第九回フランス日本語教育シンポジウム 2007 年フランス・グルノーブル 9ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 2007 パリ第 7 大学 継続的活動報告 -人的リソースを活用した取り組みから展望へのプロセス- 田中 綾乃(TANAKA Ayano) 小曽戸 祥(OSODO Sachi) ホロー・熊谷 直子 (RAULO-KUMAGAI Naoko) パリ第七大学 1. はじめに 日本語学習者が自然な日本語を習得するには、生の日本語に接する機会をできるだけ増 やすことが必要だと考えられる。フランスの首都であるパリには在留日本人が 12,720 人 (外務省領事局政策課,2006)おり、教室外で日本語に触れる機会には恵まれていると予 想できる。しかし、筆者らの勤務先であるパリ第 7 大学(以下、パリ 7)では、パリ在留 日本人と学生との交流は少ないという学生の声を耳にすることが多い。そこから、学生は 生の日本語に触れる機会が限られているということが窺える。そこで、筆者らは学生が日 本語を実際に話す機会を増やすことをねらいとし、日本語母語話者を人的リソースとした 次のような活動を実施している。1 つ目は、パリ在留の日本人を教室に招き、授業に参加 してもらうビジターセッション、2 つ目は、日本在住の大学生とのインターネットを利用 したテレビ会議、そして 3 つ目は、同大学生とのインターネット掲示板での交流である。 本報告書では、この 3 つの活動に対するパリ 7 の学生からの評価、さらに 3 つの活動 を継続的に実施したことにより見えてきた参加者の変化や諸問題を教師の視点から報告し、 最後に今後の展望について述べる。 2. 3 つの活動の概要 1-1. 3 つの活動の特徴 まず、3 つの活動の特徴について述べる。 ビジターセッションは、パリ近郊に住む日本人が大学の日本語の授業に参加するとい う活動であり、2005 年度から実施している。一方、テレビ会議、インターネット掲示板 (以下、掲示板)は、2006 年度から慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス総合政策学部(以 下、慶應)との連携により実現した活動である。それぞれインターネットを利用し、日本 の大学生とテレビを通した会話、掲示板を使用した交流活動である。 以下の表1に、3 つの活動の特徴をまとめたものを示す。 56 第九回フランス日本語教育シンポジウム 2007 年フランス・グルノーブル 9ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 2007 表 1 3 つの活動の特徴 ビジターセッション テレビ会議 掲示板 交流形態 直接交流:対面会話 遠隔交流:対面会話 遠隔交流:非対面 文字 学生 パリ 7 3 年生(中級) 左に同じ 左に同じ 日本人 パリ在留ボランティア 参加者 年齢や職業は多様 設定 授業のメインとして活 動 実施時期 2005 年 9 月~3 月 使用言語 日本語 慶應の学生 フランス語学習者 左に同じ (初級) パリ 7:会話のウォー ミングアップ 両校:課外活動 慶應:課外活動 2006 年 11 月~12 月末 週 1 回、全 5 回 日本語/フランス語 2006 年 11 月開設 日本語/フランス語 以下、ビジターセッションとテレビ会議、掲示板の相違点である、交流形態、参加者そ して使用言語について述べていきたい。 まず、ビジターセッションの交流形態は、実際に目の前にいる日本人との直接交流で ある。一方、テレビ会議、掲示板は日本とフランスという遠隔地での交流である。また、 テレビ会議はテレビを通して交流相手を見ることができるが、掲示板は相手の顔が見えな い文字のみを利用した交流である。 次に、ビジターセッションの参加者は、年齢や職業も異なるパリ在留日本人である。 一方、テレビ会議、掲示板の参加者は日本でフランス語を勉強している大学生であり、母 国でお互いの母語を学ぶ学生同士の交流である。 最後に、ビジターセッションでの使用言語は日本語のみである。一方、テレビ会議、 掲示板では双方の学習言語を使用するという形式で活動を実施した。 1-2. 活動実施までの過程 次に、3 つの活動を実施するまでの準備や過程について述べる。 1. ビジターセッション ビジターセッションでは、参加してくれる日本人を「ボランティア」と呼び、参加者 を募集している。毎年パリ市内の日本関係施設に広告を出し、現在は登録者が 125 人を 越えるほどになった。