中国家電 vs. 日本家電

戦略ケース
中国家電 vs.日本家電
-日本企業は中国企業に勝てるのか
2001 年 11 月、中国はWTO加盟で国際市場に正式な名乗りを上げた。13 億人という巨
大市場、「世界の工場」とよばれる圧倒的な生産規模とその成長性を前に、「中国脅威論」
が叫ばれている。本稿では、中国で最も成長が著しい家電業界を例にとり、その実態を整
理するとともに日本企業の勝ち残りの方向性を探る。
1. 躍進する中国家電、低迷する日本家電
(1)中国家電の躍進
中国家電メーカーが急成長している。中国家庭電器協会の発表では中国家電上位 23 企業に
よる総売上高は 99 年から 2000 年で 50%増となっているという(
「中国情報局」のホームペー
ジより)
。トップ企業の海爾(ハイアール)は 2000 年の売上高 406 億元(約 6100 億円)
。84
年の設立時からの売上の伸び率は年平均 80%増になるという。米業界紙の 2000 年世界家電メ
ーカーランキング(出荷台数)では日立製作所を抜き9位にランキングされた。また美的(メ
イタ)は売上高 88 億元(約 1300 億円)
、売上高対前年 152%、経常利益 168%と急激な伸び
を示している(図1)
。
これら中国家電メーカーの成長の要因として以下の3点が考えられる。
図1.中国主要家電メーカーのプロフィール
業 績(億円 )
売上
経 常利 益
利益 率
売上
成長 率
対前 年
特 徴
経常 利益
成長 率
対前 年
・
・
・
・
中国 トップの 総合 家電 メー カー
海外 10カ所 に生 産拠点
中国 全土 に専 売店網 、アフターサービス網 を持つ
設立 からの 売上 成長 率平 均 年80%増
海爾
(ハイア ー ル)
205
3.5%
6,094 *税 引き前 *税 引き前
利益
利益
美的(メイタ)
1,321
278
21.1%
康佳(コンカ)
1,352
223
16.5%
89.0%
79.4%
・ カラー テ レビを主力 とす る
・ 米国 のエレクトロニクスショー でデ ザイン賞 受賞
・ デ ジ タル テレビの 開発 に注 力
TCL
1,371
77
5.6%
139.2%
87.7%
・ 固定 電話 、テ レビが主 力
・ パソコン、情 報機 器に注 力
格蘭仕
(ギャランツ)
152.1% 168.2%
・ エアコンを主力とす る
・ 電子 レンジで圧倒的 なシェア
・ 炊飯 器、電気 ポットなど小 物家 電にも強 い
*1元= 15円 、1香 港ドル= 16円 として 計算
出 所:業 績は 「中 国企 業網」のHP、特 徴は 日本 経済 新聞 などか ら作成
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ひとつめは国内市場でのシェアアップで
図2中国家電市場への主な参入企業
ある。中国の家電市場は伸びている。冷蔵庫、
海爾、美的、長虹、康佳、TCL、金星、
創維、楽華、海信、厦華、熊猫、西湖
現地(中国)企業
カラーテレビ、電子レンジなどの主要な家電
製品の普及率はここ数年で急激に上昇してい
る。カラーテレビの普及率はすでに 100%超に
達した。エアコンは 30%、電子レンジは 15%
日系企業
ソニー、シャープ、東芝、松下電器、日立、
三菱電機、三洋電機
欧米企業
シーメンス(ドイツ)、フィリップス(オランダ)、
GE(米)、ワールプール(米)
韓国企業
三星、LG
とまだまだ拡大余地が大きい。特に農村部で
の飛躍的な家電製品の普及が見込まれてい
出所:「週刊ダイヤモンド」(2001.8.25)より作成
図3
中国市場での主要家電製品の企業別シェア
る。13 億人の潜在的なターゲットをかかえ
普及率
(2000年6月
(2000年6月))
る巨大急成長市場に、現地家電メーカー、外
1位
2位
3位
資系メーカーともに多くの企業が参入して
カラーテレビ
114.4%
長虹
康佳
TCL王牌
(18.7%) (18.5%) (10.0%)
いる(図2)。しかしながら中国沿海部の家
洗濯機
