保護者らは不信感を募らせ、園児9人の保護者
が退転園の意思を示した。市は「二者択一を迫るのは不適切」と慎重な対応を促している。
園によると、2歳児クラスはじっとしていられない、他の園児を突き飛ばすといった行
動が際立ち、園外活動では安全確保が難しい状況もあったという。園は9人に障害の疑い
があると判断。保護者に「特色の園外活動どころかクラス運営は限界」として、市子ども
発達センターへの相談や診断、支援児認定を受けるよう促していた。
9月末の保護者会では「認定を受けようとしないなら転園を」と求めた。男性園長は取
材に「保護者は感情的になり、協力してくれなかった。排除する意図はなく、補助が付い
て保育士が配置できれば保育する」と説明する。
「取り押さえ死」和解交渉決裂 2月に判決
佐賀新聞 2013 年 12 月 03 日
佐賀市の路上で2007年9月、警察官に取り押さえられた直後に死亡した知的障害者
の安永健太さん=当時(25)=の遺族が佐賀県に約4300万円の損害賠償を求めた訴
訟の和解協議が2日、佐賀地裁で開かれ、遺族側は裁判所が示した和解案を拒否、交渉は
決裂した。この結果、来年2月28日に判決が言い渡される。
遺族側弁護士によると、佐賀地裁の和解案は、取り押さえ行為に違法性がなかったこと
を相互に確認する内容だったため、知的障害者を理解する県警の教育が不十分だったと認
めることなどを求める意見書を提出。しかし、県側と折り合わなかったという。
遺族側弁護士は「違法でないことを認める項目が入っている限り、和解には応じられな
い」と話した。
秋元才加が「責任重大」な役に 映画で車椅子の主人公
河北新報 2013 年 12 月 02 日
ことし8月にアイドルグループ「AKB48」を卒業した女優の秋元才加が、東京都内
で行われた主演映画「マンゴーと赤い車椅子」
(2014年秋公開)の製作発表に出席した。
事故のため車椅子で生活する主人公を演じる秋元は「障害とどう向き合うか。すごく責任
が重大だと思います」と話した。
映画は、主人公が病院で出会った仲間と一緒にリハビリに励む涙と笑いの物語。
「障害者
がどういう思いで生きているのかを考える映画にしたい」と意気込んだ。
自身が車椅子で生活する仲倉重郎監督は「車椅子は僕の肉体の一部というか、全部みた
いなもの。リハビリで出会った若者との(車椅子の映画を作るという)約束をやっと果た
せる」と話した。ロケは鹿児島・大隅半島を中心に行われる。
輝くイマナリエ
西成・住民ら手作り
読売新聞 2013 年 12 月 3 日
今宮ふれあい広場に作られた光のトンネル(大阪市西成区で)
地域を明るくしようと、大阪市西成区の住民らによる
手作りの電飾イベント「イマナリエ」が2日、今宮ふれ
あい広場(萩之茶屋)など同区の3か所で始まった。来
年1月31日まで、午後5~10時に点灯される。
今宮社会福祉協議会や同区の消防、学校の関係者らが
昨年、
「暗いと思われがちな町のイメージを良くしよう」と初めて実施し、2回目。同区天
下茶屋北の特別養護老人ホーム「ローズ」駐車場で点灯式が行われ、ツリー2本と光のカ
ーテンが青や赤などに彩られた。
同区天下茶屋の「大阪自彊(じきょう)館いきいきセンター」も合わせ、LED(発光ダイ
オード)約20万個を使った通天閣や富士山、トンネル、雪だるまなどの電飾15点が楽
しめる。
同広場を訪れた同区の無職武田利男さん(72)は「町が美しく輝き、自分も元気にな
った」と見入っていた。
警察学校生が介護体験…長野
読売新聞 2013 年 12 月 2 日
お年寄りに寄り添って一緒に歌を歌う県警察学校の初任科生(30日、長
野市で)
長野県警察学校(長野市)に今秋入校した初任科生23人が3
0日、長野市の特別養護老人ホーム「フランセーズ悠」で介護体
験研修を行った。
介護体験は、高齢者と接する機会が少ない若手警察官に高齢者
とコミュニケーションを取る機会を提供し、交番などでの勤務が始まった時に役立てても
らおうと、毎年行われている。
施設職員から説明を受けた初任科生は、入居者と会話を楽しんだり、体操をしたりして
コミュニケーションを深め、時間がたつにつれて、入居者と楽しそうに過ごす様子が見ら
れた。
同ホームの土田澄江施設長(58)は「高齢者との触れ合いが、地域の人と接する時に
役立てば」と話していた。
地域医療再編に5百億円予算計上
消費増税財源で超高齢化対応
共同通信 2013 年 12 月 3 日
政府は2日、地域の医療・介護サービスの提供体制を超高齢社会に対応できる形に再編
