知の知の知の知 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

い~な
あまみ
中 央
しらさぎ
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 1047 号 2012.11.21 発行
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りんどう作業所が3R会長賞
アルミ缶回収など評価
下野新聞 2012 年 11 月 19 日
【那須】リデュース・リユース・リサイクル(3
R)推進協議会が主催する本年度3R推進功労者表
彰で、寺子丙の町障害者地域活動支援センター「り
んどう作業所」が同協議会長賞を受賞した。
同センターは2003年から、一般家庭から出た
アルミ缶を回収し、センター利用者が缶つぶし機2
台で処理している。年間処理量は約8トン(昨年度)
で、町の回収総量の約4分の1が同センターで処理
されているなど、長年の活動が認められた。
そのほか、紙パックを紙すきして作ったはがきや
カードを販売する活動や、古布や古い毛糸でさをり織りを製作する活動も評価された。
同センターには現在、20~50 代の 23 人が通う。田中繁男所長(58)は「受賞は利用者
の働く意欲にプラスになる。施設の活動を町民に広く知ってもらう機会になれば」と喜び
を語った。
シイタケ:障害者が生産、販売 「肉厚でおいしい」好評です 一宮「黒田ドリーム作業所」
の10人 /愛知
毎日新聞 2012 年 11 月 19 日
一宮市木曽川町内割田の、きそがわ福祉会「黒田ドリーム作業所」
(田中由美子責任者)
が生産、販売しているシイタケ「ドリームしいたけ」が「肉厚でおいしい」と好評だ。通
所者たちは毎朝、丁寧に収穫し、作業所の駐車場で月〜金曜日の午前10時〜午後3時に
販売している。収穫と販売は13年3月ごろまで続けられる。
作業所には、さまざまな障害を持つ18〜62歳の男女40人が通所している。近くで
経営する喫茶店で働く人もおり、シイタケ栽培は10人が担当している。
栽培を始めたのは今年4月。喫茶店経営や内職だけでは通所者の生活に必要な賃金を支
払うのが難しく、何とかして賃金を上げたいと考えたからだった。
原木を使わず、比較的軽作業で栽培がしやすい菌床シイタケを、岐阜県恵那市から仕入
れ、最初の3カ月は朝夕の水やり、続く3カ月は菌床の手入れなどを行い、ようやく収穫
にこぎつけた。作業を手伝った阿部雅子支援員は、シイタケのかさが徐々に大きくなる様
子に、通所者たちは「ようやく収穫できるシイタケになった」と喜んだという。
販売価格は200グラム250円。【渡辺隆文】
障害者の活動範囲広げるソフト体感/高松養護学校
四国新聞 2012 年 11 月 20 日
重度の障害のある人の活動範囲を広げるソフトウエア「O
AK(オーク)
」の体験会が18日、香川県高松市田村町の香
川県立高松養護学校で行われた。参加した同校の子どもたち
は、顔や手の小さな動きでスイッチを操作できる最先端技術
に驚いていた。
OAKは「Observation and Acces
s with Kinect」の略。カメラで顔や体の動きを認識するマイクロソフトの
「Kinect for Windows」を用い、東京大先端科学技術センターと日本
マイクロソフトが共同開発した。
体験会は10月にキッザニア東京で開かれたが、特別支援学校で開催するのは今回が全
国初。参加者は口の開け閉めなどで、卓上ランプの明かりをつけたり音楽を再生したりし
て、興味深そうに操作を体験した。
OAKは年度内には1万円程度で販売される予定。
新聞配達員が「見守り」
読売新聞 2012 年 11 月 20 日
◇宅配業者も~長浜市が協定締結
長浜市は19日、読売センター(YC)など市内の新
聞販売店18店舗やヤマト運輸2支店と、独り暮らしの
高齢者や子ども、障害者らを対象にした「見守り活動」
に関する協定を結んだ。新聞販売店との見守り支援の協
定締結は、県内の自治体では初めて。
藤井市長から協定書を受け取る新聞販売店の代表者(左、長浜市
役所で)
市は2008年度から、民生委員や自治会などと連携し、災害時の避難支援や日常的な
