WING DAILY

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WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1636号 2008年(平成20年)3月26日(水曜日) WING DAILY
【HEADLINE NEWS】
★NAA、推進会議に最大30万回容量説明
歴史的な一歩を記す、社会・施設課題要因解消が前提
成田国際空港会社(NAA)は25日、空港周辺の9市町(4市
5町)で構成されている『成田国際空港都市づくり推進会議』
に対して、成田空港の容量拡大について、現在の運用時間(6
〜23時)を維持しつつ、4000メートル滑走路(A滑走路)と
2500メートル滑走路(B滑走路:北伸工事中)の2本の能力
で、最大30万回/年まで処理能力を拡大することができる可
能性を示した。今回の説明会は推進会議側からの要請を受け
てNAAが実施したもので、成田空港の過去の経緯を考える
と、地域側からの要請をうけて容量拡大に向けた説明会が開
催されることは、歴史的な一歩と評価できよう。空港開港か
ら30周年にあたる今年、いよいよ雪解けの時期に入ってきた
感触だ。
成田空港ではB滑走路の北伸工事が進められているが、こ
れが供用されれば発着回数は現在の20万回から22万回/年ま
で増加することになる。この22万回/年についても、地元と
の協議を経て設定された発着回数で、実際の処理能力はより
高いものだ。
NAAによると、30万回/年の処理能力を実現するために
は、誘導路や駐機スポット、旅客ターミナルビルなどの施設
整備や、空域・飛行ルートの調整などの変更も必要となる
が、とくに社会的要因として、地元との協議が大切だとして
いる。
これらの要因が仮に解決されたとすると、A滑走路の発着
回数は現在13.5万回のところ約15万回まで、一方のB滑走路
は現状6.5万回のところ、こちらも約15万回まで増強すること
が可能だという。
成田空港の現在の処理能力は、地元との協議によりA滑走
路が日枠370回、B滑走路が日枠176回と定められ、年間で20
万回とされている。
A滑走路の1時間あたりの処理能力は、6時〜11時、13時〜
16時、そして19時〜21時までが32回とされ、遅延を解消の
ため12時と17時は処理能力の80%として25回に、そして22
時台は10回とされている。ただ、早朝時間帯はそもそも需要
が少ないが、混雑時間帯でも日枠370回という制限がある関
係で増便することができない時間帯がある。この制約を解消
することができれば、A滑走路は需要の高い時間帯を埋めた
として日枠49回創出することができ日枠計は419回に、年間
で約15万回まで増やすことができるという。
一方、B滑走路の現在の年間処理能力は誘導路の形状など
の制約により6.5万回に留まっている。整備中の東側誘導路が
供用され離発着機を一方通行化するなど、運用面の制約を解
消することで、B滑走路もA滑走路と同等の約15万回の処理能
力をもつことが可能で、B滑走路をA滑走路と同等の処理能力
とすることがポイントにもなる。
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NAA、容量拡大の説明機会に「感謝」
NAAは『成田国際空港都市づくり推進会議』への説明にあ
たり、「説明の機会を与えていただいたことに感謝してい
る」とのコメントを発表。空港会社として、空港は地域に組
み込まれた基幹インフラであり、地域との共存・共栄を実現
していく姿勢をあらためて示した。そして、9市町の空港との
共存・共栄にむけた動きを歓迎している。
そのうえで、「地域の発展になしうることは、まずは空港
容量の拡大をはじめ、空港機能の拡充していくこと」との認
識を示しており、「それを遂行することで地域への真の貢献
ができる」としている。
今回、NAAとしては空港容量拡大の可能性を示してはいる
が、地元との調整を大前提として強調。「空港会社は地域の
一員。平行滑走路延伸のプロセスも踏んで、空港会社、地域
ともに学んできている」として、これまでの経験をもとに地
元との協議を進めていく方針だ。
また、上場に向けて今回の30万回に関する投資家への説明
については、「地域の了承がなければ、外に話すということ
