男のランディング講座

男のランディング講座
ランディングは、ハングで飛ぶ限り、最後に必ず行わなければならないものです。
しかし、ハングでの多くの事故はこのランディングの時に起こっています。
ランディングはそれだけ危険なのでしょうか?
いや、そうではないのです。
グライダーコントロール技術に頼るのではなく、自分の頭を使い、押さえるべき点をしっかり押さえて、最も安全
にランディングできる方法を考えることが出来れば、ほとんどの事故は防げる筈なのです。
それでは、いったいどうすれば安全なランディングができるのか?
この講座で、私が今まで実践してきたランディングの方法を、皆さんに伝授したいと思います。
ランディング前に、既に最良の方法を考えておけ
まず、ランディングする前に一番考えなければならないのは、最も安全にランディングできる方法を、ア
プローチ前、もしくはフライト前に既に考えていることです。
ランディング場が目の前に迫ってから、このことを考え始めるようでは、あなたは近い将来必ず痛い目に
会うでしょう。
そして、あなたが考えた「最も安全にランディングする方法」も、風向きの変化、あるいは他機との同時
進入等で実行できないことも十分考えられますので、第二段目の手段も考えておくくらいの慎重さは必要
です。
とにかく、ランディング前にしっかりとランディングのプランが頭の中にイメージできるようにしておく
ことが重要です。
「目視」の重要性
ランディングを安全に行うには、建物等の衝突を避けるためにも、ある程度着陸精度が問われます。
この着陸精度を上げる最大のコツは、とにかく「目視」につきます。
つまり、自分が降りたい場所、ランディングのターゲットを可能な限りにらみ付けてやる事です。グライ
ダーのコントロールで見る余裕があまりないという方も、安全な範囲で結構ですから、とにかく可能な限
り自分が降りたい場所をにらみつけて下さい。
目視が出来るようになればなるほど、グライダーの滑空比が読み取れ、ある程度数をこなしていけば適切
なアプローチが出来るようになるはずです。
逆に、目視が出来なければ、ターゲットと自分の位置関係がつかめないため、いくら飛んでも自分の降り
たいところに降ろせないことが起こってしまうのです。
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低空で急旋回はするな
これは言わずと知れた危険防止のためです。しかし、低空の急旋回はやりたくなかったけれどもランディ
ング場がせまって来てしまい、仕方なくやってしまったというのがほとんどだと思います。
このようなことになってしまう最大の理由は、
「あとのことを考えずに高度処理をやってしまう」からなの
です。今のことばかり考えてやりやすい旋回ばかりしていると、最後には必ずその「つじつまあわせ」を
行うことになってしまいます。
このようなことにならないためには、先でも述べたように、とにかくしっかりとしたアプローチを、高度
処理に入る前に考えておくことが重要です。
そして、最後のファイナルターンが行いやすいように、しっかりと先のことを考えながら高度処理してい
くことがとても大切なのです。
よくランディングはファイナルアプローチに入るターンのその一つ前のターンで決まるといわれますが、
私自身は、実はそれ以前のターンにおいても、多かれ少なかれランディングに影響してくると思います。
たとえ失敗しても「安全側」にころぶようにしろ
これは、例えばランディングをオーバーした場合電線があるが、ショートした場合は特に危険なものが無
いといったように、もしランディングをはずしたとしても、オーバーするよりはショートした方が安全と
考えられる場合、ランディング手前を狙った方が良いというものです。
反対に、手前に何か危険なものがある場合は、ランディング終わり付近を狙った方がより安全だといえま
す。
「弘法も筆の誤り」という言葉があります。もしもの時を考え、常に安全側になるように考えるべきで
す。
アプローチ中の増速
ハンググライダーはスピードを増せば増すほどコントロールがよく効き、そして、風の影響を受けにくく
なります。しかし、反面スピードを増すことはグライダーを不安定な状態に陥らせ、機体が暴れやすくヨ
ーイングにも入りやすくなります。
最もグライダーが素直に飛んでくれるのは「最良滑空速度」ですが、しかし、不意の乱流等に対処するた
めに、その速度より少し早く飛ぶことが必用です。
結論として、アプローチ中の速度は最良滑空速度より少し速い速度が適切であり、通常の機体ではニュー
