食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(130109)

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食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(130109)
20 代男性 ラーメンを食べて川辺を散策中に蕁麻疹が出現。その後ふらつきと冷や汗が出現し
て立っていられなくなったとのことで来院。ショックバイタル。以前も食事で蕁麻疹が出現したこと
があるが、ショックになったのは初めて。同じものを食べても、症状が出現することはほとんどない。
数年前にアレルギーの検査をしたことがあり、このときには甲殻類で陽性だった。母親も甲殻類に
アレルギーがあるという。
最も可能性の高いのは食物依存性運動誘発性アナフィラキシー。この疾患について復習。
基本

食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FEIAn/FDEIA)は原因食物を摂取後、運動を行った
ときにアナフィラキシーを起こす疾患。1)

運動に関連して、全身の蕁麻疹、血管性浮腫、閉塞性呼吸困難、腹部症状、血圧低下、意
識障害などのアナフィラキシーショック症状を起こす症候群を、運動誘発性アナフィラキシー
(exercise induced anaphylaxis:EIAn)というが、このうち、食物摂取時にのみ EIAn の現れる
ものを食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(food-dependent EIAn:FEIAn)という。2)

EIAn は、運動刺激が迷走神経の介在により、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなど
のケミカルメディエーターを大量に放出させることにより発症すると考えられているが、詳細
は不明である。2)

FEIAn では、アレルゲン食物(えび、かに、セロリ、小麦など)摂取後の運動により、アナフィラ
キシーショック症状が誘発されるが、その理由としては、①運動により食物抗原の吸収が増
加する、②マスト細胞からのケミカルメディエーターの遊離が増加する、などが考えられてい
る。2)

エビ・カニなどの甲殻類での発症は若年者にとくに多く、小麦による発症は中高年者を中心
にして全年齢層に広がっていると考えられた。このように、わが国での FDEIA の原因食物は
小麦および甲殻類または軟体類で全体の大部分を占めている。ただしこれは世界的な傾向
とは異なりわが国での特徴的な現象である。さらに特記すべき点として、通常アトピー性皮膚
炎の三大アレルゲンと考えられている卵・牛乳・大豆による報告が FDEIA ではほとんど認め
られていない。3)

症例に関与している因子として、Okazaki らは、①疲労、②睡眠不足、③風邪症状、④湿気の
高い環境、⑤寒冷刺激などを、また橋爪らは心身的ストレスの関与を挙げており、もしかする
と FDEIA には食物と運動以外にも発症のための必須因子が存在しているという可能性も疑
われる。3)
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臨床型分類 1)
症状
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アナフィラキシーの症状は蕁麻疹、血管浮腫、紅斑など皮膚症状は 100%の必発で、低血圧、
動悸など循環器ショックが 67.3%、喘息様呼吸器症状が 654%、腹痛、吐き気、下痢など消化
器症状が 32.7%、鼻汁、鼻閉など鼻炎症状が 30.8%、その他頭痛など 11.5%であった。5)

FEIAn では、通常ある特定の食物摂取後 2~3 時間以内に運動を行ったときに EIAn と同様
のアナフィラキシーショック症状(運動後 30 分以内に皮膚の発赤、募麻疹、血管性浮腫など
が出現し、その後、呼吸困難、発汗、血圧低下、意識障害などが出現し、多くは 2 時間程度
で軽快する)をきたす。ただし、このアレルゲン食物を摂取しても、運動しなければアナフィラ
キシーショックは起こさない。2)

NSAIDs や食品添加物(サリチル酸製剤)、アルコール飲料や入浴で症状が増強する。

同一の食物と運動負荷の組み合わせであれば常に発症するとは言えず、他の多くの要因が
関与するなどその発症機序については必ずしも明らかでない点も少なくない。4)

軽症では運動により蕁麻疹だけ、鼻炎だけ出現することもある。5)
診断

FEIAn の診断には問診が特に重要である。誘発される症状がアナフィラキシーショックといえ
るものか、運動との関連があるのか、食事あるいは特定の食物が関係しているのかなどを
詳しく聴取しなければならない。2)

