【研究者プロフィール №145】 ―世界各地の多様な歴史や文化を学ぶことで,視野の広い人になってほしい。― 大分工業高等専門学校 一般科文系 准教授 田中 美穂(タナカ ミホ) 専門キーワード:中世アイルランド史 (ヨーロッパ史・ブリテン諸島史) 1.私はこのような学生でした。 小学生の頃からヨーロッパの歴史や文化が大好きで,高校では世界史が一番好きな教科でした。 中学生の頃からとくにブリテンに興味をもつようになりました。 大学では西洋史を専攻しましたが, 「中世イギリス文学」や「英文学概説」など文学関係の授業も 受講しました。大学 2 年になる前の春休みに初めてブリテンを旅行しました。ロンドンに 2 週間滞 在後,残り 2 週間でブリテン島を北から南まで回りました。大学 3 年の夏休みには,ブリテン島だ けではなく,アイルランドとフランスにも行きました。 卒論から博士論文まで,7 世紀末頃にアイオナ修道院長のアダムナーンが執筆した『聖コルンバ 伝』を主要史料として用いました。最古の写本を見るためにスイスのシャフハウゼンの図書館を訪 問したこともあります。アイオナ島にはこれまで 2 回行きました。 2.このような研究をしています。 大学から大学院を通じて,おもに聖人伝を史料に用いて,アイオナ修道院とブリテン諸島各地の 世俗権力との関係を研究してきました。史料が少ない中世初期のブリテン諸島において, 『聖コルン バ伝』 は, 当時のアイルランドとブリテン北部の状況を伝えてくれる貴重で内容豊富な文献でした。 現在は,12 世紀後半以降,アイルランドにイングランド人が侵入した後の歴史をおもに研究して います。現地のアイルランド人の王たち,イングランド人侵入者たち,イングランド王権と,三者 三様が三つ巴状態になるアイルランドの政治状況をさらに明らかにしていきたいと考えています。 3.このような授業をしています。 高専の 1 年生には日本史,2 年生には世界史を教えています。ある地域やある時代に偏ることが ないようにしています。近現代史を重視して,ごく最近の,将来歴史の教科書に載るような出来事 も最後の授業ではあつかうようにしています。 一番自分の専門に近いのは歴史学概説という 5 年生を対象とした授業です。ブリテン諸島史を中 心に教えています。歴史だけではなく,音楽・映画・文学・美術など,ブリテン諸島の文化も取り 上げています。 専攻科 1 年生を対象とした歴史学特論Ⅰでは中世ヨーロッパ史を中心に,歴史学特論Ⅱでは第一 次世界大戦後のヨーロッパ中心の現代史を教えています。 基本的に歴史そのものが大好きなので,自分自身も専門外の地域や時代の歴史を勉強しながら,さ まざまな授業の準備を進めています。 -地域連携研究コンソーシアム大分 2012- 4.学生に学んでほしいこと。 日本だけではなく,海外にも目を向け,ヨーロッパでもアジアでもアフリカでもアメリカでもど こでもよいので,外国の歴史や文化に興味をもってもらいたいです。授業だけではなく,読書をし たり,旅行をしたり,映画や教養番組を鑑賞したりすることで,自ら興味をもった外国について知 識を広げてほしいです。学生は基本的にエンジニアとして社会に出ていくわけですが,専門的な知 識だけではなく,広い教養が備わっているかどうか,そういうところで人としての器量がはかられ ることもあるのではないでしょうか。 社会に出てから,仕事や友人や家族や趣味など,何かをきっかけに,改めて外国の歴史や文化を 勉強したいと思うことがきっとあることでしょう。そのときのために,世界史の教科書は大事にと っておきましょう。 -地域連携研究コンソーシアム大分 2012-
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