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証券会社 - 格付投資情報センター

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業種別格付方法
公表日:2014 年 5 月 22 日
証券会社
この格付方法は、一般に「証券会社」と呼ばれる業態を対象にしている。流通市場における売買の仲
介や自己売買をはじめ、発行市場における株式・債券の引受けなどを行う証券会社を念頭に置いている
が、オンライン証券やリテール証券、ホールセール証券(投資銀行)など業務特化型の証券会社にもこ
の格付方法を適用することがある。
I.事業リスクの評価
1.産業リスクの見方
証券会社の業務は、かつてはブローカレッジ中心だったが、現在の主要な業務はリテール・ブローカ
レッジやウェルス・マネジメント、アセット・マネジメント、投資銀行、セールス&トレーディング、
ヘッジファンド・機関投資家向け資本市場サービス、プリンシパル・インベストメントなど多岐にわた
る。商業銀行への対抗上、顧客の裾野拡大や市況に左右されにくい残高連動型収入(アニュタイズド型
収入)獲得の観点から、企業向けローンやリテール向け預金・貸し出しサービスを提供する場合もある。
証券業は、もともと損益の変動が大きく産業リスクは比較的大きいが、以下のような業界トレンドか
ら、産業リスクが一段と大きくなっている。
1)投資家、事業会社など顧客に対する優位が薄れてきたことによる継続的な収益性の低下
事業法人・金融法人の経験・知識の蓄積、機関投資家・ヘッジファンドにおけるリサーチ機能の強化
やトレーディング技術の著しい発展などにより、これらの顧客に対する証券会社の優位は薄れ、付加価
値の高いサービスを提供しにくくなっている。この結果、収益性は継続的に低下圧力にさらされている。
顧客に対する優位を保つうえで、巨大な資本力やグローバルなネットワークを持つことの重要性が増し
ているため、自らのバランスシートを使いリスクテークすることが競争力や収益性を維持するうえで不
可避になっている。
2)バランスシートを使うリスクの大きな業務の拡大
資本市場の大幅な拡大とそれに伴う機関投資家・ヘッジファンドの台頭、株式委託手数料自由化への
対応、商業銀行など異業種との競合激化などから、トレーディングポジションを大幅に拡大させ、ロー
ンやエクイティも提供するなど、バランスシートを使うビジネスを伸ばしてきた。また、ヘッジファン
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当サイト、当サイトの内容その他当サイトに含まれる情報に関する一切の権利・利益(著作権その他の知的財産権及びノウハウを含みます)は、特段の記載がない限り、株式会社
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翻訳及び翻案等を含みます)し、又は使用する目的で保管することは禁止されています。
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ド向けに、証券売買の執行、清算・決済やカストディ、証券レンディング、レバレッジ取引に用いられ
る資金のファイナンスにとどまらず、ミドルオフィス業務やバックオフィス業務の代行まで行う、プラ
イムブローカレッジといわれる「丸抱え型」の総合的なフィービジネスを手掛けるところもある。2007
~2008 年の欧米における金融危機以降、危機への反省から規制が大幅に強化されて、レバレッジの拡
大やリスクの大きな業務が制限されるようになったが、1970 年代以前の伝統的な証券会社・投資銀行
と比べるとなお事業リスクは大きい。
3)金融の技術革新・イノベーションによる商品開発
金融の技術革新・イノベーションによる商品開発は、顧客への付加価値提供の有力なツールになるこ
とから、証券会社の競争力を高めるとともに、産業界にもプラスの影響を与える。ただし、証券界・産
業界がそうした新商品を通じて過度に利益追求に走るような場合には、バブルの生成や市場の歪みをも
たらし、証券会社の事業リスクを著しく高めることになる。SPC(特別目的会社)やデリバティブなど
を介した不正・粉飾や会計・税務上のグレーな取引が行われることも少なくなく、場合によっては経営
を揺るがす事態に発展するケースもある。監督当局や監査法人がこれを見逃している可能性もあるので、
