須坂市動物園の今後のあり方 1 ~ ふれあい、いやされ、親しまれ、学びあう動物園 ~ 動物園の社会的役割(存在意義) 日本動物園・水族館協会(日動水)は、全国の動物園(89 園)及び水族館(67 館)156 園館が加 盟する団体です。日動水では、次に掲げる4つの目的を達成する活動を行っています。 (1) 命に触れる憩いの場(リクレーション) (2) 楽しく学ぶ教育 環境教育 (3) 動物を絶滅させない(種の保存) (4) 動物のことを調べる(調査・研究) 日動水加盟の動物園及び水族館では、独自に目的、使命を定めている園館もありますが、ほぼ日 動水が掲げる目的と同じ内容になっています。つまりこれらは、動物園及び水族館の普遍的な使命、 目的といえます。 須坂市動物園においても上記の目的に沿い運営を行っておりますが、小規模動物園であることか ら、種の保存や調査・研究やといったことには限界があり、手づくりで誰からも愛される動物園と して、市民福祉向上及び誘客、生涯学習と学校教育、幼児教育の向上を目指し、(1)及び(2)につい ては積極的に取組んでおります。今後も、これらの取組みをとおし、エデュテイメント的な活動に 注力をしてまいります。 2 現状認識と今後の方向性 須坂市動物園の入園者数は、昭和 56 年水族館を併設し、約 15 万人の入園者数を記録しましたが、 以降減少傾向に転じ、平成 15 年には 6 万人台にまで落ち込み一時は「廃園の危機」まで叫ばれまし た。しかしながら平成 16 年ごろからハッチがメディアに取り上げられたこと、また、職員が危機感 を持ち市民に動物園の存在意義を伝え、応援をしてもらおう。職員の資質を向上させようと始めた 「動物園フォーラム」や「動物園だより」などの情報発信及び、手づくりによる取組みが受入れら れ入園者数が増加し、平成 18 年度から 21 年度にかけては4年連続で 20 万人を突破しました。この 間、 「ふれあい」や「手作り」といった取組みにより、いやし効果の高い動物園としての基礎づくり もしてまいりましたが、昨年 11 月のハッチの死亡後は来園者数が徐々に減少し、また、今年の猛暑 も要因となり入園者数は前年対比5割弱まで落ち込み(9月末現在)、平成 17 年度の入園者数に逆 戻りしそうな状況となっています。 そこで改めて、須坂市動物園のこれからの方向性を検討する必要が生じました。 今後の方向性を考えた際に、須坂市動物園の資源である「臥竜山を背後に背負う自然景観が豊か」、 「獣舎と来園者の距離がとても近く、猛獣も身近に見てもらえ迫力が味わえる」、「飼育員の手作り 看板に親しめる」 、 「飼育員と同じ目線、動線に立つことができ、時には飼育員との会話も楽しめる」 など、他の動物園にない良さを活かし、さらには、 「フレンZOOすざか」会員などサポーターの協 力も得る中で、他園には無い独自性を発揮していくことが求められます。 1 3 これからの動物園の方向性 ~ 職員の話し合いから ~ 平成 22 年 2 月から、ハッチ亡き後の動物園の入園者数の落ち込みを最小限に抑え、新たな動物園 として再出発するため、職員が動物園の良い点、悪い点を出し、どうしたら良いのかをKJ法によ り出し合いました。その後、全職員でどのような動物園を目指していくのかのキーワードと、具体 的にどのような活動をしていくのかについて、全体会も含め 13 回(分科会含め)の検討を重ねてき ました。 (1) 良い点として 【施設・設備関係】 ・園内はコンクリートだけではなく、緑化されている。 ・遊具の効果で冬期であるが年間パスポートを購入される方が多い。 ・孫を連れてきても疲れない、ちょうど良い広さ。 【イベント・職員】 ・他の動物園にない動物園とのふれあいのできる動物園である。 ・家畜動物とふれあえる動物園である。 ・手作り看板。手書きの看板がある。 ・ふれあいハウスで動物とのふれあいができたと感謝された。声を出せなかった子どもが声を出 せたと親から喜ばれた。 ・馬の口の中を見せて解説したら来園者にすごく喜ばれた。 ・自分たちの感じたこと、希望の言える動物園である。 (2) 悪い点、課題として 【施設・設備関係】 ・落葉が多い。獣舎の外まで飼育員では掃除できない。手が回らない。 ・花や木の管理も大変である。 ・水溜り、ぬかるみが多く、来園者に不自由な思いをさせている。 ・暑さ、雨をしのげる場所がない。 ・正面口、南口という出入口の名称であるが、迷われるお客さんが多い。 ・駐車場が分からずに正面窓口に車で来られたお客さんに、西側駐車場を教えたところ、 「あの水 溜りのひどい所ですか!?」と言われてしまいました。西側駐車場が動物園の駐車場とは分かり づらい。西口駐車場へもちゃんとした看板がほしい(手づくりでなく)。 ・正面の出入口が狭い。ベビーカーや車イスが通りにくい。お互いに待っている場所も狭いので 詰まる。 ・遊具設置後の安全管理が必要。 ・消耗品費が年々削られている。イベント費用が少ない。動物を購入したいが予算がない。 ・拡声器が一台しかなく不便・・・ポータブルタイプの拡声器があれば、ガイドや混雑時に役立 つ。 ・動物園の飼育スタッフと一目で分かる制服を支給してほしい。汚れや破れなどで、毎年自費で 購入しているので出費が多い。 2 ・役所の作業服は、飼育作業に機能的に不向き、公園管理か飼育員なのか分らない。 ・家畜動物が少ない。 【イベント・職員】 ・家畜動物を増やしたいが職員が少ない。 ・ガイドをしてほしいと頼まれるが、手がない。自分の担当の動物は説明できても、担当が違うと 質問されても回答できない。 ・飼育職員にも専門性が必要である。 ・人生相談もされる。幅広い知識、専門知識も必要。自閉症、聴覚障害者の方とのコミニュケショ ンが難しい。 ・イベントの受け持ち数に個人差があり、それに伴い時間外に差がつく。皆で協力しているが…(* 発案者が進めていく事が一番良いが、まず、発案する人にも偏りがあるのかも) ・役割分担がはっきりしない。 ・ハッチ効果無くなり、県外からのお客様が遠のく。 (3) どのような動物園を目指すのか 「これからの動物園のあるべき姿」、「これからの動物園の柱・キーワード」として多くの職員が 「笑顔」「癒(いや)し」 「ふれあい」「手作り」 「体験」「学習」を挙げました。 それぞれのキーワードの意味としては ①「笑顔」 動物園はサービス業です。ホスピタリティー、サービス精神で来園者に楽しんでいただくこと が必要です。その基本が笑顔であいさつをすることです。そうして、動物園に来ていただいた方 が笑顔で帰っていただくようにします。 ②「癒(いや)し」 動物、飼育員との「ふれあい・交流」や、手作り感あふれ、緑に囲まれたる園内にいることで 「癒(いや)し」を感じられるような動物園としていきます。動物園だけではなく、竜ヶ池、臥 竜山も含めた中で、日常の疲れをとり、明日への活力が生まれるような場としていきたい。 また、近年動物とのふれあいにより精神的な健康回復を図る「アニマル・セラピー」が注目さ れています。学校教育課の取組みに協力する中で、効果や方法など検証し、役割の一つとしてい きたい。 ③「ふれあい」 かねてから動物園では「ふれあい」ということを前面に出してきました。動物に触れることの 体験をとおし、感動、癒(いや)し、命について感じ・考える場として動物園を捉え、単なるレ ジャー施設ではない、プラスαを加えていきます。 また、飼育員が様々なイベントを実施する中で、飼育員との交流を目指します。 ④「手作り」 動物の説明看板に始まり、イベント、獣舎も手作りです。職員の創意工夫、現場で感じたこと をお客様に伝えていくという訴求力に勝ります。手作りだからこそ読みたくなるもの、伝わるも のがあると思います。