見守り活動に取り組んできた。高齢者の孤立死や児童虐待などを防ぐため、より幅広く協
力を求めることにした。
協定では、配達や集金などの業務を通じ、
「家に新聞や郵便物が数日間たまっている」
「顔
や体に不自然なあざや傷ができている」といった異変に気付いた際、市や警察、消防署に
連絡する、としている。
この日、市役所で協定の伝達式があり、藤井勇治市長が、各店の代表らに協定書を手渡
した。市は今後、郵便局などにも協力を呼びかけていく。
障害者虐待防止法施行から1カ月余 鹿児島では
南日本新聞 2012 年 11 月 20 日
鹿児島市では障害者基幹相談支援センターで虐待の通報も受
け付けている=19日
障害者への虐待を発見した人に自治体への通報を
義務付ける障害者虐待防止法が10月1日に施行さ
れ、1カ月余が過ぎた。鹿児島県や市町村に寄せられ
た通報の中には、既に虐待認定されたケースもあり、
虐待の早期発見に期待がかかる。一方、障害者関係団
体からは相談員育成など課題を指摘する声もある。
同法施行を受け、県内では県障害者権利擁護センターのほか、自治体・地区ごとに34
の障害者虐待防止センターが設けられた。夜間も宿直者が対応するなど、24時間体制で
通報を受け付ける。当事者に危険が及ぶ恐れがある場合、立ち入り調査や被害者の一時保
護も行う。
障害者雇用率:総数過去最高、民間1.78%に /滋賀
毎日新聞 2012 年 11 月 20 日
滋賀労働局は14日、今年の障害者雇用状況(6月1日現在)を発表した。県内の民間
企業で雇用されている障害者数は2141人と過去最高となり、平均雇用率は1・78%。
法定雇用率(1・8%)には届かなかったが、全国平均の1・69%を上回った。法定雇
用率達成企業の割合は54・7%だった。
対象は県内に本社を置く従業員56人以上の企業631社。雇用数が増加したのは14
4社、減少したのは94社で、平均雇用率は全国20位だが、前年比での伸び(0・18
ポイント)は全国トップだった。達成企業の割合も4・3ポイント増と全国2番目の伸び
となった。258社を占める製造業の雇用率は1・79%と、0・12ポイント改善した。
同局によると、県内は製造業の派遣労働者増加などを背景に04年以降、平均雇用率が
法定を下回る状況が続いている。来年4月から法定雇用率が2%に引き上げられ、現状で
は達成企業が50%を下回る可能性もある。同局の山田将武・職業安定部長は「未達成は
違法状態であり、理想は100%。達成率を少しでも高める努力をしていく」と語った。
一方、法定2・1%の地方公共団体の雇用率は県が2・33%、市町の27機関が2・
24%だった。法定2%の県教育委員会は1・78%で、10年以上未達成が続いている。
指導する立場の滋賀労働局は2・71%という。
【姜弘修】
障害者雇用最多3458人…雇用率全国 38 位
読売新聞 2012 年 11 月 21 日
福島労働局は、県内の障害者の雇用状況(6月1日時点)をまとめた。従業員56人以
上の企業の被雇用者数は3458人と、2002年度から11年連続で増加し、過去最多
を更新した。だが、雇用率は1・64%で、依然として法定雇用率(1・8%)に届かず、
全国38位と低迷を続けている。
前年度より39社多い1079社を対象に調べた。業種別の雇用率では、製造業(1・
83%)や金融・保険・不動産業など(1・69%)は高い一方、情報通信・運輸業など
(1・32%)
、建設業(1・37%)は低かった。同労働局は「大企業に対し、障害者を
雇用する子会社を作ってもらうなどの働きかけをして雇用促進を図りたい」としている。
公的機関では、県知事部局・県警などが2・32%、市町村や企業団などは2・14%
と法定雇用率(2・1%)を達成。広野町(6・06%)、飯舘村(5・8%)など町村が
上位を占めた。県教委(法定雇用率2%)は1・44%と低かった。
障害者雇用促進法では、法定雇用率を達成できない場合、企業名の公表や納付金支払い
などの罰則が定められている。
伝統のつばき油復活
陸前高田、障害者と協力
共同通信 2012 年 11 月 20 日
東日本大震災で消滅の危機に直面していた岩手県陸前高田市の名産品つばき油が、地元
の障害者就労支援施設の協力を得て復活した。市内唯一の製油店は津波で廃業したが、経