トラル位置から握りこぶし一から二つ分くらい引いておく程度になります。
ただし、8の字アプローチのターン中に於いては、引いたままだとターンが大きくなり、また、ランディ
ングとの距離間隔もつかみづらくなるため、ゆっくりと戻してあげる必用があります。
そして、この増速はファイナルターンを終えた後、風が安定しているウインドグラジェントの領域入り、
地面と平行に飛ぶ減速過程に入るまで続けてください。つまり、乱流が起こりにくくなる低空までグライ
ダーのコントロール性を生かしておくのです。
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ファイナルターンはランディング場に入る前に終えておく
ファイナルアプローチは、長くとれば長くとるほど水平を保つのが容易となり、又、ファイナルターンも、
当然その分高い高度で行えるわけですから、安全であるといえます。
しかし、あまり長すぎると、途中でシンク等に遭うとランディングまで届かなくなります。
このため、ファイナルターンはランディング場の直前で行い、完全にグライダーが水平となった状態にて
ランディング場に入れるようにしておいてください。
仮にもし、このファイナルターンが遅れてランディング上空で行ってしまうと、それだけランディング場
を狭く使っていることになり、更に、ファイナルターンもそれだけ低い高度で行わざるを得ないわけです
から、危険性が大幅に増えてしまうのです。
最も降りやすくなるようなファイナルアプローチを考えろ
ファイナルアプローチは、そのランディング場の形とそのときの風の状態を考え合わせ、最もおろしやす
くなるような方法を考えることが重要です。
例えば、次頁図のランディングで右側からまとまった強さの風が入っている場合、普通に左から右にファ
イナルアプローチをきることを考えますが、もし、この風がごく弱いものならば、斜めにアプローチした
方がランディング場をより広く使えることがわかるでしょうか?
更に、次頁図上方から強い風が入っている場合は横にアプローチした方が降りやすくなりますが、もし、
その風が弱いのであれば、ランディングを斜めにアプローチした方が降ろしやすくなります。
重要なのは、風向き、そしてその強さにより変化するグライダーの滑空比を考えてあげ、その中でランデ
ィング場の形を照らし合わせて、最もランディングしやすい方法を考えることなのです。そして、その最
もランディングしやすいアプローチが出来るように、その前段階の高度処理のラインを考えることがとて
も重要なのです。
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アプローチ方法について
アプローチの方法については、細かく分けるといくつかの種類に分けることが出来ますが、全てのアプロ
ーチ方法は8の字アプローチか場周(スクエア)アプローチかのどちらかに分けることができ、結局はこ
の二種の変形に過ぎないと私は思います。つまり、8の字アプローチと場周アプローチができ、ケースバ
イケースでこの二つのアプローチを適切に変形させて使えば、全てのアプローチ方法を克服したといえる
と思います。そこでこの講座では8の字アプローチと場周アプローチについてその使い分け方と、それぞ
れの要点について述べてみます。
・基本は45度ステイ
8の字アプローチにせよ、場周アプローチにせよ、基本として守ることとして「45 度ステイ」という言葉
があります。
これの意味は、下図のように、ランディング場に対し、高度処理を行う範囲は上方、左右とも 45 度の範囲
にいろ!ということです。これの理由はシンクや強風によるショートを防ぐためです。基本的にはこのこ
とがいえるのですが、しかし、現在の機体は高性能化なために、ファイナルターンについてはこのことを
守るとどうしても低空での旋回が必要になってくるため、風が強くなければ、私は 45 度ステイの範囲から
出てしまってもいいと思っています。
・8 の字アプローチ
これはランディング場風下側にて、ランディング場に対し左右及び上方の 45 度(つまり 45 度ステイ)の
空間で 8 の字の左右のターンが風上に向かうように行うアプローチ方法です。
この 8 の字アプローチの特徴は
常にランディング場を前に見ることができる。
風向きに対して、あまりフォローを背負わない。
それほどスピードが要求されない。
などの特徴があります。
そのため、この 8 の字アプローチ法は、
初心者の時のアプローチ
上級者でも風が強いときのアプローチ
として有効に使うことができます。