また、手作りならでのぬくもりをお客様に感じていただき、さっと動物を 3 見て回るのではなく、ゆったりとした時間を過ごしていただきたいと思います。 リクレーションに加え、今後動物園が果たすべき役割として「教育・学習」の機能が上げられ ます。 ⑤「体験」 「ふれあい」も体験の一つですが、動物を見る、触れるといった単なる来園者としての体験だ けでなく、飼育体験などで違った視点から動物を見る機会を提供していきます。 また、 「動物を見る」ことの心理的刺激により楽しむことが旧来の動物園の楽しみ方であったが、 体験型のイベント創出により、身体的刺激による楽しみも提供していきたい。 ⑥「学習」 児童・生徒が主な対象となるが、動物園を生きた学習の場として提供する。 職業体験の場を提供し、青少年の職業観の確立を促す場や、動物に関係した職業に就きたい学 生の実地学習の場とする。 年に数千種の動物が絶滅しているといわれており、動物たちが生息する環境が厳しくなってい る。生物多様性を含め、環境教育の場として活用する。 様々な取組みをしていくためには職員自身が常に学習する必要があります。 4 これらの実現を図るためにどのようなことをしていくのか 別添『「こんな動物園にしたい」ために、いつまでに、誰が、どのようにすれば良いか』について、 職員が検討した結果をまとめました。 概要として (1) 動物園だけで考えるのではなく、臥竜公園全体の魅力向上を図り、情報発信をし、臥竜公園に 来ていただく。 ①臥竜公園全体を使ったイベントの実施 ②社会資本整備交付金を活用し、周遊路整備、広場整備など行い、快適に過ごせるようにする。 ③ブログを充実させ、魅力の情報発信をしていく。 (2) 施設整備 ①園内のぬかるみ対策とベビーカー、車椅子の方にもやさしい園路 ②老朽化した施設の更新 (3) イベントの実施による誘客対策 ①「教育」に着目し、幼保、児童・生徒向け ②他園にないイベントの開発 ③全員がイベントできるようにしていく (4) 職員の意識向上と研修等 ①自分たちが動物園を何とかしていくのだという意識を持ち、自ら考え行動できるようになる。 ②そのためにも、研修は必要 ③お客様を迎える「サービス業」という意識で ④職員は限られているので、全員が協力し合って作業を行っていく。 4 ⑤そのために、情報を共有していく (5) 他施設との連携 ①他施設と連携することで、新たな展開を図る。 ②池之端商店会と連携し、滞在時間の増と相乗効果を図る。 ◆ 実施主体別では (1) 職員が実施すべき事項 主な分類としては「イベントの充実・開発」「能力開発」「接遇の向上」となっています。これ ら挙げられた事項については、具体的な取組みを職員で検討し、取組んでいきます。 (2) 市が実施する必要がある事項 「施設整備」 「人員」などは、市として取組んでいかないと実現ができません。 また、職員が取組む・取組みたい事項についても、今まで努力をしてきたところに加え、もう 一段の努力をするのですから、スクラップ&ビルドだけでなく、予算の配分や人員の配置など職 員が努力できるための環境整備も必要です。 5 考察 3これからの動物園の方向性 ~職員の話し合いから~ では、ハッチ亡き後の動物園をどのよ うに再生、活性化すればよいかを検討してきた中で、 「自分たちは何ができるか・自分たちは何をす べきか」ということについて多くの提案が出されています。 ハッチ人気もあり入園者数は急増しましたが、平成 22 年度は猛暑の影響もあり大幅な減少見込み となっています。しかし、ハッチのようなスーパースターは作ろうとして作れるものではなく、人 気者に頼った誘客は見込めません。今後も小さなイベントを重ね、地道に入園者を増やし、動物園 のファンを獲得していく必要があります。