参加案内から実施後のお礼など、登録者とのすべての連絡を E メ ールを利用して行っている。 2. テレビ会議、掲示板 テレビ会議に関しては、まず、両校でテレビ会議が実施できる環境を準備することか ら始めた。パリ 7 側は、大学内のテレビ会議専用の教室を利用し、慶應側は、教員室で 57 第九回フランス日本語教育シンポジウム 2007 年フランス・グルノーブル 9ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 2007 ポリコムというテレビ会議専用の機材を使用していた。また、8 時間という時差を埋める ために実施時間を調整し、双方の設備確認のための試験も実施した。 しかし、参加者の人数差の問題も不安要因として浮上した。パリ 7 側は、授業内に実 施するため、常に約 20 人の学生が参加するのに対し、慶應側は毎回参加する学生数は 5 人程度だった。これらの問題を考慮した活動内容については 3-1.で述べる。 掲示板は、教師側がフォームを作成し使用方法を両校の学生に提示した。しかし、掲 示板には日本語版とフランス語版という 2 種類の掲示板があり、その使用方法が複雑で あり、不安の残る様子だった。 この 2 つの活動については、教員間の連絡も E メールを利用した遠隔でのやりとりで あった。そのため、両校で活動に対する認識のズレや相互理解までの時間差など、不安を 抱えた状況での活動開始となった。 2. ビジターセッション パリ在留の日本人(以下、ボランティア)が授業に参加するビジターセッションについ て報告する。 2-1. ビジターセッションの実施内容 ビジターセッションは 3 年生の会話の授業と 3 年生の作文の授業で行った。以下、概 要を示す。 表 2 ビジターセッションの概要 学生の 人数 ボランティア の人数 学生とボランティア の割合 主な内容 会話 15~20 人 10 人~15 人 1 対 1 または 2 対 1 教 師 が 与 え た 課 題 を ボランティアと学生が行う 作文 約 25 人 約 7,8 人 3,4 対 1 作 文 を 書 く 前 の ブレーンストーミングとして ディスカッションする 会話の授業では、学生の人数が 15 人から 20 人に対して、ボランティアの人数は 10 人 から 15 人ほどだった。主に学生とボランティアが 1 対 1、または 2 対 1 になり、教師が 与えた課題を行っていた。既習項目の実践だけでなく、当日の生のやりとりから学ぶこと がねらいで、学生とボランティアによる 1 対 1 の会話やグループディスカッション、そ れぞれによるロールプレイなど多岐に亙った。 作文の授業では、学生の人数が約 25 人に対して、ボランティアの人数は 7,8 人前後だ った。学生が 3,4 人のグループを作り、その中にボランティアが 1 人入るという形をとっ た。学生は作文を書く前に、その課題についてボランティアとディスカッションを行った。 そして、その後学生は作文を書くために、自分の意見を箇条書きにするという作業を行っ 58 第九回フランス日本語教育シンポジウム 2007 年フランス・グルノーブル 9ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 2007 た。書き方が分からない、正しい文法が分からないようなときはボランティアに手伝って もらうようにしていた。 2-2. アンケート結果 ビジターセッションについて学生に記述形式でのアンケートを 2 度行った。ビジター セッションを実施していくうちに、学生、ボランティア、教師がどのようにビジターセッ ションを捉えているのか、また、何か変化があったのかを知りたいと思ったためである。 1 回目のアンケートはビジターセッション開始当初の 2006 年 11 月初めに行い、2 回目は 2006 年 12 月末に行っている。アンケート結果を以下表 3 に示す。 表 3 アンケート結果:ビジターセッション 1 回目アンケート 2 回目アンケート したい/ 続けたい 20 人中 17 人 主な理由 ・楽しかった ・新しい言葉を使う能力がついた ・おもしろい ・速く話す能力がついた ・パリに住んでいる日本人の ・丁寧な日本語能力がついた 生活に興味がある ・自由に話す能力がついた ・日本人と友達になれる ・知らない人と話す能力がついた ・人見知りにならなくなった 16 人中 16 人 したくない /続けたく 20 人中 3 人 ない 主な理由 16 人中 0 人 ・年齢差によって 盛り上がり方が違う ・自分の知り合いが 既にいるため不必要 なし 1 回目のアンケートでは「ビジターセッションをしたい」と答えた学生は 20 人中 17 人 いた。