89.5%
海爾
小天鵝
(23.6%) (22.4%)
電量販店の品揃えをみると、白モノ家電では
冷蔵庫
79.3%
海爾
容声(科龍)
新飛
(32.9%) (11.8%) (8.5%)
エアコン
27.8%
海爾
美的
格力
(18.7%) (13.8%) (12.8%)
電子レンジ
15.5%
格蘭仕
LG
(67.1%) (12.1%)
7~8割、AV機器でも6~7割程度は現地
ブランドの商品であるという。主要な家電製
品の企業別シェアをみても、多くのカテゴリ
栄事達
(7.5%)
松下
(5.3%)
* :外資系企業
ーにおいて中国企業がシェアトップ3を確
出所:普及率は「中国信息報」(2000年10月13日)
シェアは北京華閲旭通国際広告有限公司と
北京中央電子台共同調査」(2000年2月)
保している。かろうじて外資系企業の名前が
あがるのは電子レンジにおけるLG(韓国)
と松下(日本)だけである(図3)
。90 年代中頃まではカラーテレビでは長年「パナソニック」
がトップシェアを確保していたが、今はトップ3にもあがってこない。中国家電メーカーは、
外資メーカーを退け、急成長する中国市場でシェアアップを果たしたのである。
ふたつめは総合家電化である。海爾は 80 年代に冷蔵庫からスタートし、企業買収などで製
品分野を拡大し、昨今では携帯電話やパソコンなどのIT分野をもカバーする総合家電企業
となっている。美的もエアコンから電子レンジや冷蔵庫などへ生産分野を拡大している。長
虹などのテレビを主とするメーカーのエアコン参入もすすんでいるという。経営資本の大き
な企業がカテゴリーを拡大し、より一
層強力になっている。
図4海外進出が進んでいる中国企業
三つめは世界市場への参入である。
多くの企業は東南アジアやアメリカを
メーカー名
海爾
輸出でシェアの高い
カテゴリー
世界シェア
米国シェア
冷蔵庫
-
30%弱
(小型冷蔵庫)
電子レンジ
30%
-
中心とした、世界市場への進出を着実
に果たしている。海爾のアメリカでの
格蘭仕
小型冷蔵庫市場でのシェアは 30%近い。
美的
エアコン
-
3%
康佳
カラーテレビ
-
1.1%
2001 年にはエアコンの日本輸出も始ま
っている。海爾の張会長は「海爾の狙
いは輸出を増やすことだけでなく、海
出所:日本経済新聞記事など各種オープンデータより作成
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外に製造基地と販売ネットワークをもち、自らのビジネス圏を樹立すること」
(週刊ダイヤモ
ンド 2001.11.03)と語り、更なる世界市場への進出・浸透に旺盛な意欲を見せている。また
電子レンジを主力とする格蘭仕(ギャランツ)はすでに世界シェアで 30%を占める(図4)
。
固定電話機やカラーテレビを得意とするTCLも、2002 年に南アフリカ、中近東、東南アジ
アの携帯情報端末の販売を開始する。
このように、成長性の高い国内市場でシェアアップを果たし、さらに積極的に海外への進
出を果たしていることが急成長の要因である。
(2)日本家電の低迷
一方日本の家電メーカーは厳しい状況にある。2001 年9月の中間決算では、松下電器、ソ
ニー、東芝など国内大手家電メーカーは軒並み当期利益で赤字となった。今後の見通しも決
して明るくない。長引く景気の低迷といった日本経済全体の問題もある。また各社個別に様々
な要因がある。しかし日本の家電メーカーは根本的かつ構造的な問題に直面している。
ひとつめは国内市場の成熟化である。国内の主要な家電製品の世帯普及率をみると、冷蔵
庫 99%、カラーテレビ 99%、電子レンジ 99%、ルームエアコン 84%と当然のことながら非
常に高くなっている。これら白モノ家電はパーソナル化がすすまない。携帯電話などと違い
頻繁な買い替え需要は見込めない。またデジタル家電化もまだまだ進まず、新しい市場を創
造できないでいる。このような状況下で売上を上げ、利益を出していくことは難しい。
ふたつめは世界市場での競争力の低下である。日本の大手家電メーカーは低コスト生産を
