WING DAILY

 WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1925号 2009年(平成21年)6月11日 木曜日 (1)
WING DAILY
【HEADLINE NEWS】
★ASDガイエ専務理事、「日欧間の産業協力発展を」
欧州委員会と日本で航空機産業発展の対話スタートを
欧州航空宇宙防衛工業会(ASD:AerospaceandDefence
IndustriesAssociationofEurope)のフランソワ・ガイエ専務
理事が本紙のインタビューに応えた。ガイエ専務理事は、日
本の航空宇宙産業との連携をより促進するために来日。そこ
で、国内の航空宇宙産業が集積している名古屋のほか、経済
産業省、防衛省などを訪問して産業・研究開発協力を訴え
た。
ガイエ専務理事は、日欧間の航空宇宙産業における今後の
協力展開には様々な道筋がみえるとして、「欧州側としては
視野を広くして日本との協力関係を構築していくことを考え
ている」と、日欧間協力の枠組みの更なる拡大を呼び掛けて
おり、今回の訪日で欧州委員会と日本の間で航空機産業の発
展における対話をスタートさせることを訴えたという。「日
欧間当局レベルで対話が進行すれば、それに伴って企業・業
界側から様々なプログラム参画の道が拓かれる」(ガイエ専
務理事)ことに期待感を示した。
日仏間では静粛超音速機(SST)の共同研究開発プログラ
ムや、ロールス・ロイスのエンジンプログラムにおいて日本
の参画比率上昇あるいは研究開発でも共同のプログラム、ヘ
リコプター関連でも比較的上手く進展しているといった事例
はある。しかし、これまで航空宇宙産業における日欧間の共
同研究開発プログラムは限定的なものに留まっており、日本
は米国よりに進めてきた。
ガイエ専務理事は「超音速機研究など取組みは進展してい
るが、これまでの所、主として日仏間に留まっている。この
ようなプログラムにおける協力を、あまねく欧州全域に拡げ
ることも可能なのではないか」としている。
具体的な共同新規プログラム立ち上げは今後双方で模索さ
れることになるとみられるが、ガイエ専務理事は「シリコン
カーバイド(SiC)しかり、太陽光発電も日本の業界側は非常
に高度な技術をもっており、将来の航空機に必要な電力を太
陽光から得ることも可能性があるとみている」と展望。さら
に「航空宇宙産業に限定せずに、他の業界、例えば、自動車
産業で進む燃料電池などといった新技術分野の協力も考えら
れるのではないか」と幅広い視野での協力関係拡大を呼び掛
けた。
これまで日欧間で研究開発あるいは製造分野協力の道が限
定的だったことについてガイエ専務理事は「確かに(日本側
が)欧州プログラムへの参加に躊躇することがあると感じた
ことはある」とし、日本側が欧州との共同プログラムを進展
させることで、良好な関係を構築した米国側との基盤が揺ら
ぐことを危惧していると感じたことはあるようだ。
ただ、「欧州のサプライヤーは、米国のプログラムに参加
することに及び腰ではなく積極的。むしろ、マイナス影響が
Airline & Aviation E-mail News
発行所 航空新聞社:W I N G
D A I L Y 編集部
〒1 0 7 - 0 0 5 2
東京都港区赤坂 4 - 8 - 6 赤坂余湖ビル3 階
TEL(03)3796-6647 FAX(03)3796-6643
URL=http://jwing.com [email protected]
購読料半年33,600円年間63,000円(消費税含む)
及んだことはない」(ガイエ専務理事)と日本と欧州による
研究開発、製造協力の進展に期待した。
製造面では、B787型機の参画で工場の生産ラインが埋まっ
た日本企業はエアバスのA350XWBへの参画を見送ったと企
業もある。A350XWBでエアバスは、パワー8による取組みを
進めたことでサプライチェーンの合理化を図っており、グ
ローバル・サプライチェーンを再構築した。そのサプライ
チェーンのなかに日本企業の姿は少ない。A320後継といった
次世代機開発プログラムにおいて日本企業が、革新的な技術
を持って構築されたサプライチェーンの一角を切り崩して入
り込む余地があるか危惧されるところ。
ガイエ専務理事は「次世代航空機の開発でA320後継開発プ
ログラムが、もう2~3年すると立ち上がってくるだろう。運