は考えていない」とのスタンスを示している。また、空港法
の絡みもみながら、「ポテンシャル拡大が前提となれば、上
場に向けて将来どういう成長性をもっているかという説明の
なかにいれられるようになる」ともしている。
推進会議、空港ポテンシャル聞き「正直良かった」
『成田国際空港都市づくり推進会議』の会長でもある成田
市の小泉一成市長はNAAから説明を受けた会議後の会見で、
「国際空港都市づくりを検討していくにあたっては、その核
となる成田空港が将来どうあるべきかということは不可欠。
NAAは地域社会の一員であり、空港のポテンシャルを聞く必
要はあるし、聞かせてもらって正直良かった」と感想を語っ
(2)
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1636号 2008年(平成20年)3月26日(水曜日) ている。しかし、昨日の段階で、容量拡大について、地域
の代表らからは賛否を問う声はなかったという。
推進会議としては、今回のNAA側からの空港ポテン
シャルの説明をもとに、「雇用や人口がどれだけ増加する
のか、あるいは交通量の変化などの調査も必要」として30
万回/年による経済波及効果について、NAAや千葉県とと
もに調査していく方針だ。そして、5月にまとめられる成
田国際空港都市づくり基本構想も勘案して、空港づくりと
地域づくりをトータルとして、空港圏づくりを推進してい
く。
この30万回/年の処理能力実現には、地元、とりわけ騒
音地区の了解が必須条件となるが、騒音問題の協議につい
ては四者協議会で協議していく。また、成田市長としては
騒音地区住民と意見交換の場を設けていく方針。「騒音地
区も話し合いの場を設けているが、騒音地区も自分たちも
良い空港を作っていきたいという考え方があるのだという
実感を持っている」(小泉市長)という。
さらに仮に合意が得られたならば、想定されている様々
な課題解決に向けて「空港と9市町は課題解決に向けて一
緒に努力していきたい」と、空港と歩調を合わせて国際空
港都市づくりを推進していく姿勢をみせた。
国際空港都市づくりに向け5つの共通認識示す
ある国際空港都市を目指すこと、豊かな自然、歴史と文化に恵ま
れた多様な観光資源を活用しもてなしの心にあふれた国際空港都
市を目指す。そして、日本のゲートウェイとしての優位性を活用
した国際交流を推進し、国際教育を実践する国際性豊かな都市を
目指していく、とした。
【航空関連ニュース】
★茨城空港、LCC受け入れでターミナル簡素化
出発/到着を1階に集約、ボーディング・ブリッジ廃止へ
茨城県が2010年3月の開港を目指す茨城空港の旅客ターミナル
の新たな設計案を提示、アジア系ローコストキャリア(LCC)の
乗り入れを意識し、利用航空会社の運航コストを抑えたローコス
ト仕様に変更する方針を打ち出した。具体的にはこれまでの「到
着1階/出発2階」のスタイルから出発/到着共に1階へ集約。ま
た飛行機への搭乗方法もボーディング・ブリッジを使わずタラッ
プを使用する方法へと変更する考えだ。
新たな茨城空港の旅客ターミナル設計案は、3月21日に開催し
た「第2回茨城空港利用促進懇話会」の場で明らかにしたもの。
県側では同空港の基本的な考えとして、「2011年度には成田・羽
田の国際線は着枠が不足するとの予測を踏まえ、首都圏の航空需
要の一翼を担う空港として、国内に加えて海外との交流を目指
す」と提議。その上で、「国内4路線(北海道、大阪、福岡、沖
縄)への就航を基本としながら、併せてアジアを中心に国際ハブ
空港との就航促進を図る」としている。
さらに注目されるのは、「他空港との差別化を図るため、LCC
の導入に向けた空港利用のローコスト化を推進する」と明記した
点。今回明らかにした旅客ターミナル案は、この方針をベースと
したものと言える。
具体的には「LCCが就航しやすい空港利用のローコスト化を推
進する」ため、(1)航空機がエプロン(駐機場)において自走
できる方式とする(→牽引車を使用しないことでコスト削減が可
能)(2)ボーディング・ブリッジの廃止(→ブリッジ使用料が
発生しない)(3)ターミナルビル内の旅客導線の1階への集約化
を提案。なお、ターミナルビル変更案では、延床面積自体は
(3)の導線集約により、これまでの約5600平米から約7800平米
へと増えている。
