屋敷と家屋の安寧にーそのまじなひ世界

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屋 敷 と 家 屋 の 安 寧 に ー そ のま じ な ひ世 界
人生 夕 昏 れ時 に 屋 敷 を 求 め 家 宅 を 営 む 、 人 生 の門 出 に当 り 屋 敷 を 得
*水
跡 の発 掘 調 査 で、 一つの重 要 な 所 見 が得 ら れ た 。 調 査 では 宝性 院 本 堂
昭 和 五 五 年 、 元 興 寺 文 化 財 研 究 所 が 実 施 し た 高 野 山金 剛峯 寺 宝 性 院
好
を 設 け る こと は 極 め て大 事 であ り 、 多 く の望 み と 夢 を 託 し 、 ま た そ の
と 考 え ら れ る雄 大 な規 模 の建 物 を 発 見 し、 こ の建 物 の建 築 と 関連 す る
正
中 で過 す 人 生 - 未 来 の安 寧 を 願 う 心 根 の揺 れ 動 く 場 であ る こと は いま
興味 深 い遺 構 の存 在 が浮 か び 上 った。 本 堂 を 建 設 す る 敷 地 の四 隅 と中
野
さ ら 改 め て言 う ま でも あ る ま い。 こう し た 屋 敷 と 家 宅 に彩 ら れ た 心根
心を 点 じ て、 径六 〇 弛ン、 深 さ 二〇 袖ンの 円穴 が掘 ら れ 、 そ れ ぞ れ に 五 枚
一、 屋 敷 地 取 作 法 の世 界
の動 き に息 ず く も のと し て、 ま じ な い ・呪 儀 と い った世 界 が生 き て い
の磁 皿を のせ た折 敷 (﹁八寸 ﹂) が据 えら れ て い た。 こ の五 枚 の磁 皿 に
家 屋 を 造 る 、 た と え そ の いず れ であ ろう と も 、 人 生 、 屋 敷 を 作 り 家 宅
る 。 そ の世 界 は 、 平 安 を 願 い、 安 寧 、 富 貴 を 望 む 者 の 必ず 念 じ て い た
を 聖 化 し、 中 心 に 点 じ た 一穴 を 聖 心 と し て い る。 そ の劃 さ れ た 面 積 は
こう し た 四 隅 を 点 じ た 円 穴 で、 東 西 三 六 ㌶、 南 北 二六 ㌶ を 区 劃 し 、 内
は各 々、 盛 り 物 があ り 、折 敷 とも ども 丁重 に円 穴 に埋 め ら れ て いた 。
る 世 界 であ り 、 そ の実 現 に験 者 な り 、 導 師 を 得 て確 証 を 得 、 永 遠 の幸
事 であ った だ け に、 真 剣 に考 え ら れ 、 終 始 こと あ るご と に ま じ な い .
甚 を 保 証 す る世 界 であ った 。 人生 の大 事 、 家 族 の匙 事 、 氏 なり 家 の大
呪 儀 を も って、 屋 敷 、 家 宅 は 包 み こま れ 、 凶事 は吉 事 に、 善 事 は 一層
戸時 代 中 期 の本 堂 が 南 に 寄 せ ら れ て建 て られ て い る の であ る。 心 を 点
の、 そ れ も 東 西 七 間 (二七 ㌶ )、 南 北 五間 (一九 層 ) と いう 雄 大 な 江
ず る そ の在 り 方 を 通 じ て本 堂 の建 設 に先 立 ち、 そ の敷 地 の四 方 を 、 ま
実 に 広範 囲 で あ る 。 と ころ で、 四隅 を 点 じ た こ の広 さ の中 に、 一棟
日 常 生 活 を 得 さ せ る、 極 め て重 要 な 機 能 を 果 し た の であ る。 ま じ な い
た中 心 を 点 じ て 呪儀 が実 修 さ れ、 のち、 そ の敷 地 の南 に寄 せ て本 堂 が
の善 事 に転 ず るよ う と り は か ら れ て来 た の であ る。 従 って、 屋 敷 .家
・呪 儀 の在 り 方 を 通 じ て、 そ の時 代 、 そ の時 代 の 人 々の想 い なり 心根
営 ま れ た こと が容 易 に 知 られ る の であ る。
宅 を め ぐ るま じ な い ・呪 儀 の世 界 は、 人 々の願 望を 充 足 さ せ、 静 安 な
を窺 い、 ﹁人 ﹂ を 問 う 、 そ う し た 大 切 な 作 業 が果 せ る の で は な い か、
高 野山 金 剛 峯 寺 宝 性 院 跡 で 発 見 され た こ の類 例 少 い遺 構 を 私 は ﹁屋
こう し た 考 え に 基 い て こ こ に私 な り の語 り を 記 し て み た いと 思 う の で
あ る。
費
受 理)
*考 古 学 研 究 室(昭 和58年9月27日
2
要
紀
学
大
良
奈
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﹁造 作 新 造 ノ時 、 地 神 二地 ヲ奉 乞 事 ﹂ と し て こ の 呪儀 に つい て詳 細 が
寺 .木 下 密 運 師 架 蔵 に係 る ﹃屋敷 地 取 作 法 ﹄ の書 名 を も つ 一本 に は、
敷 地 取 作 法 ﹂ の実 修 を 語 る 遺 構 では な いか と 考 え て い る。 河 内 千 手
0.4m
寂
の句 がし た た めら れ 、 所定 の方 に樹 てら れ る の であ る 。 次 に こ の四
故 十 方 空 の句 、 西 の札 には 設 何 庭 有 南 北 の旬 、 北 の札 に は 擁迷 故 三界
⋮語ら れ て いる 。 屋 敷 地 を 点 定 す る こ の作 法 は 、 ま ず 家 の大 小 に より 土
}地 の四方 と中 央 の五 所 に長 さ 八 寸 、 広 さ 一寸 二分 の札 が樹 てら れ る・
一中 央 の札 は ξ字 一字 、 東 の札 には ξ 本 来 無 東 西 の句 ・ 南 の札 に は 蘇悟
第12号
方 .中 央 の札 の許 に 五色 ー 五穀 粥 、 切 華 、 抹 香 、 散 米 ・味支 の五膳 を
盛 った 折 敷 を据 え る 。中 心 に は七 条 袈 裟 を 敷 き 、 中 央 の札 を袈 裟 上 に
置 き 、 別 に膳 を す え大 土 器 一つを 用 い こ の地 の聖 性 を表 示 す ると と も
に、 特 別 な意 味 をも た せ る の であ る。 導 師 は 七 条袈 裟 上 に薦 を 敷 い て
そ の言 葉 に は ﹁夫 れ 大 海 に袈 裟 を 浮 れ ば 金 翅 鳥 玉 の如 し、 竜 を 害 す る
北 向 に坐 し、 呪儀 が は じ ま る。 ま ず 花 枝 を と り 三礼 、 つづ い て請 類 、
こと な し 、 大 地 に袈 裟 を 敷 け ば 堅 牢 地 神 人 に 崇 る こと な し 、 故 に解 脱