2でも述べましたが、須坂市動物園の資源である「臥竜 山を背後に背負う自然景観が豊か」 、 「獣舎と来園者の距離がとても近く、猛獣も身近に見てもらえ 迫力が味わえる」 、 「飼育員の手作り看板に親しめる」、 「飼育員と同じ目線、動線に立つことができ、 時には飼育員との会話も楽しめる」など、他の動物園にない良さを最大限に活かしていく。また、 「フレンZOOすざか」会員などサポーターの協力も得る中で、他園には無い独自性を発揮してい くこと、また、特化していくことこそが、今後の動物園のあり方ではないでしょうか。 小さなイベントを積み重ね、試行錯誤する中で、須坂市動物園ならではのイベントの創出をめざ し、また、その中でハッチに続く人気者が生まれてくれれば、それはまた幸運であると考えます。 (1) ~ 比較優位性確保のために 基本的事項の確認と危機管理態勢 ~ 誘客施設としての基本は、お客様に安全に、安心して過ごしていただくこと、清潔な施設であ ること。そして、職員の真心こもった「おもてなし」です。これらの基本的事項をしっかりと押 さえた上で、様々な誘客を図っていくことが大切です。 5 ①安心・安全な動物園であるために 動物園には人間に危害を及ぼす恐れがある特定危険動物も展示しています。これら動物が獣舎 から逃げ出すようなことがあると、人命に関わる事故の発生が懸念されます。作業手順の確認と、 万が一の脱走などに備えた定期的な訓練が必要です。 また、園内は通路部分がほとんど舗装路となっていますが、幅が狭く、未舗装の部分も残され ています。ベビーカー、車椅子で来園される方、高齢者や妊婦、乳幼児も多くいらっしゃいます。 加えて、臥竜山に生える木の枝が通路上にあり、また、ひん岩から形成される山肌が露出してお り、落石などによる事故が起きないよう、長野地方事務所林務課と連携し定期的に実施している 落成危険箇所調査や職員による日常点検を実施し、安全確認をすることが必要です。 なお、南園には平成 21 年度に設置した大型複合遊具、使用頻度の高い自動遊具、用途廃止とし た消防自動車も設置しており、職員による日常点検のほか専門家による定期的な点検や整備を確 実に行うことが必要です。 ②5Sの徹底 整理:いらないものを捨てること 整頓:決められた物を決められた場所に置き、いつでも取り出せる状態にしておくこと 清掃:常に掃除をして、職場を清潔に保つこと 清潔:上の 3S(整理、整頓、清掃)を維持すること 躾:決められたルール・手順を正しく守る習慣をつけること お客様に気持ちよく過ごしていただくためには、園内を清潔にし、さわやかに対応することが 大切です。常に5Sを心がけ、園内の美化と職員のモラル向上を図ることが大切です。 ~ 客層の分析 ~ レジャー白書によると、余暇活動参加人口で動物園、水族館、博物館は平成 20 年度の9位か ら平成 21 年度は6位に上昇しています。これは、動物園、水族館で施設のリニューアルが続き、 話題性があったことと、不況の影響で「安・近・短」の手ごろなレジャーとして人気が高かったと 分析されています。 須坂市動物園の来園者は、主に「子育て家庭(祖父母連れ含み)」であり、このほか「カップル」、 「熟年」、そして「遠足」があります。それぞれの滞留時間や、どういった楽しみ方をしているか調 査は行っておりませんが、声をお聞きする(メールも含む)中で推測をしてみると、 ①子育て家庭 子どもの情操教育や実体験の場として、教育の観点から親が連れてくる。 安・近・短で、手軽に遊べる。 遊具が整備され、年間パスポートを活用するとお得に遊べる。 ②カップル 二人で過ごせ、会話のネタになるところ。 どちらか、或いは 2 人とも動物が好き 6 ③熟年 動物が好き 須坂に来たが、時間がある、 臥竜公園に来たついでに 小布施、高山など他の観光地帰り ④遠足 公共交通も体験(乗り物遠足)できる。