金融の技術革新・イノベーションに基づく新商品・ソリューションを積極的に提供することで利益を上
げている場合には、慎重に評価する必要がある。
(1)市場の規模・成長性・ボラティリティー
株式、債券、デリバティブなど、証券会社がフィールドとする金融サービス市場は極めて大きい。
経済・企業活動のグローバル化の進展や不確実性の上昇は証券会社が提供する金融サービスへの潜在
需要を高めており、市場の成長性も高いといえる。資金調達に絡む証券の引き受け・販売業務や M&A
(合併・買収)アドバイザリー業務など伝統的な投資銀行業務は長期的に伸びていくだろう。また、先
進国は総じて高齢化傾向にあり、年金・退職金の資本市場への継続的な流入が見込める。それに伴って、
アセット・マネジメント業務や機関投資家向けの売買執行・リサーチ機能の提供といった業務も、やは
り拡大基調をたどると予想される。日本においては、個人の金融資産運用における「貯蓄から投資へ」
という流れも追い風だ。
市場のボラティリティーは大きい。景気の変動に伴って株価や金利が循環的に動くほか、株式などの
資本市場ではバブルの生成・崩壊がつきものだ。大きなバブルが崩壊した直後など、市場参加者が極端
に弱気に傾き、リスク許容度の大幅な低下から、市場の取引が著しく低迷する場合もある。
規制強化によって、高リスクのビジネスやセールス&トレーディング業務が大きな影響を受けている。
セールス&トレーディング業務の規模・成長性が大幅に鈍化する一方、規制が良い効果を生めば、ボラ
ティリティーは縮小する可能性がある。
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(2)業界の構造(競争状況)
米国や日本などの先進国では、資本市場が発展し拡大する一方、株式売買委託手数料の自由化をはじ
めとする規制緩和や市場の国際化により、競争環境は厳しい。証券会社はブローカレッジ業務の収益性
が大きく低下する中、ビジネスの多様化や差別化を進めた。投資銀行もセールス&トレーディング業務
を大幅に拡大させた。一方、特定業務に特化した証券会社・投資銀行も一定の存在感・競争力を持つな
ど、ビジネスモデルは多様化した。大手では、資本力が競争上の優位につながる傾向が強まったことか
ら、商業銀行グループも絡んだ業界再編が進んで規模が拡大した。また、欧米の大手では ROE(株主
資本利益率)を高めるため、過度な財務レバレッジをかける傾向も強まった。
ただ、2007~2008 年の欧米における金融危機以降、再編と規制強化によって業界の構造は大きく変
わってきている。セールス&トレーディングの市場の縮小や規制コストの増加などによって、グローバ
ルにフルラインの業務を展開できる大手は限られるようになってきており、一部市場からの撤退・縮小
などの動きが続いている。
日本の株式市場の構造をみると、株式保有の面では低下傾向にあるとはいえ個人の構成比が依然とし
て最大だが、売買構成比となると外国人が非常に高くなっている。外国人投資家主導で流通面の機関化
現象が一段と進む中、外資系証券会社の存在感が高まっている。IT(情報技術)の進展などを背景に
2000 年前後からオンライン証券の勢力が拡大しているのも特徴だ。オンライン証券間の競争は激しく、
市場地位が短期間で変動しやすいが、日本においては、既に専業上位数社による寡占化が進んでおり、
業界構造は比較的安定している。
(3)顧客の継続性・安定性
証券会社は顧客に提供するサービスの付加価値が競争力の源泉になっているだけに、より高付加価値
のサービスを提供する会社が現れれば、顧客あるいはビジネス機会を失うことがある。一般に、投資銀
行は商業銀行と異なり、案件ごとに顧客から選択される。日本においても、主幹事証券会社でも顧客の
すべての金融サービスを任せられるわけではない。ただ、企業から主幹事証券会社への継続的な情報提
供でエージェンシーコスト引き下げ効果がある場合、より強固な取引関係を構築できる。また、機関投
資家向け資本市場業務やオンライン証券では、顧客とのシステム接続が取引継続の有力な武器になる。
(4)保護・規制、公共性
金融・資本市場の制度設計の状況と、健全性維持に向けた規制・監督当局の意思と能力を検討する。
具体的には、平時における健全性維持・危機の未然防止策や、危機が発生した場合の行政の対応策など
を評価する。
以前は世界的にみても、証券会社に特有の破綻処理制度はなかった。ただ、グローバルに活動してい
