JOMF NEWS LETTER No.258 (2015.7) ベトナムでの子育て 第5回 : 育児製品、子育て、生活上の注意 海外出産・育児コンサルタント Care the World 代表 ノーラ・コーリ 【 豊富な育児製品 】 ベトナムはここ数年著しい発展を遂げ、スーパーマーケットの品物の種類は増え、豊 富になり、入荷状況も改善されました。以前の情報では紙おむつはなくなるとなかなか入荷 しないとか、シンガポールに出かけた時、日本に一時帰国した時に大量に買い求める必要が あると記されていましたが、現在、その心配はホーチミンやハノイの都市部においてはほと んどありません。 紙おむつについても種類が豊富になり、たいへん求めやすくなりました。スーパーマ ーケットで手軽に手に入るようになり、競争が激しくなったことから個人商店などでは価格 交渉すらできます。粉ミルクも求めや すくなりました。薬局でも輸入食料品 を扱うスーパーマーケットでも購入で きます。粉ミルクはフランス製、中国 製、日本製、アメリカ製、ニュージー ランド製などいろいろな国で製造され たものが売られています。日本のブラ ンドも人気があり、東南アジアの拠点で生 産されたものが売られていることもありま す。 Photo by Nora Kohri 日本のメーカーの粉ミルクも売られている ただし、育児製品によってはこだわりがあるかもしれませんので、そのようなものは日本から 調達するとよいでしょう。たとえば、ベビー肌着は綿100%にこだわっている方々がいました。ベビ ー服についても日本のものは縫製もよく、生地の質もよいということで日本人からのお下がりを着せ ている人もいました。暑さでおしりが蒸れるため布おむつを利用している人もいましたが、彼女たち は現地で求められる三角おむつよりは日本の長方形のおむつを好んでいました。またおむつカバ ーは日本製のほうがしっかりとフィットし、漏れも少ないという評判でした。ただし、ウール100%は 暑すぎるとのことでした。哺乳瓶に関してはベトナムの店ではプラスチック製が主流で煮沸消毒の できるガラス製は少なかったです。 ほかにも大きなものとしてベビーカーは現地でも調達できますが、あまり利用する機会はあり ません。ベビーベッドも売られていますが、シンプルなものです。ベトナム人はこのベッド全体をブル ーの蚊帳でおおいます。床板の上にはござを 2 枚ほど敷いて通気性をよくしています。このように 同じベビーベッドでも日本人とは使い方が多少違うので、作りも違います。 是非日本からというものとしてあげられていたのは、常備薬としての小児用医薬品、虫よけス プレー、脱水症状予防のための粉末スポーツドリンク、こどもの本、絵本、育児雑誌、育児の本など JOMF NEWS LETTER No.258 (2015.7) でした。 【 離乳食にもお国柄 】 ベトナム人は離乳期をいとも簡単に迎え入れているという印象を受けました。彼らは赤ちゃん が生後 4 か月頃から近所のお粥屋さんに出向き、油揚げや野菜を抜いたお粥を赤ちゃんに与えて いました。その傍らで母親は近所の人たちとのおしゃべりに明け暮れます。なんともおおらかな子育 て光景でした。 ベトナムでも海外から輸入したベビーフードが輸入品を扱うスーパーマーケットなどで売られ ています。ただし、日本人は日本からのフレーク状の離乳食が役立ったと話されていました。また、 中にはベトナムで求められるお米は信頼性に欠けるということで赤ちゃんには日本のお米を与えて いました。 ベトナムでは暑い時期、残り物は早く傷むので赤ちゃんには残り物を与えないというアドバイ スがあがっていました。新鮮なフルーツも豊富なのでそれらをつぶして与えるのもベトナムならでは の楽しみでしょう。 【 子育ての様子 】 日本人の場合: < 子どもを遊ばせる場所 > 日本人にとって大きな悩みは、子どもたちが外で思いっきりからだを動かして遊べる 環境が十分整っていないということでした。夏の時期はたいへん暑いので、現地の子どもた ちも家の中で遊んでいます。外は車やバイクの量が半端でないので、ちょっとお散歩がてら 近所の公園というわけにはいきません。一般道を子どもと歩くことすらたいへん危険で、空 気も排気ガスやほこりで汚染されています。歩道はあるにしても、十分その役目を果たして いません。たとえば、歩道をバイクが走っていたり、駐車していたりもします。また、段差 もあり、ベビーカーには向いていませ ん。 そのため、日本人は外国人が多く 住むマンションの敷地内でベビーカー を押して散歩をしたり、そのマンショ ン内にある子どもの遊び場、あるいは 室内遊び場、ショッピングセンター内 の子ども広場を利用したりしています。 幼稚園児の場合はあえて遊具の充実し た園を選んでいる人もいました。 Photo by Nora Kohri マンションの中にある室内子どもの遊び場 現地の人たちの場合 : < 子ども好きな国民 > 日本と比べて印象に残るのはベトナム人の子ども好きでしょう。レストランでは親が食べてい る間、お店の人が子どもと遊んでくれたり、町では目が合おうものなら必ず「女の子?男の子?」と いうように赤ちゃんのことで話しかけてきます。近所の世話好きのおばさんたちは若いママに「今日 は寒いから靴下を履かせろ」というように育児のアドバイスをします。日本人の子どもは珍しいことも あり、子どもの頭をなでたり、からだに触れたりしてスキンシップを求めるでしょう。