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サプライヤー選択基準の研究

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Japan Marketing Academy
BOOK REVIEW
A テーマ書評シリーズ――粢
示した。この八つの段階とは,①問題認知,②
必要品目の特徴・数量の明確化,③購買品目の
詳細の特定,④サプライヤーの検索,⑤見積も
りの取得・分析,⑥見積り評価・サプライヤー
サプライヤー選択基準の
研究
の選択,⑦発注手続きの選択,⑧成果のフィー
ドバック・評価,である。このように,サプラ
イヤーの選択は購買意思決定プロセスにおける
ステップの一つと考えることができる。
渋谷 義行
● 早稲田大学大学院 商学研究科 博士後期課程
★ 選択基準研究における二つの視点
サプライヤー選択基準については,主に二つ
の視点から研究が行われてきた。第一の視点は,
★ はじめに
購買企業がサプライヤーや購買製品の選択に際
昨今,企業の購買活動が品質管理,コストダ
して重視する基準要素についての考察である。
ウン,顧客への価値提供の面で当該企業の成果
第二の視点は,購買企業が購入する製品カテゴ
に大きく影響するとの認識が高まってきている
リーがサプライヤー選択基準に与える影響につ
(例えば,Bharadwaj 2004)。一方で,インタ
いての検討である。選択基準研究の嚆矢とされ
ーネットによる調達,系列の見直し,複数企業
ている Dickson(1966)は,アメリカとカナダ
による共同調達など,企業の購買形態は大きく
の購買担当者を対象とする実証研究を行い,サ
変わりつつある。このように顧客企業の購買行
プライヤー選択基準について,基準要素の重要
動が大きく変化するなか,生産財マーケティン
度および製品カテゴリーによる影響という二つ
グが成果をあげるためには,購買企業がどのよ
の視点から考察した。研究結果によれば,最も
うな基準に基づきサプライヤーや購買製品を選
重要な選択基準要素は,品質基準を満たす能力,
択するかを正確に把握することが求められる。
デリバリー,パフォーマンス実績であった。二
本稿では,組織購買行動論の枠組みを用いて,
番目に重要な基準要素としては,価格,技術能
サプライヤー選択基準の研究に関する主要論文
力,サービスの能力,保証,生産設備,生産能
をレビューし,その概要を明らかにしていく。
力などがあげられた。姿勢,印象,取引への熱
組織購買行動論は,生産財の購買が組織の共同
意のような無形の基準要素についての重要度は
意思決定の形で行われるという特徴を捉えて,
低かった。また,製品カテゴリーが選択基準に
その購買行動のメカニズムを明らかにするとと
与える影響については,技術的な複雑さなどに
もに,その購買行動に合わせたマーケティング
よりタイプが異なる四つの製品の間で,選択基
活動を考えるものである(
準の重要度を比較した。研究結果では,技術的
嶋 1998)。組織購
買行動論では,購買センターの概念(例えば,
に複雑な製品の購買であるほど,多くの要素に
Webster and Wind 1972)をベースとして,購
ついて検討が必要であるため,価格の重要度は
買意思決定プロセスがいくかの段階から構成さ
相対的に低くなることが示された。反対に,単
れることが説明されてきた。例えば Robinson,
純な製品の購買では,一般的に価格が主要な要
Faris and Wind(1967)は,購買意思決定プ
素として考慮されることが指摘された。
ロセスが八つの段階から成り立っていることを
● JAPAN MARKETING JOURNAL 122
マーケティングジャーナル Vol.31 No.2(2011)
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サプライヤー選択基準の研究
て異なることを指摘した。また,すべての製品
★ 選択基準と製品カテゴリーの類型化
カテゴリーを通じて最も重要とされた選択基準
70 年代から 80 年代の研究では,製品カテゴ
要素はデリバリーであり,次に重視されたのは
リーを類型化したうえで,選択基準要素の重要
価格,柔軟性であった。販売サービスや提供さ
度および製品カテゴリーによる影響という二つ
れるトレーニングの重要度は相対的に低かった。