営者夫妻が「地域の宝を守って」という周囲の声に再興を決意し、障害者らとともに奮闘
している。
陸前高田市とその周辺からなる気仙地区はツバキの群生地で、かつてはつばき油作りが
盛んだったが、震災前には 石川秀一 (いしかわ・しゅういち) さん(63)
、 春枝 (は
るえ) さん(63)夫妻経営の「石川製油」が唯一の製油店となっていた。
料理や肌の手入れに使うつばき油は、女性を中心に人気だったが、昨年3月11日の津
波で製油店は流失。消防団員として活動中だった後継ぎの長男=当時(37)=をも失っ
た。
「今後のことなんて考えられなかった」と春枝さん。製油店は約半世紀の歴史を閉じた。
そんな2人に声を掛けたのが、地元で社会福祉法人大洋会が運営する「青松館せせらぎ」
だった。せせらぎも震災で、障害者らの仕事場を失った。 中村浩行 (なかむら・ひろゆ
き) 館長(49)は「つばき油は気仙の宝物。私たちに手伝いをさせてほしい」と石川さ
ん夫妻を説得。ツバキの実を提供してくれる住民も現れ、復活が決まった。
今年4月、施設内に製油施設がオープン。夫妻が技術指導を行い、障害者らがツバキの
実の選別作業などに励む。秀一さんは「何度失敗してもいい。やる気になって覚えればい
い油ができる」と勇気づけている。
「気仙椿油」の名で、瓶詰めしたものを6月から県内のスーパーなどで販売。東京の化
粧品メーカーが、気仙椿油を使ったハンドクリームの発売を予定するなど、地域の宝は着
実に全国へ浸透しつつある。
【編注】問い合わせは青松館せせらぎ、電話0192(55)1890
シクラメン祭り:鮮やか5000鉢、品定め−−黒潮 /高知
毎日新聞 2012 年 11 月 20 日
黒潮町田ノ浦の知的障害者授産施設「大方生華園(ジョブなしろ)
」でシクラメン祭りが
開かれている。24日まで。祭りは地域住民との交流を図ろうと15年ほど前から毎年開
催。園内のビニールハウス内には栽培しているシクラメンやポインセチア、ベゴニア、葉
ボタンなど約5000鉢が並べられている。
シクラメンは1鉢315〜2000円▽ポインセチア315〜680円▽ベゴニア20
0円▽葉ボタン50円−−と格安で販売されている。来場者は花の咲き具合などを確かめな
がらまとめ買いする人もいた。
【真明薫】
県障害者作品展に314点
力作そろう
佐賀新聞 2012 年 11 月 20 日
細やかな手作業で作り上げた作品が並ぶ会場=佐賀市のイオン佐賀大和店2
階ホール
県障害者作品展が17日、佐賀市大和町のイオン佐賀大和店で始
まった。細やかに表現した作品ばかりで、根気強い作業の様子がう
かがえる。25日まで。
同展は、県障害者社会参加推進センターが毎年開いており今年で
12回目。県内の福祉作業所などの利用者らが書や写真など6つの部門別に314点を出
品した。画用紙に数多くの戦隊ヒーローを描いた絵、鮮やかなコスモスを撮影した写真、
愛らしい子犬の陶器など手の込んだ作品が並んだ。
知事賞に輝いた夏秋あづささん(28)=佐賀市=の工芸品は、名尾和紙を下地に、和
紙の折り紙を使って童謡「赤とんぼ」を表現。赤トンボが無数に飛ぶ中、虫取り網を持っ
た子どもがいる田舎の風景を立体的に表現している。
夏秋さんは「折り紙で風景をより写実的に表すのが難しかった」と話した。展示はイオ
ン佐賀大和店2階ホールで開催。午前10時~午後5時まで。
障害者も輝く施設を 保護者らが開設へ
宇都宮
下野新聞 2012 年 11 月 21 日
【宇都宮】障害者が生きがいを持てる施設づくりを目指し、保護者らが今夏、西川田南
1丁目にNPO法人「ルヴァン」を設立、施設開設の準備を進めている。天然酵母にこだ
わったパン販売で資金を調達。25 日には、若草
1丁目のわかくさアリーナで活動の紹介を兼ね
た音楽会を開催する。大島淳子理事長は「一人一
人の障害者の個性に合った生きがいづくりを支
援できる施設を目指したい」と話している。
法人名の「ルヴァン」は、乳酸菌と酵母が共生
した天然酵母。長男(17)に聴覚・知的障害があ
る大島理事長が「いろいろな人たちが共生し、ゆ
っくり成長するように」と願いを込めた。重い障
害がある人たちの働く場は限られ、学校卒業後は
在宅になる人が少なくない。
NPO法人の事業の柱は事務所内で営む「自然派パン工房ハートベリー」のパン受託販
