平成27年度 卒業証書授与式「式辞」(平成28年3月16日)

平成27年度
卒業証書授与式「式辞」(平成28年3月16日)
やわらかい早春の陽を浴び、命あるものがみずみずしく輝き始めています。この
佳き日に「平成27年度 新潟県立長岡高等学校 第68回卒業証書授与式」をこ
のように挙行できますことは、私たち教職員にとりまして、この上もない喜びで
あります。卒業証書授与式にあたり、本校 同窓会会長 反町和夫様、親師会会長
小島孝之様、後援会会長 巻渕文彰様をはじめ、多くのご来賓の皆様、そして保
護者の皆様が、卒業生の前途を祝するためご臨席いただきました。心から御礼申
し上げる次第であります。とりわけ、卒業生の保護者の皆様、お喜びはひとしお
のことと存じます。お子様は本校での学校生活を通し大きく成長されました。そ
して、ここに栄えある卒業の日を迎えられました。まことにおめでとうございま
す。
ただ今、一人一人のお名前を読み上げる形をとって、卒業証書を卒業生の皆さん
に授与いたしました。卒業生の皆さん、おめでとうございます。平素から積み重
ねてこられた、皆さんの精進と努力のたまものであり、心から敬意を表します。
皆さんは、本校の伝統精神である「和而不同」、「剛健質樸」、「豪壮快活」の意
味するところをしっかり理解し、そのことを実践する日々を送ってきました。私
は皆さんに機会を捉え、「長高生として、大きな夢を持ち、高い志を掲げてほし
い。」と申してまいりました。それを叶えるのため、「日々の学習をしっかりと
果たすことはもちろん、学校行事における諸活動、そして部活動等も全力を尽く
し、何事にも自信をもってチャレンジしてほしい」と申してまいりました。皆さ
ん一人一人は、長高生としての誇りを感じながら充実した学校生活を送ってきま
した。かけがえない青春の日々を長岡高校で過ごし、友と研鑽を積み重ね、本日
晴れて卒業の時を迎えることができました。皆さんを常に暖かく見守ってくれた
ご家族の皆様をはじめ、導いていただいた先生方、ともに励まし合った友、そし
て地域の皆様の支えがあったことをけっして忘れてならないと存じます。そうし
た大切な方々に、改めて、感謝の気持ちを表することを忘れないでください。長
岡高校生に寄せられている期待はこれからもどんどん大きいものになるでしょ
う。長岡高校で学んだ意義をしっかり意識することが大切だということを改めて
感じてほしいし、皆さんにはその自覚をぜひもってほしいと、望みたいと存じま
す。我が校の大切な伝統精神を心に置き、それぞれの夢の実現のために、果敢に
新たなものにチャレンジしていってもらいたいと思います。真に生き甲斐のある
人生を歩んでほしいと願っています。長岡高校はこれから、皆さんの大切な母校
となります。母校は今、創立150周年に向け、輝かしい歩みを着実に進めてい
ます。その中心にいたのがまさに皆さんでありました。平成25年度から開始さ
れたスーパーサイエンスハイスクール・SSH事業の初年度学年として、とても
レベルの高いさまざまな取組にチャレンジを続けていただきました。1年生で全
員で取り組んだ「サイエンスイマージョンプログラム」、「課題研究基礎」など、
そしてアオーレ長岡アリーナで開催された「新潟県生徒研究発表会 in EchigoNAGAOKA」をはじめ、皆さんには3年間、SSH事業の先頭に立って取り組んで
もらいました。本校は今後も、長高SSH事業の開発課題に定めている「米百俵
「長岡」に、科学技術・グローバル人材育成のための中核拠点を形成する」こと
を目指し、新たなる取組を一層進めてまいります。皆さんは、本日から長岡高校
同窓の一員として、本校を見守っていただくと同時に、本校へのご支援とご協力
もお願いしたいと申しておきます。
さて、私は、皆さんに講話や和同會雑誌などを通して、心のあり方や志を定める
ことの大切さなど、示してまいりました。特に2つほど思い返してみます。平成
25年度「和同會雑誌153号」において、中国古典「大学」から、「苟に日に
新たに、日日に新たに、又日に新たなり」の言葉を紹介しました。新しい一日を
迎えるたびに自分自身を高める、毎日毎日それを繰り返す、日が新しくなるたび
に自分も新たにするということを意味しています。古代中国、殷(いん)の伝説的
名君の湯王が毎日使う手水のたらいにこの銘辞を刻んで日々、自戒としたと伝え
られています。自分の体の汚れをこすって落とすように、心も洗い清め、昨日の
悪習を取り除き新しい自分を磨いていくという意味です。それを来る日も来る日
も弛まず行うということです。殷の湯王はこの言葉を日に3度唱え、日々自戒に
努めていたと記されています。昨日があって今日がある、今日があるから明日も
ある。日々の繰り返しの中で心が磨かれ、かけがえのないものがその内面に育っ
ていくものであるということです。このことが自らを高めることに通じるはずで
す。「日日に新たに、又日に新たなり」。一日一日を確実に生きていきたいもの
です。これが明日に必ずつながると信じてと、和同會雑誌に記載しておきました。