もとめて生産拠点の中国移管をすすめている。松下はプラズマディプレイの生産合弁会社を
上海に設立し、電子レンジの生産を上海に集約した。日立はエアコンの基幹部品であるコン
プレッサーの生産合弁会社、エアコン組立会社、プロジェクションテレビの製造会社を中国
に設立した。東芝も中国企業4社に洗濯機や掃除機、電子レンジなどの生産委託をしている。
このように中国へ生産のシフトを行いながらも、品質維持のため部品の大部分はいまだ日本
国内から輸入している状況である。中国メーカーの価格相場の引き下げに対処するため、日
本メーカーも低価格化を進めているのであるが中国メーカーにはかなわない。相対的に日本
製品の競争力は低下していく。よって売上もあがらずに、利益率も低下するという構造にな
っている。
このような問題に対処するために、大手各社はあらたな動きを見せている。
ひとつめは事業の選択と集中である。ソニーはEVA指標で2期連続赤字事業を統廃合す
るとして、昨年は 28 事業から撤退した。松下や東芝の海外での製造工場売却や統廃合などの
動きもこの一環である。
ふたつめは企業間の提携である。松下電器と日立は「次世代のホームネットワーク家電」
などで、東芝と松下は「液晶ディスプレイ」で、三洋電機とシャープは「欧州とアジアでの
相互OEM」などで提携した。このように技術・開発提携をすることによって、研究開発費
負担の分散を志向している。
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三つめは人員のリストラである。松下や東芝の早期退職優遇制度をはじめとして、各社余
剰人員を大幅に整理し高コスト体質の改善に努めている。
このようにして日本の家電メーカーは存続の危機を痛感し、抜本的な改革をすすめている。
2.中国家電の強さの要因
日本企業と対照的に急成長をとげる中国家電メーカーの強さの秘密を探る。
(1)圧倒的なコスト競争力
中国家電メーカーの強さの秘
図5 主要都市の投資・生産関連コストの比較
(横浜=100とした場合の比較指標)
一般工職賃金
ある。人件費でみると日本を
100 とした場合、中国は3~6
日本(横浜)
~
~
密は、圧倒的なコスト競争力に
エンジニア賃金
100
100
となり、15 分の1から 30 分の
1の安さである(図5)。また
電気料金などの公共料金もお
よそ日本の半分である。これが
コスト競争力の最大の要因で
ある。
深圳
3.1
7.3
上海
6.1
7.9
北京
5.4
6.7
出所:日本貿易振興会『第11回アジア主要都市・地域の投資コスト比較』から作成
もうひとつのコスト競争力の要因は海外家電メーカーへのOEM供給による、規模の経済
性の獲得である。先述した電子レンジで世界シェア 30%を誇る格蘭仕は、海外メーカー200
社以上とOEM契約をしている。順徳の工場では1万人を超える工員が 24 時間シフト体制で
従事し、年間 1500 万台を生産する。これは生産量で1位を誇ったシャープのタイ工場より1
ケタ多い数字だという(日本経済新聞 2001.05.29)
。海爾をはじめ他の企業も海外企業へのO
EM供給を行っている。これが強力なコスト競争力を生むのである。
(2)信頼性の獲得
90 年代半ば頃までは、中国製品は自国民にとっても故障が多発する低品質品と認識され、
それよりも、多少は価格が高くても信頼性のある外資ブランドが志向されていた。しかし中
国製品の低品質イメージは払拭されつつある。
ひとつの要因は実際に技術力が向上してきたことである。そもそも中国家電メーカーの多
くは、日本企業の技術供与によって製品レベルを向上させてきた。例えば格蘭仕はもともと
は衣料品を扱う企業であったが、92 年に東芝の電子レンジの技術供与により方向転換を果た
した。このような技術供与は現在も続いている。美的も東芝との関係を深め、技術レベルを
向上させている。調理家電分野の提携、東芝の冷蔵庫の生産技術供与、電子レンジ部品生産
