バングラデシュ (247KB、2015年10月)

バングラデシュ医療事情
以下は必ずしも最新の医療情報ではありません。詳細(特に緊急時対応や予防薬の
服用方法など)については現地医療事情に詳しい医療専門家から常に最新のアドバ
イスを受けるようにしてください。
最新更新履歴:2015 年 9 月 1 日更新
1.赴任前の準備
(1)予防接種
入国に際して法的に義務づけられているものはないが、A 及び B 型肝炎、破傷風、
狂犬病、日本脳炎の予防接種を受けて赴任することが望ましい。腸チフスについては、
汚染された飲食物を摂取することで感染する可能性があるので、ワクチン接種を受け
ることを勧める。また、日本脳炎ワクチン、水痘ワクチンはバングラデシュでは接種で
きない。
小児の予防接種は当地でも可能であるが、ワクチンの保存状態や副反応の問題も
あり、日本で接種することを勧める。
医療機関受診の際、予防接種歴を聞かれる場合があるので、接種記録は持参す
る。
(2)その他の準備
持病がある人は、治療薬を携行することが望ましい。英語の診断書(診断名、検査
所見、薬品名など)を持参し、現地でかかりつけ医を決めることを勧める。
歯科では抜歯や根幹治療などは勧められないため、出発前に検診・治療を済ませ
ることが望ましい。
眼鏡、ソフトコンタクトレンズはダッカ市内で購入できるが、種類が少なく品質も保
証できないため日本から持参するのがよい。またコンタクトレンズ洗浄液はソフト用し
か入手できない。(ハードコンタクトレンズのケアは通常、水道水を使用するが、当国
では衛生上の問題から使用できないため、ハードコンタクトレンズの使用は勧められ
ない)
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2.医療事情
(1)医療機関
医療機関と医療関係者の偏在はひどく、ダッカやチッタゴンといった主要都市以外
は医療機関が少なく設備も整っていない。ダッカ市内では大型病院や検査機関が施
設・設備を整えてきており、欧米や日本等に留学経験のある医師もいるが、病院のサ
ービスや個人情報保護、インフォームドコンセント等については期待できない。
多くの医師が数ヶ所の医療機関を掛け持ちで診察している。政府系病院で朝 8 時
から午後 2 時半まで働き、その後非常勤医(コンサルタント・ドクター)として、私立病
院やクリニックで働くといった状況である。多くの診療科目を標榜している大型私立病
院であっても、常勤医が少なく非常勤医であることが多い。非常勤医の場合、診察は
決まった曜日の夕方から夜間が多いため、事前に電話で受診科目、診察日時を確認
する必要がある。午後 10 時頃まで診療しているところは多い。受診先の病院ですべ
ての検査が受けられるとは限らず、検査専門の医療機関を受診する必要がある。
入院の場合、夜間や休日は卒後 1~5 年程度のインターンやレジデントが対応して
いる場合が多い。
薬は医薬分業制が多く、処方箋を持って薬局で購入する。
邦人が利用しているダッカ市内の医療機関は次のとおりである。
【内科】
Dr. M.A. Wahab Clinic (ワハブ・クリニック)
住所:House No.3, Rd. No.12, Baridhara
電話:028855953、028827553
備考:診療時間は 8:00~12:00、16:00~20:00。金曜休診(救急時のみ 9:00~
10:00)。各種検査(検尿、検便、血液、レントゲン)・予防接種可。専門は感
染症、内科一般。
【整形外科、内科・外科、歯科、その他】
Yamagata Dhaka Friendship Hospital (山形ダッカ友好病院)
住所:6/7 Block -A, Lalmatia
電話:029129354
備考:診療時間は 9:00~21:00。17:00 以降は脳神経外科・小児科・産婦人科・泌
尿器科・皮膚科・耳鼻咽喉科等の診察可。要予約。
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金曜休診(緊急時は対応)。予防接種可。院長は日本語が話せる。
【歯科】