航開始となるのが2020年ぐらいになるだろう。この部分に日
本側が直接的に参画していかないということになると、市場
での潜在性を失うことも懸念される」と警告している。
ただ、日本航空宇宙工業会(SJAC)の森郁夫会長は「欧
州産業界との連携は重要。我が国の生産力、技術力が評価さ
れて、今後拡大に繋がることは期待している。ボーイングに
偏ることなく、欧州産業界との繋がりを強くしていく諸活動
を進めていきたい」と欧州航空宇宙産業界との連携を深めて
いくことを示唆しており、日欧間のマッチングが今後進むこ
とが期待できそうだ。
ASD、65万人の雇用支える巨大組織
サプライヤー支える仕組みや将来ビジョンも
欧州航空宇宙防衛工業会(ASD)は、20カ国30団体が所属
し、EADS、エアバス、ロールス・ロイス、フィンメカニ
カ、BAEシステムズ、タレス、サフランなどといった世界を
代表する航空宇宙産業のメーカーが参加。64万9000人もの雇
用を支える巨大組織。また、ASDは、日本航空宇宙工業会
(S J A C )などが加盟する国際航空宇宙工業会協議会
(ICCAIA)に属している。
ガイエ専務理事によると、この巨大組織を支えるサプライ
ヤーのなかには、日本の航空宇宙産業に参画している中小企
業と同様に資金繰りに苦心している企業もあるようだが、
ASDとして「いかに支援していくかということは積極的に意
識しており、欧州の金融機関が中小企業を含めて資金供与を
継続するよう働きかけている」と、欧州航空宇宙産業の根底
を支える中小企業への支援を行っていることを明らかにし
た。また、大手主要企業が自身のサプライチェーンを支える
ために、個別の対策を講じているという。
ASDでは2001年1月に、ACARE(欧州航空宇宙研究諮問
委員会)が打ち出した「2020年ビジョン」において“質の向
上とコスト削減”、“安全性”、“環境”、そして“航空輸
送システムの効率化”という4つの社会的要求に応えるため、
機体で20%、エンジンで20%、そしてATMで10%のCO2排
出量削減目標を打ち出した。さらに、NOxは80%削減と騒音
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1925号 2009年(平成21年)6月11日 木曜日 (2)
も50%削減するという目標を立てた。
ガイエ専務理事によると、2020年ビジョン達成に向けて更
なる技術的なブレークスルーが必要だとしており、研究開発
を進めているところ。その技術的なブレークスルーを通じ
て、高バイパス比のエンジン開発によりCO2削減目標を達成
することや、全体圧力比を改善してNOx排出規制、“Clean
Sky”で目標としている2015年までに運航あたり7.5dB騒音
削減するなどの目標を達成していく方針。
“CleanSky”は2008年から7年間でスタートしたプログラ
ムで、その予算は160億ユーロ。ASDメンバーもエアバスや
ロールスロイス、アグスタウェストランド、ユーロコプ
ター、アレニアアエロノーティカ、サーブエアロスペースな
ど大手12社が設立時から参加している。このプログラムで
ACAREで設定した環境目標を達成することを目指している。
また、単一欧州航空交通管理プログラム(SESAR)などの
にも協力している。
★ユーロコプター・ジャパン、ANAMのヘリ整備部門買収
7月1日に買収、日本市場のカスタマーサポート充実へ
ユーロコプター・ジャパンが全日空整備(ANAM)のヘリ
コプター・カンパニー(ヘリコプター整備部門)を7月1日付
けで買収する。
全日空整備のヘリコプター・カンパニーは、ユーロコプ
ターの認定整備工場としてこれまで事業を展開、機体の組
立・定時整備、修理改修作業などを行っており、消防・防
災、救急用機器などの事業も実施している。
ユーロコプター・ジャパンによると、一部改修を施すこと
も検討しつつ、基本的に全日空整備が保有している既存イン
フラを活用する方針。
ユーロコプターでは、アジア・日本市場に投資を注力して
おり、今回の買収もその一環。機体販売後のカスタマー・サ
ポートを充実させることで、更なる市場占有率拡大と顧客信
頼度向上を目指す。
【航空関連ニュース】
★日韓航空協議、日本以遠米国線の運航便数が増加
関空/中部以遠グアム・サイパン週7便まで可能に
日本と韓国の航空当局間協議が、6月9日に東京で開催さ