その理由としては、 「おもしろい」 、 「パリに住んでいる日本人の生活に興味がある」 、 「日本人と友達になれる」などの記述が見られた。一方、 「ビジターセッションをしたく ない」と答えた学生も 3 人いた。理由としては、 「年齢差によって盛り上がり方が違う」 や「自分の知り合いがすでにいるから必要ない」などであった。1 回目のアンケートから は、学生はビジターセッションを「日本人と会う機会、日本人と話す機会」だという捉え 方をしているのが窺える。 2 回目のアンケートでは、16 人中 16 人が「ビジターセッションを続けたい」と答えて いる。その理由も肯定的なもので、 「楽しかった」という感想や、 「新しい言葉を使うこと ができた」 、 「日本語を速く話す能力がついた」 、 「丁寧な日本語を学ぶことができた」 、 「自 59 第九回フランス日本語教育シンポジウム 2007 年フランス・グルノーブル 9ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 2007 由に話す能力がついた」というスキルが身に付いたことを自覚するものが見られた。また、 「知らない人と話す能力がついた」や「人見知りにならなくなった」という社会的なスキ ルを学べたことを報告する例が見られた。つまり、2 回目のアンケート結果からは、学生 はビジターセッションを何かを学ぶ場として捉えていたことがわかる。 2-3. ビジターセッション継続の結果 ここからはビジターセッションを継続的に行ってきたことによって、学生、ボランティ ア、教師の 3 者がどのように変化していったかを述べたい。 毎回ビジターセッションに参加してくれるボランティアは 7~10 人で、現在、その中 のほとんどがリピーターである。2006 年 11 月に、ボランティアと座談会を開き、ビジタ ーセッションについて話す機会を設けた。ボランティアから素直な感想、ビジターセッシ ョンに対する提案、始めたころと現在の認識の違いなど、様々な意見を聞くことができた。 この座談会からのボランティアの声と 2-2.で述べた学生へのアンケート結果から、参加 者の変化について見ていく。 学生は 1 回目のアンケート結果から、始めのころはビジターセッションを「日本人と 会う機会、話す機会」という交流の場として捉えていたことがわかる。ボランティアの方 でも、 「日本語、日本の文化を教えたい」 、 「日本語学習者と交流がしたい」というように、 やはりビジターセッションを交流の場と捉えていたことが窺える。実際のビジターセッシ ョンの際は、まず教師がボランティアに指示をし、それから、ボランティアと学生が活動 を行うという形を取っていた。教師はボランティアと学生の 2 者をサポートする役割を 果たしていたということができるだろう。 ビジターセッションを継続していくにつれ、3 者の関係も変化していった。2 回目のア ンケートから、学生のビジターセッションの捉え方が「交流の場」から、 「コミュニケー ション能力や社会的なスキルを学ぶ場」に変わったことがわかる。同様にボランティアか らも、続けていくうちに「改めて日本語、日本文化を振り返る機会となった」 、 「言葉だけ に留まらず、学生の人間としての成長を見守るようになった」などという意見を聞くこと ができた。そこから、ボランティアが自分自身も何か得るものがあるということに気づい たこと、またボランティアと学生との絆が強まっていることが窺える。これに伴い、ボラ ンティアはビジターセッションに対しての指摘や提案などをするようになった。また、特 にビジターセッションを募集していないときも積極的に授業参加を申し出てくれるまでに なった。ボランティアは以前のように教師の指示を受けるという存在ではなく、教師と共 にビジターセッションを考えるメンバーの一員としての意識が出てきたと言えるのではな いだろうか。それは、継続からなる学生とボランティアと教師の信頼関係から起こってき た変化であると言える。 3. テレビ会議、掲示板 60 第九回フランス日本語教育シンポジウム 2007 年フランス・グルノーブル 9ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 2007 遠隔交流としてパリ 7 と慶應の 2 校間で 2006 年に行った 2 つの活動、テレビ会議と掲 示板について報告する。 3-1. テレビ会議及び掲示板の実施内容 最初に、テレビ会議と掲示板の実施の流れにアンケート実施日を加えたものを表 4 に 示す。 