AIKO Dental & Implant Center (アイコ デンタル アンド インプラント センター)
住所:House No.155/E, Road No.11, Banani
電話:029885426、028819409
診療時間:土曜日-木曜日 16:30~20:00 要予約
備考:日本語可能の医師が勤務しているが専門用語は英語
Johnson’s Place (ジョンソンズ プレース)
住所:House No.69, Road No.15, Block D, Banani
電話:028822849、029894361、028826789
備考:診療時間は月-木 9:00~17:00、金 9:00~13:00、日 14:00~18:00
要予約。
【眼科】
Retina Foundaton & Eye Centre
住所:House No.17, Road No.109, Gulshan
電話:02988488
備考:診療時間は、土-木 16:00~20:00 要予約
Lasik Sight Center (レーシック サイト センター)
住所:House No.17, Road No.109, Gulshan
電話:028852341
備考:診察は土-木 10:00~13:30、18:00~21:00
近視矯正手術を行っている他、眼科疾患にも対応。
Bangladesh Eye Hospital (バングラデシュ・アイ・ホスピタル)
住所:House No.78, Satmasjid Road No.27, Dhanmondi
電話:028651950-3、01916629999
備考:眼科専門の病院
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【大型総合病院】
United Hospital (ユナイテッド ホスピタル)
住所:Plot 15 Road 71 Gulshan Dhaka 1212
電話:028836000、028836444
FAX : 8836446
緊急:01914-001234
HP:http://www.uhlbd.com/
診療科:全科(歯科、脳神経内科を除く)、ICU、 CCU、 NICU、救急外来
備考:マレーシア系、450 床の総合病院で検査設備も整っている。
診療時間は土曜日-木曜日 9:00~20:00、金曜日休診。ただし救急外来は
年中無休。予防接種可。
Apollo Hospital (アポロ ホスピタル)
住所:Plot81,Bashundhara R/A, Dhaka-1229
電話:8401661、8845242
緊急:Hotline 10678
HP:http://www.apollodhaka.com/
診療科:全科(精神科を除く)、ICU、CCU、NICU、救急外来
備考:インドのアポロ病院系列の病院。450 床の総合病院で検査設備も整っている。
予防接種可。
Square Hospital (スクエアー ホスピタル)
住所:18/F West Panthapath, Dhaka
電話:8141522、8142431、8144400
診療科:全科(歯科を除く)、ICU、CCU、NICU、救急外来
備考:バングラデシュの製薬会社が設立した総合病院。
診療時間は土曜日-木曜日 10:00~13:00、16:00~20:00
(2)緊急時の対応と措置
緊急時や重症の場合は、まずダッカ市内の大型病院にて治療を受ける。バングラ
デシュでの治療が難しい場合は、できるだけ早期に、バンコクやシンガポール、ある
いは日本の医療機関で治療を受けることを勧める。
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3.医薬品、衛生用品
(1)携行することが望ましい医薬品
ほとんどの種類の医薬品が入手できるが、日本製の医薬品は入手できないので下
記を参考に持参することを勧める。
・総合感冒薬、解熱鎮痛剤、かゆみ止め、うがい薬、虫除け剤、日焼け止め、
(乗り物)酔い止め薬。
・小児用薬品(解熱鎮痛剤、座薬など)
・外用消炎鎮痛剤(湿布や塗り薬)
・目薬(疲れ目用など一般的なもの)