空港は共通の財産で共生・共栄を、基本構想中間まとめ
アジア系LCCから「好感触」、新機軸打ち出せるか
また、『成田国際空港都市づくり推進会議』は、成田国
際空港都市づくり基本構想の中間とりまとめを行ってい
る。今後、5月末には最終とりまとめが行われる予定だ。
そのなかで、国際空港都市づくりに向けた共通認識とし
て、(1)地域の連携、(2)地域で空港を支え育てる、
(3)都市基盤・交通エネットワークの整備等、(4)観光
の促進、「おもてなし」の機運づくり、住みやすいまちづ
くり、そして(5)企業誘致・集積、地場産業の育成とい
う5つの共通認識を示した。
また、国際空港都市づくりの基本理念として、「9市町
は、空港を共通の財産として活用し、地域と空港が共生・
共栄する魅力ある国際空港都市を目指す」ことを掲げた。
その共通認識と基本理念のもと、目標とする国際空港都
市像として、空港と一体的な都市基盤整備を進め活力と利
便性に富んだ国際空港都市を目指す。さらに、エアフロン
ト地域としての潜在力を活かし、国内外企業にとって魅力
茨城県側では、今回の旅客ターミナル設計案変更の理由につい
て、政府方針の「アジア・ゲートウェイ構想」に基づく「地方空
港への国際定期便乗り入れ自由化」を挙げた他、実際にこの変更
案を提示したところ、「複数の外国航空会社が興味を示し、アジ
アの航空会社から好感触を得ている」と説明。今回のターミナル
設計案が現実となれば、こうしたアジア系LCCが茨城空港へ乗り
入れる可能性は、充分にあると言えよう。
なお、茨城県では、今年10月を目処に、建設工事をスタートさ
せる計画。茨城空港は、現在の防衛省管轄の百里基地を民間共用
化するプロジェクトで、現存の長さ2700メートルの滑走路に加
え、長さ2700メートルの新滑走路(現滑走路に平行)を新たに整
備する。位置は茨城県霞ヶ浦北側で、東関東自動車道水戸線を整
備することで、高速道路からのアクセスが可能となる。
(3)
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1636号 2008年(平成20年)3月26日(水曜日) ★ASTREC、来年度に知財活かす新組織発足
研究・ビジネス展開が目標、管理はNAAに移譲
次世代空港システム技術研究組合(ASTREC)は、今年
度をもってその活動を終了し、来年度はその清算にあてられ
るが、ASTRECとしてこれまで培ってきた技術などを活かす
ため、新たな組織を立ち上げる方針を固めた。また、知的財
産や技術を現在のASTREC会員が今後活用することができる
よう、その管理を成田国際空港会社(NAA)に移譲する。
新組織では、研究活動を継続していくほか、eTagや手ぶら
旅行など知的財産、技術をビジネスに繋げていく。ASTERC
の具体的な活動は今月末で終了となり、4〜5月にかけて2007
年度の決算を、秋口には清算される。しかしながら、
ASTRECはこれまでeTagや手ぶら旅行などで成果を残して
きたおり、今年度は実証実験にこぎつけるなど、特に多くの
成果を残しIATAなどからの評価も高かったという。
しかしながらASTERCは今年1月にIATAを脱退しており、
IATAへの発言権は失っている。IATAでのASTRECの評価が
高いことにくわえ、今後ASTERCが持っている技術や知的財
産権を今後活かしていくためにも、IATAに加盟している
NAAを通じて、eTagの標準化などに発言していく見通し
だ。
★航空局、B737系型57機に一部点検を指示
国土交通省航空局は昨年8月20日に那覇空港で発生した中
華空港事故の件で、事故機の製造国政府である米国連邦航空
局が24日、事故機と同系列の旧型式機B737-300〜500型を
対象に耐空性改善命令(AD)を発行したのを受け、同内容
の耐空性改善通達TCD-7240-2008を発行し対象機57機に点
検の指示を出した。
対象となる航空機は日本トランスオーシャン航空のB737−
400型23機、スカイネットアジア航空のB737-400型7機、エ
アーニッポンのB737-500型24機、北海道国際航空のB737500型1機、B737−400型2機。点検内容は片翼3枚計6枚の
すべてのスラット(前縁高揚力装置)について機構部の取付
状態と「ナットの適正なトルク値での締付け」を点検するこ