表 4 テレビ会議、掲示板実施の流れ 11 月上旬 11/10 掲示板でのプレ自己紹介 第 1 回テレビ会議:自己紹介 《1 回目のアンケート実施》 12/1 第 2 回テレビ会議: 「私のおすすめ」 12/8 第 3 回テレビ会議: 「私のおすすめ」 掲示板でのテレビ会議発表原稿添削開始 12/15 12/22 第 4 回テレビ会議:慶應「クリスマスの過ごし方」 パリ 7「若者ファッション」 第 5 回テレビ会議:慶應「若者ファッション」 「日本の若者向け小説」 パリ 7「年末年始の過ごし方」 「フランスの若者向け小説」 《2 回目のアンケート実施》 テレビ会議は、3 年生の会話の授業で、2006 年の年末に 5 回に亙ってウォーミングア ップとして行った。 パリ 7 は会話の授業として既にグループが 2 つあったため二部制として慶應の学生を 募った。学生数は、平均すると、第一部はパリ 7 が 10 名、慶應が 3 名、第二部はパリ 7 が 15 名、慶應が 3 名であった。尚、パリ 7 の参加者は固定的であったが、慶應は課外活 動の希望者から成っていたため、学生は変化した。パリ 7 は学生数が相対的に多くなる ことがわかっていたため、発表に関しては各回両校から 3 つまでとし、発表に当たって いない学生は質疑応答に活発に参加するという合意ののちに開始した。発表の手順として は、個人またはペアで、学習言語を用いて最大 5 分程度で行うこととし、各発表の後に 母語と学習言語での質疑応答の時間をとった。慶應からは円滑な交流と学習者による運営 を目的に、司会者として学生 1 名が立てられた。尚、各回最後に次の発表のテーマを学 生たちが選ぶこととした。 一方の掲示板は、その開設に際し、ハード面の準備はすべて慶應が整えてくれていた。 掲示板はまず 2 つ用意され、それぞれ日本語とフランス語に分けるというものであった。 1 回目のテレビ会議の円滑な進行を狙いとし、テレビ会議に先立っての自己紹介を行い、 導入とした。この時点では、パリ 7 のほうでは 3 年生の会話クラスではなく、作文クラ 61 第九回フランス日本語教育シンポジウム 2007 年フランス・グルノーブル 9ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 2007 スのほうで今後活用していくことを期待していた。しかし、第 3 回テレビ会議の後に、 慶應側からテレビ会議の後に学生が用意した発表原稿を添削し合うのはどうかという提案 がなされ、それにパリ 7 側も応じることにした。パリ 7 の学生は日本語で書いたものを 慶應の学生に添削してもらい、慶應の学生はフランス語で書いたものをパリ 7 の学生に 添削してもらうという形式である。元の 2 つの掲示板は交流用とし、さらに添削用に掲 示板を 1 つ新規に開設することとなった。 3-2. テレビ会議及び掲示板のアンケート結果 ビジターセッション同様、テレビ会議と掲示板に関しても、パリ 7 の学生に対し、そ れぞれ 2 回に亙り記述形式のアンケートを実施した。 まず、テレビ会議のほうでは、以下のような結果となった。 表 5 アンケート結果:テレビ会議 1 回目アンケート したい/ 続けたい 主な理由 2 回目アンケート 20 人中 12 人 16 人中 15 人 ・日本にいる人と話すのは 楽しい ・日本にいる人と話すのは 楽しかった ・人見知りにならなくなった ・直接会うわけではないから ミスは当然 ・お互いの国に関することが 楽しく話せた したくない /続けたく 20 人中 6 人 ない 主な理由 無回答 16 人中 1 人 ・テレビの前で話すのは 恥ずかしい ・不自然 ・聞き取りがさらに難しく 感じられる ・学生数が多い 20 人中 2 人 両校の学生は、第 1 回テレビ会議に先立ち、掲示板のほうで予め互いに自己紹介をし た。第 1 回テレビ会議は、テレビ会議専用の部屋で、スクリーンとカメラを前に、マイ クを意識しながら話すという普段の教室活動とは非常に異なる状態での初めてのやりとり であった。その初回を終えた直後に行った 1 回目のアンケートでは、回答者の 3 分の 1 が、今後も続けたいかとの問いに「いいえ」と答えるという結果であった。しかしながら、 そののち 4 回のテレビ会議を経て行った 2 回目のアンケートでは、結果は好転した。 62 第九回フランス日本語教育シンポジウム 2007 年フランス・グルノーブル 9ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 2007 アンケートの記述回答は、以下の通りであった。