BRICs生みの親 ~ジム・オニールの視点~ 「安倍

情報提供資料
GSAM 会長
2013年4月
ジム・オニールの視点
安倍首相と黒田総裁、ワオ!
昨年の秋に東京を訪れる直前、私は「安倍氏に期待(We want Abe!)」と題したViewpointsで、安倍氏の選挙で
の勝利が日本、その金融市場、そしてそれ以外のところにも影響の及ぶ大きな出来事となりそうな理由について
概説しました。来週また1日だけ東京に行くことになりましたが、皆さまがお考えの通り、過去5ヶ月の変化は、
まことに目覚ましいものでした。日本で街の雰囲気に接するのが楽しみです。
日銀の黒田新総裁とそのチームが行った先週の発表は、かなり劇的なものでした。日本の政策立案者が市場をこ
れほど驚かせたことは、長い年月を思い起こしても、そしておそらく私の32年間のキャリアを通しても初めての
ことだと思います。まずこの話題に進むべきでしょうが、その前に、たくさんある興味深いトピックスを取り上
げてみましょう。
アフリカ訪問
皆さまに、このViewpointsが届く頃には、私は、3日間のアフリカの旅に出ています。これについては、これか
ら訪れるエキサイティングな2都市から戻り次第、来週のViewpointsでご紹介します。
米国は再び減速か?
好調な住宅市場、低いエネルギーコスト、そして国内製造業の国際競争力の向上によって、米国経済が上向きに
なっているかに見えた矢先、今週は、主要データのすべてが、市場が考え始めたほどには楽観視できない状況で
あることを示す内容となりました。米サプライマネジメント協会(ISM)による調査では、製造業景況感指数も
非製造業指数も3月は予想を下回る数字となり、週次の新規失業保険申請件数は大幅な上昇を見せ、3月の非農業
部門就業者数も、大きく予想を下回りました。市場もこれを受けて下落し、国債市場は、第1四半期の高値水準
を維持することとなりました。突然のように、債券から株式へのシフトの話題は消え去り、10年国債利回り水準
での借入れを考える人たちさえ出てきているようです。4月も同じようなデータが出てくるようであれば、こう
した状況が現実のものになり、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長やイエレン副議長、そのチームが、
黒田総裁の真似をして、FRB以上にFRBのような動きをすることを考え始めるかもしれません。もちろん、3月
の減速が結果的に一時的なものに終わる可能性はありますが、そうならない可能性もあります。どなたか「4月
に売って旅に出る」を実行する意欲はありませんか?
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異常な欧州
先週は、米国、英国、日本、そして北朝鮮で多くの出来ごとがあり、欧州の話題は、やや忘れられた感がありま
したが、週末のポルトガルのニュースで、その様子も一変しました。憲法裁判所が、トロイカ(欧州委員会、欧
州中央銀行、国際通貨基金の3者チーム)とポルトガル政府が合意した財政緊縮策の一部が違憲であると判断し
たため、欧州全体に静かに広がりつつある財政緊縮策への抵抗運動が、新たな局面を迎えそうです。ポルトガル
の連立政権が連立を維持できるかは、大いに興味深いところですが、一方で、ブリュッセルでの次の長時間会合
が予定されているようです。
こうした状況下、イタリアでは、フィレンツェ市長のマッテオ・レンツィ氏が、民主党党首の更迭を求める動き
に参加し、このニュー・スターの人気は五つ星運動を凌ぐ可能性ありと多くの人々が考えているようです。イタ
リアでは、退屈している暇はありません。この国のことを紹介していると、(先週のViewpointsで紹介した)「プ
ロの泣き屋」は、千年も前から南イタリアに存在することを、指摘されました。ガラヴォグリア氏と、ゴールド
マン・サックスの同僚であるアルベルト・シリリョ、ガリア・ロヤが教えてくれたのです。
先週水曜日は、マドリードで1日過ごしました。無情にも、当社(ここではゴールドマン・サックス・アセット・
マネジメントを指します)の同僚たちは、ガラタサライがチャンピオンズリーグの準々決勝でマドリードへ来て
レアル・マドリードと対戦する日に、私の予定を組んでいました。会議の場では、聴衆の人々に、
「あなた方は、
マンチェスターにいるべきでした」ともちろん申し上げましたが、知りたかったのは、何人くらいの人々が、マ
ンチェスター・ユナイテッド対レアル・マドリード戦で、レフリーが賄賂を受取っていたと思ったかでした。そ
れから、数週間前にミラノでも行った質問をしました。スペインの聴衆の皆さんに、スペインが2020年までにユー
ロ圏を脱退しているか、そして、ユーロはまだ存続していると思うかという質問をしたのです。それぞれの質問
に手を上げたのは、わずかひとりでしたが、これは、ユーロに対するマドリードの人々の支持がまだ強いことを
示唆するものでした。当社のスペイン向け投信営業部門の統括者ルシア・カタランが後で教えてくれたところで
は、今回お会いしたお客さまは、みなさん、外交辞令が上手だったようです。ただ、
「スペシャル・ワン」
(ジョ
ゼ・モウリーニョ)が、今シーズン後に引退するかをたずねた際には、多くの手が挙がりました。最後には、何
の質問もありませんでしたが、これは極めて珍しいことのようでした。おそらく、初めてではなかったのではと
思います。数名の地元金融業界首脳との昼食会では、多くのマドリードの人々が、政策に関しては「ドイツ人的」
であり、現在スペインが行っていることは、合理的であり、信頼のおけるものであると考えているとうかがいま
した。こうした話は、サッカーチームのアトレティコ・マドリードについての話や、スペインは投資先としてブ
ラジルやメキシコよりも魅力的か等という話の間に出てきたものです。バリュエーションと、予測を上回る成長
という面では、確かにそうかもしれないと思った次第です。
いずれにしても、次の「欧州の狂気」がどこかに現れるのでしょう。そして、私は、ユーロの将来と欧州連合に
ついて、変わらず心配しています。
英国という名の狂気