橦 相 の福 田衣 を 敷 き 、 不 生 不 滅 の 三摩 地 を乞 う 。 願 く は 地 天 井春 族 必
ず 納 受 し 給 え ﹂ と い った句 が 訥 さ れ る 。袈 裟 を 通 じ て堅 牢 地 神 の威 を
であ る 。 七 条 袈 裟 の調 頗 の次 は施 甘 露 の真言 を 諦 す る 。 四 方 ・中 心 の
得 て諸 崇 を 除 き 、 こ の敷 地 を 不 生 不滅 の三摩 地 と せ んと 呪 し て いる の
札 の許 に供 し た 五 膳 を 地 神 に す す め、 神 の納 受 を 得 て 一層 の庇 護 を 得
よ う と 呪 作 す る の であ る 。 こう し て 四方 中 心を 点 じ て寄 り来 る 邪気 悪
霊 を 防 ぎ 内 な る 世 界 を 聖 化 し、 地 神 に 五膳 を 供 し てそ の冥 助 を 乞 い屋
の札 のた つ各 辺 に 七杭 を指 し、 東 西 南 北 各 七 行 、 縦横 に水 縄 を 張 り 四
敷 地 を 得 る の であ る 。 こう し た 呪儀 の のち 、 屋 敷 地 と し て劃 し た 四方
い て寅 丑 角 、 辰 巳角 へと 順 次 、 建 除 満 平 定 執破 危成 収 開 閉 の十 二運 を
九 坪 を 作 る 呪作 が な され る。 こ の 四九 坪 に 未 申角 より 戌 亥 角 へ、 つづ
配 し て いく 。 従 って未 申 角 - 南 西 隅 に 建 が 置 かれ 、 ラ セ ン状 に中 心 へ
向 か い、 中 心 に建 が 配 ら れ る こと と な る 。十 二運 の建 に 始 ま り 建 に 終
る の であ る 。 こう し て各 坪 には十 二 運 の各 運 が規 則 正 し く 与 え ら れ る
が 十 二運 中 の建 満 平定 成 収 開 の七 運 が吉 、 除 執 破 危 閉 の五 運 が 凶 と さ
れ 、 結 果 屋 敷 地 の四 九 坪 は吉 坪、 凶坪 に 二分 さ れ る こと と な る の であ
る 。水 縄 を張 り 作り 出 し た 四九 坪 には 吉 坪 に白 紙 を 挾 ん だ真 野竹 が、
凶 坪 に は 青 紙を 挾 ん だ真 野竹 が指 さ れ 、 やが て凶 坪 の土 を 鍬 です く い
折 敷 に 入 れ て玉 女 の方 に 捨 て去 り 、 悪 土 を も つ凶 坪 は善 土 を 具 え た吉
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四方 中 心 を 点 じ て屋 敷 地 を 劃 し て地 神 に 乞 い、 後 、 地を 東 西七 行 、
南 北 七 行 、 計 四 九 坪 に分 か ち 十 二運 を 配 し て吉 凶 の坪 に分 け、 凶 坪 の
悪 土 を 除 く こと で全 坪 ー 屋 敷 地 全 体 が 吉 地 - 善土 と為 ると い った呪 儀
が ﹁屋 敷 地 取 作 法 ﹂ と 呼 ば れ 広 く 各 方 面 で実 修 さ れ て い た の であ る。
高 野 山 金 剛 峯 寺 宝 性 院 で発 見 さ れ た遺 構 は ま さ に そう し た呪 儀 を 語 る
て こう し た 屋 敷 地 取 の作 法 が 実 修 さ れ る の であ る が 、 こう し た 丁重 な
重 要 な 遺 構 と 言 え る の であ る。 寺 院 や神 社 のみ な らず 屋 敷を も めぐ っ
であ る。 屋 敷 地 を 得 、 家 宅 を 営 む に先 だ って 永 遠 の吉 運善 土 が希 わ れ
呪 儀 は 古 代 ・中 世 前 期 に は見 ら れ ず 、 中 世 後 期 か ら 近 世 に 盛行 す る の
て いる の であ る 。 今 日 には 見 ら れ な い思 惟 と 言 え る であ ろう 。
二、 地 鎭 ・鎭 壇 呪 儀 の世 界
滋 賀 ・岐 阜 両 県 境 に そび え る伊 吹 山 、 そ の東 麓 - 美濃 に伊 富 岐 神 社
が 鎮 座 す る 。 こ の社 殿 の中 央 地 下 から 一点 の壼 が 掘 り 出 され 、 そ の中
か ら 多 数 の皿 が 見 出 さ れ た。 こ の皿 は、 注 目 す べきも の であ った。
へ
写真下段)
内 面 に輪 宝 が 墨 描 き さ れ たも の、 外 底 に北 ・南 ・西 ・東 ・中 央 と 墨 書
し た も のが 見 ら れ た の であ る 。 先 述 の屋 敷 地 取 作法 が 四方 と 中 央 を 点
こと が 推 察 でき る の であ る 。 輪 宝 は 仏 教 で 仏 敵 に対 峙 す る武 器 と し て
る こと が 墨 書 か ら 読 み と れ 、 ま た それ ぞ れ に輪 宝 を描 く 皿 が共 伴 し た
じ て呪 儀 を 実修 す る のと 同 様 、 東 ・西 ・南 ・北 ・中 央 を 点 じ た 皿 であ
坪 と 化 す る の であ る 。 こう し た凶 坪 の全 て が吉 坪 と な る と 屋 敷 地 の四
用 いら れ る も の であ り 、 障 擬 神 を 倒 し 、 寄 り来 る障 擬 神を 防 ぐ 、 そう
憂忍
九 坪 は 善 土 に 満 ち た 吉 善 の地 と し て屋 敷 を 営 む に 適 し た土 地 と し て 息
し た 機 能 の象 徴 と し て存 在 す る も ので あ る 。 四方 ・中 心 に こう し た輪
法 書 か ら 明 き ら か に す る こと が でき る 。 た と え ば ﹃法 則 等 ﹄ には 中 心
つも の であ る 。 こう し た 輪 宝 を 描 く 皿 を 用 い た 呪儀 は、 いく つか の作
ず い て いく こと と な る の であ る。 別 の 一書 で は吉 凶 の各 坪 の土 を と り
悪 土 を 除 く と す る説 が 基 本 と な る も のと 考 え て よ い であ ろう 。
各 角 坪 の善 悪 両 土 を いれ 換 え 善 土 と す ると 説 く も のも あ る が、 凶坪 の
吉 坪 の善 土 を 凶 坪 の悪 土 に、 凶 坪 の悪 土 を 吉 坪 の善 土 に 混 じ さ せ る こ
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てす る 、 そ の侵 入 を 防 ぎ 内 な る 世 界 を 聖 化 し そ の聖 性 を 護 る意 味 を も
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宝 墨 描 土 器 を 配 す る こと は 、 四 方 を 劃 し 、 全 ゆ る障 擬 神 に対 し て境 立