このようにベトナ JOMF NEWS LETTER No.258 (2015.7) ムは子どもにフレンドリーな社会と言えるでしょう。 < 地域社会で子どもを育てる > ベトナムの一般的な家庭では両親共働きです。そのため、父親が家事、育児に参加するの はごく自然です。さらに両親が仕事に行っている間、子どもを預かるのはまず子どもの祖父母です。 赤ちゃんを抱いている「おばあさん」はよく見かけました。さらに近所の人に預けたり、親戚に預けた り、子守りを雇ったりと地域の人たちがかかわりあって 子どもたちを育てています。赤ちゃんを預けられないと きは仕事場に連れていき、周りの人たちが交代で赤ち ゃんを見ていました。地方では上の子どもが下の子ど もをおぶって遊んでいたり、近所のお兄さんが背中に 赤ちゃんを抱いてビリヤードをしている光景がごく自然 に写りました。 Photo by Nora Kohri ベトナム人の多くは子守りを親に頼っている 【 使用人 】 ベトナムで子どもを育てるにあたって、たいへん助けとなっているのが使用人の存在 です。外国人向けのマンションにはルームサービスが家賃の中に含まれていても、多くの日 本人駐在員家庭で使用人を雇っていました。 掃除、買い物、洗濯、アイロンかけ、子守り、料理などはもちろんのこと、ちょっと 母親がからだを休めたいとき、夕食の準備をするとき、上の子どもを見てもらいたいときな ど助けてくれます。ただし、極端に頼りすぎ、子どもを預けっぱなしにしたりすると、子ど ものことばが遅れたり、自立心に欠けたりと子どもの発達に影響するので、どの程度預ける のかをよく判断する必要があるでしょう。 また日本人同士での助け合いもベトナムでは盛んなようでした。たとえば母親の具合 が悪い時はお友達が食事を作ってもってきてくれたり、子どもを見てくれたり、と助け合っ ています。これも同じマンションに住んでいるからこそ可能なのでしょう。そのため現地に 着いたらなるべく早いうちにお友達を作ることをお勧めします。 【 健康に暮らすために 】 病気にかからないため、また事故にあわないためには日頃の暮らしの中での健康への配慮 が大切でしょう。 < 水 > 水に関しては日本人の方々のほとんどがミネラルウォーターを購入しているか、煮沸した水 を使用していました。上水道設備は老朽化しており、汚染された地下水が混じっている可能性があ ると指摘されています。ろ過器はあまり信頼できないようです。そのため、水道水から直接水は飲ま ないようにというアドバイスでした。 < 健康管理 > 外から帰ってきたら手を洗う、赤ちゃんの場合はあまり人ごみの多いところへ連れて行かな いなど、基本的なことですが、外からの病気を予防するという点では心がけたいことです。さらに皮 膚、のど、目などの疾患は症状が軽いうちに対処するとよいでしょう。赤ちゃんは暑いと何度も夜中 に起きたり、離乳食の進みも落ちますので、エアコンを上手に使う工夫も必要です。そのため、疲れ たら昼寝をさせる、無理な予定をたてて子どもを振り回さないなど心がけましょう。 JOMF NEWS LETTER No.258 (2015.7) < 衛生管理 > 日本人の母親の多くが野菜の残留農薬を心配していました。求められる店は限られているも ののあえて有機栽培による野菜を購入していたり、何度も水で洗ったりしていると話していました。 また生野菜や生ものは子どもに与えず、すべて火を通したものしか与えないとも話していました。そ れに加え、たとえ火が通ったものでも時間がたつと食中毒を起こす可能性があるので、特に使用人 に子どもの食事を頼んだ時には注意が必要だと話されていました。ベトナムの飲食店では化学調 味料の使用も多いので、外食は極力避けたり、信頼できるレストランを選んでいました。 < 害虫などとの共存 > 蚊、ハエ、アリ、ゴキブリを筆頭にねずみ、やもり、ダニ、のみなどがいます。マンションによっ ては害虫駆除の人が定期的に回って薬を撒いています。個人でもさまざまな対策を講じていますが、 結局また戻ってくるのでイタチごっこの状態となるでしょう。そのため、清潔を保ち、なるべくこのよう な害虫が家の中に入ってこないようにするとともに、やもりのように蚊を食べてくれるものについて は共存する心構えも必要でしょう。町にはのら犬もいるので、子どもがちょっかいを出したりして噛ま れないように避けて通る方がよいでしょう。 < 交通事故 > 交通道徳はほとんど守られていないので、交通事故はたいへん多いです。子どもの手をもっ ての道路の横断もチャレンジです。信号があってもないのと同然のところも多いので、道を渡る時は 勇気をもって現地の人のように車の流れに添ってさっさと渡る必要があります。車が来そうだからと 道路の真ん中で止まると相手は横断者が渡りき ることを前提に突進してくるので、かえって事故 にあいます。歩道を歩く時も注意が必要です。 後ろからバイクが追い越したり、狭い歩道に停 めてあるバイクに子どもの顔がぶつかったりす るので注意が必要です。そのようなことから乳 幼児と外出する際にはタクシーの利用がほとん どとなりますが、外を歩く時は抱っこひもが活躍 します。 Photo by Nora Kohri 子どもはヘルメットをかぶっていない これで 5 回のシリーズにわたってベトナムでの出産と子育てを紹介してまいりましたが、今回 で終了となります。次回はメキシコでの出産と子育てについてご紹介いたしますので乞うご期待!
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