れ、韓国企業による関西または中部以遠米国路線の運航を最
大で週7便まで可能にすることで合意に至った。これにより、
韓国企業は関西または中部ーグアム線と、関西または中部ー
サイパン線のデイリー運航が可能になった。日本側も韓国に
対して同等の権益を確保することで合意に至っている。
今回合意に至った内容について、同航空当局間協議に日本
側代表団として出席した奈良平博史国際航空課長は「以前か
ら韓国側政府から要望があった」とコメントしている。
大韓航空(KAL)は昨年12月以降、関空ーグアム線を季節
便として運航しており、7月10日から週3便体制で運航を再開
する。現段階では、夏期スケジュールが終了する10月24日ま
で継続して運航していく予定。同路線は仁川ー関空線と同じ
機材を使用して運航していく方針。
KALによると、現在、仁川ー中部線における使用機材を一
晩駐機させており、中部発グアム線を開設する場合も機材繰
りは整っている状況という。
アシアナ航空は、昨年12月より関空ーサイパン線を週3便
体制で運航している。中部国際空港へは現在ダブルデイリー
体制でソウル・仁川線を運航、運航はクイックリターンする
スケジュールとなっている。
現在、日本ー韓国間は、旅客便457便を含む定期便週478便
が就航している。そのうち、日本企業の運航便数は旅客便98
便を含む108便、韓国企業の運航便数は旅客便338便を含む
349便。羽田ー金浦間は旅客便56便を運航、そのうち日本企
業はJALおよびANAの2社が週28便、韓国企業はKALおよび
アシアナ航空が週28便運航している。
★THY、来春に成田ーイスタンブール線を週6便に増便
日本トルコ航空協議、中部含む2地点へ就航が可能に
トルコ航空(THY)は、来年の夏季スケジュールより成
田ーイスタンブール線を現行の週4便から週6便体制に増便す
る。6月8日~9日の日程で開催された日本とトルコの航空当
局間協議で、来年3月の成田増枠後にトルコ側企業による運航
便数を現行の週4便から週6便まで可能にすることが承認され
たことを受け、6月10日の正式発表に至った。
そのほか、同航空当局間協議により、トルコ側の日本国内
乗り入れ地点として、新たに名古屋を含む2地点を追加するこ
とで合意に至った。残りの1地点について、今回の協議では合
意に至らなかったが、今後トルコ側が希望する都市について
話し合いを進めていく。
今回行われた協議の結果、トルコ側の日本国内乗り入れ地
点として、中部国際空港など2地点を追加し、成田国際空港で
10年3月の増枠後にトルコ側航空企業による運航を現行週4便
から週6便に引き上げることが決まった。
また、関空と中部については、これまで関空で週4便だった
のに対し、直ちに週21便まで運航可能とすることが決まって
いる。これはトルコ側から3地点でのデイリー運航の要望が
あったことを受けて決定した便数で、あと1地点については今
後検討していくこととし、便数の振り分けについても等分割
するかは未定。日本側航空企業にも就航地や便数において同
等の権益が確保されている。
このほか、コードシェアにおいては、国際協定路線におけ
るコードシェアの枠組みを拡大するとともに、国際線に接続
するトルコ国内区間におけるコードシェアの枠組みを新たに
設定した。
これまでトルコとは成田と関空の2地点からイスタンブール
の1地点で運航しており、輸送実績は08年度の輸送実績は12
万3000人を記録している。運航会社はトルコ航空(THY)の
みだが、同じスターアライアンスに所属する全日空(ANA)
とコードシェアを行っている。今回の大増枠について、トル
コには大手日本企業の工場が多く、貨物需要およびビジネス
需要の増加が今後期待できるという。
★JAL、台北とバンコク行きエコノミー追加設定
中国行きも値下げを決定
日本航空(JAL)は10日、エコノミークラスにおいて日本
発台北、バンコク行き「バリュー悟空3週末ステイ」の設定お
よび、日本発中国行き「JAL悟空」の一部値下げを国土交通
省に申請、販売については6月11日から開始する。
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1925号 2009年(平成21年)6月11日 木曜日 (3)
〈燃油サーチャージ込み運賃例〉
▼東京/大阪−台北=午前:4万3000−4万8000円、午後:
3万7000−4万2000円
▼名古屋−台北=3万6000−4万5000円