の視点から選択基準が考察された。Lehmann
Lehmann and O'Shaughnessy(1982)は製
and O'Shaughnessy(1974)は,製品カテゴリ
品カテゴリーに加え,選択基準要素についても
ーを類型化したうえで,選択基準についてアメ
類型化したうえで,アメリカ企業の購買担当者
リカ企業とイギリス企業の購買担当者を対象と
を対象とした実証研究を行った。製品カテゴリ
する実証分析を行った。同研究では,購買製品
ーについては,標準化(標準製品か非標準製品
を以下の四つのタイプに分類して選択基準の重
か),構造(単純な製品か複雑な製品か),使用
要度が検討された。
性(標準的な使用性か新しい使用性か),金額
製品タイプⅠ:問題が発生しそうもないルー
(高額か低額か)という四つ側面に基づいて分
チン製品
類した。一方,選択基準要素については,パフ
製品タイプⅡ:使用法について習得が必要な
ォーマンス基準(製品が使用される際のパフォ
ため,問題が発生しそうな製
ーマンスに関する基準),経済性基準(購買企
品
業のコストに関する基準),統合性基準(サプ
製品タイプⅢ:パフォーマンス上問題が発生
ライヤーの購買企業に対する協力に関する基
する懸念のある製品
準),適応力基準(サプライヤー能力の確実性
製品タイプⅣ:製品が選択されたとき影響を
に関する基準),法的基準(法的な制約に関す
受ける人(または部門)の間
る基準)という五つの基準要素に分類した。
で合意が困難なため,購買企
Wilson(1994)の指摘によれば,Lehmann
業の社内で政治的な問題を発
and O'Shaughnessy(1982)が示したパフォー
生させると予想される製品
マンス基準は品質,経済的基準は価格,統合性
Lehmann and O'Shaughnessy(1974)の研
(協力)基準はサービス,適応力基準はデリバ
究結果によれば,問題がないルーチン製品(製
リーとほぼ同一とみることができる。Lehmann
品タイプⅠ)についてはデリバリーの信頼性が
and O'Shaughnessy(1982)の研究結果では,
最も重視され,二番目に価格が重要とされた。
法的基準を除いた四つの選択基準要素のなかで,
使用上の問題がある製品(製品タイプⅡ)につ
各製品カテゴリーを通じて最も重要とされたの
いては,提供される技術サービスと操作や使用
はパフォーマンス基準(品質)と経済性基準
の容易さが最も重要とされた。パフォーマンス
(価格)であり,適応力基準(デリバリー)と
の問題がある製品(製品タイプⅢ)において最
統合性基準(サービス)の重要度は低かった。
も重要と評価されたのは,デリバリーの信頼性
また,製品カテゴリーによる影響については,
であり,次に重要とされたのは柔軟性であった。
単純な構造で標準的な使用性を備えた標準製品
社内で政治的問題を発生させる製品(製品タイ
のケースで経済性基準(価格)が最も重視され,
プⅣ)については,価格,サプライヤーの評判
複雑な構造や新しい使用性を持つ製品ではパフ
など,社内で意思決定を正当化しやすい要素が
ォーマンス基準(品質)が最も重要であった。
重要と評価された。このように,同研究はサプ
一般的に,製品が非標準的になるに従い,価格
ライヤー選択基準の重要度が製品タイプによっ
の重要度が低下し,品質がより重視されること
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マーケティングジャーナル Vol.31 No.2(2011)
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テーマ書評シリーズ
が示された。このように同研究は,製品カテゴ
やデリバリーの重要度が上昇するという見解に
リーの影響で重視される選択基準要素が変化す
疑問を提起した。
るという見解を示した。
上述のように,Lehmann and O'Shaughnessy
★ 選択基準の時代的変化
( 1974) や Lehmann and O'Shaughnessy
(1982)などは,製品が標準化されると,意思
市場のグローバル化による競争激化など,企
決定の基準として価格やデリバリーがより重視
業を取り巻く事業環境の時代的変化が選択基準
され,品質などに関連する選択基準要素の重要
に与えている影響について考察した研究も行わ
度が低下する傾向があるとしている。しかし,