と。この点検は7月6日まで実施され、その後は4500飛行回数
ごとに点検を行う。
★ANA、EVA関空―LA線にもコードシェア拡大
6月就航予定のEVA小松/宮崎―台北線も
★全日空商事、グループ4社を統合
東日本を「ANA FESTA」に改称
全日空商事では、4月1日付で東日本全日空商事を承継・存
続させ、グループ4社を統合する。また、同日付けで社名を
「ANAFESTA株式会社(エーエヌエー・フェスタ株式会
社)」と変更する。「ANAFESTA」は空港売店名と同じ名
前だ。
東日本全日空商事に統合されるのは北海道全日空商事、西
日本全日空商事、九州全日空商事の3社。4月1日付で3社は解
散されることになる。
今回の統合について、これら4社の親会社にあたる全日空商
事は、業務効率化と資源の有効活用を図ることやブランド強
化の一環、としている。
なお、今回の統合に伴って、本社を港区新橋に移転する。
★第3回航空安全基準検討委員会を本日開催
航空局では本日26日、第3回航空安全基準検討委員会を開
催する。
3回目となる今回の委員会では、航空安全基準アップデイト
プログラム(案)が議題となっているほか、航空安全基準の
見直しに関連して、現在までの取り組み状況や今後の方針・
予定などが議題となっている。
★ヤマトロジスティクスと郵船航空サービス
共同混載の仕向地追加
ヤマトグループのヤマトロジェスティクスは郵船航空サー
ビスとの共同混載において仕向地を新たに9カ国、15都市、
計45レーンの追加を決定。24日より新仕向地への発送を開始
した。両社は2006年10月より共同混載を行っており、これま
でに9カ国12都市36レーンをカバーしていた。
追加仕向地は欧州がマドリッド、バルセロナ、ストックホル
ム他の合計5カ国9都市27レーン、アジアがイスタンブール、
ドバイ他の合計3カ国4都市12レーン、欧州がオークランド他
の計1カ国2都市6レーンとなっている。
今回の仕向地拡大は21日に発表された両社の戦略的強化のた
めの新体制構築を受け「航空フォワーディング事業の一体運
営」の推進一環として行われたもの。
★中国南方航空、関空―大連線増便
全日空(ANA)は、エバー航空(EVA)とのコードシェア
を拡大、3月30日から始まるEVA運航の台北—関空—ロサン
ゼルス線を新たにコードシェア対象とする。またEVAが6月
1日からの就航を予定している小松—台北線及び宮崎—台北
線もコードシェア便とする。
EVAの台北—関空—ロサンゼルス線は、週3便で7月29日か
ら8月4日と12月23日から29日の期間中は週5便での運航とな
る予定。一方、新路線となるEVAの小松/宮崎—台北線はそ
れぞれ週2便の運航となる。
中国南方航空(CZ)は来たる3月30日より関空—大連の旅
客便を週3便から週5便に増便する。
大連は中国遼寧省南部に位置し、中国では経済的重要性か
ら省クラスの自主権を持つ副省級都市に指定されている。ま
た3面を湖に囲まれ美しい景観を持つ観光都市でもある。
今回の増便により観光面、ビジネス面両方での更なる需要
拡大が期待される。
また関西空港でのハンドリング会社は日本航空(JAL)と
なる。
増便のスケジュールは以下の通り。
▼大連9時発—関空12時20分着CZ641便:火・木・土→
火・木・金・土・日
(4)
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1636号 2008年(平成20年)3月26日(水曜日) ▼関空13時30分発大連14時50分着CZ642便:火・木・土→
火・木・金・土・日
★ANA総合研究所「航空産業入門」初出版
ANA総合研究所は「航空産業入門〜オープンスカイ政策か
らマイレージの仕組みまで〜」を、4月10日に出版する。発
行は東洋経済新報社。最前線で業務にあたるANA各部門の責
任者の協力のもと編集され、航空の歴史だけでなく、これま
で著作が少なかったレペニューマネジメント、ネットワーク
戦略、マイレージの仕組みなどなどにも焦点を当てた。
グローバル時代の競争の中生き残るために日本の航空の国
際競争力、生産性をどうあげていくかが重要な課題であると
の認識のもと、航空産業の幅広い分野に従事する人々を対象
とした入門書となっている。価格は2520円(税込み)。
【防衛ニュース】
★ミサイル防衛用空中発射レーザー機を見る