このアプローチ方法をうまく決めるコツは、左右でのターン時にできるだけ前を向いている時間を長く、
しかし、前には出て行ってはいけないという矛盾したことがらを、うまく両立させることです。
前を向いている時間を長く取れば、それだけ、ランディングとの距離感がつかめますが、だからといって、
ターン時に何も考えずに前に進んでいけば、当然ランディング場をオーバーしてしまいます。このため、8
の字アプローチは、風の弱い時と強い時では次のように変化させて行います。
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・風の弱いときの8の字アプローチ(5m/s以下。吹流しが垂れる~横になびく)
このときはアゲインストが弱いため、アプローチ中どうしても前に出やすくなってしまいます。しかし、
ターン時はできるだけ長い時間前を向いていた方がアプローチが読みやすいわけであるため、次のことを
行うとアプローチが容易になります。
それは、同じ位置で8の字をかくのではなく、45度ステイを守りながら、ランディング手前より8の字
をかき、高度処理を行っていくのです。
先にも述べましたように、ランディング場から左右、上方と45度の範囲にいれば、よほどの強風でない
限りランディングにはとどきます。この目には見えない45度のスロープに乗るように8の字をかいてい
くのです。
こうする事により、同じ位置で8の字をかくよりも、よりターンの時間を稼ぐことができ、それだけアプ
ローチが読みやすくなるのです。また、ターンのバンク角も少なくすることができるので一石二鳥です。
この方法で高度処理を行い、ファイナルターンをランディング場に入る前に終了させられるようにアプロ
ーチしていけば、理想的な弱風での8の字アプローチといえます。
また、このときのピッチコントロールですが、先にも述べましたようにアプローチ中握りこぶし一つから
二つ程度ベースバーを引き増速しますが、ターンのときはそのままだとターンが大きくなるため、機体に
余計な挙動を与えない程度に少し戻して上げます。このことにより前を向いている時間も長くとれるよう
になり、ランディング場との距離感もつかみやすくなります。
また、ターン時は前に出て行かない範囲で、できるだけバンクをかけずフラットにターンすることも重要
です。ターンはバンク角が浅いほど、よりターン後の機体の動きに乱れが出にくいため、安定したアプロ
ーチをかくことができるのです。
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・強風時の8の字アプローチ(5m/s以上。吹流しがあばれる)
このような時は8の字アプローチ中、風の強さにより前には出て行かなくなるため、ランディング手前の
ほぼ同じ位置で、ファイナルターンを行える距離を残して、ランディング左右45度の範囲で8の字アプ
ローチをかいていきます。そして、ファイナルターンがちょうど良い高度で行えるように8の字を調整し、
最後にランディング場に進入するのです。
この条件ではショートすることが多いため、このようにランディング場近くで8の字アプローチを行うわ
けです。このアプローチも8の字をかき始める場所が、前述の風の弱いときの8の字アプローチと違う以
外は全て同じ様に行います。つまり、アプローチ中は握りこぶし一つから二つ程度ベースバーを引き、タ
ーン時は少し戻すようにして、できるだけフラットなバンクでターンしていくのです。
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場周(スクエア)タイプのランディング方法
この方法は上級者が好んで使うランディング方法で、障害物が多い場所でも8の字アプローチより安全に
降ろせ、且つ、8の字アプローチより正確に降りることができますが、反面、アプローチ中低空にてまと
もにフォローを背負う区間があるため、強風時にはあまりお薦めできないアプローチでもあります。
この場周タイプのランディングは、風があまり強くないときに有効に使えるランディング方法だと考えて
ください。
それでは、場周アプローチについて、そのやり方を説明いたします。
まずはランディング場上空に十分に余裕をもった高度で侵入してください。そして、吹流しを確認し、先
に説明した最も降りやすいファイナルアプローチ法を参考に、ファイナルアプローチ方向を決定してくだ
さい。次に、そのファイナルアプローチラインの一番遠い場所、つまり、ランディング上のドン詰り!を
中心にして、第一段階の360度旋回の高度処理を、場周アプローチと同じ旋回方向で始めます。そして、