▼札幌−台北=5万8000−6万3000円
▼東京/大阪−バンコク=午前:4万9000−5万1000円、午
後:4万3000−4万8000円
▼名古屋−バンコク=午前:4万9000円−5万1000円、午
後:3万8000−4万8000円
▼札幌−バンコク=6万4000−6万6000円
★ANAと福岡市交通局が新カード発行
マイルから「はやかけんポイント」へ交換可能
全日本空(ANA)と福岡市交通局(福岡市地下鉄)は10日、
サービス向上と需要創出を目的として業務提携を行い、新
カード「ANAはやかけん」を年内に発行することで合意し
た。このカードは、ANAマイレージクラブ(AMC)会員を
対象としたオリジナルデザインの福岡市地下鉄ICカード乗車
券で、特典として貯まったマイルを「はやかけんポイント」
に交換し、「ANAはやかけん」へのチャージが可能となる。
この提携により、「マイルを貯めて、地下鉄に乗る」サービ
スの提供を行う。
AMCカードとリンクさせた福岡市地下鉄ICカード乗車券
「ANAはやかけん」発行にあたって、すでにANAカード・
AMCカードを所持している人は、マイレージカードを切替え
る必要はなく、「ANAはやかけん」に申し込みでき、定期券
の搭載も可能。
交換レートはAMCのマイルを1万マイル以上持つ人は、こ
れを交換単位として1万円相当の「はやかけんポイント」へ
交換することが可能。ただし、マイルから「はやかけんポイ
ント」やEdyへ交換の際は、年度ごとの累計交換マイル数に
よって交換条件が変わり、ポイントやEdyへの交換全体で、
年度毎累計2万マイルまでは1万マイルが1万円相当の特典と
して交換されるが、累計3万マイル以上は、5,000円相当とな
る。
★SKY、8月搭乗分の運賃一部を値下げ
より安いスカイバーゲンも新設定
スカイマーク(SKY)では8月1−31日搭乗分の運賃を見直
し、一部の値下げと運賃の追加設定を行い、国土交通省へ届
出を行った。今回一部値下げの対象となったのは前割運賃
で、8月1−6・18−31日に羽田−新千歳線、8月1−31日に羽
田−旭川線の一部を値下げする。
また追加設定される運賃はスカイバーゲンであり、8月18
−31日に羽田−新千歳線、8月25−31日に羽田−旭川線が対
象になる。
▼羽田−新千歳線=前割21:1万600−1万6800円、前割
7:1万6100−1万8800円、前割1:2万100−2万1800円、ス
カイバーゲン:1万−1万3000円
▼羽田−旭川線=前割10:1万7100−1万9800円、前割7:
1万7100−2万4800円、前割1:2万600−2万2300円、スカイ
バーゲン:1万1500−1万3100円
★NCA、「海のエジプト展」展示物の輸送
日本貨物航空(NCA)は横浜開港150周年を記念して開催
される「海のエジプト展」に展示される彫像など約490点を
ミラノから成田国際空港まで空輸する。この輸送は8・11・
13日の3回に分けて行われ、合計の重量は約90トンにも及
ぶ。この展示はパシフィコ横浜で6月27日−9月23日に開催す
る。
★成田、O M Wの6月出演アーティスト決定
成田国際空港ではオアシスプロジェクトとして、空港を音
楽であふれた空間に演出する「OasisMusicWeek」を行って
いるが、6月に出演するアーティストが決定した。14−16日
はBunKen(長野文憲)/ギター、18日は大塚雄一/アコー
ディオン、19日はシエスタ/バイオリン、20日は満島貴子/フ
ルートを実施(敬称略)。14−16日は第2ターミナル出発ロ
ビーで、12時30分・14時30分・16時30分の1日3回行われ
る。18−20日は第1ターミナル南ウイング出発ロビーで13時
30分・15時30分の1日2回講演となる。
★成田1タミに期間限定の三愛水着楽園がオープン
成田国際空港の第1ターミナルビル出発4階に、三愛水着楽
園が6月12日−10月31日の期間を予定し、期間限定ショップ
としてオープンする。昨年も好評だった三愛水着楽園の今年
は、バラエティに富んだ300着以上の水着を用意する。テー
マは、“ザ★サマー★ヒロイン”でビーチやプールでは誰も
がヒロインになりたいという女性たちの願いに応え、スタイ
リッシュでセクシーな水着やフェミニンな水着など幅広い品
ぞろえで、男性水着やビーチサンダル、タオルなども取りそ
ろえる。
★成田空港でJAL A25周年記念美術展開催