日本企業の技術導入の可能性示唆
【カリフォルニア州発=渡辺謙一】このほどエドワーズ空
軍基地を訪れ、ミサイル防衛の一環として米ミサイル防衛庁
が開発中のエアボーン・レーザー・プログラム(ABL)の飛行
実験機(B747-400改造機)への高出力レーザー装置の搭載
状況を見るとともに、開発状況について、プライム契約者の
ボーイング社IDSのADL担当プログラム・ディレクター兼副
社長マイク・リン氏より説明を受けた。
広大なエドワーズ基地内の格納庫の1棟がABLの開発専用
施設となっており、化学剤のプラント、真空状態を作るため
の空気タンクなど通常の格納庫と異なる施設が後方に配置さ
れていた。
内部には、ABL飛行実験機1機のみがあり、機内では高出力
レーザー装置の搭載、配線配管、調整作業が行われていた。
リン副社長によると、5月には装置の準備が整い、地上発射
試験を行い、2009年には模擬ミサイルに対する空中発射試験
を実施する予定だ。
このプロジェクトについては、米ミサイル防衛庁
(MDA)、米空軍、主契約社のボーイング、副契約者のノー
スロップ・グラマン、ロッキード・マーティンが密接な連携
をとって進めているが、かねてより日本企業の参加の可能性
が示唆されている。それは、このシステムの開発に有効な技
術テーマとして、日本企業が優れた技術を持つ10件程度を、
米側でリストアップしているものの、具体的に技術が提供さ
れたものは、まだないということだ。
また、弾道ミサイル防衛システムの内、発射直後からの
ブースト段階での対応は、現在実用化を目指しているもの
は、ABLのみである。日本の弾道ミサイル防衛システムは、
ブースト段階での対処を含んでおらず、ミッドコース以降に
ついての対処のみとなっている。
日本に買って欲しいということか、との質問にはリン副社
長は、回答する立場にない、と述べたが、地上支援装置など
についての説明のなかで実用ではもっと小規模で対応できる
などと説明し、米空軍ABL機の日本への展開など想定した説
明にも聞こえた。
ABLは、照準用のCO2レーザーと、照射破壊用の酸素ヨウ
素化学レーザーの2種類から構成され、射程等は明らかにさ
れなかったが、光速で目標に到達するため、加速段階の弾道
ミサイルに対処できる、という。化学レーザーの発生のため
ABL機は液体酸素、アンモニアなどのタンクを搭載してい
る。化学物質としては、ごく一般的で危険性のないものであ
ることを強調していた。
量産計画はまだ確定していないが、当初20機以上の構想
が、予算の制約により、9機程度まで減って来ているそうだ。
搭乗員は10名で、うち6名が操作員、4名が飛行要員となって
いる。そして、量産機ではB747-8を改造する予定で、貨物型
か旅客型か何れを採用するかの検討をしているという。
【航空工業ニュース】
★JAXA、「宇宙科学講演と映画の会」開催
宇宙航空研究開発研究機構(JAXA)は来たる4月12日に新
宿安田生命ホールにて毎年春恒例の「宇宙科学講演と映画の
会」を行う。対象は中学生以上、定員は340名。参加費は無
料、事前の申し込みは不要で、来場順の先着となる。
毎年春恒例で行われているこの会は一般の人に宇宙科学研
究について知ってもらう試みであり、今年で27回目となる。
プログラムは以下の通り。
▼13:30開場
▼14:05講演「次期個体ロケットの研究」宇宙科学研究本
部教授 森田泰弘
▼15:10講演「月の謎にせまる“かぐや”」宇宙科学研究
本部教授 加藤學
▼17:00映画「祈り〜小惑星探査機「はやぶさ」の物語
〜」
同映画は探査機「はやぶさ」による小惑星イトカワ探査の
様子をCGで描いている。
【海外エアラインニュース】
★2009年7月に成田−パリ線にA380就航へ
AFR、週10便をA380、4便をB777の週14便体制に
飛行中のエアボーンレーザー機
エールフランス航空(AFR)のクロード・テヌヴァン日本
支社長は、日仏外交樹立150周年を記念した新キャンペーン
(5)
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1636号 2008年(平成20年)3月26日(水曜日) 発表会の席上、「2009年には、欧州系エアラインで初めて、
成田−パリ線にA380を就航する」方針を明らかにした。エー
ルフランス航空は、「今後も重要な日本市場に力を入れてい