また、平成25年度第一学期終業式で、中国明代の陽明学の創始者である王陽明
先生の言葉から、「志立たざるは、舵なきの舟、銜なきの馬の如し」というもの
をお伝えしておきました。志が立たないと何事も始まらないし、実現できないと
いうことを教えている言葉と思います。どんな仕事でも志に基づかないものはな
いと断言できます。志を立てないで事をなそうとするのは、ちょうど舵のない船
やくつわのない馬のようなもので、船が波の間に漂ったり、馬が勝手に走り出し
てしまったりしてどこへ辿り着くか分らないことになるという、王陽明先生の教
えです。従って、学問を修めて自分を磨くためには、何よりもまず志を立てるこ
とが大切だということを述べておきました。
「日に新たなり」そして「志立たざるは舵なき舟の如し」を心のどこかにおきな
がら、これからの一日一日の生活を大切に過ごしていただければと存じます。そ
うした地道な努力や精進が必ず自分自身の大願を成就することにつながると信じ
てほしいと思い、改めてお伝えしておきます。
さらに加えて、皆さんへのはなむけの言葉として、ジョン・C・マクスウェルの
言葉をお伝えしたいと思います。マクスウェル先生は現在、世界一のメンターと
称されている方です。メンターとは仕事上の、いや人生における指導者、助言者
ということです。アメリカ合衆国の自己啓発家、講演家であり、牧師でもある方
です。企業や組織のリーダー育成の他、ビジネスマンの能力開発なども手掛け、
講演されたり、多くの書物を著している先生です。スーパー・メンターと言える
ジョン・C・マクスウェルの言葉をいくつか紹介します。まず、「人生を変えた
ければ、日常の行いを見直すことだ。成功の鍵は日々の日課の中にある。」と述
べています。これは先ほど「大学」の湯王の話に通じます。そして、マクスウェ
ルは「自分のやっていることを心から楽しまなければ、真の成功はあり得ない。」
とも言います。好きなことを見つけ、それを志に高めていくことが大事だという
ことです。そして、夢を叶えるための姿勢を次のように語っています。「頂上へ
連れていってくれるエレベーターなどない。成功の頂上へ辿り着きたいなら、長
い階段を自分の足で一歩ずつ上がっていくしかない。何歩くらいなら歩けると思
うか、そして、どの程度の時間なら登り続けてもいいと思うかによって、どこま
で高く登れるが決まる。」と言います。大願の成就への道を自分を信じて地道に
歩み続けるしかないということです。先を見据えて堂々と歩み続けてほしいとい
うことを私も改めて申したいと思います。そして、マクスウェルは、「困難を乗
り越える唯一の方法は、「自分には、必ず乗り越えられる」と信じることだ。障
害を小さくして乗り越えるのでない。自分を大きくして乗り越えるのだ。」そし
て「人生で何かを成就するには、どれくらい強く欲しているかが問題になる。意
志の強さは、欲求の強さによって決まる。」とも言っています。強い気持ちを持
って、自分を高める努力を続けることです。さらに、「自分の使命や目標に向け
て熱く生きている人というのは、いつ見ても気持ちがいい。」とも言っています。
そして、マクスウェルは「夢を次々と実現する人、夢をかなえる人は、条件がす
べて揃うまで事を先延ばしにしたり、問題や障害が消えてなくなるまで待ったり
しない。恐怖心がなくなるまで待つこともない。なぜなら、成功の秘訣は、「行
動を起こすこと」だと知っているからだ。最初の一歩を踏み出せば、問題は自ず
と解決し、能力を発揮できるようになる。とにかく第一歩を踏み出さなければ、
何も始まらない。」と言います。
本日、母校から巣立ちゆく皆さんには、自分を高めるために、積極的な姿勢を常
に保ってほしいし、常に正しい姿勢でも臨んでもらいたいと思っています。皆さ
んの卒業のはなむけに、マクスウェルの言葉を贈らせていただきました。長岡高
校での学業生活を送った皆さんであれば、必ずできると信じています。母校で学
んだ歳月をしっかり心におき、自らの人生を堂々と正しい姿勢で歩んでいただき
たいと思います。
さて、結びにもう少し申します。正門近くに青々と茂っている樫の木は、長高生
を日々見守ってくれています。明治39年に東郷平八郎提督らが来校され自ら植
えられたとされている樫の木です。今年で満110歳の老木ですが、その幹からひ
こばえ・新しい枝が毎年、芽生えています。また近くの地面のドングリからも新
たに芽吹いています。我が長岡高校は常に、伝統を大切にしながらも、新たな挑
戦を進めています。母校の一つの象徴がこの樫の木であると言えます。樫の木は
いつでも、皆さん・長高同窓を見守ってくれているはずです。どうぞいつでも母
校においでください。皆さんの成長した姿を見せてください。お話しを聞かせて
いただきたいと思います。樫の木はきっと待ってくれていると思います。
それでは、結びとします。本日巣立ちゆく卒業生の皆さん一人一人の、夢多き輝
かしい未来に幸多かれと祈り、式辞といたします。
平成28年3月16日
新潟県立長岡高等学校長
轡 田 勝 祐