するため、2014年度当初予算案に500億円程度を計上し、新たな基金を設ける方針
を固めた。財源は消費税率引き上げに伴う増収分を充て、各都道府県に設置する。国と地
方の負担割合は調整中だ。
団塊の世代が全員75歳を迎える25年には、慢性疾患を抱えた高齢者が大幅に増える
ことから、在宅医療・介護を充実させ、不足しているリハビリ向け病床を増やすなど、住
み慣れた地域で高齢者が暮らし続けられるよう支える狙いがある。
少しの手間、人気の秘密
シニアに広がるコミュニケーションぬいぐるみ
産經新聞 2013 年 12 月 3 日
「プリモプエル」のファンイベントでは「わが子」の成長を報告、
装いを褒め合うという =東京都墨田区(日野稚子撮影)
子供向けと思われがちなぬいぐるみが、新たな家族の
一員として注目されている。声を掛けると反応するコミ
ュニケーション玩具と呼ばれるもので、適度に手間がか
かるのが人気の秘密。子育てを終えたシニア世代を中心
に世代間をつなぐ役割も担っているようだ。
(日野稚子)
◆自分だけの一体
イワヤの「こっちにおいで
風と関西風を選択できる
愛犬ふくちゃん」は人の言葉50種類を内蔵。東京
11月中旬、東京スカイツリータウン(東京都墨田区)に男女約3
00人が集まった。主催は玩具メーカーのバンダイ(台東区)で、平
成11年に発売したぬいぐるみ「プリモプエル」のファンイベント。
参加者の中心は大人の女性で、持参したプリモプエルの服装を褒め合
ったり、記念撮影したりして交流を楽しんだ。
プリモプエルは話し掛けると返事をしたり、歌を歌ったりする。3
歳男児の設定で、同じ年頃の幼児の声を採用。「20代の独身OL向
けだったが、口コミで40、50代の女性に広まった。その世代の女性向け商品はなく、
大切に育ててきた」と、プレイトイ事業部ゼネラルマネージャーの露木項治さんは話す。
プリモプエルは突然おならをしたり、風邪をひいたりと、少し手間がかかる。その点が
子育て期を想起させたためか、購入者の約7割が70代以上で、累計販売110万体超と
いう。
ファンの間ではプリモプエルの入手を「お迎え」と呼ぶ。埼玉県久喜市の主婦(44)
は約2年間で27体を迎えた。
「親戚が持っていたが、あまりのかわいらしさに熱中してし
まった」と振り返る。
同県熊谷市の40代女性は1人暮らしの祖母へのプレゼントにしようと玩具店で出合い、
「まんまとはまってしまった」
。以後、10年間で20体を超えた。得意の手芸で服を自作
したところ、交流会で「欲しい」と声が掛かり、手製の服を販売するまでに。魅力につい
て、
「同じなのに違う顔に見え、育て方で個性が変わる。だから、同じタイプで複数集めて
しまう」
。
11月発売の「ハート育つよ! プリモプエル」
(希望小売価格1万4175円)は5代
目で、5歳児の声にリニューアル。専用ホームページからデータをダウンロードすれば、
持ち主をニックネームで呼んだり、言葉の数を増やせたりする。性格や話す内容が変わる
ため、自分だけの一体に育つという。
◆癒やしを求めて
歩く動物やロボットなどの電動玩具を手掛けるイワヤ(足立区)の犬型ぬいぐるみ「コ
ミュニケーションペット」シリーズも人気だ。
四足歩行で、関西風と東京風の日本語と犬の鳴き声などを出す「こっちにおいで 愛犬
ふくちゃん」
(1万5750円)
、お座り姿勢で前足だけが動く「じかんぴったり おしゃ
べり柴二郎」
(1万3440円)の2種類。「1人暮らしの高齢の親のボケ防止を目的に購
入したという声も届く」
(同社)などシニア層の支持が高く、14年の発売以後、シリーズ
累計販売は13万体に上る。複数購入やかわいがり過ぎて修理できないほど壊れたため、
買い直した人もいるという。
動物が飼えない分、ペット代わりとして癒やしを求めている人も多く、子供や高齢者と
もに楽しめ、コミュニケーションをつなぐ橋渡しとして活用されている。
やり直し、学び直しできる高校 スタートへチーム発足
やり直し、学び直しできる高校 スタートへチーム発足 大阪日日新聞 2013 年 12 月 3 日
大阪府教育委員会は2日、基礎学力の学び直しや社会人基礎力の習得を促す高校「エン
パワメントスクール」に関するプロジェクトチームを発足させた。2015年度からスタ
ートする府立高校3校の関係者ら 20 人が任命され、今後各校の実情に合った教育内容など
を検討していく。
エンパワメントスクールでは、生徒の実力に応じて義務教育段階からの基礎学力の定着
を推進。一方で「正解が一つではない問題」(中原徹教育長)を学ぶ環境を、経済界の意見