ランディング場を余裕をもってグルッと回れる高度になったと思った時点で、360度旋回から離脱し、
場周の高度処理へと入ります。
ちなみに、360度高度処理時のバンク角は、理想的には45度がベストだといえます。この理由は、理
論的に45度のバンク角が、一周に要する高度低下が一番少ないため、最も細かく高度調整が可能だから
です。しかし、無理をする必要はもちろん無く、この後にも高度調整は十分にできます。
360度高度処理から離脱した後は、四角をかくように残りの3回の90度旋回を行うのですが、このと
き、この90度旋回のタイミングを変えていくことにより、更に細かな高度調整を行っていくのです。
例えば360度高度処理からの離脱が高いと思ったら、次の90度旋回のタイミングを遅らせて、ランデ
ィングアプローチが長くなるようにその軌跡を変更するのです。更に、このときの90度旋回が逆に遅い
と感じたならば、次の90旋回のタイミングを早めるわけです。
これを、最後の3回目の90度旋回まで繰り返し、ファイナルアプローチをきるのです。
つまり、場周アプローチでは、360度旋回の「粗」高度調整の後、3回の高度「微」調整のチャンスが
あるわけで、その分、より正確に降りやすいのです。しかも、旋回方向は終始一方向だけで済み、途中で
バンク角を切り返すことも無いため、8の字アプローチよりもずっと正確に降りやすくなるわけです。
この場周アプローチの注意点としては、とにかく、ファイナルアプローチに入るまでは、終始スピードに
のせることです。特にフォローの区間では対地速度が急に上がるので、スピード不足につながりやすく注
意が必要です。
また、この場周アプローチにまだ慣れぬうちは、常に高度に余裕を持って侵入し、最後に高度が高かった
場合も、臨機応変に8の字アプローチに切り替えて、ファイナルアプローチの「つじつま」を合わせるこ
ともできます。
場周アプローチは、弱風ならば8の字アプローチよりも正確に降りることができますが、しかし、強風の
条件下ではフォローを背負う区間の旋回タイミングがシビアになるため、逆に難しくなる傾向があり、そ
のような強風でのランディングでは、むしろ8の字アプローチの方が安全であるといえます。
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ランディング場風下側に障害物がある場合のランディング
ランディング場風下側、つまり、本来なら進入路となる場所に、障害物(電線、建物等)がある場合、決
してこれらの手前で高度処理をしてはいけません。この理由は、もし予期しないシンク、あるいは、思い
のほか強風だったりした場合、もう障害物にぶつかるしかないか、もしくはランディング場をあきらめて、
最もダメージの少ないところに降りるしかないからです。
このようなケースの場合、多くは場周アプローチにて対処できますが、しかし、場周アプローチは強風に
弱い欠点もあるため、8の字アプローチの変形を使う方法がありますので、紹介いたします。
その方法とは、ランディング場手前の角より45度ラインを引き、そのライン上で8の字アプローチをす
るという方法です。
45度ライン上でアプローチする理由は、ランディング場から離れることを避けるためで、シンク等にあ
っても直ぐにランディング場に進入することが出来るようにするためです。
実際にこのアプローチ方法の使い方を説明します。
まずはランディング場の風向きをチェックしてください。そして、8の字アプローチが、なるべくアゲイ
ンストに向かって行えるように、ランディング場の左右どちらでアプローチをかくか決定してください。
そして、先に説明したようにランディング場の角から45度のライン上で、通常の8の字アプローチと同
じ要領で高度処理を行い、適切な高度になったらファイナルアプローチに入るわけですが、注意として、
ファイナルターンがどうしても低い高度で行わざるを得ないため、出来るだけファイナルターンが浅くな
るようにコースを考えてください。これを行いやすくするには、ファイナルターンに入る前に風下側の障
害物としばらく平行に飛ぶ区間をつくり、適切な高度でファイナルターンを行うと、いくらかやりやすく
はなります。
しかし、大切なのはこのようなランディングは難易度も高く危険であるため、出来るならこのようなラン
ディング場は避けるべきであり、常に一番安全なランディング方法を考え実践することが大事なのは言う
までもありません。
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フレアーを決めるためには