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と に よ り 全 坪 を 善 土 に化 す ると 説 く 、 ま た 一書 に はむ か い合 う 未 申角
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と 寅 丑 角 が 共 に吉 坪 であ り 、 戌 亥 角 と 辰 巳角 が 凶坪 であ る と こ ろ か ら 、
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水 野:屋 敷 と家 屋 の安 寧 に一 その ま じな ひ世 界
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水 野:屋 敷 と家 屋 の安 寧 に一 そ の ま じな ひ世 界
そ の用途 目 的 を 明 き ら か に し て いる し 、 ﹃両 部 神 道 記 ﹄ には 屋 敷 祭 次
埋 メ ハ成 一
一
金 剛 不 壊 ノ地 ↓万 宝 ヲ出 シ、 不 祥 災 難 等 不 レ起 也﹂ と 記 し 、
に 馴字 を 容 れ た輪 宝を 図 し 、 ﹁此輪 宝 ヲ土 器 五 二書 テ東 西 南 北 中 央 二
み結 ぶ。 深 さ 二尺 八 寸 、 広 二尺 五寸 の穴 を 掘 り 地 鎭 供養 が終 る と こ の
に五 宝 ・五 穀 ・五 薬 ・五 香 を 包 み瓶 中 に入 れ 蓋 し そ の上 を 五色 糸 で絡
あ ろ う 。輪 と 楓 と 瓶 を 用 い て の地 鎭 に つい て は、 ﹃地 祭 鎭 瓶 輪 楓 事 ﹄
覆 ひ て之 れ を 埋 む べし 。堂 塔 社 相 の地鎭 は中 央 に之 を 埋 む べし 。 人 の
如 く 輪 宝 も 書 き 、 粥 の 五穀 を 少 し 入れ よ。 又 、土 器 に 馴字 を 書 き 蓋 を
と 見 え る 。 ま た ﹃修 験 常 用 秘 法 集 ﹄ の地 鎭 祭 法 に は ﹁土 器 の内 に 是 の
囲 に配 し た整 然 た る鎭 壇 遺 構 が 見ら れ る の であ る 。 屋 敷 地 、伽 藍 地 、
心 に 一穴 を 掘 り 中 央 に賢 瓶 を 据 え 四方 八 方 に輪 薇 を 樹 て 粥 皿 など を 周
石 山 寺 の多 宝 塔 下 に そ の顕 著 な 例 が 見 ら れ る 。建 物 を 載 せ る基 壇 の中
を 中 心 に展 開 し て お り 、 大 和 興 福 寺 大 御堂 、河 内 金 剛 寺 多 宝 塔 、 近 江
語 って い る 。 た だ、 こう し た輪 概 、 瓶 を 用 い て の呪 儀 は 、 古 く は 鎭 壇
て ると 記し 時 に は中 央 のみ な らず 、 四方 にも 埋 め る作 法 のあ る こと を
屋敷 に は 四 壁 の内 、 氏 神 の桐 の下 に 埋 む べし 。 又 そ の館 の内 に社 な く
建 物 地 の全 体 を 鎭 め地 神 に乞 う 地 鎭 と は異 り 、 建 物 の建 つ地 - 基 壇 を
穴 中 に鎭 瓶 ・輪 薇 等 を 埋 め る と い った記 事 が あ り 、 方 毎 にも輪 薇 を た
ん ば、 戌 亥 の角 の柱 の下 に 埋 む べし 。 悪 土 等 の札 も 裳 に埋 む べし 。 井
鎭 め そ の建 物 の永 遠長 久 を 地 神 に 祈 る祭 り が鎭 壇 であ る 。 平安 時 代 に
ニモカ ワ ラケ ヲ メ屋 敷 二荒 縄 ヲ ハリ チガ イ メ ニ正 中 エ穴 ヲ ホ リ可 レ埋 ﹂
に建 除 之 れ を 埋 む べし 。﹂ と あ り 、 つづ いて 戌 亥 隅 の土 を 辰 己隅 に埋
第 と 題 し て 丁 寧 に 輪 宝 を 描 き ﹁如 是 紙 八葉 切 書 ス、 カ ワ ラ ケ ニ入 フタ
め 、 辰 己 の隅 の土 を 亥 亥 の隅 に埋 め る な ど 交 互 の土 を 入れ 替 え る呪 儀
鏡館 跡 の主 殿 か と考 え ら れ る 建 物 内 か ら 越前 焼 の 一壺 が発 見 さ れ 、 そ
の内 に は 響 銅製 瓶 が容 れ ら れ てお り 瓶中 か ら大 麦 、 小 麦 、 米 、 赤 米 、
属 す る先 述 の三寺 の例 と は 別 に 、 越 前 朝倉 一乗 谷 で は朝 倉 式 部 大 輔 景
或 いは 中 央 を 点 じ て埋 め輪 宝 の聖 な る 力 に よ り 永 久 の繁 昌 を 得 よ う と
胡 麻 、 稗 、 金 枝 、 杉 枝 、 琉 珀 な ど が発 見 さ れ て い る 。鎭 壇 の 一例 であ
のあ る こと ま でを 詳 細 に記 し て い る。 輪 宝 を 描 く 土 器 は 、 屋 敷 地 を金
し て い る の であ る。 こう し た輪 宝 を 墨 書 す る 土 器 の使 用 は 、 単 純 な 地
の鎭壇 の姿 を よ く 伝 え て い る。
る が輪 微 を 欠 き 賢 瓶 を 具 え ると い った興 味 深 い例 であ り、 近世 の 一般
剛 不 壊 の浄 地 と し 、 繁 栄 と辟 邪を 斉 ら す浄 地 と す る た め に 四方 中 央 、
鎭 め、 地鎭 祭 と いう よ り も 、 む し ろ ﹃修 験 常 用 秘 法 集 ﹄ にも 掲 げ る よ
り 銭 形 を 懸 け る が 、 こ の十 二串 は 十 二月 神 を 象 るも の と され る。 穴 の
二 本 の幣 串 を 指 す 。 こ の幣 串 は 長 さ 二尺 五 寸 、幅 一寸 二分 の木 串 であ
三 尺 、 深 さ 二 尺 五 寸 ば か り の穴 を 穿 ち 、 そ の奥 と 両 脇 に各 四本 、 計 十
と 考 え ら れ る 。 別 の地 鎭 のタ イ プ は土 公供 とさ れ るも の であ る 。 広 さ
の タ イ。
フが 見ら れ る 。輪 、 楓、 賢 瓶 は 元来 鎭 壇 の用 に宛 てら れ た も の
と こ ろ で 、地 鎭 のま つり に関 し ては 、輪 宝 、極 、賢 瓶 を 用 いな い 一つ
う に ﹁屋 敷 地 取 作 法 ﹂ と 大 き く 重 さ な り 合 う も の であ り 、 四方 、 中 央
に 樹 て る札 と も 、 ま た 吉 凶 坪 (善 土 悪 土 ) に た てら れ た十 二運 札 と も
鮮 や か に 吻 合 し て いる の であ る 。 今 日、 各 地 で輪 宝 を 墨描 す る土 器 は
数 多 く 発 見 さ れ て い るが 蓋 身 を 合 せ た 一具 の み の 発 見 であ り 、 伊夫 岐
地 神 に乞 う 屋 敷 地 取 作 法 が広 い意 味 で は地 鎭 そ のも の であ る こと も あ
