第1講 『緩和ケア総論・包括的がん医療 緩和ケア総論・包括的がん医療』』 要約 1960年代イギリスに始まったホスピス運動は、死にゆく病人でも慰めと安らぎを与 えられ、尊厳のある死を迎えたいという願いから始まったが、それが世界中に普及 していく過程で、活動の幅や概念の変遷をみている。現在ではいわゆる終末期ケ や概念 変 在 アの枠は越えて、緩和ケアや緩和医療という名称が使われ始め、WHOの定義も 2002年に刷新された。その全人的・継続的に患者・家族に対応しQOLの向上を目 指すという視点は医療の原点として様々な分野に示唆を与えている。 わが国においても1970年代にホスピスが紹介されてから、その必要性が言われ始 め、1981年には日本初のホスピスが誕生した。その後は緩和ケア病棟や緩和ケア チ ムの活動に診療報酬が付与され、がん対策基本法が策定されるなど、医療政 チームの活動に診療報酬が付与され、がん対策基本法が策定されるなど、医療政 策の動向と平行してホスピス緩和ケアの活動は活発化してきている。 WHOによる緩和ケアの定義は疾患の種類や病期を限っておらず、非常に広い意 味を含んでいる。これは全ての医療が目指す基本とも考えられ、この広義の緩和ケ アは全ての医療者が身につける必要があるといえる。 現在、日本においては、狭義の緩和ケアは「がん緩和ケア」と言わざるをえない状 況である。それだけ“がん”の問題は社会的に重要なものとなっている。アメリカ臨 床腫瘍学会 ASCO等は包括的がん医療を推奨しており、既存の治療と平行して緩 ASCO等は包括的がん医療を推奨しており 既存の治療と平行して緩 和ケアを行っていくことが重要であると述べている。日本においても、がん対策基本 法の目指すところとして、包括的がん医療の考え方が底流にある。 しかしながら、緩和ケアやがん医療の現状は国民のニーズと解離しており、解決 すべき問題が山積している(ex.最期の場所のニードと現状の解離)。これから緩和 ケアを進めていくには、地域で1次~3次緩和ケアがネットワークを持ってそれぞれ が有効に機能していく体制が必要である。 緩和ケアにおいて、患者の身体的側面にばかり捉われず、患者の抱える問題を 精神的、社会的さらには実存的側面などの総合的問題として、全人的にアプロー チするという概念は基本的かつ重要なものである。あくまで広い視点で患者をみて いく姿勢が必要とされる。 WHOが示す通り、患者のみならず家族に対する配慮も重要なケアである。患者 の死後の家族、つまり遺族に対してもケアの継続が必要である。遺族の中には身 体的または精神的に医療的介入が必要な人が存在する。 体的または精神的に医療的介入が必要な人が存在する 広い視点で患者や家族をみるためには、さまざまな職種がチームで医療を行うこ とが重要である。チーム医療も緩和ケア推進の必須条件である。チーム医療の利 点は、広い視点で多くのニーズに応えられることである。またその過程で患者の真 実により近づける可能性がある。旧来の主治医主導型のチーム医療ではなく、お 互いの職種の役割を尊重し、一定の知識や理念を共有できる真のチーム医療が望 まれる。 全ての医療者・支援者がホスピスマインドを持つことで、患者・家族のためだけで はなく、医療者・支援者自身にとっても価値を見いだせる医療・ケアとなることを期 待したい。 あさひかわ緩和ケア講座 2011
© Copyright 2024 Paperzz