れている。Wilson(1994)は,アメリカ企業
このような標準化による選択基準への影響に同
の購買センター・メンバーを対象とした自らの
意していない研究もある。Reddy, Lambert
実証研究と Lehmann and O'Shaughnessy
and Stanton(1988)は,既に標準が存在して
(1974)などの過去の研究結果とを比較し,選
いる液体動力部品(ボールバルブ)と標準がま
択基準の時代的変化とその背景について検討し
だ存在していない無停電電源装置を購入してい
た。Wilson(1994)が示した比較( 図表− 1 )
るアメリカ企業の購買責任者,技術責任者を対
では,選択基準の時代的変化についていくつか
象とする実証研究を行い,標準の存在の有無が
の傾向が見られる。時代とともに品質の重要度
選択基準に与える影響について分析した。研究
が上昇する一方で,価格の重要度が相対的に低
結果では,価格とデリバリーの重要度は標準の
下している。また,デリバリーの重要度が時代
存在の有無によって有意差を示さなかった。こ
とともにやや低下し,一方でサービスの重要度
のように同研究は,製品が標準化されると価格
がやや上昇している。さらに,同研究は
■図表―― 1
Wilson(1994)が示した選択基準要素の重要度比較
研究
重要度スコアの平均値 (ランク)
価格
品質
デリバリー
サービス
Lehmann and
*
O’Shaughnessy(1974)
5.41(2)
4.96(3)
5.51(1)
4.65(4)
Evans(1982) *
5.27(2)
5.06(3)
5.37(1)
4.77(4)
Lehmann and
**
O’Shaughnessy(1982)
3.07(2)
3.08(1)
1.70(4)
2.16(3)
β係数の平均値***
0.28(3)
0.37(1)
0.04(4)
0.33(2)
コンスタント・サム法による
****
評価の平均値
20.23(4)
37.21(1)
21.65(2)
20.81(3)
Wilson(1994)
出所: Wilson(1994), P.39.
評価方法: * 6段階法による4選択基準要素の評価
** 全体を 10 ポイントとし、スコアを4選択基準要素間で配分するコンス
タント・サム法(恒常和法)による評価 *** β係数は、標準回帰係数(相関係数)で4選択基準の重要度を示している
**** 全体を 100 ポイントとし、スコアを 4 選択基準要素間で配分するコンス
タント・サム法(恒常和法)による評価
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サプライヤー選択基準の研究
Lehmann and O'Shaughnessy(1974)が用い
エレクトロニクス部品の購買における選択基準
た四つの製品タイプに基づいて,自らの研究と
について分析した。研究結果によれば,品質が
過去の研究とを比較し,各製品タイプにおける
選択基準要素のなかで最も重要であった。また,
選択基準の重要度の時代的変化についても考察
デリバリーが二番目に,価格が三番目に重要で
した。問題がないルーチン製品(製品タイプⅠ)
あることが示され,販売に伴う支援(サービス)
において,過去の研究で重要とされていなかっ
の重要度は最も低かった。Bharadwaj(2004)
た品質が最も重要な選択基準と評価された一方,
は,製品カテゴリーが選択基準に与える影響に
過去の研究で最も重要とされたデリバリーの重
ついても考察した。購買対象であるエレクトロ
要度が低下している。使用上の問題がある製品
ニクス部品は,標準的でコモディティ・タイプ
(製品タイプⅡ)においては,サービスの重要
の品目から,高価で戦略的な特注品に至るまで
度が上昇する一方で,デリバリーの重要度が低
多岐にわたる。同研究は,標準品(ファスナー
下している。パフォーマンスの問題がある製品
や蓄電池など)と高度な特注品(プリント基板
(製品タイプⅢ)と社内政治の問題がある製品
など)という異なった製品タイプの間で,選択
(製品タイプⅣ)では,品質とサービスの重要
基準の重要度に違いが存在するかどうかについ
度が上昇する一方,デリバリーの重要度が低下
て検証した。研究結果では,選択基準要素にお
している。時代とともに品質とサービスの重要
ける重要度のランキングは製品タイプによって
度が上昇し,価格とデリバリーの重要度が低下