成田空港では6月11−30日に、第1旅客ターミナルビル5階
のアートギャラリーで、JALArtwinds25周年記念美術展を開
催する。これは日本航空(JAL)の成田地区美術部として
1984年6月2日に発足した活動で、これまでにアートギャラ
リーにて7回の展示会を開催、毎回高好評を得ている。
8回目となる今回は、発足して25年目の記念すべき展示会
で、「旅の思い出四半世紀」がコンセプト。国内・海外各地
を旅しながら、旅のガイドブックなどには掲載されていな
い、絵になる場所を求めて描いた作品などを中心に発表す
る。
JALグループ社員・家族・OBによる、油絵・水彩画などの
作品約30点を展示、10−18時(最終日15時)で開催する。
【航空工業/宇宙関連ニュース】
★月周回衛星「かぐや」11日未明に月面に制御落下
17ヵ月にわたり月面全体を観測、成果は11月より公表
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、11日午前3時25分(日
本標準時)月周回衛星「かぐや(SELENE)」を月の表面の
南緯65.5度、東経80.4度の地点に予定通り制御落下させた。
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1925号 2009年(平成21年)6月11日 木曜日 (4)
これにより、「かぐや」による月の観測データ取得は完了し
た。
JAXAでは「かぐや」の落下位置は月面の日影部分なので
衝突閃光を観測できた可能性が僅かにあったと見込んでお
り、国内外での撮影結果の提供を呼び掛けている。
「かぐや」は平成19(2007)年9月14日に打上げられ、約
10ヵ月間の定常運用及び約7ヵ月半の後期運用を行ってき
た。
なお、「かぐや」から分離して月軌道に投入された子衛星
であるVRAD衛星(おうな)については、観測データ収集は
完了しており、今後データの校正のために必要な観測を行っ
た後、運用を完了する見込み。「かぐや」の観測データにつ
いては、整理の上、11月1日からインターネットで公開を開
始する予定となっている。 「かぐや」は旧宇宙科学研究所と旧宇宙開発事業団が共同
開発した大型科学衛星で、14種類の国内外の観測機器を搭載
し、月の全表面の観測を目的に、H-IIAロケットで打上げられ
た。2機の子衛星を搭載し、月の裏側でもリレー衛星(おき
な)により地球との通信を確保した。最終段階では高度僅か
数十キロからの月面の画像を送信するなど、最後まで観測を
続けた。
デルタ・ワンは、まず航空母艦からの運用性能を確認する
ための空母適合試験を受ける。この中にはカタパルトによる
発艦、着艦フックによる着艦に耐えることを確認する構造試
験が含まれる。今後実施される苛酷な空母からの運用試験の
準備の一環だ。
E-2Dは、米海軍向けに開発されたAN/APY-9電子走査ア
レイ(ESA)レーダーを始め、協同交戦能力(CEC:CooperativeEngagementCapability)システム、ESM(逆探知装
置)、イージス艦など外部センサとの接続によるより遠距離
での巡航ミサイルの探知、追尾、攻撃能力が特徴となってい
る。なお、AN/APY-9レーダーの開発主契約社はロッキー
ド・マーティンとなっている。
【防衛関連ニュース】
★自民党国防部会等が新大綱に向け提言
敵ミサイル基地攻撃で、弾道型ミサイル開発も提言
自由民主党の国防部会と防衛政策検討小委員会は、9日「提
言・新防衛計画の大綱について」をまとめ、発表した。
この中で、「日米安保体制下の敵ミサイル基地攻撃能力の
保有」について、現状では米国の打撃力に依存しているが、
今後は、専守防衛の範囲(予防的先制攻撃は行わない)で、
日米の適切な役割を見出し、わが国自身による敵ミサイル基
地攻撃能力を保有を検討すべきである、としている。
そして、具体的な保有すべき攻撃能力として、宇宙技術を
適用した独自のミサイルの開発を提言している。
「保有する攻撃能力は、情報体制の強化施策と相まって、
わが国の宇宙科学技術力を総合的に結集し、宇宙利用による
情報収集衛星と通信衛星システムによる目標情報のダウンリ
ンクと巡航ミサイルや小型固体ロケット技術を組み合わせた
飛翔体(即応性よりも秘匿性を重視した巡航型長射程ミサイ
ル又は迅速な即応性を重視した弾道型長射程固体ロケット)