前 面 に は 二脚 の机 を対 に 置 き 、 一に 粥 、關 伽 、 切花 、 散 米 、 一に白 酒
神 社 の 一例 の み が 五具 一括 顕 現 の例 であ る。 いず れ に せ よ 、 屋 敷 地 を
って、 地 鎭 ・屋 敷 地 取作 法 と い った 呪儀 に輪 宝 墨 描 土 器 が 登 場 す る の
を 配 す る 。 そ の前 面 に は 長 机 を 置 き 鏡 、 鐘 木 、 切花 を の せ、 導 師 の座
であ る。
輪 宝 を 墨 描 す る土 器 の系 譜 は、 輪 薇 を 用 い て の地鎭 に求 め ら れ る で
6
大
良
奈
第12号
紀 要
学
す る と いう 。穴 中 に は 供 物 、幣 串 、 銀 銭 等 が 悉 く 埋 め ら れ る と説 く 一
本 も あ る 。 こう し た土 公 供作 法 を 実 修 し た と 考 え ら れ る 遺構 も 最 近 、
各 地 で検 出 され て い る 。松 田 正 昭氏 の紹 介 さ れ た 一住 宅 をあ げ よ う 。
住 宅 敷 地 内 に 一穴 が 掘ら れ てお り そ の穴 中 か ら 鉄製 鍋 一口、 穴 あ き 銭
を 十 二枚 鉄 線 で つな いだ 幣 串 の銀 銭 に該 当 す る も の 二連 が 見 出さ れ て
い る。 粥 を 容 れ た鍋 、 幣 串 に挿 さ む 銀 銭 が そ れ であ る 。 恐ら く 他 の多
く の品 目が 同 時 に埋 め ら れ て いた も のと 考 え ら れ る のであ る。 酒 粥 を
地 神 に供 し 、 真 言 、 呪 を 論 え 、 廻向 し 揆遣 す る、 そう し た中 で地 神 が
こ の呪 儀 を 承 け 、 こ の地 、 こ の穴 を法 界宮 と 化 す る の であ る 。 揆 遣 は
法 界 宮 に対 し て為 す 肝 要 の呪 儀 と 説 か れ て い る のであ る。 地 鎮 、鎮 壇
安 鎮 、鎮 宅 、 多 く の言 葉 が 世 に 在 る が全 て相 異 るも の であ る 。鎮 宅 は
人 家 の鎮 め 、安 鎮 は 堂 塔 の鎮 め 、鎮 壇 は基 壇 に付 い て、 ま た 地鎮 は 何
れ にも 通 じ 用 いる 名 と 一般 に 言 い なら は され て いる 。 古 代 には安 鎮 、
多 用 さ れ る に 至 り 、 そ のま つりも 複 雑 に整 備 さ れ て いく の であ る 。
鎮 壇 の呪儀 が 多 く 見 ら れ 、 後世 と く に江 戸 時 代 、 四種 の鎮 め が 広 く 、
三、 立 柱 ・上 棟 呪 儀 の 世 界
地鎮 、鎮 壇 の呪 儀 を 経 て行 な われ る呪 儀 は 立 柱 、 上 棟 を め ぐ る ま つ
内 に散 じ、 花 を 供 し、 粥を 散供 す る 。次 に 地 天 真 言 を は じ め各 真 言 、
地 天 を 驚 覚 せし め次 に地 天 を 勧 請 、 杓 で 以 て湯 醗 油 等 の和 合 の水 を 穴
言 を 訥 し 、 八陽 経 真 言 、 晋 供 養 明 を 訥 し 、 天鼓 地鼓 四方 鼓 を 三遍 打 ち
剣 印 加 持 し 水 を そ そぎ つ つ鋤 でも って方 三 尺 の穴 を 掘 る 。 如 来 慈 護 真
臣 祓 祭 文 を 読 み、 水 埴 を 作 り 金 剛 合 掌 し て地 を 加 持 し 、 次 に 不 動 真 言
1 薦 を 前 に敷 く 。 作 法 の次 第 は、 導 師 が 座 に 踵 鋸 し 、 年 月 日を 称 し中
勘 案 す る な らば 、 立柱 に 当り 辟 邪 擢 破 す る た め に 柱 内 に桃 核 を 蔵 し た
が辟 邪 の 機能 を果 す こと を説 い て いる 。 桃字 が 逃 と 音 通す る こと を も
畏 る る が故 なり ﹂ と あ る し、 ﹃日本 書 紀 ﹄ に も 岐 美 二神 を めぐ り 桃 実
を施 し て戸 の上 に 着 く 。 之 れを 仙 木 と 謂 ふ。 欝 塁 山 の桃 は百 鬼 之 れ を
であ る こと が容 易 に 窺 え る であ ろう 。 ﹃事 物紀 原 ﹄ に は ﹁元 日 に桃 版
こと 、桃 を収 め る こと が 出来 ぬだ け に、 立 柱 の呪 儀 の 一環、 そ の 一駒
ち桃 を収 め た事 実 が 知 ら れ て い る。 立 柱 の過 程 でな いか ぎ り穴 を 穿 つ
り であ る 。 た と え ば 法 隆 寺金 堂 の諸 柱 の頭 貫 に接 す る 木 口 に、 穴 を 穿
各 呪 を 蒲 し 廻向 し、 撹遣 し て終 り 鋤 を 以 って穴 を 埋 め そ の上 を 堅 固 に
『⊥ 公 供 作法 』 所 掲 ⊥ 公 供 祭 場
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柱 頭
五寸 の板 に 四徳 文 の秘 符 を 記 し て 埋 あ る と い った呪 作 が あ り 、 新 宅 地
を 墨 書 し、 宅 地 の 八方 の土 中 に埋 め 、中 央 に は別 に長 さ 七 寸 二分 、幅
ー 屋 敷 地 を鎮 め る 呪儀 に 用 い ら れ る のであ る が、 や が ては 立 柱 の際 に
も 、 八方 諸 神 ・中 央 神 に奉 斉 し 、 永 遠 の建 物堅 固を 得 る ため に こう し
た鎮 丸 が 用 いら れ た の であ る 。 同 様 、 本 来 は 地鎮 に主 用 され て い た呪
儀 が 立 柱 と 関 連 ず け ら れ て存 在 す る場 合 も ま た 見 ら れ る。 例 えば 、 高
の穴 を 穿 ち 、 内 に蓋 を し た賢 瓶 が 発 見 さ れ た と いう 。 賢 瓶 を輪 概 と共
野 山 金 剛 峯 寺 大 門 の解 体 修 理 に伴 い、 小 屋 組 の頭 貫 斗 の側面 に長 方 形
に主 用 す る呪 儀 が地 鎮 であ る こと を 想 え ば 、 地 鎮 が 建 物 の永 遠 と 居 住
い る と考 え て よ い であ ろう 。
す るも の の平 安 を 願 う 行 為 だ け に、 同 じ よ う な 想 いが 立 柱 に も 働 いて
昭 和 四 六年 か ら 足 掛 け 三年 に わ た って大 阪府 交 野市 に所 在 す る 重 要
文 化 財 建 造 物 山 添 邸 の解 体 修 理が 行 な わ れ た 。 そ の際 、 母(
屋真の
写
上段
屋右
根
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季 、 左 に寺 村 九 左 衛 門平 精 、 や や行 をず ら し て 三月 大 明 日 の文 字 が墨