・衛生材料:伸縮包帯、サージカルテープ、冷却枕・冷却シートなど
・体温計:現地の体温計は華氏(F)が一般的であり、摂氏(℃)表示は少ない。
・ソフトコンタクトレンズ用洗浄液、保存液
・粉末スポーツドリンク:下痢・発熱・発汗時の水分補給として利用することもできる。
現地では経口補液剤(ORS)があるが飲みにくい。
(2)現地で調達できる医薬品
約 7,000 の医薬品が商標登録されており、ほとんどの種類の医薬品が入手できる。
医薬品の 95%が国内生産され、多くは自国の製薬会社製。ワクチンは輸入製品の
み。
市販薬、処方薬の区別はなく、医師の処方箋がなくても購入できる薬が多い。イン
ドからの密輸薬や偽薬など問題がある場合がある。ACI、ACME、Sanofi Aventis、
SQUARE、BEXIMCO、Novatis、RENATA、Novo Healthcare、Glaxo Smith Kline、
Incepta、SK+F など欧米などに薬を輸出している製薬会社の薬を購入することを勧
める。
(3)現地で調達できる衛生用品
ダッカでは生理用品、綿棒、デンタルフロス、ソフトコンタクトレンズ容器・溶液、バン
ドエイド、浣腸、防虫剤、湿布薬、マスク(不織布)、サプリメントなど質にこだわらなけ
ればほぼ手に入る。
(4)薬局
全国の市街地に必ず薬局はある。空調完備、冷蔵庫がある薬局で購入するのが
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望ましいが、地方では空調完備のところは少ない。最低限、冷蔵庫がある薬局で購
入することが望ましい。高い室温や停電など薬品の保管環境がよいとは言えないた
め、有効期限はもちろん品質にも注意し確認して購入する必要がある。
薬局の開業資格者は一定期間の研修を受けて、注射、投薬を行うことができるが、
無資格者も多いため、医師からの処方を受けることが望ましい。正規の教育を受けた
薬剤師は製薬会社で働くことが多く、薬局で働く人は少ない。
4.妊娠、出産、育児
(1)妊娠
妊娠検査薬は市販されている。病院では超音波検査を含め妊娠検査は一通り実
施可能である。妊婦自身の破傷風や風疹・麻疹等の予防接種歴を聞かれることがあ
るので、予防接種記録を持参するほうがよい。また、経産婦では今までの妊娠・出産
経過も聞かれることがあるので、母子手帳を持参するとよい。
バングラデシュ人の妊婦は貧血や低栄養などがあることが多いため、薬がすぐに
処方される場合がある。薬の必要性や種類、服薬方法の確認が必要である。
妊婦検診はバングラデシュでも行われている。担当医師と相談しながら受ける。
(2)出産・産後
出産のための設備はあるが、感染の危険や緊急時の対応には不安があることか
ら、日本での出産を強く勧める。子どもの健診は行われているが、日本のように充実
していない。産後検診や子どもの予防接種も行われている。予防接種は接種時期や
間隔などが日本とは異なる。予防接種で問題が起こっても重篤な副反応に対する補
償制度はないので可能な限り日本で受けることを勧める。
(3)育児
育児用品として、粉ミルク、哺乳瓶、マグ、ベビーパウダー、ベビー石けん、ベビー
ローション、紙おむつ、おしりふきなどメーカーにこだわらなければほとんどが入手で
きる。
乳母を雇う場合は、特に乳幼児に接する前に手を洗うよう指導することが大切であ
る。
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5.手術
(1)現地で可能な手術
手術を要する場合、より安全を考え、バンコクまたはシンガポールへ行くか、日本
へ帰国することが望ましい。傷を数針縫合する程度なら問題はない。
(2)手術設備の状況
ダッカや主な都市ではインド、マレーシアなど外国資本の病院もできるなどの設備
や施設は整っている。しかし、日本と同等の医師の技術や看護サービスは期待でき
ない。
入院は、病室が空いていればいつでも可能で、付き添い用ベッドのある個室もある。
ただし病室の設備は不便な点が多い。
6.現地での傷病
(1)一般の疾病
熱帯モンスーン気候と衛生状態があまりよくないため、1 年を通して下痢・腹痛・発