への指令により正確に弾着させる能力の開発を実現可能とす
べきである」としている。攻撃対象はミサイル発射基地、車
両に限定し、通常弾頭で被害は極限することも述べている。
【海外メーカーニュース】
★ノースロップグラマン、E2D空母適合性試験開始へ
電子走査レーダー搭載、2011年より運用試験を予定
ノースロップグラマンは、E-2Dアドバンスト・ホークアイ
早期警戒機飛行試験1号機「デルタ・ワン」を、2011年から
始まる初期運用試験評価空フェーズに進める準備のため、10
日フロリダ州セント・オーガスティンから、メリーランド州
パタクセントリバー海軍航空基地に移動させた。
飛行中のE-2D
【海外エアラインニュース】
★KAL、関空ーグアム間の季節便を週3便体制で運航
大韓航空(KAL)は、7月10日より関空ーグアム線の季節
便を運航する。運航は関空発が水・金・日曜、グアム発が
月・木・金曜の週3便体制で、夏期スケジュールが終了する
10月24日まで継続する予定。
運航スケジュールは以下の通り。
▼KE729=関空10:10発ーグアム翌日02:45着
▼KE730=グアム4:20発ー関空07:00
着
★COA、期間限定で業界向けモニターツアーを設定
コンチネンタル航空(COA)とハイアットリージェンシー
グアムは、業界関係者を対象にモニターツアーを実施する。
実施期間は7月16日まで、ハイアットリージェンシーグアム
への宿泊が必要条件となる。出発地は8都市を設定、料金は成
田発グアムで2万円、出発地に応じて2万円~2万5000円の価
格で提供する。
ハイアットリージェンシーグアムの宿泊はプレミアムオー
シャンビュー利用で一泊100米ドルで利用可能になってい
る。
予約方法は、希望する出発日の前日より21日前にCRSを通
じて行う。CRSを持っていない場合は、コンチネンタル航空
のコールセンター(0120-24-2414/03-5464-5050)で予約
することが可能。予約の際、OSIフィールドにオファーコー
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1925号 2009年(平成21年)6月11日 木曜日 (5)
ド「COHYTSPE」を記入する必要がある。
★デルタ航空、6月1日より機内サービスを統一
デルタ航空(DAL)は、6月1日より機内サービスを統一し
た。長距離国際線のビジネスクラスサービスをDALの「ビジ
ネスエリート」に統一したほか、国際線エコノミークラスの
アルコール飲料について、ビールとワインは無料に、その他
のリキュール類を7ドルに変更した。また、ビジネスクラス
で使用する食器類やリネンなど、ノースウエスト航空
(NWA)便にも採用した。
そのほか、今までデルタ航空のみで提供してきたセレブリ
ティシェフであるミシェル・バーンスタイン氏のレシピやマ
スターソムリエの資格を持つアンドレア・ロビンソン氏のワ
インメニューをNWA便にも導入した。
【旅行関連ニュース】
★TIJ事業計画Ă国内旅行活性化部会を立ち上げ
訪日をツーウェイツーリズムに「日発」取組み
会して観光立国教育全国大会が開催され、各地域・小学校に
おける観光教育の模擬授業が開催されたことを挙げた。同会
長は「観光は地域のため、地域住民のためにあることを再認
識した」と述べた。
第3に、観光関係団体会長連絡会議が機能し始めたを挙げ、
前年度は17団体による「中国における外資系旅行会社及びビ
ザに関する要望書」提出、「2016年東京オリンピック・パラ
リンピック承知に向けた緊急アピール」、「新型インフルエ
ンザの教育旅行への影響に関しての緊急アピール」を行っ
た。
そして、舩山会長は「今年は今週『政府による新型インフ
ルエンザの終息宣言の発出のお願い』を提出するよう準備
中」であることを明らかにした。
舩山会長は今年も行政との連帯を強化し、「VJC、VWC、
さらに国内観光旅行の振興などにツーリズム産業の総力を結
集したい」と述べ、そのために行政の信頼されるパートナー
して「民」のツーリズム産業組織の役割・機能について再検
討が必要」と強調、「観光立国を推進する『官と民』の効果
的な関係を模索したい」との見解を示した。
常任理事に金井氏昇任Ă新理事に生江Ă丸尾氏
日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)は6月10日、都内ホ
テルで通常総会を開催し、2009年度事業計画の基本目標につ
