障がい者虐待の根絶のために

平成26年度指定障害福祉サービス事業者等集団指導
障がい者虐待の根絶のために
青森市健康福祉部
1
本日の内容
1 障がい者虐待とは
2 本市における障がい者虐待の現状
3 施設・事業所の虐待防止と対応
4 虐待が起きてしまった場合の対応
5 さいごに
2
1 障がい者虐待とは
3
虐待は、個人の尊厳を侵害する人権侵害である。
○憲法第13条
「すべて国民は、個人として尊重される」
○障害者基本法第1条
「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するか
けがえのない個人として尊重されるものである・・・」
○ 同法第4条
「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利
利益を侵害する行為をしてはならない。」
○障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待
防止法)第3条
「何人も、障害者に対し、虐待をしてはならない。」
4
障害者虐待防止法の概要(その1)
1
対象となる障害者(第2条第1項)
障害者基本法第2条第1項に規定する障害者
⇒ 障がい者手帳を交付されている者に限らず、幅広く、身体・知的・精
神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者
2
障害者虐待の定義(第2条第2項)
(1)養護者による障害者虐待
(2)障害者福祉施設従事者等による障害者虐待
(3)使用者による障害者虐待
【虐待の類型】
①身体的虐待
②性的虐待
③心理的虐待
④ネグレクト
⑤経済的虐待
5
障害者虐待防止法の概要(その2)
3
虐待の禁止(第3条)
4
早期発見に努める義務(第6条第1項及び第2項)
5
通報義務(第7条、第16条、第22条)
6
家庭への立入調査(第11条)及び養護者の支援(第14条)
7
社会福祉法、障害者総合法支援法等の規定による権限の行使(第19条)
立入検査、改善勧告、措置命令、指定の取消し等
8
市町村虐待防止センター等の設置(第32条、第36条)
9
自主的な防止措置の奨励(第29条、第30条、第31条)
6
身体的虐待の内容と具体的な例
【内容】
暴力や体罰によって身体に傷やあざ、痛みを与える行為。身体を縛りつけ
たり、過剰な投薬によって身体の動きを抑制する行為。
【具体的な例】
○平手打ちする
○殴る
○蹴る
○無理やり食べ物や飲み物を口に入れる
○壁に叩きつける
○やけど
○つねる
○打撲させる
○身体拘束
7
性的虐待の内容と具体的な例
【内容】
性的な行為やその強要(表面上は同意しているように見えても、本心から
の同意かどうかを見極める必要がある)。
【具体的な例】
○性交
○性器への接触
○性的行為を強要する
○裸にする
○キスする
○本人の前でわいせつな言葉を発する、又は、会話する
○わいせつな映像を見せる
8
心理的虐待の内容と具体的な例
【内容】
脅し、侮辱などの言葉や態度、無視、嫌がらせなどによって精神的に苦痛
を与えること。
【具体的な例】
○「バカ」「あほ」など障害者を侮辱する言葉を浴びせる
○ののしる
○悪口を言う
○仲間に入れない
○人格をおとしめるような扱いをする
○怒鳴る
○子ども扱いする
○話しかけているのに意図的に
無視する
9
ネグレクトの内容と具体的な例
【内容】
食事や排泄、入浴、洗濯など身辺の世話や介助をしない、必要な福祉サー
ビスや医療や教育を受けさせない、などによって障害者の生活環境や身体・
精神的状態を悪化、又は不当に保持しないこと。
【具体的な例】
○食事や水分を十分に与えない
している
助をしない
○食事の著しい偏りにより栄養状態が悪化
○あまり入浴させない
○汚れた服を着させ続ける ○排泄の介
○髪や爪が伸び放題
○室内の掃除をしない ○ごみを放置し
たままにしてあるなど劣悪な住環境の中で生活させる
○病気やけがをして
も受診させない ○学校に行かせない ○必要な福祉サービスを受けさせな
い、又は制限する
○同居人による身体的虐待や性的虐待、心理的虐待を放
置する
10
経済的虐待の内容と具体的な例
【内容】
本人の同意なしに(あるいはだますなどして)財産や年金、賃金を使った
り勝手に運用し、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限すること。
【具体的な例】
○年金や賃金を渡さない
○本人の同意なしに財産や預貯金を処分し、運用する
○日常生活に必要な金銭を渡さない、使わせない
○本人の同意なしに年金等を管理して渡さない
11
2 本市における障がい者虐待の現状
12
青森市障がい者虐待防止センターについて
 障がいのあるかたに対する虐待の防止、早期発見、虐待を
受けた障がいのあるかたの保護などを目的として、「障害者
虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法
律」に基づき設置しています。
 障がいのあるかたに対する虐待に関する相談、通報や届出
を24時間対応で受け付けています。