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る証券会社・投資銀行は、デリバティブ取引などを通じて金融システムへの影響が大きくなっている。
2007~2008 年の欧米における金融危機を経て、主要国の金融監督当局は、グローバルに活動する大規
模金融機関を「システム上重要な金融機関(Systemically Important Financial Institutions:SIFIs)」
と規定し、世界共通の基準で規制・監督するようになった。大手の証券会社・投資銀行は事実上、銀行
と同じ規制・監督の枠組みに移行し、証券会社・投資銀行も含む破綻処理法制の整備が進んでいる。
日本においても、2014 年 3 月に改正預金保険法が施行され「金融システムの安定を図るための金融
機関等の資産及び負債の秩序ある処理(Resolution)に関する措置」が整備されるなど、国際的な枠組
みへの対応が一定程度進展している。Resolution の対象は金融業全体であり、金融商品取引業者である
証券会社も含まれる。今後はピア・レビューを通じて国際的な整合性が評価されることになる。
2.個別企業リスクの見方
(1)営業基盤
証券会社にとって、顧客基盤の厚みと市場地位、サービスの競争力、規模・ビジネス展開力が持続的
で安定的な収益獲得の源泉であり、環境変化への対応力につながる。
ホールセール部門では、主幹事・幹事会社数や、各種リーグテーブルの実績、機関投資家・ヘッジフ
ァンドなど有力な投資家との取引関係を評価する。主幹事証券会社が必ずしも企業の全てのディールを
任されるわけではないが、企業の財務戦略への深い関与や企業オーナー自身との取引(富裕層取引)な
どがあれば、定性的な強みとして評価する。一方、各種リーグテーブルの実績はその時々の競争力を端
的に表わすといえる。ただし、リーグテーブル上位=高収益とは限らない点には注意が必要で、利益の
獲得状況も併せて確認する。
リテール部門では、当該国全体のリスク資産に占める当該証券会社の預かり資産のシェアといった全
体像に加え、顧客数やその質を評価する。顧客の質により顧客当たり収益性や預かり資産の規模が大き
く異なるためだ。
(2)リスクプロフィール/リスク選好度
証券会社が抱えるリスクには、大規模で複雑なトレーディングポジションや複雑なデリバティブポジ
ションに係わる市場リスク、カウンターパーティリスク、プリンシパル・インベストメントのエクスポ
ージャーなど低流動性資産の価値下落リスク、流動性リスクなどがある。こうした主要なリスクをどの
ように取っているかを示すリスクプロフィールは、将来の財務リスク(後述のリスク耐久力、収益耐久
力、コスト構造、流動性)の変化を決定付ける潜在的な特徴及びリスクテーク志向の強さを表し、環境
悪化時の大規模な損失の可能性を検討するのに有用である。
証券会社の業務領域や営業エリアは多様になっている。業務領域や営業エリアの拡大に対応して、適
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切かつ十分な経営管理やリスク管理、内部統制が機能しているかがポイントになる。積極的に事業展開
を進め組織が巨大化しリスク選好度が高くなる一方、経営管理などが十分に伴っていない場合には、信
用力にネガティブな影響を与える。証券会社が抱えるリスクが複雑化、高度化し、業務範囲も広がって
いることから、ビジネスモデルに見合った経営管理態勢を構築することが不可欠である。
II.財務リスクの評価
(1)リスク耐久力
証券会社にとっても、資本はソルベンシー(支払い余力)を支える決定的な要素であり、その不足は
破綻への最終的なトリガーになる。伝統的なブローカレッジ業務が主体だった時は、短期間にソルベン
シーが損なわれる可能性は低かった。しかし、株式委託手数料自由化への対応に向けた収益源の多様化
や商業銀行との競争、様々な顧客ニーズへの対応が求められる環境下、流動性が低くリスクの大きな資
産や複雑な裁定ポジションを抱えるなど、バランスシートをリスクにさらすようになり、短期間のうち
に多額の損失を計上するケースがある。このため、ソルベンシー分析の重要性が増している。
特に、ホールセール業務を展開する証券会社・投資銀行は、バランスシートを大規模に使う事業が大
きく、預金取扱金融機関と同様に経済資本ベースの資本の十分性を重視する。ストレステストやシナリ
オ分析(センシティビティ分析)によってリスクの増加額や損失額を見積もり、それを踏まえて資本の