1 回目のアンケートでは、 「日本にい る人と話すのは楽しい」というような肯定的な内容があった一方で、 「テレビの前で話す のは恥ずかしい」 、 「不自然だ」 、 「普通の状況でもネイティブの日本人と話すのは難しいの に、遠隔だとさらに聞き取りが難しく感じられる」といった否定的な内容も多く見られた。 その後、2 回目のアンケートでは一転し、1 回目のアンケート時「テレビの前で話すのは 恥ずかしい」と言っていたのが「人見知りにならなくなった」となり、また、 「不自然だ」 として拒否反応を示していたのが「直接対面するわけではないから、ミスは当然だ」とな るなど、当初否定的に捉えていたテレビ会議ならではの側面を肯定的に捉える内容の記述 が多く確認された。 アンケート結果から確認されたこの活動を通しての学生の変化としては、聞き取りの力 が上がったことを学生自身が認識したことがさらに挙げられる。加えて、 「今後も続けて 行きたいが、そのためには実際にどのようなことが問題となるのか」というコメントも確 認された。これは、学生の中には企画する側の目が芽生えた者も出てきたことを示してい ると言えよう。 次に掲示板の結果について以下に示す。 表 6 アンケート結果:掲示板 1 回目アンケート 2 回目アンケート したい/ 続けたい 20 人中 14 人 16 人中 3 人 主な理由 ・書く能力が向上する なし したくない /続けたく 20 人中 4 人 ない 主な理由 無回答 16 人中 9 人 ・インターネットがない ・使いにくい ・自分の知り合いが 既にいるため不必要 ・パソコンでは、漢字や文法は 上達しない ・インターネットがない ・使いにくい ・自分の知り合いが 既にいるため、 知らない人に書く時間はない 20 人中 2 人 16 人中 4 人 1 回目のアンケートの記述回答では、 「書く能力が向上するだろう」というような期待 を表す学生もいた一方で、「インターネットがない」 、 「使いにくい」 、 「日本人の知り合い が既にいるので、必要ない」といった否定的な意見も既に出ていた。その後の 2 回目の アンケートでは、このような否定的な意見はさらに強調されていた。これは、上で述べた 63 第九回フランス日本語教育シンポジウム 2007 年フランス・グルノーブル 9ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 2007 テレビ会議とは対照的である。 不評だった原因は、主に 2 つ考えられる。1-2.で述べたとおり、開始当初から危惧して いた掲示板が複数あることによる使いにくさに加え、パリ 7 と慶應の担当教師間の遠隔 交流に起因するとも言える認識差である。 開始当初は作文クラスでの活用を念頭に置いていたパリ 7 側も、会話クラスでのテレ ビ会議原稿の添削依頼をすることで、掲示板を活用するように学生に促すことにした。し かし、教師側も掲示板の扱いが作文クラスなのか会話クラスなのか明確にならないまま進 めて行ってしまっていた点は否めない。その結果、パリ 7 からは添削を依頼する者もな く、慶應の添削依頼に応じるのも 2、3 名の学生のみという非常に消極的な参加状況であ ったといえる。このように教師間のやりとりも日本とフランスでの遠隔で、円滑であった とは言えなかった。 さらに、教師が予想していた以上に、実は学生のインターネット環境があまり整って いなかったという状況、また、日本語のフォントが使えない学生もいたことなども、掲示 板が不評だった原因として挙げられる。 しかしながら、この活動を通しての変化として、書く能力が伸びたとする学生もいた。 また、パソコンで日本語の読み書きをする必要性を指摘する者もいた。 4. 展望 以上、3 つの活動を続けて来て、また今後の継続も見据える上で、展望も見えてきた。 ビジターセッションでは、ボランティアと教師に芽生えてきた信頼関係、そして、ボ ランティアの存在意義が確認された。そのような中、学生がさまざまなスキルを獲得して いくプロセスや変化を、学生自身が意識的に認識していくように教師がどう促していくか、 また、ビジターセッションという場・機会を参加者の学びの場としてどう生かしていくか、 教室の枠を超えた交流がどうすれば起こり、またそれらが続いていくか、ということなど が近い将来の課題として挙げられる。 そして、慶應大学とのプロジェクトとして行った遠隔交流に関しては、活動の扱いに ついての認識をまずは担当教師らが一致させること、設備や時差、学期や長期休暇の違い などの物理的問題を解決すること、以上 2 つの課題について確認された。