017-722-3260
13
障がい者虐待防止センターでの対応状況①
通報相談受付件数
24年度
25年度
26年度
養護者による虐待
2
9
9
障害福祉施設従事者等による虐待
5
4
10
使用者による虐待
0
1
0
その他の者による虐待
2
0
1
9
14
20
24年度
25年度
26年度
養護者による虐待
0
2
2
障害福祉施設従事者等による虐待
0
2
1
使用者による虐待
0
0
0
その他の者による虐待
0
0
1
0
4
4
合
計
虐待と認められたもの
合 計
14
障がい者虐待防止センターでの対応状況②
虐待の類型
24年度
25年度
26年度
身体的虐待
0
2
2
性的虐待
0
1
0
心理的虐待
0
0
2
ネグレクト
0
0
0
経済的虐待
0
1
0
24年度
25年度
26年度
身体障がい
0
1
1
知的障がい
0
4
2
精神障がい
0
0
0
発達障がい
0
0
1
その他心身機能の障がい
0
0
1
障がいの種別
15
障がい者虐待防止センターでの対応状況③
虐待事例の内容

身体障がいと知的障がいのある方に対して、施設の職員が暴行を
行っていた。

25年度
知的障がいのある方が入所施設から自宅に帰宅していた際に、家族
が暴力を振るっていた。

知的障がいがある方に対して、施設の職員が性的虐待を行っていた。

知的障がいのある方の金銭管理をしていた家族が、障害年金の使い
込みをしていた。

視覚障がいのある方に対して、家族が暴行を行っていた。

身体障がいのある方に対して、家族が暴行を行っていた。(一時保
護後、施設に入所した。)
26年度

知的障がいのある弱視の方に対して、施設の職員が言葉による心理
的虐待を行っていた。

知的障がいと発達障がいのある児童に対して、学校の教諭が心理的
虐待を行っていた。
16
3 施設・事業所の虐待防止と対応
17
事業者等の責務
○障害者虐待防止法第15条
障害者福祉施設の設置者又は障害福祉サービス事業等を行う者は、障害者
福祉施設従事者等の研修の実施、当該障害者福祉施設に入所し、その他当該
障害者福祉施設を利用し、又は当該障害福祉サービス事業等に係るサービス
の提供を受ける障害者及びその家族からの苦情の処理の体制の整備その他の
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止等のための措置を講ずるも
のとする。
事業者等の責務 ⇒
障害者虐待の防止等のための措置を講ずること
18
体制の整備
虐待防止責任者の設置
○通常、管理者が担う。
虐待防止の対策を進める内部組織の設置(虐待防止委員会等)
【構成】
○虐待防止責任者 ○現場の職員 ○利用者の家族 ○第三者等の外部委員など
【役割】
○虐待防止のための体制づくり
・虐待防止マニュアルやチェックリスト、掲示物等ツールの整備など
○虐待防止のチェックとモニタリング
・職員のチェックリスト結果の把握・分析 ⇒ 研修計画の策定など
○虐待(不適切な対応事例)発生後の対応と総括
・虐待が発生した場合の対応や検証、総括 など
19
運営規程への定め
○虐待防止体制については、運営規程への記載が必要
○青森市指定障害福祉サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める
条例第32条第1項
指定居宅介護事業所は、指定居宅介護事業所ごとに、次に掲げる事業の運営につい
ての重要事項に関する運営規程を定め、これを当該指定居宅介護事業所の従業者及び
利用者に周知しなければならない。
○同項第8号
虐待の防止のための措置に関する事項
※ 他事業についても同様の規定あり
利用者等に対しては、重要事項説明書等でより詳しく
説明をするとともに、職員に対しての周知も必要
20
人権意識、知識や技術向上のための研修
① 管理職を含めた職員全体を対象にした人権意識を高めるための研修
例)○基本的な職業倫理 ○倫理綱領、行動指針、掲示物の周知