ほとんど変わらず,高額な特注品と低額な標準
してきた背景として,Wilson(1994)は以下
品との間で選択基準の重要度に有意差は認めら
の点を指摘している。第一に,グローバル市場
れなかった。このように Bharadwaj(2004)
で効果的に競争するために,購買企業が価格そ
は,製品カテゴリーが異なるエレクトロニクス
のものよりも,品質やサービスを含めたトータ
部品の間で,選択基準の重要度に差異が存在し
ル・コストの削減を重視するようになってきて
ないことを示唆した。
いるという点である。第二には,生産とマーケ
これまで重視されてきた品質,価格,デリバ
ティングの効率化をはかるために,購買企業と
リー,サービスという伝統的な選択基準要素が,
サプライヤーとの関係が伝統的な勝ち負け
時代とともに不適切になってきていることを指
(win-lose)モデルから,戦略的提携を伴う相
摘した研究もある。Sympson, Siguaw and
互プラス(win-win)モデルに変化してきてい
White(2002)は,アメリカ企業が購買で実際
るという点である。例えば,購買企業とサプラ
に使用している評価フォームを調査することに
イヤーはコスト低減と高品質を達成するために,
より,購買企業の選択基準がどのように変化し
新製品のデザイン,原材料の供給能力,生産プ
てきているかについて検証した。研究結果によ
ロセスなどについて,頻繁に情報交換するよう
れば,品質が購買意思決定において群を抜いて
になっていることが指摘されている。
最も重要な選択基準要素であるが,次に重要な
選択基準の重要度が時代とともに変化してき
基準要素として,継続的改善や購買企業との関
たという Wilson(1994)などの先行研究の分
係,設備環境,在庫・倉庫管理などがあげられ
析結果を踏まえ,最近における各選択基準要素
た。一方,価格とサービスの重要度は低かった。
の重要度と製品カテゴリーによる影響について
同研究の分析結果は,長年支持されてきた品質,
検証した研究もある。Bharadwaj(2004)は,
価格,デリバリー,サービスという伝統的なサ
アメリカにおけるエレクトロニクス製品メーカ
プライヤー選択基準要素が不適切になってきて
ーの購買担当者を対象とする実証研究を行い,
いるとして疑問を提起するとともに,継続的改
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善やチャネル関係性(購買企業との関係,設備
もう一つの目的は,標準品と特注品という異な
環境,在庫・倉庫管理など)がサプライヤーを
った製品タイプの間で,選択基準の重要度に差
評価するプロセスにおいて,重要な要素となっ
異があるかどうかについて検証することである。
てきていることを示した。
標準品を代表する製品としてスイッチを,特注
品を代表する製品としてはプリント基板をとり
あげた。研究結果によれば,特注品では標準品
★ 日本企業の選択基準
に比較して,品質,地理的近隣性,デザイン,
これまで紹介してきたように,選択基準に関
技術能力,製造能力,過去の経験が選択基準と
する実証研究の多くはアメリカ企業を対象とし
してより重要であった。一方,標準品では特注
ている。ヨーロッパ企業を対象とした研究も一
品に比較して知名度がより重視された。価格の
部見受けられるが,日本企業を対象とした研究
重要度については,標準品と特注品との間に差
は非常に少ない。Hirakubo and Kublin(1998)
異はなかった。このように,Hirakubo and
は数少ない日本企業を対象とした研究であり,
Kublin(1998)は,標準品と特注品という両製
日本のエレクトロニクス製品および事務用機器
品カテゴリーの間で,選択基準の重要度に差異
メーカーの購買責任者を対象とする実証分析を
があることを示した。
行った。同研究の目的の一つは,日本のエレク
また,日本とアメリカとの間で選択基準を比
トロニクス製品および事務用機器メーカーが,
較した研究もある。Cusumano and Takeishi
価格や品質などの合理的な選択基準要素よりも,
(1991)は,日本とアメリカにおける自動車メ
サプライヤーとの関係維持にウエイトを置いて
ーカーの購買もしくは製品企画担当者を対象に
購買意思決定を行っているかどうかについて検
した実証研究を行い,日米の自動車メーカーの
証することである。学術論文のみならずビジネ