以上を解決す ることは、今後もこの 2 校間で続けて交流していくことにつながり、また、新しい交流 の開拓につながるのではないかと考える。 外務省領事局政策課(2006)海外在留邦人数調査統計 平成 16 年速報版 http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin/07/pdfs/1.pdf パリ第 7 大学日本人会話ボランティア募集メールアドレス [email protected] 64 第九回フランス日本語教育シンポジウム 2007 年フランス・グルノーブル 9ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 2007 Compte rendu de 3 types d'activités pédagogiques suivies faites en cours de japonais a l'Université Paris7 Ayano TANAKA, Sachi OSODO, Naoko RAULO-KUMAGAI Université Paris 7 Trois types d'activités ont été utilisés pour que les étudiants de l'Université Paris7 aient une occasion d'être confrontés directement à la langue japonaise: cours incluant des visiteurs japonais vivant à Paris (session-visiteur), visio-conférences et forums sur Internet avec des étudiants japonais apprenant le français à l'Université de Keiô au Japon. Une relation de confiance a pu s'établir entre les enseignants et les visiteurs grâce à une continuité dans le temps des session-visiteurs. Ceux-ci ont pu trouver leur place dans les enseignements, par exemple en apportant de nouvelles idées. Dans le cas des étudiants, ils ont pu prendre conscience, en temps réel, des compétences en communication qu'ils apprennent pendant les session-visiteurs. Concernant les échanges avec l'Université de Keiô, cette première année expérimentale a connu différentes difficultés. Un certain nombre de problèmes techniques ont rendu les activités plus compliquées que prévu: décalage horaire, clavier français sans caractère japonais, utilisation différente des activités par les enseignants de Paris7 et Keiô,... Néanmoins, ces activités restent prometteuses car elles permettent un dialogue entre les étudiants de même âge et ayant l'intérêt commun d'apprendre une langue étrangère. Nous discuterons en détail de ces activités, de leurs avantages/inconvénients et de leurs apports et incorporations dans l'enseignement du Japonais. 130
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