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設備の売却などである。また日本企業の生産拠点閉鎖などでリストラされた技術者の雇用も
行っている。さらには海外メーカーのOEMを行い最先端の技術を自社に吸収してしまうな
どして、着実に技術レベルを向上させている。
もうひとつの要因はアフターサービスへの注力である。海爾は 80 年代半ばからアフターサ
ービス網の確立をすすめた。その結果、現在では中国全土で故障の場合 24 時間駆けつける体
制が整っている。また「10 年保証」
「1年内無料取り替え」
「1年に1度の定期点検」などの
アフターサービスを充実させることで、高くて壊れにくい日本製品から、安くて壊れてもす
ぐに治してくれる中国製品へのシフトがすすんだ。
3.日本家電の勝ち残りの方向性
日本の家電メーカーは中国家電メーカーに勝てるのだろうか?中国家電の弱み、日本家電
の強みから、今後の勝ち残りの方向性を検討する。
(1)中国家電の弱み
中国家電メーカーにもいくつかの弱みを見いだすことが出来る。
まずは激しい国内企業間の低価格競争により、財務状況が悪化していることである。それ
は普及率が 100%を超え、ここ5年間に価格がおよそ半値まで下落したカラーテレビを主力と
する企業に顕著である。2000 年には有力家電メーカー9社による、カラーテレビの価格カル
テルが結ばれた。中国政府は対外競争力のあるメーカー育成の視点から容認したのであるが、
非参加企業の更なる安売りのため、このカルテルには効果が見られなかった。その結果カラ
ーテレビを主力とする企業は軒並み採算が悪化し、体力勝負の「つぶしあい」の構造が顕在
化してきたのである。中国家電メーカー各社の低価格化の動向をみるかぎり、この様な状況
はカラーテレビにとどまらず、他のカテゴリーにも飛び火していくことは必至であると考え
られる。
もうひとつは技術力の差である。先述の様に、中国家電メーカーはいまだ技術力の海外依
存度が高い。TCLのトップは「テレビ 600 万台、120 億元を売り切る販売網をもつわれわれ
は技術が足りない」と明言している(
「選択」2001.12)
。
カラーテレビ最大手の長虹のトップは「我が社がテレビの独自開発能力をもったのはよう
やく 95 年以降だ」
(日経産業新聞 2000.02.04)と語る。まだまだ先進国との研究開発には差
があることを認識している。中国家電メーカーは、常に海外メーカーの技術を模倣し、追い
ついてきた。各社オリジナルな技術の開発を志向しているが、今のところ世界に先立つ独自
技術の開発までには至っていないと捉えることが出来る。
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(2)日本家電の強みの再発見
一方、日本家電メーカーが本来持っていた強さとは、製品設計-部品製造-アセンブル-
マーケティングの機能をフルセット型で提供するビジネスシステムとそれがもたらす他国に
真似のできない製品クオリティの高さである。
大手メーカーが製品設計を行い、それに見合った部品を大田区・川崎、東大阪といった工
業集積地帯の中小部品製造業に発注する。ここで製造された部品をアセンブル(組立)し、
マーケティングによりブランド化させ、消費者にアプローチする。このようなプロセスを経
て「使いやすい」
、
「壊れにくい」
、
「デザインが良い」といった高品質の製品が作られる。そ
れらは他国が真似のできない「職人芸のたまもの」ともいうべき完成度の高さなのである。
世界市場において日本企業が圧倒的なシェアをもつ商品は、こうした日本企業の強さを維持
している。絶対壊れないということでルイ・ヴィトンにも採用された旅行鞄の鍵、水平を極
める(コンピュータ制御の製造機械でも真似の出来ないほどまっすぐな)キヤノンのレンズ、
他社には絶対に真似のできないカーブを描く車の金型などである。これらの共通点は、非常
に緻密であり、繊細であること。また「こだわり」の強さから生み出された商品であるとい
うことである。
こうした背景には、日本人消費者の品質基準の厳しさがある。多くの外資企業が自国製品