いて、ツーリズム産業の連帯と拡大を図り、観光立国の実現
をめざすとし,
休暇改革事業、ツーウェイツーリズム事業、広報・啓発事
業、産学連携事業を4本柱に、観光庁と連携して観光立国推
進基本計画の5大目標の達成をめざす。
具体的には、休暇改革事業は「1ウィークバカンス」キャ
ンペーンを展開し、長期休暇の取得促進と旅行需要の平準化
に取り組む。また、国内旅行の活性化に向けて「国内旅行活
性化部会」を立ち上げる。訪日ツーリズム事業は、「ツー
ウェイツーリズム事業」に名称変更し、訪日に加えて「日
発」への取り組みを開始する。
産学連携事業は調査部会を立ち上げて事業の拡充を図り、
また、観光関係人財育成のための産学官連携に積極的に取り
組む。広報・啓発事業は各種セミナーの開催と「旅育」の普
及に取り組む。組織強化事業は「特別部会」を立ち上げて新
公益法人制度の取り組みを開始するとともに、観光関係団体
との一層の連携を図る。
舩山会長「インフル終息宣言発出」を要望へ
組織の役割ă機能再検討Ă官民の効果的関係模索
舩山龍二会長は「昨秋からの世界同時不況や今春からの新
型インフルエンザの影響を受け、ツーリズム産業は厳しい現
実に直面しているが、私はむしろツーリズムは“新しい時
代”に入ったという気がする」と述べた。
その理由として、第1に行政との連携が密になったことを
挙げた。具体的には新型インフルエンザの過剰反応で、修学
旅行の間際取り消しが起きたが、自民党観光特別委員会、
観光庁はじめ各省庁とツーリズム団体が情報交換、対応策な
どの問題を共有できた。また、中国個人ビザ解禁も国会議
員、観光庁の尽力で7月から実現、中国での外資系旅行会社
に対する規制緩和への取り組みなどを列挙した。
第2に、去る5月10日に行政、民間、小中学校教諭が一堂に
任期満了に伴う役員改選では、会長、副会長は留任、常任
理事に金井耿理事が昇任、新理事に生江隆之氏、丸尾和明
氏、新監事に中山庚一郎氏が就任した。
TIJの役員体制は以下の通り。
▼会長=舩山龍二(JTB取締役相談役)
▼副会長=新町敏行(日本航空常任顧問)
▼副会長=大橋洋治(全日本空輸取締役会長)
▼副会長=大塚陸毅(東日本旅客鉄道取締役会長)
▼副会長=黒野匡彦(成田国際空港取締役兼執行役員特別顧
問)
▼常任理事=加賀見俊夫(オリエンタルランド代表取締役会
長兼CEO
▼常任理事=佐々木隆(JTB代表取締役会長)
▼常任理事=吉川勝久(近畿日本ツーリスト代表取締役社
長)
▼常任理事=柵木鬼美夫(日本ツーリズム産業団体連合会事
務局長)
▼理事=須田寛(東海旅客鉄道相談役)
▼理事=井山嗣夫(全国レンタカー協会会長)
▼理事=中村裕(日本ホテル協会会長)
▼理事=高向巖(日本商工会議所副会頭・観光委員会委員
長)
▼理事=成田豊(日本広告業協会会長)
▼理事=山崎正夫(西日本旅客鉄道代表取締役社長)
▼理事=岡眞則(全国空港ビル協会副会長)
▼理事=間宮忠敏(国際観光振興機構理事長)
▼理事=後藤高志(西武ホールディングス代表取締役社長・
社長執行役員)
▼理事=堀内光一郎(富士急行代表取締役社長)
▼理事=鷹城勲(日本空港ビルデング代表取締役社長)
▼理事=木村茂男(全国旅行業協会会長代行)
▼理事=生江隆之(日本経済団体連合会観光委員会企画部会
部会長)
▼理事=丸尾和明(日本旅行代表取締役会長)
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1925号 2009年(平成21年)6月11日 木曜日 (6)
▼監事=佐藤義正(国際観光旅館連盟会長)
▼監事=中山庚一郎(国際観光施設協会副会長)
★関西観光復興支援へ、各方面で動き活発化
観光庁、6月中旬に関係者一堂に会し対策協議
新型インフルエンザで打撃を受けた関西地区の観光復興を
支援するため、各方面で動きが活発化している。観光庁は、
6月中旬にも、関西から観光キャラバンが上京するのに合わ
せ、観光関連企業や団体等が参画する「国内観光旅行の振興
に関する連絡会議」との合同会合を開き、関係者が一堂に会
して早期需要回復策を検討する予定だ。また、大手旅行各社
は、関西への送客拡大に向けたキャンペーン商品の発売に乗
り出しており、日本旅行業協会(JATA)は会員各社に対
し、復興支援商品の積極的な商品化を呼びかけている。
関西圏からは去る6月3日にも、近畿ブロック知事会の会長