先週のViewpointsで、私が、英国の地方都市によるBRICs「プロジェクトチーム」と、しばしば世界の中心であ
ると認識されているある英国北西部の都市についてコメントしたところ、ゴールドマン・サックス・オーストラ
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リアのデービッド・ノーランが、大胆にも私がリバプールのことを指して言ったのだとからかってきました。彼
といえば、私が前職からゴールドマン・サックスへ転職する前にとっていたガーデニング・リーブ休暇(有給休
暇)を中断させた人物ですが、何故か18年も経って未だに彼と話をしています。よくお聞き下さい。数週間ある
いは数カ月のうちに、我々の多くが、彼に電話をして、豪ドルを売るべきと言うことになると思います。豪ドル
が対米ドルでパリティ以上の水準が持続可能とは思えないからです。
先週、米国とは対照的に、英国のデータは若干好調で、3月の非製造業購買担当者景況指数(PMI)は、52.4と目
覚ましい上昇を示しました。マスコミのスポットライトは、専ら連立政権が行った福祉支出の削減提案に当てら
れていました。巨額の福祉支出の恩恵を享けていた受益者に関する味気ない事件(訳注:福祉の支払を受けるた
めに、何人もの自分の子どもを殺した人物に終身刑が下された裁判のこと)と時を同じくしたため、この提案が
多くの見出しを飾っていました。私は、保守党が、こうした見出しを見て、福祉支出を削減する提案を行う最良
のタイミングだと思ったのではないかと考えています。彼らの提案は、特に今のように社会情勢が厳しい中では
議論を呼び起こしそうではありますが、世論調査を見ると、有権者には歓迎されているようです。そしてもちろ
ん、問題の根本原因である財政赤字を減らすためには、この提案は、明らかに有効な集票材料にはなると思いま
す。しかし、再度申し上げますが、これはかなり物議を醸しそうな動きです。
常軌を逸した北朝鮮
数週間前に、中国の北朝鮮に対するスタンスを察知した際に、韓国について言及しましたが、先週の北朝鮮の動
きは、どんなことをしてでも、すべての国を挑発しようとするものでした。もちろん、脅威を感じる部分もあり
ますが、よくよく考えると、これは2つの朝鮮が終わる前触れではないかと思うようになってきました。こうし
た状況下、結果として起きている現在のウォン安が、容赦ない円安の影響を多少は緩和することになり、韓国の
輸出業者は安堵するのではないでしょうか。
わくわくする日本
最後に日本に戻って来ました。先週の日銀の驚くべき動きについて触れましょう。冒頭にご紹介した通り、かつ
て日銀がこれほど大きなプラスのサプライズをもたらした記憶がありません。前ゴールドマン・サックスのエコ
ノミストであるギャビン・デービス等多くの人が指摘している通り、この発表によって、日銀の金融緩和は、資
金放出量においてFRBの2倍に達することになりました。ギャビンは、金曜日のフィナンシャル・タイムズに素
晴らしい記事を載せています。私は、日銀がとった行動を、あらゆる手段を用いて、かつ外国政府にとっても受
入れ可能なかたちで(直接の円売りと外国資産の購入は行わないので)日本の金融環境を意図的に緩和しようと
する力強い意思表明であると読みました。これは、非常に大きな動きです。もしあなたが、こうした行動が取ら
れる前にすでに円に対し弱気だったならば、今は当然それ以上の円安を考えていらっしゃるのではないでしょう
か。昨秋私が申し上げたのは、「アベノミクス」がもたらす水準は、おそらく1米ドル=105〜110円のレンジで、
あるいは120円も、必ずしも米国での変化が起こらなくても、思った以上に早く実現するかもしれません。とは
言うものの、米国経済の減速が現実になれば、この先どうなるかはよく分かりません。ここからは、国内株式の
短期売買が、より興味ある投資テーマになるのではないでしょうか。
幾分相場反転の兆しを見せた木曜日と金曜日の乱高下を受けて、今週、日本国債がどのような動きをするのか、
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非常に興味深いところです。もちろん、それは黒田総裁の望むところではないと思いますが、評論家の何人かが
発言している通り、日銀の今の動きにリスクがないわけではありませんし、事態が日銀のコントロールを超えた
ところまで進展することも、わずかながら考えられます。最近の欧州のように、奇妙なことがいつでも起こる可
能性があるのです。
さて、これから良いバーを見つけて、マンチェスター・ユナイテッドが、「うるさい隣人」(マンチェスター・
シティ)相手に、20回目のリーグ制覇に向けて優秀の美を飾る戦いを観なければなりません。勝てば勝ち点差18
となり、残り7試合全勝して勝ち点21の追加を目指すのみです。残りの試合は(優勝が決まったようなものなの
で)あまりエキサイティングなゲームにはなりそうもありませんが、ユナイテッドの勝ちに賭けましょう。良い
週末を。
ジム・オニール
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長
(原文:4 月 8 日)
本資料に記載されているゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)会長ジム・オニール(以
下「執筆者」といいます。)の意見は、いかなる調査や投資助言を提供するものではなく、またいかなる金融商
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ンベストメント・リサーチ、その他ゴールドマン・サックスまたはその関連会社のいかなる部署・部門の視点を
反映するものではありません。本資料はGSグローバル・インベストメント・リサーチが発行したものではあり
ません。追記の詳細につきましては当社グループホームページをご参照ください。
本資料は、情報提供を目的として、GSAM が作成した英語の原文をゴールドマン・サックス・アセット・マ
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