M NEXT 戦略思考を鍛える 「戦略思考を鍛える」シリーズの情報広告です。最近、あちらこちらで戦略の欠如が指 摘されています。個人や企業だけでなく、地方自治体や政府政策、そして外交政策に至る まで戦略がない、と言われています。「よくもまあ、愚かな事を」と組織問題をとり上げ、 戦略の不在に問題を特定し、戦略を持つべき当事者の愚かさを指摘するものです。しかし、 そういう論者に限って、戦略も明確に定義せず代替案も提示しないことが多いようです。 こういう論法が多い事に辟易します。また、こうした「戦略不在病」の日本でやたら「戦 略」という言葉が氾濫し、病克服のためにアメリカ流のMBA教育を手本に職業大学院構 想等も次々と持ち上がっています。 MBA神話 戦後、日本で「経営戦略」の概念を提案し普及させてきたのは大前研一氏です。この功 績は認めざるを得ないものです。1970 年代に出版された「企業参謀」は現在でも読まれる べきテキストのひとつです。しかし、少し工学的な分析手法と戦略の計画的側面を強調し すぎた傾向があります。同じ欠陥は、1980 年代のM.E.ポーターの「競争戦略」にもう かがえます。戦略を分析手法よりに誤解することが、MBAを取得すれば戦略思考が養え るというMBA神話を形成したのかもしれません。 戦略には、組織的に可能な科学的な分析手法の側面と個人の創造力に依存した両面があ ります。前者は教育で学ぶことができるものです。しかし、実感として後者は教育で学ぶ ことはほとんど不可能でしょう。個人の創造力は、歴史と伝統によって培われた社会関係 である組織体験と幅広い知識によって生まれてきます。従って、学者の戦略論は「学者業 界」での組織体験と当該専門領域の知識を色濃く反映しているのです。これをテキストや カリキュラムにすることは不可能です。 大前氏も近年では個人の問題解決のための戦略思考の創造的側面をより強調するように なりました。しかし、個人がどのように戦略思考を鍛えればよいのかの処方箋はありませ ん。尊敬すべき先駆者もよくよく考えてみれば、大前氏は自力で戦略思考を鍛えたと言い、 ポーターに至っては経済学の産業組織論の出身です。彼ら自身も自前で思考を鍛えたので す。実は、戦略思考を鍛える処方箋など世界中のどこにもないのです。アメリカのMBA 教育も、分析手法の教育と思考鍛錬としてのケースメソッドと議論の場が提供されている copyright (C)2002 Hisakazu Matsuda. all rights reserved. 1 M NEXT だけです。しかし、そのケースもすぐ古くなってとても現代企業の戦略を考える教材とは なりえなくなっています。 競争戦略の事例としてとりあげられるソフトドリンク業界やチェーンソー業界も現在の 市場とは無関係と言っていいほど古臭いものです。実は、事例研究の狙いからみれば、時 代遅れの事例でもいいのですが、ブロードバンド時代の学生が興味を持てず、戦略の当事 者である経営者意識を持てないのです。ソフトドリンクなどはまだしもチェーンソーとな ると自然の森に入ったこともなければましてや木を切る体験もした事がない人間が想像力 を働かせて事例を読むことは不可能です。読めるということと当事者意識を持って考える という事とは無関係です。 また、ブロードバンド等の現実的な問題を考える段になると、半導体や通信インフラ業 界の事例を検討する必要があります。しかし、ケースライターが書いた事例になるとすぐ 古くなってしまいます。半導体は、18 ヶ月で2倍のスピードで、通信業界は、さらにその 4倍のスピードで、集積度が高まり、広帯域化が進んでいるからです。戦略思考なき技術 予測がまかり通り、技術予測なき戦略が跋扈しています。 戦略思考を鍛えるには 戦略思考を鍛える事など他律型の教育では無理なのです。戦略を組織目的達成のための 手段の明確化とロードマップと考えると、経営だけでなく、政治の延長としての戦争等の 歴史を題材にした幅広い自立的学習こそが戦略思考を鍛え、独自の見方を養う決め手の方 法だと思います。司馬遼太郎や塩野七生の小説が経営者に人気があるのは、歴史を題材に したケースメソッドだからです。孫子の兵法が未だに魅力あるテキストとして輝いている のも普遍的な人間の精神への洞察力があるからです。 そもそも戦略論は、戦争から生まれた知恵です。共に戦う同僚を組織が勝つために「損 耗率」として計算しなければならないというギリギリのところで生まれてきたものです。 この戦争運用の術から戦略思考が生まれ、経営や政治へと波及して行ったのです。サッカ ー等の組織スポーツの起源は人間の持つ闘争心をルール化して社会に害にならないものと して発露させようというところから生まれています。従って、スポーツでも戦略という知 恵によって勝つということが重要となります。