売。天然酵母、国産小麦使用が売りだ。障害者 20+ 件が袋詰めや販売に携わり、活動資金
を集める。
25 日の音楽会では、音楽家岡倉ゆかりさんが参加者を交えながらさまざまなジャンルの
歌を披露する。対象は障害児者ら約100人。参加費は1人500円(障害児者は介助者
込み)
。問い合わせ、申し込みは同法人事務局、電話・ファクス028・658・8436。
農作業 精神ケアに効果
読売新聞 2012 年 11 月 21 日
◇佐野厚生総合病院 通所者の自立を支援
佐野厚生総合病院(佐野市堀米町)の「精神科デイケア」が精神障害者を対象に、約7
500平方メートルの耕作地を購入し、農作業を通じた自立支援に取り組んでいる。農作
業は一般的に集団行動を学ぶことができ、五感も刺激され治療に良いとされる。ここでは
大規模農地のため作業量が多く、農作物が同病院の食材に利用されていることも患者の大
きな達成感につながる。担当者は「主体性や協調性も身に着いてきた。自立につなげたい」
と話している。
(岡本朋樹)
同病院では約80人が登録し、通所者は一日平均約30人に上る。2006年から佐野
市高山町に約130平方メートルの畑を借り、週に1回、じゃがいも作りなどを行ってき
た。患者が自ら考える姿勢が身に着いてきたが、週一度ではせっかく覚えた技術もなかな
か定着しなかった。継続的に出来るようにと11年6月に、同病院から約1・5キロと比
較的近場に田畑約7500平方メートルを購入した。
春には田植え、夏にはキャベツや大根の種まき、秋には稲の収穫、冬にはイチゴのハウ
ス栽培など、年間を通して多くて週に3回のプログラムで農作業を行っている。
農場の規模が大きく、農作業はJA佐野営農・支援課の職員による支えも大きい。月1
度程度の頻度で苗の作り方や種のまき方、どの肥料にすればいいかなど、一から丁寧に指
導している。季節ごとに収穫される新鮮な農作物はまさに地産地消。同病院の外来食堂や、
入院患者の食材として存分に利用される。
こうした取り組みが高い治療効果を生んでいる。同病院精神科デイケア担当の中山純・
看護部主任は「食材を運んでいるところを見たほかの看護師さんや外部の人に声をかけら
れることで、やる気につながっている」と話す。
男性(41)は「最初は農作業のやり方が分からなかったけど、病院のスタッフなどと
一緒に学ぶうちに分かり始めて自信がついてきた。自分が育てた食材が人の役に立ててう
れしい」と笑顔を見せる。10月9日には、収穫祭が行われ、畑で作られたナスを使った
トマトスパゲティや、ジャガイモを使ったいもフライなどが振る舞われた。
中山主任によると、1年以上続けて、患者が収穫を増やしたり農場をよくしたりするた
め、周りと協調し、意欲を持って主体的に活動することが出来るようになってきたという。
さらに同病院は農場管理のために精神障害の患者2人を常勤で雇用、今後同病院の精神科
デイケア出身者の雇用も考えているという。
中山主任は「頑張った分だけ収穫が増えることによる充実感や、仲間で作業することで
の協調性など得られるものは多い。これからも継続し、患者さんの自立や就労に結びつけ
ていきたい」と話している。
起承転々:これからの美術館
/岐阜
毎日新聞 2012 年 11 月 20 日
「Timeless future」。直訳すれば「終わりのない未来」「時間を超越し
た未来」という意味でしょうか。
岐阜市にある岐阜県美術館で今、
「開館30周年記念 岐阜県美術館の歴史 30年の歩
み展」が開かれています。そのテーマが「Timeless future」です。開館
時から同館の展覧会ポスターを手掛けてきた岐阜市のグラフィックデザイナー、田辺雅一
さんの作品を中心に、ポスター175点、所蔵作品57点を展示し、同美術館の30年の
歩みを振り返っています。この30年間、一人のグラフィックデザイナーが、同じ美術館
の展覧会のポスターを作ってきたというのも驚きです。
会場に入ると、美術館を設計した人のメッセージがありました。当時は県立美術館の建
設ブームのさなか。社会の中では障害者も健常者と同じように暮らせるのが正常な社会だ
というノーマライゼーションの考え方が、まだ一般的ではなかった時代に、できるだけ段
差をなくし、すべての展示室を1階に持ってくるようにしたほか、通り抜けができるよう