を務める山田啓二京都府知事が上京し、関西観光キャンペー
ンの実施・支援や、風評被害対策などを国交省等に申し入れ
ている。6月中旬には、関西広域機構などの関係者が再び上京
する予定で、関西来訪を呼びかけるキャラバン活動を行うこ
とが計画されている。
このため観光庁では、関西から関係者が上京するのに合わ
せて、旅行会社や航空・鉄道会社などが参画する「国内観光
旅行の振興に関する連絡会議」との合同会合を開き、早期観
光復興策をともに検討する場を持つ考えだ。同連絡会議に
は、旅行業界から大手旅行会社が参画しているが、観光庁で
はJATAを通じて大手以外の会社にも参加を呼びかけること
も検討している。
観光庁の大黒伊勢夫観光地域振興部長は、本紙取材に対
し、「関係者が一体となって、関西圏の観光を盛り上げる方
策を検討していきたい。積極的な需要喚起に力を入れていく
ことで、早期復興を支援できれば」と述べた。
JATA、「関西応援商品」商品化を各社に要請
JTB・KNTがキャンペーン商品発売、日旅も近く
一方、旅行業界では、大手旅行会社が相次いで関西送客
キャンペーン商品を打ち出しており、JATAはこうした取組
を強めるべく、会員各社に「関西地区宿泊施設への応援キャ
ンペーン実施」を要請している。これは、新型インフルエン
ザの影響が直撃した京阪神地区を中心に、宿泊客の増加を目
指した「がんばれ関西!関西応援宿泊商品」の商品化やプロ
モーションを要請したもの。
JATAとしては今春より、国内宿泊プレゼントキャンペー
ン「もう一泊、もう一度」を展開中のため、関西圏に特化し
たキャンペーンを別途打つのは難しいことから、今回、各社
による関西宿泊応援商品の設定を促すことで、旅行業界とし
ての応援メッセージを発信していく考えだ。具体的な実施案
については、JATAに報告を求めており、業界としての活動
状況を集約していく。
大手旅行会社のうち、JTBは、期間限定のエースJTB(東
日本)で、「見たモン勝ち!元気でっせ!関西編」を去る6月
5日より順次発売を開始した。既に、JTB西日本でも「元気
でっせ!関西」を合言葉に、商品展開とプロモーションを展
開中で、東日本地区もこれに呼応した。設定日は6月6日~7
月17日で、限定商品のため非常に格安な宿泊料金を設定した
のが特徴だ。
近畿日本ツーリスト(KNT)は、「メイトで行こうよ!関
西キャンペーン」を開始。メイトで関西方面に旅行した顧客
の中から抽選で計1000名に、関西の“うまいもん”をプレゼ
ントする。実施期間は6月10日~7月20日で、キャンペーン開
始にあたって販促ツールを販売店に送付した。特別商品で
は、限定列車で行くユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの
旅を発売し、往復JRとホテル1泊、スタジオパス1日券が付い
て、2万4800円(4名1室)~2万6000円(2名1室)で発売し
た。
また、KNTは、団体旅行でも、「頑張ろう関西」ユニット
商品を造成しており、大阪・京都・神戸・関西空港発着で、
バスプラス有馬温泉、白浜温泉、城之崎温泉の宿泊プランを
全国で販売できるよう設定している。
また、日本旅行でも、関西応援商品について7月1日発売で
現在企画中としている。
需要回復に向けた取組について、JATAの柴田耕介理事長
は、「新型インフルエンザの終息宣言を政府として出すのは
難しい情勢のようだが、季節性インフルエンザとあまり変わ
らないとの認識が出てきており、我々としては淡々と、需要
回復に向けた取組を進めていく」との考えを示した。国内で
は「もう一泊、もう一度」キャンペーンに加えて関西応援
キャンペーンを広げていくほか、海外ではVWCによるトレイ
ンジャックを6月15日より開始し、旅行への機運を高めてい
く考えだ。
【組織・人事】
●訃報 沖周元海将、第3術科学校長
沖周(おき・しゅう)氏(元海将、第3術科学校長)が6
日、胃ガンのため死去した。83歳。通夜は12日(金)午後6
時より、告別式は13日(土)午前10時より千葉県佐倉市大蛇
町790-4「さくら斎場第1式場」(電話043-484-0846)で、
喪主長男沖尚輝(なおてる)氏により執り行われる。
沖氏は、昭和19年海軍機関学校54期卒。海上自衛隊では、
第2航空群首席幕僚、小松島航空隊司令、佐世保地方総監部幕
僚長、木更津航空補給所長を経て昭和55年7月第3術科学校長
に就任した。