・まずは理想的なファイナルアプローチをとり、機体の水平を保つことが基本
フレアーはその瞬間、グライダーが少しでも傾いていると、必ずそちらに横滑りに入り、フレアーが効か
なくなってしまいます。しかし、グライダーがちゃんと水平になっていれば、フレアーは思いのほかよく
効きます。
フレアーのタイミングがうまくつかめず悩んでいる人は、かなりの人がグライダーの水平がちゃんと出せ
ていない人が占めているようです。つまり、傾いた状態でのフレアーはより速い速度でないと効かないた
め、そのタイミングでフレアーを覚えてしまうと、たまにちゃんと水平があったときに、思いのほかフレ
アーが効きすぎてしまい飛び上がってしまうのです。この出来事で、そのパイロットのフレアーのタイミ
ングがめちゃめちゃになってしまうのです。
そのため、フレアーを決められるようになるには、まず、グライダーを水平にすることから始めなければ
なりません。グライダーを水平にしやすくするには、ファイナルアプローチを長くとることが良く、これ
により、進入中にグライダーの水平をあわせる事ができます。そのためにも、前で説明したアプローチ方
法が完全に行えていることが、大変重要となるのです。
・ファイナルアプローチ→減速→フレアーのタイミング
フレアーをきれいに決めるには、まず、自分の乗るグライダーのニュートラル速度(手放し速度)がどこ
に設定されているのかを正確に知る必要があります。
ハンググライダーは最良滑空速度からどんどんスピードを落としていくと、そのうち最少沈下速度に入り
ます。更にこの速度よりベースバーを押し出していくと、マッシングと言われる翼の一部が失速に入り、
体重移動してもなかなかそちらの方にノーズを向けてくれない現象が現われ始めます。この現象が出ると
ころより更にベースバーを押し出すと、ハンググライダーはおだやかに失速に入ります。
実は、フレアーのタイミングは、上記の最少沈下速度から、マッシングが始まる速度の間にあるのです。
そこでフレアーのタイミングを知るには、まず、あなたが上空を飛んでいるときに腕の力を完全に抜き、
ご自分のグライダーのニュートラル速度をだしてみて下さい。通常のセッティングがなされたハンググラ
イダーならば、この速度は最少沈下速度か、それよりも少し速いくらいの速度になっています。
つまり、フレアーのタイミングは、アップライトに力が加わっていないニュートラル速度(ほぼ最少沈下
速度)から、それより少しアップライトを押し出し始めた速度(マッシング速度)になるということなの
です。
お分かりになります?実はフレアーのタイミングは、アップライトから伝わるバープレッシャーの変化で
正確につかみとることが出来るのです。
フレアーのタイミングに幅があるのは、パイロットの体格等それぞれ条件が違うためであり、腕が長い、
つまり、フレアーが効かせられるパイロットは、目いっぱいマッシング状態に入ってからでも大丈夫です
が、体格が小さい方はフレアーが効かせられないので、その分早いタイミング、つまり、ニュートラルに
入って早々にフレアーをかける必用があるからです。
それでは、今まで説明したことを踏まえて、ファイナルアプローチからフレアーまでをシミュレーション
してみます。
まず、適切な高度処理を終え、速度を保ったままスムーズなラインでランディングへと進入して下さい。
このときはスピードがあるためコントロールバーは引いた状態です。
そして、地面と平行に飛び始め減速区間へと入っていき、アップライトへと持ちかえますが、このときも
まだ速度があるためアップライトは引いた状態です。しかし、その後グライダーの速度はどんどん落ちて
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いき、それにともないグライダーのアタックアングルが増えていく、つまり、引いていたアップライトを
徐々に戻していく状態に入っていき、そして、いよいよアップライトに力を加えないニュートラル状態へ
となるわけです。ここからが神経を集中させなければなりません。このニュートラル状態、それから、少
し押しが入り始める領域、この間にフレアーをかければ良いわけです。
このとき、先に説明したように、体格のある方は遅めに、体格のない方は早めにフレアーをかける必要が
あるでしょう。
・フレアーを効かせられる体勢
先の説明でフレアーのタイミングについてはお分かりになったと思いますが、それでは、フレアーをかけ
るとき、どのような体勢でかけると効果的なのでしょうか?