札 の中 央 には 圃 躬 隠 々如 律 令 の句 が 大 書 さ れ 、右 に宥 歳次 宝 永 癸 酉 二
棟 木 に 一枚 の板 札 が 打 ち つけ ら れ て いる 事実 が 知ら れ た。 長 方 形 の板
書 さ れ て い る。 棟 木 に釘 う ち さ れ て は い るも の の 一般 に棟 札 と 呼 ば れ
るも の と は や や 趣 き の異 る も ので あ る 。 こ の中 央 の 二字 は 直 接 意 味 す
る と ころ は 不 明 で あ り 、 由来 も 不 明 であ る が ﹃呪 咀重 宝 記 大 全 ﹄ な ど
に よ れ ば 、 悪 難 を 払 う 御 符 と さ れ 、 病 難 ・盗 難 ・火 難、 そ の他 一切 の
柱 に籠 め ら れ るも の、 それ は桃 核 ば かり で は な い 。鎮 め も のと し て
一鉄 丸 を 収 め る 資 料 も ま た数 多 い の であ る。 滋 賀 県中 主 町 の白 子 邸 では
る こと を 教 え て い る の であ る。 宝 永 二年 三月 大 明 日と い った表 現 から
厄 難 を 防 ぐ と そ の効 を 説 い て い る。 従 って棟 札 と 異 る 一面 を も つが 、
陰 陽 師 なり 社 司 の関 与 が読 み と れ る のであ る。 こ の種 の鎮 札 と 関係 し
家 宅 の新 築 に当 り 火 難 や、 一切 の難 を 鎮 め る札 -鎮 札 と し て働 い て い
例 かを 挙 げ る こと が で き る 。 最 近 見 る こと を 得 た鎮 丸 は 、 そ の球 体 の
て注 目 さ れ る の は、 滋 賀 県 近 江 八幡 市 内 の園 田六 兵 衛 邸 の 一札 で あ
鎮、
丸 と 仮 称 す るな ら ば 、 そ の例 は 和 歌 山城 紅葉 山 庭 園客 殿 を は じ め 幾
一八方 に乾 兇 離 震 巽吹 艮坤 の秘 符 を 記 し 八方 神 を 象 った 星 宿 を かく 。 元
る 。兼 康 保 明 氏 の教 示 に よ れば 札 は 尖 頭平 底 の棟 札 であ り 中 央 に奉 上
裏 には乾元亨利貞詫
来 な ら ば 将 軍木 (ヌリ デ)の板 、 長 さ 五 寸 巾 三寸 の 八枚 に 八方 神 、 乾 兇
離以下 の秘符を それ ぞれ朱貰
徳文 の符形
一大 黒 柱 を 劃 り 抜 い た穴 に鉄 丸 を容 れ た木 箱 があ った 。 こう し た 鉄 丸 を
一
一あ る 。 立 柱 の意 、 呪 儀 の本 質 を 鮮 や か に語 る資 料 と い え よ う 。
・も の と 考 え る こと が でき よ う 。 建 物 の永 遠 を 願 い、 ま た 邪気 臓 気 に犯
一一
へさ れ る こと のな き よ う 桃 核 を も って そ の願 意 を 達 そ う と し て いる の で
水 野:屋 敷 と家 屋 の安 寧 に一 そ の ま じな ひ世 界
8
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第12号
紀 要
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L 内申 三 月 告 碍
憲
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久
常 治郎 、 左 に 丙 申 三 月吉 祥 ・旦 雇頭 ・ヒ ルタ村 ・四郎 兵 衙 の文 字 、裏
棟 祭 神 家 門 栄 久 守 護 の文 字 、 右 に 天 保第 七 年 ・工匠 棟 梁 ・田村 加 賀 爪
に は 卦 七 ⋮難 即滅 七福 即生 の句 が書 かれ て い る。 こ の棟 札 と 同年 月 を示
す 一札 が注 目 を惹 く札 で あ る 。札 の中 央 、 頭 に以 点 を う ち 、 五 岳 五帝
真 君中 の玄 武 か と 思 わ れ る 符 を 記 し 、 そ の 下 に乾 元 亨 利 貞 家 運 長 久庭
☆ と つづ け、 右 に 天保 七 ・陰 陽師 、 左 に丙 申 春 ・木 邑 大 隅 の文 字 を容
.敬 白 と 記 す 。 符 中 の 五岳 五帝 真 君 の玄 武 は 北 を指 す 真 君 であ り 、 乾
れ て い る。 裏 面 に は タ ラ ー ク の種 子 を 頭 に置 き 隠 々如 律 令 と書 し九 字
の如 く 隠 ぎ な れ の意 であ り 、 鬼 よ 災 厄 よ 速 や か に去 れ の趣 旨 の句 であ
元 享 利 貞 の句 は易 経 の最 初 の句 であ る。 裏 面 の隠 々如 律令 の句 は律 令
る 。 九 字 を 配 し て こ の趣 旨 の完 全 な 効 果 を 願 って い る のであ る。 こ の
こと は 明 白 であ る 。 こう し た札 の背 景 に 陰 陽 師木 邑大 隅 の介 在 す る こ
園 田邸 の札 は 、 棟 札 と 共 存 す る だ け に鎮 札 と し て息 ず い たも の であ る
と も か よ う な 呪 儀 を 司 る者 の実 態 を 伝 え る も のと し て重 要 であ る 。棟
札 と鎮 札 と い った 二者 が 棟 上 げ に際 し て 用 いら れ 、 前 者 が 神 道 風 に、
後者 が 陰 陽 道 風 に実 修 さ れ て いる様 が手 にと るよ う に窺 え る の であ る 。
(
写真上段左)
一方 、 大 阪 府 鴻 池 新 田 会 所 の米蔵 に見 ら れ る棟 札 の世 界 を 見 よう 。
大 き な棟 札 の中 央 に は 、奉 造 立 上棟 天真 井 水 栄 永 繁 昌 守 護 之 所 と 丁寧
に大 書 し、 右 に 干時 享 和 二 壬戌年 六月 二十 二 日巳 之 刻 、 左 に祭 主 玉造
森 之 宮 神 主 、 近藤 大 隅藤 原 重 治 の文 字 があ り 、 裏 面 に は 一・二 ・三 ・
四 ・五 ・六 ・七 ・八 ・九 ・十 と 大 書 し 、 下 右 に布 留 部 由 良 由良 、 下左
に由 良 由 良 布 留 部 、 こ の 二行 の下 、 中 央 に小 字 で神主 の文 字 を し た た
め て い る。 表 の文 字 は 豪 商 鴻 池 家 の会 所 米 蔵 に ふ さ わ し い吉 句 の連 な
り であ り 、 棟 札 と し て は普 遍 的 な 枠 組 のも のと言 え る が、 棟 上 げ に際
に則 り 実 修 され たも の であ る こと が 判 然 と す る の であ る。 と こ ろが 裏