組織が他の組織と争って目的を達成しよう とする時そこに必要となってくるのが戦略です。そして、その戦いの歴史から学んで、自 らの戦いに生かそうとする営為が戦略思考を鍛える、ということです。19 世紀のヨーロッ パ史も格好の材料を提供してくれます。特に、現代の戦略論の祖とも言えるナポレオンの 戦い方には美しさを感じます。さらに、そのナポレオンに負け続けたプロシアが生んだの が「戦争論」のクラウゼヴィッツです。19 世紀、戦略の知恵が十分に発揮されて、プロシ アは、ドイツ参謀本部という組織機構と当時の最先端技術である鉄道を利用した機動によ copyright (C)2002 Hisakazu Matsuda. all rights reserved. 2 M NEXT って、政治家ビスマルクと参謀モルトケの下でドイツ統一を成し遂げました。ナポレオン の伝統を受け継ぐフランス陸軍が敗れた事は一大事件でした。W杯で日本がブラジルを破 った程の驚きがあったのです。もっとも驚いたのが、イギリスとフランスを手本に近代化 を進めていた日本と中世ヨーロッパを脅かしたトルコでした。山県有朋は、モルトケに懇 願し、モルトケの優秀な二人の部下の一人であるメッケルを参謀教育の指導のために送り 込んでもらいます。同時に、モルトケはもうひとりの弟子をトルコに派遣しました。その 影響を受けたのが日露戦争を辛勝に導いた児玉源太郎です。そして、その勝利をもっとも 喜んだ国のひとつがトルコでした。W杯での日本−トルコ戦はこうした歴史的因縁があっ たのです。監督の戦略文化から見れば、フランス対ドイツの戦いだったのです。 攻撃の突破口を持たない日本はトルコの徹底した防衛戦略に敗れました。それはまるで イギリスのウェリントン将軍の戦略に敗れ、ロシアの冬将軍の「地の利」に敗れたナポレ オンを連想させました。トルコが如何に戦略的な戦い方をするかはトルコ−韓国戦でも発 揮されました。12 人目のサポーターを打ち破ったトルコは凄いと言わざるを得ません。 幅広い自己学習の場、歴史的資料と現代的な材料を提供しようとするのがこのコーナー のコンテンツです。優れた戦略思考が計画やプレゼンテーションとして展開された表現形 になると、「なるほどなあ」という驚きと感動を与えます。ものの見方や発想が違うという 印象です。そういう戦略思考ができるようになるにはどうすればいいのでしょうか?どう すれば戦略思考が鍛えられるのでしょうか。それがこのコンテンツで展開する内容です。 私どものコンテンツに「面白い見方だなあ」という印象をもたれたら、その秘密は私ど もの思考方法にあります。「戦略一筋約 45 年」と威を張るつもりはありませんが、マーケ ティングと戦略思考を融合させる努力をし続けてきました。顧客志向の戦略立案には「一 日の長」があるものと自負しています。その自負の実体は、戦略を創造するための幾つか の原則とその原則を裏付ける事例です。使いこなせる人材の存在です。 まずは、戦略思考を鍛えるために、どんな原則、分析手法や事例があるかを紹介してい きたいと思います。自分の大脳を通過し、腑に落ちたものこそが戦略です。 戦略思考には原則が必要です。原則とは例外のある規則性です。自然現象には法則があ ります。社会現象には法則はありませんが、例外を含む原則があります。私どもが拘って 提供したいのは、戦略思考の「奥義」とも言える原則です。戦略主体の環境は常に変化し ています。主体である組織もその心理も多様です。環境変数が高速変化し、内部組織変数 が多様で、且つ、組織目的自体も曖昧な爆発的に多様な状況を個人の頭脳が反映したらど うなるでしょう。収拾できなくなるか、固定観念に陥るかのどちらかでしかありません。 戦略という言葉が表記され、戦略思考とは無縁のような項目羅列の政策が生まれるのはこ うした事情があります。これでは中味のない商品を仰々しい言葉で飾っている三流商品と 同じです。戦略思考を自由自在に使いこなすには、この原則と幅広い題材の事例が不可欠 なのです。この原則の応用と適応が自分の頭脳を通過した思考というものです。日本人は、 体で感じ腑に落ちた戦略が得意です。アメリカ人は、目でみて大脳を通過した戦略が得意 copyright (C)2002 Hisakazu Matsuda. all rights reserved. 3 M NEXT です。こんな無駄話も盛り込みながら、戦略の原則を知り、事例で納得し、ツールを活用 できるように、戦略思考を鍛えるコンテンツを展開していきたいと思います。どうかご期 待下さい。 copyright (C)2002 Hisakazu Matsuda. all rights reserved. 4
© Copyright 2024 Paperzz