に展示室だけを有料にし、
「開かれた美術館」を目指したことなどのこだわりが紹介され、
思わず感心してしまいました。
私が美術館に関心を持ち始めたのは、15年ほど前に愛媛県にいたときです。当時、県
が新しい美術館を建てる計画を立てていたものの、情報公開が不十分だとして、地元の美
術愛好家の人たちが運動を起こし、理想の美術館についての問題提起をしていました。
その中で欧州には小さな町にも美術館があって、いつでも芸術に触れることができるこ
とや、同じ絵画でも、何年も見ているうちに見え方が変わってくることなどを知りました。
一点豪華主義ともいわれる何十億円もする印象派の巨匠の絵を購入した美術館が話題にな
る中で、公立美術館はそれとは一線を画し、地元出身の芸術家を大事にしながら、生活の
中に溶け込むような存在として、長い目で育てなければいけないという話にも、なるほど
と思いました。設計者が「開かれた美術館」を目指し、地元作家の作品収集にも力を入れ
る岐阜県美術館にも通じるものがあります。
同美術館の開館準備の段階からかかわっているという古川秀昭館長は「訪れた人たちに、
あれっと思ってもらえるような発見や感動を与えられるような美術館にしたい」と話し、
美術に親しんでもらうと同時に、非日常の空間も意識しているようです。30周年記念展
を企画した広江泰孝学芸員によると、
「Timeless future」には「付け足し」
という意味もあるそうです。30年後の岐阜県美術館はどのように進化しているでしょう
か。
同展は12月24日まで。一般500円、大学生400円、高校生以下無料。同1日(土)
午後2時から、古川館長による美術講座「開館30周年を迎えた これからの岐阜県美術
館」が開かれます。事前申し込み不要、無料。【岐阜支局長、石塚孝志】
今週の本棚:松原隆一郎・評
『新しい市場のつくりかた』=三宅秀道・著
毎日新聞 2012 年 11 月 18 日
(東洋経済新報社・2100円)
◇新たなしあわせへ「問題開発」の経営書
日本経済が不調をきたして久しいが、それでもシャープや
パナソニック、ソニーの凋落(ちょうらく)ぶりを聞くと耳
を疑うところがある。いずれも「改革」しようとして方向を
見失った結果ではあるものの、以前は数年に一度は打ち出せ
ていた画期的な新商品の開発が途絶えていることが大きい。
それら栄光ある製造業が「大企業病」を患っているとみなす
なら、どこに問題があるといえるのか。
著者はここ十五年で中小企業を中心に千社を訪ね聞き取
りを行ってきたという気鋭の研究者である。経営学の学会で
は理論モデルを統計に照らして検証するようなアメリカ型
の研究が王道とみなされるようだが、著者は地道に「アイデ
ア社長」の語りに耳を傾ける帰納法タイプ。しかも根っから
そうした話が好きなのだろう、楽しい余談を豊富に交えつつ、
「読んで全く難しいところがない」平易な文章で、なぜ日本
の大企業が新製品の開発でつまずいているのかを解き明かしている。
著者の観察によれば、ポイントは「日本の産業はすごい技術が支えている」という「技
術神話」にとらわれ、薄型テレビをさらに薄くする効率化や同一商品のコストダウンに邁
進(まいしん)し、素朴な技術を使いこなしてもできるような新商品を開発しなくなった
点にある。
効率化にせよコストダウンにせよ、大企業はアッという間にやり遂げる。けれどもそれ
はサーフィンで用いられるボードの素材や形状を緻密に点検するタイプの技術開発、すな
わち「問題解決手段の改善」にすぎない。「板を使って波に乗れば面白い」と思いつき、サ
ーフィンという市場そのものを創り出すようなダイナミックな「問題開発」ではない。
サーフィンというレジャー・スポーツの一分野を開発することで消費者に新たなしあわ
せを提供するのではなく、社内の同僚に目を向けて競い合うのが効率化やコストダウンで
ある。それは新市場が開発された直後には有効だが、市場が成熟したのちには病でしかな
くなる。大企業に蔓延(まんえん)する病とはそれだ、というのだ。
なるほどスティーブ・ジョブズの伝記を思い出せば、この説には納得がいく。同じ会社
に籍を置くならジョブズほど嫌な同僚はいない。彼はマイクロソフトのビル・ゲイツから
は「技術を知らない」と批判されるが、細かな技術の改善よりもユーザーにとって快適で