十分性を検証するようにしている。
1)リスク対リスクバッファー
リスクは、VaR(バリューアットリスク)などのリスク量をベースに、ストレスシナリオへの脆弱性
を加味して評価する。トレーディング資産は証券会社の内部管理基準をベースにした実質的な保有期間
に基づいて評価するが、市場の混乱時は売却が困難な、すなわち市場流動性に欠ける資産が含まれる場
合は、保有期間を調整する場合がある。
なお、日本の証券自己資本規制比率では、自己資本から固定資産などを控除するが、ソルベンシー分
析上はこのような調整はしない。ただ、規制の考え方には保守性の観点から合理的な面もあるので、控
除後自己資本の水準も把握している。
ストレスシナリオで考慮するリスクは、主に、低流動性資産の価値が下落するリスクや、リスクの大
きな事業領域における損失や訴訟リスク、市場の急激な変動やヘッジエラー、相関関係が崩れた場合の
市場リスク、オペレーショナルリスクの顕在化などに伴うトレーディング資産で多額の損失を計上する
リスクなどである。
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2) ネットレバレッジ比率
総資産からレポ勘定を差し引いた額の純資産に対する比率(%)で、会計上のレバレッジ水準を示す
指標だ。リスク量あるいはリスク調整後資産と資本との比較ではないが、規制アービトラージの動きが
あることを考えれば、こうした指標を補完的指標として分析しておくことも重要である。グロスのレバ
レッジではなく、ネットのレバレッジをみるのは、証券会社の場合、国債などを担保にしたレポ勘定に
よってバランスシートが両建てで膨らむ傾向があるためだ。もっとも、レポ勘定の担保に市場流動性の
低い証券が使われることもあり、その場合には総資産から控除しないなど、調整が必要だ。
3) リスク管理態勢・自己資本管理
定量指標に加え、リスク管理態勢や自己資本管理を検証するなど、定性面からも将来にわたり資本を
維持する能力を評価する。
(1)証券会社自身が経済資本をどのように評価・認識・配分しているか(2)リスクを網羅的かつ的
確に認識できているか(3)ビジネス上の知見を生かし、経営に重大な影響を及ぼし得る事業リスクを
継続的に検証することで、リスクの急激な蓄積を回避・抑制するとともに、リスク顕在化時の対応策を
事前に準備し、リスク顕在化後は機動的にリスクテーク方針を転換できるか――などがポイントになる。
(2)収益耐久力
業界特性として、ほとんどのビジネスで収益の変動性が高いが、ビジネスを多様化させることで、会
社全体の収益変動を抑制できているかが格付評価上のポイントになる。
収益変動は、伝統的なリテール・ブローカレッジ業務が中心の証券会社の主たるリスクである。リテ
ール・ブローカレッジ業務は資本をあまり使わないものの、一般に固定費の負担が重く、株式委託手数
料など営業収益の変化によって利益が大きく変動するためだ。ホールセール業務も、投資銀行業務やセ
ールス&トレーディング業務の収入は変動しやすい。また、営業基盤と競争力を維持するには一定の陣
容・インフラを抱える必要があり、長期間ビジネスが低迷する局面では、収益変動リスクが高まる。
1) 変動係数(Coefficient of Variation:CV)
変動係数(=標準偏差/平均)は変動性の相対的指標で、純営業収益ベースと税引前利益ベースで算
出する。収益および利益の分布は正規分布よりも裾野が広くなる傾向がある。
2)収益源の分散・多様性、収益の質、安定収益の構成比
収益構成をビジネスラインや地域、顧客、プロダクツなどの観点でみて、その分散度合いを評価する。
また、顧客取引から得られる質の高い収益の構成比や、アセット・マネジメント業務の収入や投資信託
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の事務代行手数料、残高に連動して報酬が得られる SMA(セパレート・マネジメント・アカウント)
やファンドラップ(投資を一任する運用商品)など、比較的安定した収益の構成比を確認する。これら
安定収益による固定費カバー率なども、収益の安定感を評価するうえで重要な目安となろう。市況に左
右されにくい残高連動型収入(アニュタイズド型収入)を獲得できることから、企業向けローンやリテ
ール向け預金・貸し出しサービスを行っている場合などは、それらの収益も安定収益源として評価して
いる。
(3)コスト構造