○障害者虐待防止法など関係法律や通知、指定基準などの理解
○障害当事者や家族の思いを聞くための講演会 ○過去の虐待事件の事例を知る
など
② 障害特性を理解し適切に支援が出来るような知識と技術を獲得するための研修
例)○障害や精神的な疾患等の正しい理解 ○自閉症の支援手法(視覚化、構造化など)
○行動障害の背景、理由を理解するアセスメントの技法 ○身体拘束、行動制限の廃止
○服薬調整 ○他の施設・事業所の見学や経験交流 など
③ 事例検討などによりスーパーバイザーの助言を得て行う、個別支援計画を充実
強化するための研修
例)○障害者のニーズを汲み取るための視点
○個別のニーズを実現するための社会資源などの知識の習得
○個別支援計画というツールを活用しての一貫した支援及び支援者の役割分担
など
21
虐待を未然に防止するための具体的な環境整備
① 事故・ヒヤリハット報告書、自己チェック表 とPDCAサイクルの活用
○事故等については、発生時に市町村に報告するとともに、分析し今後の予防に繋げる。
○職員が自覚しながら職場や支援の実際を振り返るために、虐待の未然防止と早期発見・
早期対応の観点からチェックリストを作成し活用。
○どのような行為が虐待に該当するのか、虐待を事業所内で発見した場合の措置について
などの研修の実施
② 苦情解決制度の利用
○日ごろから話しやすい雰囲気を保ち、実効性を確保。
○事業所内の苦情解決機関に加え、外部機関の利用についても周知。
③ サービス評価やオンブズマンなどの利用
○外部の目による客観的な評価を活用。
④ ボランティアや実習生の受入れと地域との交流
○第三者の目が入ることにより、虐待の予防の機会を増やす。
⑤ 成年後見制度や日常生活自立支援事業の利用
○自ら権利を擁護する事に困難を抱える障がい者については、成年後見制度等も活用。
22
4 虐待が起きてしまった場合の対応
23
事業者等の責務
○障害者虐待防止法第16条第1項
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発
見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
○同条第3項
刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第1項
の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。
○同条第4項
障害者福祉施設従事者等は、第一項の規定による通報をしたことを理由と
して、解雇その他不利益な取扱いを受けない。
障がい者虐待を発見した際の通報は“義務”
24
通報の流れ
① 利用者・従業者等からの相談
・従業者が直接、市町村に通報
する場合もあり
・従業者が通報したことを理由と
② 虐待防止委員会等で内容を確認
③ 虐待の疑いがある場合は市町村へ通報
して、従業者に不利な取扱い
をしてはならない
・「疑い」があった時点で、速やか
に通報する
・法人内部だけで処理することの
ないように!
④ 市町村と共同で調査
25
利用者への対応
虐待を受けた利用者の安全確保を最優先
【考えられる対応】
・利用者への見守り体制の強化
・虐待を行った職員の配置換え(直接処遇以外の部署などへ)や出勤停止
など
利用者が安心して過ごせる環境
利用者やその家族等への誠意ある対応
【考えられる対応】
・事業所内で起こった事態について説明、謝罪
・経営者から家族会への説明
など
利用者やその家族等の信頼回復
26
原因の分析と再発の防止
・虐待防止委員会
・第三者の有識者が参加した
検証委員会
など
客観的に分析し、責任の所在を明らかに
【観点】
・組織・風土に問題はなかったか?
・以前から虐待の兆候はなかったか?
・同一法人内の別の事業所ではどうか?
など
・責任の所在に応じた
関係者の処分
・目標期間の設定
・職員への教育、研修
など
改善計画の策定とその実施
27
5 さいごに
28