し 森 之 宮 神 社 神 主 近 藤 重 治 の関 与 が 明 示 さ れ 、 これ が 神道 流 の上 棟 式
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水 野:屋 敷 と家 屋 の安 寧 に一 その ま じな ひ世 界
部 氏 の祖 、 宇 摩 志 麻 治 尊 が 饒 速 日尊 の携 え 来 った十 種 の天 璽瑞 宝 を 用
﹃先 代 旧 事 本紀 ﹄ に 見 え 、 鎮 魂 祭 の起 源 を 説 く シー ンに登 場 す る。 物
良 由 良 由 良布 留 部 1 ふる へゆ ら ゆ ら ・ゆ ら ゆ ら ふる への言 葉 と共 に
て注 意 を 惹 く も のな の であ る 。 ま ず 一よ り 十 に至 る数 は 布 留 部 由 良 由
辞 であ り 、 陰 陽 道 を 介 し な い も の、 し か し 鎮 札 的 性 格 を も つも のと し
面 の十 に 至 る数 字 や布 留 部 由 良 由 良 の句 は 、 極 め て重 要 な 神 道 流 の言
に、 こう し た 辟 邪 除 魔 のま つり 、 呪 儀 が そ こに は 色濃 く漂 い、 幾 度 び
人生 の大 事 で あ り 、 未 来 へ強 く 繁 り 、 し か も 家 族 の将 来 にも 係 るだ け
辟 邪 が つよ く意 識 さ れ て い る ので あ る 。家 宅 を 営 む 、 屋 敷 を 設 け る 、
法 か ら、 地 鎮 、 鎮 壇 、 立 柱 、 上棟 と経 て葺 瓦 の段 階 でも こう し た 除 災
応 し て こう し た各 種 の 鬼 瓦 が 作 り 出 さ れ て い る の であ る。 屋 敷 地 取 作
り 、 水 字 を 容 れ る と い う よ う に金 銀 財 宝 の充 満 ・火 災 水 難 の辟 除 に対
す る場 合 も 十 分 考 え ら れ る であ ろう 。 牛 玉宝 印 や干 満 宝 珠 を 表 現 し た
四、 屋 固 ・移 徒 呪 儀 の世 界
も 幾度 び も と り 上 げ ら れ て いく の であ る 。
い て帝 后 の御 魂 を 鎮 め 寿 詐 を 祈 祷 す る。 こう し た鎮 魂 祭 の場 で 一か ら
十 ま で 十 種 の瑞 宝 を 振 り 動 か し 算 え 上げ 、 ま た そ のた び に糸 を結 び魂
腺 の結 び ど め を 計 る。 そ の言 数 が 一から 十 ま で の数 であ る 。布 留 部 由
金 守 護 を 祈 り 鬼 門 神 茶 欝 塁 二 神 が 常 に方 位 を 鎮 護 す る の であ る 。 こう
根 を 家 宅 に持 ち こ み、 最 終 の宅 邸 の鎮 め を は か って いる の であ る 。⊥
家 作 普 請 が 成 就 し て家 人 が 移 徒 す る前 、 そ の完 成 し た 宅前 で 屋堅 i
良 由 良 の句 は 十 種 の神 宝 を 振 る様 であ り 、 そ の振 る 動 き が 霊 を ふる い
げ て相 手 に新 ら た な る生 命 を 与 え鎮 め る こと に 本 義 が あ る の であ る。
し た屋 固 の呪 儀 に伴 い 呪札 が 用 い ら れ る。 新 宅 中 央 に不 動 の種 子 を 書
た たせ 身 に触 り つく 、 そう し た語 義 を も つも のと 考 え ら れ て いる の で
鴻 池 家 の基 盤 と な る新 田 開 発 、 そ の根 源 と な る会 所 米 蔵 の新 造 棟 上 げ
き聖 主 天巾 天 ・迦 陵 頻 伽 聲 、 哀 慰 衆 生者 ・我 等 令 敬 礼 の文 を 墨 書 し た
て家 宅 の長 久 と 家 族 の繁 昌 を 祈 祷 す る の であ る。 破 魔 弓 矢 と 通ず る 心
に当 り 、 森 之 宮 神社 神 主 近 藤 重 治 は 、 ま さ に生 れ 出 で る豪 富 の象 徴 、
屋 固 の呪 儀 が 実 施 さ れ る。 神 弓神 矢 を 持 ち 邪 気 陰 悪 を 射 祓 う 、 こう し
米 蔵 の前 で 、 こ う し た 霊 魂 の萌 え る 力 を 建 物 に鎮 め る べく 呪 作 し て い
東 に種 子 降 三世 夜 叉 明 王 守 護 、 南 に種 子 軍 茶 利夜 叉 明 王守 護 の文 字 を
札 を樹 て、 北 に種 子 と 金 剛夜 叉 明 王 守護 、 西 に種 子 ・大 威 徳 明 王 守 護
あ る。 御 衣 筥 を 振 り 動 か し揺 る こ と に 呪 作 は 動 い て いく が 、 いず れ に
る の であ る 。 神 道 流 の上棟 のま つり にあ って こう し た鎮 魂 祭 の呪 儀 が
し ても 霊 魂 が ふ る い た ち ゆ ら ゆ ら と 萌 え 出 る 。 そ の霊 能 を 算 え 結 び 上
世 界 を得 て いる ので あ る 。
記 す 札 を 打 つ。 こう し た 四方 中 心 を 点 じ た方 札 と は 別 に大 日如 来 の種
を 記 す 屋 固 札 が釘 打 た れ る のであ る 。方 札 と 組 み合 わ さ った 屋 固札 の
棟 札 と鎮 札 と い った 世 界 と 共 に興 味 を 惹 く も の に棟 に 上げ ら れ た 鬼
世 界 が浮 か び 上 る と、 地鎮 と も 屋 敷 地 取作 法 とも 相 い通 ず る思 惟 のも
子 バ ンを 頭 に し て下 を 二行 に分 け 、 右 に 一切 日皆 善 ・ 一切 宿 皆 賢、
る 。 十 鬼 と か か わ るも の であ ろう か 。火 、 所 望、 沙 汰 、 愛 染 、 疫 病 、
と に屋 固 め の呪 儀 のあ る こと が判 然 とす る の であ る。 こう し た屋 固 札
諸 佛 皆 威 徳 と 三句 、 左 に羅 漢 皆 行 満 、 以 斯 誠 実 言 、 願 我 成 吉 祥 の三 句
他 福 、 息 災 、 軍 戦 、 万 病 、 物 悟 に対 し 十 喩 が 定 あ ら れ て いる が 、 こ の
は奥 野義 雄 氏 の教 示 に よ れ ば 奈 良 県 室生 の松 井 邸 にも 見 ら れ る。 札 の
二行 五 字 連 ね そ の間 を × で繋 ぐ 呪 符 と喩 々如 律令 の呪 句 を 陽 出 し て い
十 事 が 十 鬼 に係 るも の であ る 可 能性 も あ ろ う 。 勿 論 、 十 唯 は 隠 々如 律
瓦 の世 界 が あ る 。 奈 良 県 田原 本 町 の 町屋 の棟 に は 鬼面 を作 らず 、 日 を
令 の噺 字 を十 態 に分 け書 き 別 け る も の であ るが 、 こう し た内 容 に対 応