(市外) 入園料が無料(市内) コンパクトな動物園で安心して引率できる ⑤体験・学習(教育) 中・高校生の職業体験 小学生の自由研究支援 これまで、就学前児童をもつ家族連れがメインターゲットであり、ポスター、パンフレットに始 まり、イベント内容やお土産なども、子どもに向けとなっています。 しかし、少子化の進行と、子どもたちの社会体育活動が低年齢化、多様化していることで、休日 に家族でレジャーに出かけることができる子どもの年齢が下がり、子育て家庭の来園者数は減少し ていくと思われます。 そこで、新たな客層の獲得のためには、絞り込んだ誘客や、イベントの実施についても、客層を 意識した内容、実施日を研究していく必要があります。 ◆対象別現在の取組みとしては ②カップル・・・ラぶラぶ~なラブキー ③熟年・・・市内博物館類似施設の学芸員等が連携し、文化発信のあらたな展開を目指す「須坂 ミュージアム通信」を展開予定。 ◆今後の取組みとしては ④遠足については、学校行事として遠足をする学年が減少している中で、実習、研究、体験の場 としての受け入れ態勢の充実(遠足時に学習ができる環境整備、飼育員による解説、ワークシー トの活用 など)を図ると共に、新たな動物園の取組みについてピーアールを行うなどの営業が 必要であります。 ②カップルについては、 「恋人たちの聖地」事業とし、周辺施設と連携してイメージ作り、イベン トの創出をしていく。 ⑤体験・学習(教育)については、プログラムの提供による学校へのアプローチや、生物部等動 物に興味を持つ児童生徒への情報提供をしていく。これらの層は、コアなファンになる可能性も あるので、参加型の体験学習を取り入れていく。 コアなファンの集まりとして「ふれんZOOすざか」があります。動物が好き。須坂市動物園が 7 好き。という人を増やし、そこからの口コミによる宣伝は大きな力になると思われます。そこで、 会員向けのイベントや、スポットガイドの委託など会員ならではの特典をつけ、会員増を図る必要 があります。 ~ 地域別に見ると ~ さくらまつり期間中の在住地調査や、ハッチファミリーの名前投票の結果から入園者の住所を推 測すると、 ①さくらまつり期間中:長野県内からの来園者が圧倒的に多く、県外は、北は北海道から南は沖 縄、また国外からの入園者もいらっしゃいます。県外で多いのは東京、神奈川、埼玉、新潟、岐 阜の辺りとなっています。 ②ハッチファミリー第6子関係:10 月 9 日からの 3 連休中日の 10 日から名前の投票を開始し、 園内の投票箱に投函されたうち多かった地域は、10 日は県内では、市内 25、長野 21、中野・千 曲 6、松本 4 で、県外では新潟 8、埼玉 6、大阪 3 となっています。11 日は、市内 30、長野 48、 中野 20、千曲 12、上田 14、松本・佐久 7、軽井沢 4 で、県外では新潟 10、千葉、群馬 2 となっ ています。 この結果から、 「安・近・短」というレジャー動向を反映し、近隣市、近隣県からの来園者が多い と思われます。特に新潟県には動物園がないため、高速道を利用した周遊観光の一つとして来園し ていると推測します。 (2) 職員としての役割を考える 入園者数が6万人台にまで落ち込んでいた頃の教訓として、飼育員はただ動物にエサをやり、 獣舎の掃除をしていれば良いというものではない。これではいけないということで、専門性を高 めていく、資質の向上を図るための地道な取組みにより、職員の意識は変わってきています。 旭山動物園の成功にもありますが、 「行動展示」という本来動物が持つ能力を見てもらうための 展示、イベントの実施が動物園の主流となっています。これにより、飼育員には、エサやり、獣 舎周辺の掃除はもちろんですが、このほかに動物の生態、行動特徴を生かしたイベントの創出及 び実施する、という学芸員的役割も必要になってきています。 