皮膚テストや血清中の特異 IgE は診断の参考にはなるが、絶対的なものではない。確定診断
には負荷テストが必要であるが、誘発される症状が重篤な場合には、いかなる場合にも対応
できる態勢で行わなければならない。2)

FDEIA の診断を困難にしている最大の理由は誘発試験における再現性の低さという点であ
る。すなわち、患者の問診から FDEIA を疑い、患者にアナフィラキシー発症時と全く同じ食事
を摂り全く同じ運動をしてもらうという誘発試験を試みても、何も症状が出現しないという症例
をしばしば経験する。この問題点を解決する 1 つの手段として、われわれは誘発試験にアス
ピリン負荷を加えるという方法を提案している。3)

アスピリンを併用することで、非併用の場合と比較して診断率が 42%から 88%へと明らかに
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向上した。4)
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アスピリンの FEIAn 発症増強機序の一つとしては、食物抗原の吸収増加によることが報告さ
れている。これには、NSAIDs によるプロスタグランジン(PG)産生減少に伴って胃粘膜防御
力が低下し、胃酸・ペプシンを主とする攻撃因子により胃の粘膜傷害が生ずることが関与し
ていると考えられる。4)
治療

原因食物摂取から 2 時間(可能なら 4 時間)運動は控える。1)

原因食物を摂らなければ運動は可能である(必ずしも運動を全面禁止にする必要はない)。
1)

運動前後での原因食物除去がもっとも確実な予防的治療である。2)

10 歳代の小・中学生は学校の給食後の昼休みや体育の授業中の発症が多いので、運動中
に皮膚の痒み、頭痛、熱感など初期症状を感じたら直ちに運動を中止して症状が消えるまで
休むことが大切である。5)

アナフィラキシー症状の治療は、通常、エピネフリンの皮下注射が第一選択であり、症状に
応じて、酸素吸入、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬の投与と輸液をする。5)

抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤を予防的に投与しても予防的効果は少ない。2)

これまで、いくつかの報告はあるものの発症阻止が可能な薬剤について確定したものは存在
しない。しかしながら、DSCG については数件の有効性の報告がある。最近、PGE 製薬の
有効性を示す報告がされた。しかしながら、必ずしもすべての症例で有効とは言えないようで
ある。アスピリンの粘膜障害に対する治療として PGE 製剤投与が確立していることと FEIAn
発症防止効果とを考え合わせると大変興味深い。4)
予後

予後について、患者への細心の生活指導により発作を減らせることは可能である。また、食
物に対する IgE 抗体価の低下も期待できる。しかし、FDEIAn により突然死した患者の報告が
あり、直接の死因ではなくとも転倒して骨折した患者の報告、意識障害により交通事故を起
こした運転手および水泳中やスキー滑走中のアナフィラキシー発作の自験例を見ると、随伴
事故による生命への危険性も否定できない。心臓・循環器の合併症があればさらに危険姓
は高い。従って、患者、医療関係者は言うに及ばず教育関係者に対してもこの疾患の周知と
理解を求める広い啓発活動が望まれる。5)
経過がきちんと聴取できれば、疾患を疑うのはそれほど難しくは無いし、ショックの急性期を乗り
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切れば日常生活に戻ることは容易だ。問題はこれからの方針の方だ。予防や生活指導、緊急時
の対応の仕方などを相談する必要がある。専門医との協力のみならず、周囲で生活する人たち
の協力が大きな力となるかもしれない。
参考文献
1.
「食物アレルギーの診療の手引き 2011」検討委員会.食物アレルギーの診療の手引き 2011
http://www.allergy.go.jp/allergy/guideline/05/05_2011.pdf
2.
小倉由紀子, 小倉英郎.食物依存性運動誘発性アナフィラキシー.Modern Physician 22(4):
487-489, 2002.
3.
原田晋.食物依存性運動誘発性アナフィラキシーについて.臨床スポーツ医学 18(1): 121-123,
2001.
4.
相原 雄幸.食物依存性運動誘発アナフィラキシーの最近の傾向と進歩.日本小児アレルギー
学会誌 Vol. 26 (2012) No. 1
5.
須甲 松伸.食物依存性運動誘発アナフィラキシー.日本内科学会雑誌 Vol. 93 (2004) No. 10
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