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第12号
融
諸群 餐 廠癒
虞饗
鴨切 宿 皆 貴
熱慶麟 夜嚇
餐
h切宿 皆 貴
諮 彿 皆 廠懐
一切a皆 善
噛切宿 皆 貴
頽 我労 古 洋
以斯誠 広釜 ・ 頽 残 労 吉祥
一切 θ皆 善
以斯誠 癖杢占
羅淡巷鑑
羅漢岩 鑑
諸仏皆威徳 の三句
左 に羅群
断漏
●以斯 誠実 語・願我成吉 祥
上棟 .屋 固 の呪 儀 と 密 接 に 絡 み合 う 呪儀 とし て注 目さ れ る のは方 違
の 呪儀 、 火 伏 の呪儀 であ る 。 屋 固 の 呪儀 に当 り 四方 中 央 の柱 に方 位 に
係 る札 を う ち 、棟 に 苛字 を 八字 円 相 に容 れ 一切 日皆 善 札 を主 札 と し て
打 ち つけ る事 を 記 し た が 、 同様 な 例 は火 伏 の呪 儀 に も 見 られ る の であ
る。 ﹃修 験 深 秘 行 法 符 究集 ﹄ に は、 中 央 に大 日 の種 子 を おき 、 周 囲 に
鍵 字 法 界種 相 形如 円塔 以 理智 不 二是 名 法 身 塔 と 廿 字 を 円 に連 ね た符 を
掲 げ 、 そ の略 は、 鍵 字 法 界 種 相 形 如 円 塔 の十字 を 円形 に並 べ るも の で
あ る こ とを 記 し て い る。 中 央 の大 日 の種 子 ξ が鍵 だけ に こ の 二字 を 除
く と こ の 客符 は屋 固札 の 八字 円 符 法 界 種 相 形 円塔 と共 通 す る こと と な
の柱 に降 三世 以 下 金 剛 夜 叉 に 至 る方 札 を 打 つこと が 記 さ れ て 居 り基 本
る の であ る 。 それ だ け では な く 一切 日皆 善 等 の六 句 は 見 え な いが 四方
的 に は 屋 固 札 、 屋 固 の呪儀 と火 伏 札 、 火 伏 の呪 儀 が 相 い通ず るも の で
あ る こ と を よ く 物 語 って い る。 同様 、 札 にお い て共 通 す るも の に方 違
札 が あ る 。 大 日八 字 円 相 を 札 上 部 に お き 一切 日皆 善 以 下 の六 句 を 配 す
る 点 、 そ の 一致 は鮮 やか であ る。 た だ 、 副 符 と し て、 年 年 大 好 年 、 月
月 大好 月 、 日 日大 好 日、 時 時 大好 時 と い った天 地 八陽 経 文 を 墨 書 す る
札 を打 つ点 に特 色 をも つと いえ よう 。
し た左 右 衛 門 ・甚 五 と い った 大 工 棟 梁 ・ 呪 儀 を 実 修 し た 山 神 社 の神
}も 見 られ 、 棟 に押 札 し た 日時 ー 屋 固 の呪 儀 を 実 修 し た 日 や そ の建 築 を
﹁文 政 十 三庚寅三月 廿 八 日 押 の文 や 左 右 衛 門 ・甚 五 、 山 神 社 大 樟 の 人名
し て願 わ れ 実 修 さ れ て い る の であ る が 、 そ れ ら の呪儀 は相 互 に関 連 し
棟 、 屋 固、 火 伏 、 方 違 と い った呪 儀 が 家 宅 の完 成 前後 の家 宅 の鎮 め と
にお い ても 土ハ
通 す る .面 が つよ い こと は重 要 な 事 実 であ る 。 こう し た上
棟 札 、 屋 固札 、 火 伏札 、方 違 札 と い った 鎮、
め の札 が 符 に お い ても 句
棄
と こ ろ で興 味 ぶ か い事実 があ る。 ﹃鎮 土 法 ﹄ に は地鎮 土 公供 也 、 亦
期 す る だ け に こ う し た 呪儀 が詳 細 に体 系 化 、 組 織 化 さ れ る のであ る。
違 へる と い った ま つり が 執 行 さ れ て い る の であ る。 堅 岡 長 久 の家宅 を
当 り 鎮 め の呪 儀 が 、 完 成 し た 家 宅 の永 遠 を祈 り 屋 を 固 め 火 を 防 ぎ方 を
混 濡 し 、 時 に は並 祭 さ れ ると い った 形 が と ら れ た の であ ろう 。 上棟 に
呪 儀 で棟 札 を 打 ち ・ つづく 屋 固 の呪儀 で屋 固札 を棟 に 打 つ・ 時 に は
ろ う か 同 趣 同 文 と いう べき 様 の札 が 二 つの世 界 に見 ら れ た の であ る。
㎜重 さ な り 合 い、 時 には 相 つづく 一連 の呪 儀 の よう に 理解 さ れ た の であ
み
⋮文 を も つ屋 固 札 の存 在 は・ そ の 二者 の絡 み合 いを 示 す も の であ り 上 棟
⋮主 陰 陽 師 の名 も そ こ に 見 ら れ る の であ る ・ 棟 札 と 共 通 す る種 子 ・ 六 句
奈 }の 三句 を 書 く 。裏 而 も 同 文 であ り ・ 上 下 を 釘 う つも の であ る ・札 中 に
良 皆 肇
学 札
大⋮
駐
藤 勲 拶 麓 鋸効
醐
鍵聴
鱗 騰 隅鷲
棟
茜群 皆 廠徳
切a皆 善
鴨切 宿 皆 貫
群 皆 廠癒
爾 縣一翻
照鋼
舞 麟茜鳩
馨
洋
屋 固札
方違札
要
屋 固札
紀
新 生 活 に も 械 過 を 生 ず る こと と な る の であ る 。水 ・火 童 が まず 第 一に
動 き 移 る こ と は井 .竃 に 係 り 屋 敷 神 の移 捗 が 人 間 の移 徒 に先 立 つこと
諸仏皆威徳・羅漢皆 断漏・以此誠実言・願我常吉
錦檜 繰 畠 の類 は 堂 に 入 れ 、 釜 内 ・甑 内 の五 穀 飯 は 大 炊 に 入 れ 、黄 牛 は
神 の移 捗 と いえ る であ ろう 。 作 法 は つづ け て、 水 火 ・金 宝 器 ・馬 鞍 ・
々 の盛 物 .内 容 を 具 え て の移 徒 であ り、 ま さ に家 々 のそ れ ぞ れ に あ る
の列 であ り 、 そ の肇 げ 持 っ器 物 器 財 は新 宅 の核 と な る も の、 し か も 種
}鎮 宅鎮 方 二用 ・之 と し て鎮 土 法 ー 地 鎮 祭 法 を 記 し て いる が 、 そ の祭 文
⋮と し て ﹁五 帝 龍 王 は 犯 す る 者 あ れ ば 崇 り を 致 し 慎 し む 者 あ れ ば 賞 を 施
金剛
を 示 し 、 移 徒 の意 味 を よ く 物 語 って いる。 ま さ に こ の移 徒 の列 は 祭 式
、祭文を読み上げ 覆
・す ⋮予 が慧 む 所 は 迷 故 三 界城 悟 故十 方 空 の明 文 、 仰 ぐ 所 は 一切 日皆 善
τ 切宿皆賢 の誠説 なり -﹂ の言辞 が曼
一切宿皆肇
}合 掌 し ﹁迷 故 三界 城 、 悟 故 十 方 空 、 本 来 無 東 西 、 何 庭 有 南 北 、 一切 日