美しく感じられる商品開発にこだわった。技術者の日夜の工夫も、彼の美意識に寄与しな
ければ口を極めて罵倒される。ソニーがウォークマンで音楽の聴き方を根本から変え、ネ
ットワークとアーチストの囲い込みまでは先行しながらもiTunesとiPodが生み
出せなかったのは、仲間内の雰囲気をぶち壊してまで商品開発の鬼となるジョブズがいな
かったからではないか。
ジョブズにとっての「問題開発」はシンプルな美観とユーザーの暮らしへの浸透だった
が、著者はそれをより広く、「ライフスタイルの構想」「文化開発」と呼ぶ。エジソンが生
きた時代、すでに技術としてはウォシュレットは製造可能だった。ではなぜ「エジソンに
ウォシュレットが作れなかったか」といえば、「おしりだって洗ってほしい」というライフ
スタイルないし文化が開発されていなかったからだ。そして「問題開発」で日本企業のす
べてが劣るのではない。中小企業に目を向ければいまなお成功例が満ちており、本書はそ
れを余談も交えて多々紹介する。
古くは阪急電鉄の小林一三(いちぞう)。彼はたんに電車を人を運ぶ手段とはとらえず、
「駅前スーパー」や「宅地造成」
、はては「宝塚歌劇」までも含めて開発した。鉄道を便利
さや暮らし、レジャーに及ぶ文化産業とみなしたのだ。
興味深いのは、脳性まひを患った障害者が快適に座れる車椅子の例。健常者が座る「座
面・背面」からなる椅子に車をつけると、身障者には痛々しいほど座りづらいものとなる。
そこで医療研究者が発見したのが、障害者は「胸郭を支える力が弱い」ということ。こう
して「胸郭も支える椅子」は、健常者にとっても快適な商品となった。健常者にいくら調
査をかけても得られない視点が、障害者から得られたというのだ。
バイク市場は縮小しているが、高級バイクであるハーレーダビッドソンは売れ行きを伸
ばしている。
「交通手段」ではなく「ステータスシンボル」とみなし、家族公認のお父さん
の趣味として売り出したからだという。
もっともこの話はすでにドラッカーが一九五四年の『現代の経営』で、コストダウンや
燃費向上に努めたものの一向に売れ行きの上がらなかったキャデラックを、交通手段では
なくミンクのコートに匹敵する「贅沢(ぜいたく)品」とみなすという例で紹介している。
そうした発想がいまなお通用するほど、技術神話は日本経済の足かせとなっているという
ことか。
要は新しいライフスタイルに気づくかどうかだが、著者によれば、得てしてヒットを飛
ばす商品開発者は気配りの人だという。他人への気配りが消費者の新たなしあわせに気づ
かせるというわけだ。この結論には救われる。ほのぼのと前向きになれる経営書である。
プロと踊ろうや/12月23日・西宮公演
朝日新聞 2012 年 11 月 20 日
プロのダン
サーから指導
を受けて一緒
にステージに
立つダンス経
験者10人を、
西宮市文化振
興財団が募集
している。参加
無料。財団法人
「地域創造」の助成事業で、ダンスを
通じてコミュニケーション能力を高めるのがねらい。
10人は、12月23日に西宮市甲東園3丁目の西宮市甲東ホールで行われる公演「2
012 ダンス甲東園」で、滋賀県在住の振付家でダンサーの北村成美(しげ・み)さん
(41)とコンテンポラリーダンスを共演する。北村さんはソロダンサーとして国内外で
精力的に活躍。各地でご当地ダンサーズを立ち上げ、学校などでダンスのワークショップ
も手がける。これまでに大阪舞台芸術新人賞や滋賀県文化奨励賞を受賞している。
応募資格は高校生以上のダンス経験者。受講者は12月17~21日の5日間、甲東ホ
ールや西宮市民会館で開かれるワークショップで北村さんからレッスンを受ける。12月
17日には市内の身体障害者通所授産施設「青葉園」で、19日は市立深津中学校で施設
利用者や生徒たちと交流会を持つ。
受講希望者はファクス(0798・33・3455)か、メール(amity@nis
hi.or.jp)で、西宮市文化振興財団事業課(0798・33・3146)に申し
込む。
月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も
大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行