く」と述べ、A380就航によって、日本市場でのさらなる需要
開拓に力を入れていく方針を強調した。今回の新キャンペー
ンにも全面的に協力している。
クロード・テヌヴァン日本支社長は、本紙取材に対し、成
田−パリ線へのA380型機の就航は、2009年7月になるとの見
通しを表明した。
現在、成田−パリ線は、日本航空とのコードシェア便を除
き、エールフランス航空は現在、週20便運航しているが、こ
のうち週10便をA380による運航に切り替える考えを明らか
にした。また、4便はB777型機による運航とし、2009年7月
以降は、週14便のダブルデイリー体制に切り替える方針。
便数では6便の減便となる形だが、周知の通り、A380型機
は超大型旅客機でキャパシティが大きいため、供給座席数は
減らないとしている。
クロード・テヌヴァン日本支社長は、欧州系エアラインと
して初めてA380を日本路線に就航させるのは、日本市場に力
を注いでいる証として、来年に向けて就航準備を進める考え
を示した。
既に、パリのシャルル・ド・ゴール空港には、A380型機に
も対応できるスポットを有した新サテライト「S3」がオープ
ンしており、AFRは新ラウンジ開設や、日本語を含む10カ国
語に対応した自動チェックイン機の設置など、空港整備を進
めてきている。
★AAL、国際線同士のスルーバゲージが可能に
アメリカン航空(AAL)は、4月1日より日本から同社便を
利用して、ダラス/フォートワース国際空港経由でメキシコ
や中南米、カリブ海諸国など、第三国へ向かう利用客を対象
に、スルーバゲージ・サービス「インターナショナル・
トゥ・インターナショナル(ITI)」を開始する。これによ
り、日本をはじめとするアジアの空港から、国際線同士の同
日乗り継ぎを行う場合、ダラス/フォートワース国際空港で
一旦預けた荷物を受け取ることなく、最終目的地での受け取
りが可能となる。なお、ITIサービスは、コンチネンタル航空
(COA)がヒューストン国際空港で既に導入済みだ。
【旅行関連ニュース】
★日仏間の双方向交流、85万人規模まで拡大を
両国挙げた新共同キャンペーンがキックオフ
★マカオ航空、7月に羽田定期チャーター検討
マカオ航空は、今年7月を目処に羽田—マカオ間の定期
チャーター便の運航を検討している。週5便またはデイリー1
日1便による運航で、使用機材はA321型機を投入する計画。
運航スケジュールは羽田早朝発着を予定しており、現在用機
者となる旅行会社との調整に入っている段階。
同社では、ゴールデンウイークの前となる4月25日に、関
空—マカオ間の定期便を現在の週3便(火・木・日)から週5
便(水・土除く毎日)に増便する計画。同路線は昨年7月26
日に同社初の日本路線として就航した路線だ。
ビバマカオ、成田定期チャーターの定着目指す
一方、昨年12月15日より成田—マカオ間の定期チャーター
便の運航を開始したビバマカオでは、週2便による運航を継
続、日本における同チャーター便の定着を目指す。同社では
12月15日から今年1月12日までチャーター便を運航。その後
保有機材整備のため、一旦運休したが、2月6日より運航を再
開、週2便での運航を継続している。
現在までの運航状況について、同社日本GSAを務めるエ
ア・チャーター・インターナショナル代表取締役の大林佳弘
氏は「日本でも徐々に浸透しつつある」と説明。当初はイー
ルドの高い日本売り販売主体を目指してきたが、現在ではマ
カオ発の販売との半々の割合に推移する。今後は日本でも
チャーター便の用機者となる旅行会社への販路拡大を進める
考えだ。
日仏外交樹立150周年を記念し、日本とフランス間の双方向
での観光交流拡大を目指した新キャンペーン「日本、フラン
ス、こうゆう関係」が3月25日、フランス政府観光局、国際観
光振興機構(JNTO)などから正式発表され、キックオフし
た。カトリーヌ・オーデンフランス政府観光局長は本紙に対
し、新キャンペーンによって訪仏日本人旅行者数を現行の約
65万人から70万人レベルまで引き上げたい考えを表明。一
方、国交省の本保芳明総合観光政策審議官は、訪日フランス
人旅行者数を07年実績の13万7700人から15万人超に拡大した
い考えを示し、2008年は日仏双方向で、85万人まで交流規模
を拡大することを目指す。