熱など消化器疾患が最も多い。風邪などの呼吸器疾患も多い。5 月~10 月の高温多
湿の時期には、あせも、湿疹、真菌(かび)や、皮膚が化膿するなど皮膚疾患が多
い。
歯の詰め物が取れたり、齲歯になったりする人も比較的多い。バングラデシュでは、
日本と同じレベルの治療は期待できないため、出発前に日本のかかりつけの歯科医
院を受診しておくことを勧める。
(2)風土病、感染症
熱帯感染症が多い。特に雨季(6~10 月)には、アメーバ赤痢、細菌性赤痢、腸チ
フス、ジアルジア症、寄生虫症などの疾患がみられる。その他、結核、ウィルス性肝
炎、デング熱、マラリア、フィラリア、破傷風、狂犬病、性病、エイズ、ライ病などがある。
季節性インフルエンザの流行時期は 4 月から 9 月と言われているが、日本の冬のよ
うな目立った流行のピークは見られない。
近年 1 月から 5 月にかけてニパウィルス感染が報告されている。この時期は、fruit
bats の繁殖期にあたり、妊娠したコウモリがこのウィルスを保有、ナツメヤシの生ジ
ュースを介しヒトに感染している。
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(3)有害動物、病害虫
蚊、ハエ、ゴキブリ、アリ、ネズミが多い。蚊にはマラリア、デング熱、フィラリアを媒
介するものがあるので、防蚊対策には十分注意する。狂犬病ウィルスに感染している
犬や猫などの哺乳類が身近にいる場合があるので、動物には不用意に手を出さない。
毒ヘビもいるので草むら等は要注意である。
(4)その他
ダッカの大気汚染は以前よりも軽減されたが、特に乾季は埃がひどくなるので、呼
吸器症状や眼症状を訴える人も少なくない。
車の数が急激に増加している。交通規則がないに等しく、信号無視や乱暴な運転
をする車が多く整備不良車も多い。歩行者保護の意識はないので、交通事故には十
分注意する必要がある。
国内では人力車を自転車で引くタイプのサイクルリキシャが近隣への移動に良く使
われている。座面が高いうえ、つかまるところがあまりなく、足で踏ん張って乗車する。
乗車中にひったくりに遭い転落し引きずられる等、横転や追突で怪我をするといった
事故が多い。利用する際は、夜間乗車は避ける、スピードをセーブさせる、ひったくり
にあわないよう荷物の置き場所に注意する、携帯電話での通話を避け身構えられる
ようにするなどの注意が必要である。
7.保健衛生
(1)飲料水
ボトルウオーターを飲用することが望ましい。バングラデシュの広い範囲で浅井戸
の水が砒素に汚染されていたが、政府・NGO 機関が浅井戸への指導を行い改善が
進んでいる。水道水の場合、浄化や消毒、配管等の問題もあり、生水の飲用はしな
い。レストランの氷は注意が必要である。
ダッカ市内の上水道は深層地下水を利用しており、砒素汚染はないとのことである
が、ミネラル分が多いため濾過器を使用している家庭が多い。
(2)食事
生ものは避ける。野菜や果物は農薬の問題が懸念される。肉、魚、卵は衛生管理
の問題があり、十分に加熱した物を食べること。
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(3)栄養、運動、休養、睡眠
疲労を感じたときは昼寝や休養をとり早めに対処する。映画やコンサート、イベント
などの娯楽は少なく、自分なりのストレス解消法を見つけることが大事である。また、
車での移動が中心になり、運動不足になりやすい。スポーツジムを利用したり、テニ
スやゴルフなどでからだを動かすのがよい。
(4)その他の留意点
高温多湿のため食品が傷みやすい。取扱いに十分注意すること。使用人には、手
洗いの励行、調理器具の清潔など衛生教育を行うこと。
宿泊を伴う国内旅行では、体調を崩すこともあるので無理なスケジュールは避け、
体温計・パラセタモール(解熱鎮痛剤)・イソジンうがい液(バングラデシュ製 Viodin)・
粉末スポーツ飲料か粉末の経口補液剤(ORS)などを持参することを勧める。
以上
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