収益変動が大きい業態だけに、柔軟なコスト構造を構築することで利益の変動を抑制できているかも
チェックしておく必要がある。下記の経費率やオペレーティングレバレッジといった定量指標に加え、
人事報酬制度・慣行や IT 投資、人員計画などといった将来の固定費負担につながる投資の方針や固定
費の抑制、変動費化の度合いなど、定性的な要素も踏まえて、コスト構造の柔軟性を評価している。
1) 経費率
純営業収益に占める販管費の比率(%)で、経費効率を示す代表的な指標である。
2) オペレーティングレバレッジ
営業利益に対する限界利益の割合。限界利益は純営業収益から変動費を差し引いた額である。一方、
営業利益は限界利益から固定費を差し引いた額なので、オペレーティングレバレッジの数値が高いほど、
固定費負担が重く赤字になりやすい構造といえる。
(4)流動性
流動性も、資本と同様、その不足は証券会社が破綻する最終的なトリガーの 1 つになることから、格
付分析上、重視している。証券会社は預金という安定した調達基盤がなく、かつ、トレーディングポジ
ションを中心にバランスシートを大きく変動させながら事業展開しているため、十分な流動性を維持で
きているか、慎重な分析が必要である。特に投資銀行にとっての重要度は高い。
流動性の分析は(1)各国のインターバンク市場等の構造分析(2)市場や中央銀行等の流動性へのア
クセス状況といった環境分析(3)各社の資産負債構造や流動性ストレステスト、流動性リスク管理態
勢の分析――などで構成される。
日本では、多くの証券会社が日本銀行に口座を持ち、日本銀行の資金に直接アクセス可能な状態にな
っていることが、流動性確保の面で強みになっている。レポ市場も整備が進んでいる。ただし、流動性
の極端に乏しい証券化商品や日本国債以外の債券などを担保にしたレポ取引は市場環境次第で資金調
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達源として機能しなくなる可能性があるので注意が必要である。
証券会社は資産の多くが時価評価の対象であるトレーディング勘定で構成されるため、換金性が高い
点やインターバンク市場での資金調達能力が高いことが流動性の観点で強みになっている。しかし、非
流動性資産やヘアカット率の高い資産が多かったり、資産負債の期間や通貨のミスマッチが大きくなっ
たりしている場合は、ストレスがかかった時に、流動性が低下する可能性があるので注意を要する。
III.証券会社業界の格付
発行体格付
個別企業リスク
財務リスク
重要度
営業基盤
◎
リスクプロフィール/リスク選好度
◎
指標/着眼点
重要度
リスク対リスクバッファー
リスク耐久力
収益耐久力
◎
ネットレバレッジ比率
○
リスク管理態勢・自己資本管理
◎
純営業収益CV
◎
税引前利益CV
○
収益源の分散・多様性、収益の質、
安定収益の構成比
コスト構造
流動性
◎
経費率
◎
オペレーティングレバレッジ
資産負債構造、流動性ストレステスト、
◎
流動性リスク管理態勢
◎
産業リスク 比較的大きい
注) 重要度は、◎極めて重視 ○重視 △比較的重視
*これまで公表した同種の格付方法は、本稿に代替されます。
R&I が格付対象の評価に用いる格付付与方針及び格付方法(以下「格付付与方針等」と総称します)は、R&I が独自の分析、研究等に基づいて作成し
た R&I の意見にすぎず、R&I は、格付付与方針等の正確性、適時性、網羅性、完全性、商品性、及び特定目的への適合性その他一切の事項について、明
示・黙示を問わず、何ら表明又は保証をするものではありません。また、R&I は、格付付与方針等の開示によって、いずれかの者の投資判断や財務等に
関する助言を行い、又は投資の是非等の推奨をするものではありません。R&I は、格付付与方針等の内容、使用等に関して使用者その他の第三者に発生
する損害等につき、請求原因の如何や R&I の帰責性を問わず、何ら責任を負いません。格付付与方針等に関する一切の権利・利益(特許権、著作権そ
の他の知的財産権及びノウハウを含みます)は、R&I に帰属します。R&I の事前の書面による許諾無く、格付付与方針等の全部又は一部を自己使用の目
的を超えて使用(複製、改変、送信、頒布、譲渡、貸与、翻訳及び翻案等を含みます)し、又は使用する目的で保管することは禁止されています。
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