今回の新キャンペーンは、日仏間の文化交流の歴史等を背
景に、その“類似性”にスポットを当てた共同キャンペーン
を展開する点で、過去に例を見ない独創的なものとなってい
る。
両国で展開される共同ポスターには、海に浮かぶ世界遺産
であるモンサンミッシェルと宮島の厳島神社、ニューカレド
ニアのイル・デ・パンと松島、仏北部の都市リールと浅草、
エッフェル塔と東京タワーなど、類似性のある観光地をセッ
トで紹介。それぞれに「行った!」「行った?」「知って
る!」「知ってる?」などのキャッチコピーを付けて、双方
(6)
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1636号 2008年(平成20年)3月26日(水曜日) の観光地への興味を誘引し、旅行意欲をかき立てる仕掛けと
なっている。
こうしたまさに双方向のツーウェイツーリズムを促進する
キャンペーンが、二国間で展開されるのは過去に例がなく、
「相手の国について語りながら、自分の国もアピールする」
という独創的なコンセプトが盛り込まれた。
会見で、カトリーヌ・オーデンフランス政府観光局長は、
「フランスと日本は距離的隔たりがあるにも関わらず、大変
近い関係にあることを新キャンペーンを通じてアピールした
い」と挨拶。また、パスカル・ヴィザンテネール同マーケ
ティング部長は、「訪仏日本人客数は、ここ数年若干伸び悩
んでいるが、年間65万人以上。ユーロ高にも関わらず日本人
の1日の支出額は270ユーロを保持し、延べ宿泊者数では第5
位と、大変重要な市場」と述べ、新キャンペーンを日仏両国
にとって有益なものにしていきたいと意気込みを示した。
一方、間宮忠敏JNTO理事長は、「フランス人の関心が高
い建築等の伝統文化や、日本食、癒し・健康などをテーマに
プロモーションを展開していく。また、外国人に比較的知ら
れていない地域のアピールに重点を置いていきたい」と述
べ、金沢、熊野古道・高野山、直島、宮島などをPRしていく
方針を示した。
仏政観、東京と大阪で交通広告、特別ツアーも
滝川クリステルさんと假屋崎省吾さんを広報大使に
具体的には、フランス政府観光局による日本でのプロモー
ションとして、交通広告、メディア招聘、インターネットお
よびモバイルサイト、イベント、旅行会社による150周年記
念特別商品の販売など、多方面にわたる複合的なキャンペー
ンが展開される。
まず、交通広告では、4月に東京(2週間・14路線18車輌)
と大阪(6日間・4路線16車輌)、5月に大阪(2週間・1路線
1車輌)、6月に東京(15日間・13路線・15車輌)の3ヶ月間
にわたり、交通広告キャンペーンを展開。東京では一部トレ
インジャックも行い、フランス観光をPRする。
メディア招聘は、年間を通じて取材記者を招待するが、フ
ランスの各地方に2媒体ずつ招待することで、地方の魅力を露
出する。また、フランス同様に英国も日英外交樹立150周年
を迎えることから、フランス政府観光局と英国政府観光庁に
よる共同プレスツアーも実施する。
インターネットキャンペーンでは、特設サイト(http://
www.franceguide.com/150nen)をオープンし、最新情報や
地域別・テーマ別などの観光紹介を行うほか、年間を通じて
懸賞を実施。150周年記念の認定パッケージツアーも紹介、
エールフランス航空の予約エンジンも搭載する。さらに、日
仏外交樹立150周年記念の特別モバイルサイトをオープンし
ており、モバイルによる情報発信も強化する。
また、旅行業界向けのキャンペーンでは、フランス政府観
光局の加盟企業・団体などから、日本人旅行者向けの特典を
提供。フランス側パートナーから、各種割引やウェルカム・
シャンパン等の提供、お土産など、計65種の特典が日本の旅
行会社に対して提供される。日本側旅行会社では、これら特
典を盛り込んだ150周年記念の特別商品を造成しており、3月
3日時点で、計18社が25種の旅行商品を造成している。
加えて、昨年度より認定している「フランス広報大使」に
は、新たに、ニュースキャスターの滝川クリステルさんと、
華道家の假屋崎省吾さんを任命。引き続き広報大使を務める
音楽家の城之内ミサさんとともに、3名が大使を務める。
同日は、フランス広報大使の任命式も合わせて行われた
が、フランス出身の滝川クリステルさんは、「フランスは先