も踏まえながら構築していく。
15 年度から指定を受けるのは西成、長吉、箕面東。18 年度までに計 10 校程度に拡大す
る。
プロジェクトチームのメンバーや府教委関係者らは、全体的な制度設計や、各校の実態
に応じた教材などを議論していく。
発令式では中原教育長が「府教委と学校と経済界が力を合わせ、大阪府ではいつでもや
り直し、学び直しができることを全国に発信していきたい」と意欲を示していた。
筋ジス患者にステロイド有効
読売新聞 2013 年 12 月 2 日
東京都小平市の国立精神・神経医療研究センターの研究グループが、全身の筋肉が衰え
る難病・筋ジストロフィーの患者の歩行能力の維持に、ステロイド剤の服用が効果的であ
ることをデータ面で裏付けることに成功した。
ステロイド剤投与の有効性は海外の研究で確認されていたが、国内で確認されたのは今
回が初めてという。同グループは今後さらに調査を進め、効果的な使用量や副作用につい
て研究を進める方針だ。
確認したのは、同研究センターのトランスレーショナル・メディカルセンター長の武田
伸一氏や同センター早期・探索的臨床試験室長の木村円(えん)氏らの研究グループ。全国の
筋ジス患者の治療歴や運動機能が登録された患者登録システム「Remudy(レムディ)」
を活用した。
研究グループは、運動の負担から筋肉を守るたんぱく質、ジストロフィンが作れないデ
ュシェンヌ型筋ジスの患者を対象に、レムディに登録された562人のステロイド剤投与
の履歴と歩行能力の関係を調査。その結果、約4割がステロイド剤投与を受けており、歩
行能力を維持できる期間は、投与を受けた患者グループが投与を受けなかった患者グルー
プより、11か月長いことがわかった。
研究グループによると、欧米では、ステロイド剤投与が「筋力を増強し運動能力を改善
させる」などとした研究結果が出ているが、国内ではこれまで、有効性についての大規模
な研究は行われてこなかったという。
国内の筋ジス患者は推計5000人程度で、
「ステロイド剤投与による治療はあまり普及
していない」
(研究グループ)という。木村氏は「今回、ステロイド治療の有効性が示され
たことで、治療の選択肢として考える医師や患者が増えることが期待される」としている。
関西発の元受刑者就職支援が全国展開へ
「職親プロジェクト」で出所者更生サポート
産經新聞 2013 年 12 月 3 日
元受刑者らを雇用し、就労機会を提供する更生支援事業「職親(しょくしん9プロジェ
クト」の協定の調印式が4日、東京都内で行われる。今年2月に関西の中小企業でスター
トした取り組みで、趣旨に賛同した関東や北海道、九州などの9社が参加し、18社によ
る全国規模の活動に拡大した。事務局の日本財団(東京)は「関西組の熱意が全国に波及
した。支援の輪を着実に前に進めたい」としている。
職親プロジェクトは、参加企業が刑務所に出向くなどして受刑者らを面接。採用される
と仮出所後、各社の店舗などで就労体験を積み、正社員を目指す。採用者には社員寮など
の住居も提供される。
全国に先駆けて今年2月にスタートした関西では、お好み焼きチェーン「千房」
(大阪市)
など9社が参加。11月末時点で3社が8人を雇用したほか、収容中の6人に仮出所(院)
後の内定を出している。
こうした中、日本財団は全国展開へ向けて関東で企業向け説明会を開催。理念は口コミ
などで広がり、北海道の建設会社や東京都の飲食関連業者9社が新たに加わることになっ
た。
平成25年版の犯罪白書によると、24年の一般刑法犯の再犯率は、過去最悪の45・
3%。認知件数は17年以降減少しているにもかかわらず、再犯率は9年から一貫して上
昇している。
今回プロジェクトに参加する資源リサイクル業「ヒューマンハーバー」
(福岡市)の担当
者は「前向きな考えの人を雇用し、再犯のない社会の実現を目指したい」と話している。
刑務所や少年院を出た人に働く場を提供して再犯防止を目指す就労支援事業。日本財団は、
雇用1人当たり月8万円を参加企業側に支援する。目標では、5年間で計100人を雇用
する。雇用対象は初犯の受刑者らで、殺人や性犯罪といった事件の受刑者、暴力団関係者
などは除く。
社説:年金制度改革 課税の見直しも議論したい
読売新聞 2013 年 12 月 3 日
年金受給者と勤労世代の間にある負担の不公平感をいかに和らげるか。限られた財源の
中で、年金制度を維持するために重要な課題である。
社会保障制度改革の手順を定める「プログラム」法案は、今国会で成立する見通しだ。