をそのまま日本市場に投入し、失敗するケースが多々見られるのは、日本人消費者の製品に
対する「厳しい目」がある。日本企業は、消費者に鍛えられて高いクオリティの製品を生み
出すことができたのである。
これら「職人芸」や日本人消費者の製品に対する「厳しい目」は極めて文化的な背景に支
えられている。つまり日本に特有の「モノへのこだわり」という文化である。それをバック
ボーンとして高いクオリティの製品が生み出される。中国企業、更には欧米の先進企業でさ
えも到底真似のできない強さなのである。
(3)日本家電の勝ち残りの方向
以上をふまえたうえで、今後の日本企業が勝ち残るための方向性を検討すると、以下の三
つが考えられる。
ひとつめは中国企業が出来ないものづくりを継続的に進めていくことである。製品設計か
ら部品製造、アセンブル、そしてマーケティングのフルセット型で中国企業をリードする。
先端技術・製品での圧倒的なリード力がこのモデルでの成功の条件である。特にデジタル分
野、デジタル家電やホームネットワーク、プラズマディスプレイパネルなどの次世代家電は、
まさに日本企業が提携によりコストを分散させ開発を進めている分野で、リードできる可能
性がある。アセンブルについては、企業間提携を含めた再編が必至と考えられるが、日本独
自の「職人芸」という強みを活かし、まずはこれらの分野で確実に成果をあげることが肝要
である。自動車ではトヨタがこうした方向性を志向しているが、現在のところ、家電企業で
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はみられない。
ふたつめは家電のユニクロ化である。ユニクロは商品開発とマーケティングに特化し、新
しいビジネスシステムを構築した企業である。生産はすべて中国の現地縫製工場に委託され
ている。少品種大量発注、全量買い取りという形態と、ユニクロ主導の調達、縫製や染色に
ついての指導などにより低価格高品質の商品を調達することが出来る。
家電企業もこの方向性を採用することが可能である。つまり自社での部品製造、アセンブ
ル(組立)を放棄し、中国での部品・アセンブルをビジネスシステムの中に組み込む。マー
ケティングの優位性がこのモデルを採用する際の条件である。特にブランド力の構築が必要
である。ソニーがこの方向を志向している。ソニーはEMS(エレクトロニクス・マニファ
クチュアリング・サービス)へのアウトソーシングを積極的にすすめている。日本でのパソ
コンのトップブランド「vaio」の蓋を開けてみるとすでに部品のほとんどが中国製である。
「madeinjapan」ではなく、
「sony」や「vaio」といったブランドの構築が必要である。
三つめは部品メーカーとしての道を選ぶことである。ただ部品を調達してきて組み立てる
(アセンブル)ことでは中国企業の人件費の安さと大量生産を背景にしたコスト競争力には
絶対にかなわない。松下電器が志向している方向性である。松下電器は「創生 21」のなかで
「超製造業」への脱皮を謳い、
「組立中心のものづくり」から「デバイス中心のものづくり」
への転身を志向している。中村社長は「ハーバード・ビジネス・レビュー2001 年2月号」で
「デジタル技術やモバイル技術の中核となるデバイスに経営資源を集中させる。R&D投資
などをテコに、技術優位性を確立する」と語る。
デバイスの技術力(クオリティ)が最終製品の技術力(クオリティ)に制約を与えるとい
う構造のなかで、最先端・高品質のデバイスを製造し、世界にむけて提供し、そこで利益を
出していく。この方向性では「職人芸」をいかにシステム化(コンピュータ化)して精度の
高いデバイスを作れるかが鍵である。
いずれの方向を進むにしても、日本に脈々と受け継がれる「ものへのこだわり」という文
化を背景として、日本の厳しい目をもった消費者のニーズ、消費者にとっての価値に肉薄し
た精度の高い製品を作っていくことが、日本家電が中国家電に勝ち残るために残された道で
ある。
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