見直される?鉄道経営のあり方 広がっている。 インされた〝水戸岡ワールド〟が 楽しむための心地よい空間がデザ 沿線自治体の一層の 「経営参画」 不可欠に 沿線市町村が予算措置 観光列車を 〝 両〟 導入 ―くま川鉄道 導 入 費 用 は一両 あ た り 億4000万円強。 両分で 5 億円を超える。鉄道営業収入 億2957万 円(2013年 (熊本県人吉市、藤木孝一社長) を営む第三セクターのくま川鉄道 囲を驚かせた。 の大型投資に踏み切ったことが周 度)の小さな鉄道会社がこれほど 両が納入された。一昨年から導 ォニー」だ。 れぞれ約6000万円の営業損失 や交通手段の多様化がその要因 入を始めた観光列車「田園シンフ 同社はJR九州の新幹線車 両 や観光列車のデザインで有名な工 を計上している。が、沿線の市町 年 度にそ 業デザイナー、水戸岡鋭治氏の 村から「くま川鉄道安定化補助 れ、このほどブルーとホワイトが して地域に欠かせない存在であり、 1990年度には4600人だっ 免れてきた。同鉄道は通学列車と 年 度、 両 金」が年間6000万円を目安に 加わった。地元産ヒノキをふんだ 鉄道営業収入の 7 校の生徒数は減少の一途。 負の要素はこれだけではない。 人と半減している。 たが、2012年度には2470 んに使った車内には、カウンター 定期が占めている。しかし、沿線 割以上を通学 やソファー、テーブルやショーケ 13 の高校 だ。同社も を発注。一昨年、ブラウン、レッ 交 付され、どうにか赤 字 決算を デザインで新規に観光列車 ド、ベージュの 両が先行納入さ 地方の中小鉄道は苦しい経営 を 余 儀 なくされている。人口減 に昨年 月、ピカピカの観光列車 熊本県南の人吉球磨地域を横 断する 駅 ㌔のくま川鉄道線 1 7 1 5 ースなどが配置され、列車の旅を Zaikai Kyushu / FEB.2015 12 ローカル線 立している。これができない地方の中小鉄道をいかに 残し生かすか。経営健全化の方策が求められている。 一方でJR各社や大手私鉄は、人口集積地の駅という集 客装置をからめた商業施設開発などで収益モデルを確 28 3 地域の ず、それ以外の大半の地域では、人口減と交通手段の 多様化で採算性が悪化、赤字体質が慢性化している。 14 12 5 6 2013年度に導入された 「田園シンフォニー」。14年3月から9月までの乗客数は、観光列車としての 利用だけで8178人(運行152日)。 1回の運行あたり平均54人の観光利用があった 41 2 変 わっていく 鉄道事業の収益を単体で成り立たせるのは難しい。 人口集積地などごく限られたエリアでしか採算が合わ BUS TAXI RAILWAY 田園シンフォニーの 車内。木をふんだん に使ったしょうしゃ なしつらえが特徴だ 保有する 両のうち、 両は導 孝・人吉市長)の基金を充てると 性に対するリスクも考えなければ さむだけでなく、最も重要な安全 いた。そうなると維持補修費がか を設置し、管理・運営を担うなど 同組合はごみ処理施設や火葬 場など地域共同の社会福祉施設 だ。 一方、非三セクの島原鉄道(長 崎県島原市、本田哲士社長)は一 いうウルトラCが繰り出されたの ならなくなる。そもそも鉄道会社 する団体で、地域市町村がそのた 昨年 島原―大牟田高速船 地域を揺らす存廃問題 ―島原鉄道 の管理コストには、架橋塗装、レ めの基金を積んでいる。従前は観 月、地域を揺らす決断に ールやまくら木の交換、踏み切り 入から 年を経て老朽化が進んで 5 れが人口減社 会の鉄道各社の経 の新設といった固定費があり、こ が、人口減で定住人口が減少して 光目的で使われることはなかった 減による採算悪化に見舞われてい 一つ、船舶事業部門の中で、乗客 踏み切った。複数ある事業部門の 同航路は島原市から大牟田市 までを約 分で結んいる。そこか 打ち出したのだ。 た島 原―大牟田高速船の廃止を いく中、数年前から交流人口を増 年以上が経過する中、 やすための広域的な観光情報の発 両もの老朽車 両の入れ替えを どう進めるかが、安全運行の上で らシャトルバスで西鉄大牟田線の が、これは事故など万が一のとき 社同様、安定化基金を積んでいる い車両を、 両ずつ導入する手法 も、できるだけコストの掛からな この状況からすると、一般的に は、安全性の確保を優先しながら の 、県から 分の の予算措置 輸送設備等整備事業)から 加えて、国の地方公共交通バリ ア解消促進事業(鉄道軌道安全 致したと見られる。 分 田園シンフォニーのコンセプトと一 広域観光の目玉にもしようという ーフェリーあるいは高速バスの利 ントだったわけだが、人口減やカ 天神まで 時間〟の交通手段であ 到着する。つまり〝島原市内から の繁華街・天神まで 時間 分で 安全運行の確保というだけでなく、 大牟田駅まで移動すれば、福岡市 そんな変化が、地域にとって欠 かせない通学・通勤や移動の足の うになっていた。 年度からこれに着手しているが、 信などについての役割も果たすよ 開業から 営の重荷にもなっている。