ただ、年金改革については、その必要性を明記するにとどまっている。政府は具体的な制
度設計と実施時期の検討を急がねばならない。
この法案の土台となった社会保障制度改革国民会議は、8月の報告書で「高齢者にも、
負担能力に応じて制度の支え手になってもらうべきだ」と指摘している。
年金給付額は社会保障費の半分に当たる約52兆円に上る。高齢化で社会保障費は年々
増えていく。制度を安定させるには、給付と負担の見直しが欠かせない。
改革の具体策の一つが、高所得者に対する年金課税の強化だ。
例えば、公的年金を受給している65歳以上の高齢者には、課税の際、最低でも120
万円の控除が適用される。夫婦世帯では通常、年金収入が年間約205万円までなら所得
税がかからない。
一方、サラリーマンの給与所得控除は65万円で、課税最低限は年収157万円程度と
低い。
低賃金の非正規労働で家計を支えながら納税している人など、同じ年収でも年金受給者
には課税されない現状を不公平に感じる人も少なくないのではないか。
非課税の年金受給世帯には様々な低所得者対策も適用される。住民税非課税世帯の場合、
介護保険料の軽減措置を受けられる上、医療機関に支払う治療費の限度額も低く設定され
ている。
だが、低収入でも多額の資産を有する高齢者も多い。非課税の年金受給者を一律に社会
的弱者とみなすのは適切ではなかろう。
基礎年金の2分の1は国庫負担で賄われているが、それでも、このままでは年金財政は
厳しい。現役世代の負担を過重にしないためにも、年金受給者に対する一定の課税強化は
やむを得まい。
年金の支給開始年齢の引き上げも大きな課題である。
厚生年金を受け取れる年齢は段階的に65歳に引き上げられているが、米英やドイツは
既に67~68歳への引き上げを決めている。
日本は、これらの国より高齢化が進んでいる。支給開始年齢の引き上げは避けられない
だろう。
次期国政選挙まで最大3年近く時間がある。与野党は、じっくりと腰を据えて合意形成
への道を探るべきだ。
【社説】受刑後の就労 居場所が再起を支える
中日新聞 2013 年 12 月 3 日
刑務所を出た人にとって働く場は生き直しの大きな支えだ。だが実際は、頼る人も居場
所もないため、再び罪を犯してしまう悪循環がある。社会の理解を広げ、再起を支える職
場を増やしたい。
大阪の繁華街にあるお好み焼き店「千房(ちぼう)」。一人の若者はキャベツを刻んで材
料の準備。別の若者は鉄板の前で汗を流す。二人は窃盗罪などで服役し、出所が近づいた
ころに中井政嗣(まさつぐ)社長の面接を受け、出所と同時に働き始めた。
中井社長が服役した人の採用を始めたのは二〇〇九年。出所しても行き場がなくて再び
罪を犯す人が少なくないと知ったからだ。中学を卒業して就職した自身にも、経営者にな
るまでには苦労を見守ってくれる人がいた。若い受刑者に面接して知ったのはみんな家庭
の崩壊などハンディを抱えていることだった。自分を含めた大人の側が、立ち直りに手を
差し伸べるべきではないかと思うようになった。
今年、日本財団の支援を受け、千房など関西地区の七社が五年間で百人の出所者らを受
け入れる「職親(しょくしん)プロジェクト」を始めた。二十代を中心に、美容、建築塗
装、飲食関係の五社で八人が採用され、新たに十四人に内定が出ている。関東地区でも十
一社が採用に向けて立ち上がった。
働く場が再犯防止を支える。国の調べでは〇二年から十年間の保護観察対象者の再犯率
は無職者が有職者の約五倍。国は出所者が二年以内に再犯におよぶ率を、十年間で二割以
上減らす目標を掲げるが、実現には協力的な職場をどう増やせるかがかぎになる。
法務省が厚生労働省と取り組む協力雇用主制度では、現在約一万一千五十社が登録して
いるが、こうした企業でさえ採用には積極的でない。実際に雇い入れているのは四百社弱
しかなく、国や自治体の採用もごくわずかだ。
罪を犯した人の雇い入れをリスクとみるのだろうが、中井社長は「排除を続ければやり
直しの場も生まれない」と言う。その点、職親プロジェクトは採用の対象から殺人や薬物
犯、性犯罪を除いているが、社会に理解を広げる一歩になるのだろう。
千房では採用した若者がレジの金に手を付けてしまったことがある。だが、信じること
をあきらめないと諭した。ときに挫折して辞める者がいても、若者の多くは再び社会とつ
ながろうともがいているからだ。自分は求められている。その手応えが立ち直らせる。
大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行