祖の代から繋がる切っても切れない関係。いつかこういう機
会が訪れるのを待っていた。パリだけでなく、地方の魅力も
知ってもらえるよう、ニュースJAPANなどでも取り上げられ
るよう企画書なども出していきたい」と述べ、フランスの観
光魅力発信に意欲を示した。
また、假屋崎省吾さんは、「フランスへの旅は、美を仕入
れる旅。文化、建築、ファッション、グルメなど、本当に素
晴らしく、日本とフランスの架け橋となれるよう、ありとあ
らゆるところでPRしていきたい」と挨拶した。
JNTO、パリ市内で2階建て観光バスに車体広告
ミシュラン緑ガイドの制作協力、特設サイトも
一方、JNTOによるフランスでの訪日キャンペーンでは、
高所得・高学歴な中高年層や、現代日本文化に関心の高い青
年層などをターゲットに据える。
まず、パリ市内の観光バスを活用した車体広告として、3月
中旬から下旬、5月中旬の2期にわたってキャンペーンを展開
する。2階建ての巡回観光バス「オープン・ツアー」を使用
し、新キャンペーンの共同広告を車体全面にデザインした。
また、ミシュラン観光ガイドの緑版制作に向けた取材協力
を行うほか、「日仏観光交流年」を記念した特設サイト
(http://www.tourisme-japon.fr/jnto150/)を開設。地方
の魅力紹介や、アンケートと懸賞、フォトコンテストなどを
行い、情報発信を強化する。
このほか、観光交流年の記念セミナーを来る5月15日にパ
リのバガデル庭園で開催。7月にパリで開催される「ジャパ
ン・エキスポ」への出展や、日本紹介テレビ番組の取材支援
などを通じて、訪日誘致促進を図っていく。
2007年のフランス人訪日客数は、前年比16.9%増の13万
7700人。ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)が始
まった2003年時点では、8万5000人規模に留まっていたが、
この5年間で約1.6倍に拡大した。
間宮理事長は、「景気減退や円高など、外部環境が変化し
つつあるが、それでも追い風は変わっていない」とした上
で、交流年事業などの集中キャンペーンを展開した地域は、
大きく旅行者数が伸びることが多いと指摘。フランスについ
ても、新キャンペーンでさらに勢いが付くことを期待すると
し、引き続き2桁増の伸びを維持したい考えを示した。
冬柴大臣「2010年には優々と1000万人突破を」
フォール仏大使「互いに訪問しない理由ない」
新キャンペーン発表後のレセプションには、冬柴鐵三国土
交通大臣・観光立国担当大臣、フィリップ・フォール駐日フ
ランス大使も駆けつけ、日仏両国挙げて新キャンペーンの成
功に尽力する姿勢が示された。
冬柴大臣は、「フランスと言えば観光立国、観光立国と言
えばフランスであり、年間7600万人もの外個人観光客がフラ
ンスを訪問していることは、誠に羨ましい限り」と、観光大
(7)
WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊) 第1636号 2008年(平成20年)3月26日(水曜日) 国フランスを讃えた。その上で、日本も2010年に訪日外国人
旅行者を1000万人まで拡大するビジット・ジャパン・キャン
ペーン(VJC)を展開しているとして、「2007年には835万
人まで伸ばせた。2010年には、優々と1000万人を突破した
い」と今後の伸びに自信も覗かせた。
その上で、フランス人観光客には京都、飛騨高山が人気
で、歴史と伝統への関心が高いことから、歴史ある町・金
沢、ユネスコ世界遺産の熊野古道、建築家・安藤忠雄氏が手
掛けた地中美術館のある瀬戸内海の直島、宮島の厳島神社の
魅力をくわしく紹介し、この4つの観光地を重点的に宣伝して
いきたい考えを示した。
フィリップ・フォール駐日フランス大使は、「150年前に
は、日仏間の船旅には50日間もの膨大な時間がかかったが、
1986年には直行便が就航し、12〜13時間で行ける距離になっ
た。日仏間の移動時間は短縮され、互いの国を訪問しない理
由はなくなった」と述べ、新キャンペーンの展開でさらなる
交流拡大に期待感を示した。
レセプションの様子
(上段左:滝川クリステルさん、上段右:フィリップ・フォー
ル駐日フランス大使)
(中段:冬柴大臣とオーデン仏政府観光局長)
(下段:日仏関係者全員による記念撮影)