地誌Ⅱ Topography II AIZAWA Yoshio 相澤 善雄 ■授業の目的 地誌は、地域を自然・人文の両面から多角的にその地域性を探究していく地理学の一分野である。その地域性の探究では 人文の方法を重視し、静態的方法よりは動態的方法の地誌で理解していくことを目指す。 ■授業の到達目標 地誌は、現代世界や日本の地域性の形成とその変容を考察することが基本である。複雑な世界の地域研究を重視し、その中 に日本を位置づけ、かつその国土の基本的で構造的な地域理解ができることをめざす。Ⅱでは日本を扱う。 ■授業計画 1 日本をとらえる 日本の学習計画を説明する。日本という地域を構造的に探るための方法を検討する。伝統的な七地方区分と比較し、 新しい地域区分を考えたい。 2 首都圏 東京は日本の管理中枢の核であり、それは首都圏を形成している。その背景や地域的影響力を分析する。また世界都 市としての位置を考えたい。 3 中京圏 名古屋は中京圏の核であり、三大都市圏の一つを形成している。現在は自動車産業を核に成長が著しい。その背景と 地域的動向を考察する。 4 近畿圏 大阪は近畿圏の中核であり、三大都市圏の一つである。大阪の成長力は弱まり、その再開発が模索されている。その 地域的動向を考察する。 5 ベルト地帯① 東海地域は太平洋ベルトに位置し、工業化が著しい。この背景を分析するとともに、地域的な関連性から諏訪や伊那 地域を取り上げる予定である。 6 ベルト地帯② 中国地域は太平洋ベルトに位置し、工業化が著しい。しかし、中国山地や山陰地方と比較し、地域格差が進行してい る地域動向を考察する。 7 北陸地方 北陸地方では、新潟県と富山・石川県とを比較し、地域的違いを考察する。合わせて環日本海地域の構想を検討する。 8 中央高地 長野県を中心にした「中央高地」は、高原や山地が広くみられる地域で、そこでのくらしや高地農業や観光などとい う産業の展開を考察する。 9 四国地方 四国地方の地域的特色を考察するとともに、本四連絡橋で対岸の中国地域と結ばれたがその地域結合による変化も視 野に入れて理解する。 10 山陰地方 山陽道と比較しながら過疎などの解決に向けた地域発展の内発的要因を具体的な地域事例で考察するとともに、韓国 や中国との結びつきにも注目する予定である。 11 北海道 北海道は日本の周辺に位置づけられる背景を考察し、その国土的役割を検討する。北方領土やサハリンなどとの交流 や、アイヌ民族にもふれる予定。 12 東北地方 東北地方は日本のチベットと呼ばれた地域を含んでいるが、大潟村の稲作やシリコンロードへの変化は大きい。3. 11の自然災害や原発事故の地域的影響にも言及する。 13 九州地方 九州は北九州工業地域の発展と停滞を経験した。中国や東南アジアに近い有利さから、現在新しい成長期をむかえて いる。この背景を地域の動向とともに分析する。 14 沖縄 日本における沖縄の位置を歴史的背景をふまえ、戦後の日米関係と基地の配置や開発を含めて考察する。また、東南 アジアや東アジアに近い有利性から近年の動向を取り上げる予定である。 15 世界と日本を考える 地誌の総合研究のひとつとして東京都の教員採用試験問題を活用し、地誌の総合理解を図り、キャリア教育にも資す る。 ■授業の方法 地域を構造的に探究できるようにするために、世界や日本をあるモデルとして考察する。また、資料や統計を活用する作 業学習で実証的にし、地域の生活体験を科学できる方法を重視する。日本に関するグループ研究や討論による探究を予定し ている。 ■予習・復習 予習については、計画に従って地図帳や教科書を活用し、これまでの学習成果を踏まえて課題意識を持つことである。復習 については、授業終了時に学んだことをまとめる小レポートの作成に向き合い、課題について考察する。参考文献で応用力 を磨こう。 ■成績評価の方法 Ⅰ・Ⅱの試験、授業で学んだことの小レポート、資料にもとづく作業、地域に関する参考文献を読むこと、地域のグルー プ研究と討論、出席状況などを総合して評価する。小レポートや課題の提出を重視する。 ■教科書・参考書 教科書:地図帳『新高等地図』東京書籍。 『地理授業で使いたい教材資料』清水書院。 教材プリントを適宜配布する。 参考書:参考文献を配布し、授業時に新刊を含めて紹介する。中学校や高校で使用した教科書を用意すること。 ■関連する科目 経済地理学、社会地理学、文化地理学などの成果をカバーし、文化人類学などの地域研究の成果も参照する。
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