まず、フレアーをより効かせるためには、いかに短い時間に、いかにグライダーに大きなアタックアング
ルの変化をもたせることが出来るか?これが重要となってきます。
短い時間の間にフレアーを行うには、勢いよく腕を押し出せばよいわけですから話は簡単です。
それでは、より大きなアタックアングルの変化をもたせるためには、どうすればよいのでしょうか?
ここで、ちょっと考えてください。もともと人間の腕の長さ、つまり、アップライトを押すストロークの
量はその人によって決まってしまっています。しかし、その決まったストローク量でも、アップライトを
より上側で押すようにすれば、アタックアングルの変化を大きくすることが出来ます。しかし、このとき、
体が腹ばいのような姿勢になっていると、斜め方向にアップライトを押し出すことになり、その分グライ
ダーにアタックアングルの変化が与えられなくなります。下図を見て下さい。グライダーにより大きなア
タックアングルの変化をもたせるには、腕の位置、しいてはその腕の付け根となる肩の位置が、出来るだ
け高い位置にあるほうが良いことがお分かりい
ただけると思います。
肩の位置が高いところにある姿勢とはスタンデ
ィング姿勢であり、それも、出来るだけ垂直にお
きた方が、よりグライダーにアタックアングルの
変化をもたせることが出来るため、フレアーの効
きが良くなるということになります。
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フレアーの時はアップライトを握り締めるな
フレアーの瞬間、アップライトを握り締めていると、バープレッシャーの変化が分からないばかりか、フ
レアーそのものの効きも悪くなります。これは人間の手首の関節の動きに限界があるからであり、アップ
ライトを握り締めてしまうとこの制約あって、それ以上アップライトを押し出すことが出来なくなるので
す。
ですから、フレアーの瞬間は決してアップライトは握らず、手のひらで押し出すようにすれば、よりスム
ーズにグライダーに大きなアタックアングルの変化を与えることが出来るでしょう。
なお、もし、あなたがアップライトをしっかり握らないと、体を起こすことが出来ないようであれば、そ
れは、ハーネスの調整、もしくはハーネスそのものに問題があります。
まずはその問題から解決しましょう。
海岸等風の強い条件でのフレアー
風が弱い内陸等では先のフレアーのテクニックが重要になってきますが、しかし、海岸等風が強い中での
フレアーは、ちょっと勝手が違ってきますので注意が必要です。
まず、風が強い中ではもともと対地速度が遅く、それほどフレアーを効かせる必要が無いため、先に説明
したグライダーに大きなアタックアングルの変化をもたらせるテクニックの重要性は薄れてしまうのです。
ヘタに勢い良くフレアーをかけてしまっては、風に押し返されて後ろに飛ばされることもあり得ますから
注意が必要でしょう。
更に本当に風が強いときはフレアーそのものも考えなければなりません。
先に説明したようにフレアーのタイミングは、グライダーのバープッシャーの変化で知ることが出来ます
が、しかし、これで知るフレアーのタイミングのとき、強風により、すでに前に進んでいないようであれ
ば、フレアーをかける必要そのものが無いのです。
ですから、「ランディングのときは必ずフレアーをかける」とあまり硬く考える必要は無く、
強風の条件の中では、対地速度を観察し、フレアーの加減を考えましょう。
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