再 養
一祥 ﹂ と 唱 え 、 次 に天 地 八陽 経 文 に云 う と し て ﹁年 年 大 好 年 ・月 月 大好
札 、 屋 固札 、 火 伏札 、方 違 札 に 見 え る 呪 句 の全 てが こ の地 鎮 土 公 供 法
甑内 に盛 り た る 五穀 を も って 三 日間 杞 る 。移 徒 の後 三 日間 は殺 生 を せ
し 酒 酩 を飲 む 。 入宅 の明 朝 門 戸 、 井 、 竃 、 庭 、 厩 な ど の諸 神を 杞 り 、
庭 に繋 ぎ 飲 ま し む べし と 述 べ、 家 長 母 は 堂 内 に 南 面 し て 坐 し 五菓 を 食
- 鎮 土 法 の法 則中 に 見 え る の であ る 。 地 鎮 、 鎮 壇 か ら 上 棟 、 屋 固 に 至
ず 、 歌 わ ず 、 厨 へ上ら ず 、 悪 言 を は かず 、楽 を せず 、 刑 罰 せ ず 、 高 き
}月 、 日 日 大 好 日、 時 時 大 好 時 ﹂ の句 を 唱 え る と し て い る ので あ る 。棟
る呪 儀 が非 常 に複 雑 な 体 系 と整 正 な 体 系 を 具 え る と し ても 、 そ の基 盤
に登 ら ず 、 深 き に臨 ま ず 、 不 孝 な る 子を 見 ず 、 僧 尼 の入 る を 忌 む と い
った 作 法 が 記 し 留 め ら れ て い る 。新 宅 に移 る こと 、 ま さ に 深 甚 の注 意
が 機 罪 に向 け ら れ 、 諸 神 の奉 杞 に意 が 集中 し て いる のであ る 。 正 し い
と な る思 惟 は、 同 一の除 災 辟 邪 の 呪儀 を 繰 り 返 し 繰 り 返 し 実 修 す る こ
と に よ り 効 を 得 よ う と す るも の であ った こ と を 物 語 って いる 。
五、 新 宅 ・移 徒 呪 儀 の世 界
神 の移 徒 、 人 の移 徒 が あ って はじ め て新 し い家 宅 は 、生 を 得 る の であ
った 。家 宅 は 人 と共 に あ った 。 人 は神 と共 にあ った。 こう し た時 代 、
神 .人 .家 の新 しき 誕生 、新 し き 関 係 の息 ず き はじ め を 意 味 す る の で
家 宅 を 新 し く営 む こと は 、 単 に 家 作 だ け の こ と で はな く 、 神 の、 人 の
安 宅 の想 ひ に つ つま れ た中 で、 こ の新 し き 宅 への移 り が 計 画 さ れ る の
あ る 。 家 も 人 も 神 も と も に 甦え る 。 そう し た 想 ひ の中 に 家 作 が 位 蹟ず
け ら れ て い る の であ る。 本 稿 で は、 家 作 を 通 じ 、 屋 敷 作 り を 通 じ て の
い 、水 濁 る井 への想 い、 不 浄 に汚 れ た竃 への想 い、 こう し た想 い の高
ジ 、共 に 息ず いた 過 去 の想 い から す るな ら ば 、 古 び 行 く 家 の姿 への想
ま じな い に稿 を 終 始 す る こ と と な った。 神 ・人と 共 にあ る 家 のイ メー
レ箱 盛 二
檜錦採吊 ↓第 九 一人 持 レ甑之内五穀
[飯・ 第 十 家 母 帯
二鏡於 心前 ﹂ と家 移 り す る 順 次 が ま ず 掲 げ ら れ て い
界 が活 き る の であ る 。 ま じ な ひ 世 界 の中 に 人 々の、 神 々の、 家 々 の想
誤 ま り 、 持 物 な ど に 誤り があ る場 合 は 、新 宅 に 稼 れ を 生 じ 、 家 族 にも
ひ が、 心根 の揺 れ動 き が 秘 め ら れ て い る の であ る。
ぶ る中 で 常 に そ の鎮 静 、安 鎮 を 願 って精 緻 な体 系 を も ったま じな い世
一る。 単 に新 宅 が完 成 し た から 直 ち に好 き な よ う に移 る の で は な く 、
一定 のし き た り 、 作 法 に基 ず い て移 徒 し て いく の であ る 。 こ の序 列 を
﹁人 攣 レ案 上著 金 宝器 ↓第 四 二 人持 レ釜 内著 一
五穀 一第 五家 長 、第 六 一人 撃 二
{馬 鞍 ↓第 七 子孫 男 ・ 第 八 二人 持
﹁
∼であ る 。 こ の移 徒 は、 ま た重 要 な 呪儀 で あ った 。 た と え ば 移 徒 の作 法
と し ては ﹁第 一童 女 二 人 一人撃ジ水 一人撃ジ燭、 第 二 一人牽 二黄 牛 ↓
第 三二
種 々の 呪儀 に 包 ま れ て家 宅 は成 る 。 そ の完 成 は屋 固 ・火 伏 ・方 違 の
.呪 儀 の実 修 でも って 証 さ れ る ので あ る 。 全 て の備 い、 装 い整 い完 壁 な
水 野:屋 敷 と家 屋 の安 寧 に一 そ の ま じな ひ世 界
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奈
良 大
学
紀 要
第12号
MagicalRitesofGroundBreakingCeremony
MasayoshiMizuno
Summary
Thispapertrystoreconstructanarchaeolgicalsite,excavatedatKoyasanKongobujiTemple,ofgroundbreakingceremony.Thenthecharacterand
genealogyofsomesitesastocastle,shrine,temple,andprivatehouseconstructionaretobeexamined,observingtheiractualfeatures.Theauthoralso
reconstructssomeceremonialsitesoflayingfoundationstones,erectingpillars,
orraisingframeworkinaprocessoftheconstruction,torecognizehowthey
madethosebuildingsstable,perpetualandpeacefulaccordingtothemagical
ritesmentionedabove.BytheseworksIwillgrasptherelationshipbetween
peoplesandthemagicritesfortheconstructionsintheMiddleandModern
AgesinJapan.
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