間で部品を購入する際の選択基準を比較した。
スの報道でも,日本の購買企業とサプライヤー
研究結果によれば,アメリカの自動車メーカー
との関係は協力的,相互依存的,統合的でしば
が価格,コストを最優先するという一般的な印
しば排他的であり,外部のサプライヤー,特に
象とは異なり,日本の自動車メーカーの方が価
日本以外の企業がこの関係に入り込むのはなか
格をアメリカの自動車メーカー以上に重視して
なかできないとされている。同研究の分析結果
いる。この結果は,日本の自動車メーカーが品
では,価格が選択基準として最も重要とされ,
質のレベルと改善能力に加え,価格の安さをサ
デリバリーが二番目,品質が三番目,コストダ
プライヤー選択の際に重視していることを示し
ウン能力が四番目,技術が五番目の重要度を示
ている。逆に,アメリカの自動車メーカーの方
した。また,購買において,三つの選択基準要
が過去の取引実績と資本関係を重視している。
素(品質,価格,デリバリー)が,系列などの
同研究によれば,アメリカの自動車メーカーに
関係要因(サプライヤーが関係会社である,購
おける内製部門の役割の大きさが,アメリカで
買企業がサプライヤーに資本参加している,購
資本関係が重視される背景になっている可能性
買企業とサプライヤーとが互恵関係にある)よ
もある。
りも重要であった。このように,エレクトロニ
クス部品を購入する日本企業は,サプライヤー
★ おわりにー選択基準と生産財
マーケティングー
との関係よりも製品の特徴やサプライヤーの能
力など,合理的な選択基準に基づいて購買の意
本稿では,いくつかの角度からサプライヤー
思決定を行っていることが示された。同研究の
● JAPAN MARKETING JOURNAL 122
マーケティングジャーナル Vol.31 No.2(2011)
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サプライヤー選択基準の研究
選択基準に関する主要な先行研究を紹介してき
た。これらの研究は,企業の購買意思決定プロ
セスにおけるメカニズムを明らかにすることで,
生産財マーケティングに示唆を提供してきたと
いえる。一方で,生産財マーケティングに関し
ては,サプライヤーが選択基準において顧客の
ニーズに応えていないことを指摘する研究もあ
る。Lambert, Adams and Emmelhainz(1997)
は,アメリカにおけるヘルスケア業界の購買責
任者を対象とする実証研究を行い,サプライヤ
ーが選択基準において購買企業の要求を満たし
ているかどうかについて考察した。同研究は,
選択基準において購買企業が求める重要度と購
買企業によるサプライヤーの評価との比較を行
った。研究結果では,ほとんどすべての選択基
準要素において,各サプライヤーに対する評価
が購買企業の求める重要度を下回っており,サ
プライヤーが選択基準で顧客企業の要求を満た
していないことが示された。
これまで紹介した先行研究が指摘しているよ
うに,選択基準は事業環境などの要因によって
影響されるため,購買企業の選択基準を正確に
把握することが難しい場合もある。筆者のマー
ケティングにおける実務経験でも,同一業界で
同一製品を購入するという状況で,購買企業の
事業戦略や事業環境により,企業間で選択基準
が全く異なっている例があった。これは同一業
界で企業によって選択基準が異なる例であるが,
一般的に業界,企業,購買担当者などの次元で,
購買企業は異なった基準でサプライヤーを選択
する可能性がある。マーケターは,このような
購買企業の選択基準を正確に把握し,効果的な
マーケティング戦略を構築する必要がある。
今後,実務と学術との間で問題意識や情報の
共有が促進され,企業の購買プロセスにおける
メカニズムを明らかにすることで,サプライヤ
ー選択基準の研究が生産財マーケティングに貢
献していくことが期待される。
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参考文献
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渋谷 義行(しぶや よしゆき)
一橋大学商学部卒業。現在早稲田大学大学院商学研
究科博士後期課程在学中。
専攻はマーケティング戦略。
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