同社も 10 のために、思い切った取り崩しが 1 2 15 燃料費の高騰も重い足かせとなり 年度の利用客数は 万8000 しなければならない」 (同社)状況。 ほてん できない資金だと同社は位置付け 「他の事業部門の収益で赤字補填 用が増えるなどし、利用客が減少。 ることが、同航路のセールスポイ 2 ている。 地域の鉄道を残すだけでなく、 域外からの利益をもたらす存在に そんな状況に対して、沿線市町 村は思い切った決断に踏み切った。 しようという発想が時代と調和し が妥当だろう。同社も他の鉄道会 3 が図られることになった。 1 1 広域行政事務を担う人吉球磨広 車両の更新に財源として、地域の と言えよう。 方策が生み出された興味深い事例 て、従来の枠組みにとらわれない 半減。事業としては 年度まで 人でピークの 万3800人から 3 域行政組合(代表理事=田中信 13 年連続の赤字だった。 12 3 7 42 Zaikai Kyushu / FEB.2015 8 25 20 喫緊の課題となっていた。 50 5 10 3 昨年12月に催された 「田園シンフォニー」乗車1万1111人達成の 記念式典 存廃問題に揺れる島鉄高速船。定員76人に対して 1便あたりの利用は10人ほどだという 島原鉄道。諫早駅から島原外港駅までの24駅43.2㌔の 島原鉄道線を運行している 田市や大牟田商工会議所もこれに 議所が存続を唱え、対岸の大牟 ところが、これに地元が待った を掛けた。島原市や島原商工会 高速船、ホテル・不動産の同社 (バス) 、フェリー(カーフェリー) 、 では一致している。地域に島鉄を 状、同社の経営は、鉄道、自動車 す決断をしなくてはならない。現 上、採算の取れない部門は切り離 われることは避けたいという認識 の損益というだけで、公共財が失 益、地域振興の観点から、一企業 存続させると、今後 年間の累計 呼応、域内交流の活性化に欠か 事 業のうち、鉄道と自動 車、高 億円を で 億円の社会的便益がもたらさ せない交通手段であり、世界文化 速船の 部門で赤字が続いており、 れ、運行に必要な費用 30 遺産登録を目指す「明治日本の ほかの 部門の収益で赤字を補填 差し引いても、 億円の黒字とす 87 らんば大会」までの存続を要望。 崎がんばらんば国体・長崎がんば そんな中、島原市が昨年 月 から 月に掛けて開催された「長 る三池港(大牟田市)で唯一の航 度までで約 億2400万円に上 しており、島鉄の累積赤字は 年 計上した。この状況が半ば慢性化 高速船も約2500万円の赤字を しているというのが実状だ。中で 治体連絡協議会(会長=古川隆 すでに行政サイドには島原鉄道自 みにとらわれない経営参画だろう。 これを受けて、昨 年 三郎・島原市長)があり、今年度 は、同社に対して沿線 市が信号 この一件は、地域と地域の足で ある中小鉄道の難しい関 係を如 採算ラインは見えていないようだ。 ことになった。しかし、その後も 算ラインとして、存続の道を探る しい課題だろう。そうなると、そ 上の赤字削減が可能かどうかは難 丁目一番地〟なわけだが、これ以 の収支改善が経営健全化への〝一 をもたらしたと見られる。同部門 分以下。南線の廃止が一定の効果 内容が盛り込まれた。 トワークを形成」といった趣旨の 域戦略と一体で地域公共交通ネッ から脱却」 「まちづくりなどの地 の任せきりであった従来の枠組み 再生法が可決され「民間事業者 言を待たない。しかしこれを経営 ところが地域としても同社とし ても、地域の交通機関は公共の利 が出ているかもしれない。 出るころには案外明るいニュース れ以外の赤字部門に目を向けざ 国の法改正もこれを後押しする。 今年 度、地方公共交通活性化・ 機やレール、踏み切りなどの整備 や赤字補填のための一定の財政支 便 しかし、この年の鉄 道 部 門の 赤 字 幅は、同社が島 原 外港(島 便から に減 便することによる経 費 削減 年の 約 億8100万円からすると、半 08 実に表している。交通手段が失わ 万人を採 間の 南 線 を 廃 止 し た 援に乗り出している。 年度の年間利用者数が約 ・ 原 市 ) ― 加 津 佐( 南 島 原 市 ) 日の運行本数を から運賃を引き上げによる増収と、 っている。 月、 路を存続させるべきと声を上げた。 もマイナスが大きいのは鉄道部門 そうなると鍵を握るのは自治体 で、 年は約8600万円の赤字。 の支援、というよりも従来の枠組 る試算もある。 月 産業革命遺産」の構成要素であ 47 5 12 13 本稿執筆時点で同社は、存廃 の判断を下していないが、本誌が 人、年間利用客数 万人だったことから、便あたり 3 れることは、地域にとって損害だ。 るを得なくなる。 4 1 4 9 10 を図る対策を同社は打ち出した。 5 3 2 11 サイドからすると、事業である以 Zaikai Kyushu / FEB.2015 43 40 3 2 4 1 15 8 12
© Copyright 2024 Paperzz