現在、正規職員は「飼育技術員(現業職)」という括りになっており、専門的な勉強をしてきた わけではないため、こうしたことができる職員を育成することは、一朝一夕にできません。しか しながら嘱託職員には、 「飼育職員」としての専門性を身につけてきた者もおり、専門的知識を発 揮して、正規職員と同等に職務をこなしています。魅力的なイベントの創出や実施により、多様 な動物園来園者のニーズを満たすには、専門職員の正規化や計画的な職員育成、また、配置が今 後一層求められます。 また、職員の人数が限られている中で、イベント創出のための学習や研究を行い、イベントの 数を増やしていくには、今までの職員による手作りイベントと併せ、委託できるものは委託する などの仕分けと、また、ワークシェアリングの中で来園者対応やイベントに傾注できるようにし ていく必要もあります。 8 (3) 施設整備によるイメージアップ 昭和 37 年に開園した須坂市動物園は施設の老朽化が著しく、計画的な施設整備が一層求められ ます。 特に園内はベビーカーや車椅子の方もかなりいらっしゃいますが、砂利や段差があり、スムー スな移動ができる状態ではありません。 また、誘客施設として、看板などをラミネータにより作成し、思いつくままにそれぞれが張り 出していては統一感も生まれず、誘客施設としてのイメージ低下にもつながります。 そこで「手作り」の良いところと、しっかりとした整備が必要なものを仕分けする中で、 「臥竜 公園」「須坂市動物園」としてのイメージ、統一感を持たせることが必要です。 今後、手づくりでできるものとそうでないものを仕分けし、社会資本整備総合交付金事業等を 活用して施設整備を進める必要があります。 (4) 市民参加で盛り上げていく動物園とするために 青果店や市民から動物のえさを頂くことが多々あります。これは市民の皆さんが須坂市動物園 を応援してくださっている証です。さらに大勢の市民の皆さんが須坂市動物園を応援してくださ ると私たちもたいへん心強いです。動物園を応援してくださる方が一人でも増えるよう、今の動 物園を知っていただくための情報発信に努めます。 また、レジャーや教育など純然たる動物園としての機能とは別に、地域振興の核としての存在 があります。動物園の復興に当たっては市民ボランティア「ふれんZOOすざか」の協力のほか、 「ハッチプロジェクト」による各種お土産の開発、須高ケーブルテレによる「デジタルアニマル パーク」「動物園だより」 、動物園まつりにおける様々なイベントの実施や市内企業の出店、須高 の元気ママ応援マガジン「ペチャ*クチャ」での連載、 (仮称)須坂D51クラブによる蒸気機関 車愛護など多くの市民の皆さんが、動物園を盛り上げると共に相乗効果で地域経済の振興、関る 人たちの元気の源となっています。 加えて、平成 12 年度から開催している「動物園フォーラム」は、市民の皆さんに動物園の取組 みを知ってもらい、応援していただきたいという情報を発信してきました。節目となる第 10 回か らは、動物園だけでなく、市内の博物館類似施設が連携し、新たな展開を模索する動きが始まっ ています。 このように、空間としての動物園を核として、多くの人が関り、ゆるやかな連携の中で「波」 を起こしていく取組みを継続していきます。 (5) 効果的な情報発信 これまでもきめ細かな情報発信により、多くのマスコミに取り上げられてきました。やはり新 聞、雑誌、テレビなどで紹介されることは大きな集客効果がありますので、引き続ききめ細かく、 効果的な情報発信をしていきます。 加えて、コアな動物園ファン獲得と客層を意識した情報提供の方法などを検討していくことが 必要です。 9
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